領収書の基礎知識

電子マネーの領収書はもう不要?インボイス・電帳法に対応する経費精算方法について

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電子マネー 領収書

電子マネーでの支払いは、現代の事業活動において不可欠な決済手段となりました。スマートフォン一つで迅速に決済できる手軽さは、日々の業務効率を大きく向上させます。

しかし、その利便性の裏側で、「この支払履歴だけで経費として認められるのだろうか」「紙の領収書がないけれど、本当に大丈夫なのか」といった不安を抱えている事業主の方は少なくありません。

特に、近年導入されたインボイス制度や改正電子帳簿保存法といった新しいルールは、経費精算の現場に大きな変化をもたらしました。これらの制度変更について正確な知識がないままでは、意図せず法令違反を犯してしまったり、税務調査で指摘を受けたりするリスクも考えられます。

この記事を最後までお読みいただければ、あなたの経費精算業務は劇的に変わります。一枚一枚紙の領収書を台紙に貼り付け、手作業で会計ソフトに情報を入力するといった旧来の煩雑な作業はもう必要ありません。

電子マネーの取引データを正しく活用することで、経費精算は迅速かつ正確になり、事業のコア業務により多くの時間を割けるようになります。

結論から申し上げると、電子マネーで行った事業上の支払いは、問題なく経費として計上できます。そして、その証明の中心となるのは、もはや紙の領収書ではありません。PayPayやSuicaなどの利用明細データこそが、税務上の正式な証拠として認められる時代になったのです。

本記事では、税務の専門的な観点から、電子マネーの領収書や利用明細の正しい扱い方を解説します。基礎知識から具体的な会計処理、そして複雑な法律の変更点まで、誰にでも理解できるように順を追って説明しますので、インボイス制度や電子帳簿保存法という言葉に戸惑っている方も、安心して読み進めてください。

この記事を読み終える頃には、自信を持って日々の経費精算に臨めるようになっているでしょう。

新常識:領収書の代わりは「利用明細データ」

経費精算における最も基本的な原則は、「その支払いが事業のために行われたこと」を客観的な証拠をもって証明することです。従来、その役割は紙の領収書が担っていましたが、デジタル化が社会全体で進んだ現在、電子マネーの「利用明細データ」が最も強力かつ信頼性の高い証拠となります。

税務上、経費の証拠として認められるためには、一般的に次の5つの情報が記載されている必要があります。

  • 書類作成者の氏名または名称(店舗名など)
  • 取引年月日(支払いを行った日)
  • 取引内容(購入した品物やサービスの内容)
  • 取引金額
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(あなたの会社名や屋号)

電子マネーの利用明細には、これらの情報が正確に、かつ網羅的に記録されています。手書きの領収書と比較して改ざんが困難であり、自動で記録が残るため、経費の透明性を確保しやすいという大きな利点さえあります。

ただし、その恩恵を享受するためには、各種電子マネーの正式な利用明細データを正しく取得し、法律の要件に沿って保存する方法を理解しておくことが不可欠です。

QRコード決済(PayPay、楽天ペイなど)の場合

PayPayや楽天ペイに代表されるQRコード決済サービスでは、アプリ自体に個別の領収書発行機能が備わっていないことが一般的です。経費精算に用いるのは、アプリやウェブサイトの会員ページからダウンロードできる「取引履歴」や「利用明細」になります。

ここで特に重要なのは、これらのデータを単にスクリーンショットで保存するのではなく、PDFやCSVといったファイル形式でダウンロードし、電子データとして正式に保存することです。この作業は、後ほど詳しく解説する電子帳簿保存法への対応において、法的に必須のプロセスとなります。

例えばPayPayであれば、アプリまたは公式サイトの「取引履歴」から期間を指定して明細を確認し、ダウンロードすることが可能です。楽天ペイの場合は、利用履歴画面や決済後に登録メールアドレスへ届く確認メールから、必要な情報を取得・保存しましょう。定期的にデータをエクスポートする習慣をつけることが大切です。

交通系ICカード(Suica、PASMOなど)の場合

交通系ICカードは、日々の通勤や移動で利用するため、個人利用と事業利用の履歴が混在しやすく、経費精算において最も注意を要する電子マネーの一つです。経費として計上する際は、事業目的の利用分だけを明確に切り分ける必要があります。

証明書類として最も有効なのは、モバイルSuicaやモバイルPASMOの会員メニューサイトからダウンロードできる利用明細書(領収書)です。この明細書には、乗車日、利用区間、運賃などが詳細に明記されており、税務上も領収書の代わりとして十分に通用します。

物理的なプラスチックカードを利用している場合、駅の券売機やチャージ機で利用履歴を印字する方法もあります。しかし、表示・印字できる件数(例:直近100件)や期間に上限が設けられているため、取引が多い場合はこまめな印字が必要となり、管理が煩雑になりがちです。可能であれば、管理のしやすいモバイル版への移行を検討することをお勧めします。

ここで絶対に覚えておくべき重要な原則があります。それは、チャージした際に発行される領収書は、経費の直接的な証拠にはならないという点です。チャージはあくまでICカードという電子的な財布にお金を移動させただけの行為であり、事業目的で何かを購入・利用した証明にはなりません。

経費として計上できるのは、実際に電車に乗車したり、加盟店で備品を購入したりした際の個別の利用履歴のみです。

プリペイド型電子マネー(楽天Edy、WAONなど)の場合

楽天EdyやWAON、nanacoといったプリペイド型電子マネーも、基本的な考え方は交通系ICカードと同様です。経費精算においては、チャージの証明ではなく、個々の支払いの証明が必要不可欠です。

これらのサービスの利用履歴をウェブ上で確認するためには、多くの場合、事前に公式サイトで会員登録(カード裏面の番号登録など)を済ませておく必要があります。この手続きを完了させておけば、楽天Edyの「マイページ」のような会員専用サイトで利用履歴を照会し、印刷やデータ保存が可能になります。

事業で利用する可能性のあるカードは、早めに登録を済ませておきましょう。

最重要関門:インボイス制度と電子帳簿保存法への対応

最重要関門:インボイス制度と電子帳簿保存法への対応

電子マネーの経費精算を正確に行う上で、避けては通れないのが「電子帳簿保存法」と「インボイス制度」という二つの法律です。これらはすべての事業者の経理業務に大きな影響を及ぼすため、正しく理解することが求められます。一見すると複雑に感じられるかもしれませんが、重要なポイントを押さえれば決して難しいものではありません。

電子帳簿保存法:すべての事業者の義務

まず、電子帳簿保存法について解説します。この法律の中で特に重要なのが、「電子取引」に関するルールです。2024年1月1日から、電子データで受け取った取引情報(請求書や領収書、利用明細など)は、電子データのまま保存することが、法人・個人事業主を問わず、すべての事業者に対して義務化されました。

これは具体的に、PayPayの公式サイトからダウンロードした利用明細のPDFファイルや、取引先からメールで送られてきた請求書を、印刷して紙で保存し、元の電子データを削除してしまう、といった従来の処理方法が認められなくなったことを意味します。

この「電子取引」には、各種電子マネーの利用明細データや、クレジットカードの利用明細データ、AmazonなどのECサイトでの購入履歴なども含まれます。

電子取引データの保存要件

そして、電子データを単にパソコンのフォルダに保存しておくだけでは不十分で、法律で定められた二つの要件を満たす必要があります。

一つ目は「真実性の確保」です。これは、保存したデータが改ざんされていないことを証明するための措置を指します。

高価なタイムスタンプが付与できるシステムを導入する方法もありますが、中小企業や個人事業主の場合は、例えば「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を社内で策定し、それに沿って運用することで要件を満たすことができます。この規程のひな形は国税庁のウェブサイトで公開されており、誰でも入手可能です。

二つ目は「可視性の確保」です。これは、保存した電子データを、税務調査などで提示を求められた際に、すぐに見つけ出して表示・印刷できるようにしておくことを意味します。これも特別なシステムは必須ではなく、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できるようにしておくことで対応できます。

具体的な方法として、ファイル名に規則性を持たせる(例:「20251028_株式会社A_11000_会議費.pdf」)といったルールを定め、運用することが現実的です。

インボイス制度:消費税の納税額が変わる重要ルール

次に、インボイス制度(適格請求書等保存方式)についてです。この制度は、主に消費税の計算に関わる重要なルールです。

簡単に説明すると、事業者が仕入れや経費にかかった消費税の控除(これを「仕入税額控除」と呼びます)を受けるためには、原則として、取引の相手方から交付された「適格請求書(インボイス)」を保存する必要がある、という制度です。

電子マネーで支払いをした際に受け取るレシートや領収書が、このインボイスの要件を満たしているかどうかが、消費税の納税額に直接影響します。

インボイス制度の基本と確認ポイント

確認すべき最も重要なポイントは、受け取ったレシートや領収書に「T」から始まる13桁の登録番号が記載されているかどうかです。この登録番号が記載されていれば、それはインボイスとして有効な書類である可能性が高いと言えます。

スーパーやコンビニ、飲食店、タクシーなど、不特定多数の顧客を相手にする事業者の場合、宛名の記載が省略された「適格簡易請求書(簡易インボイス)」が発行されることが一般的です。私たちが日常的に受け取るレシートの多くは、この簡易インボイスに該当します。

簡易インボイスも、登録番号などの法定要件を満たしていれば、仕入税額控除のための有効な証拠となります。

比較項目従来のレシート適格簡易請求書(簡易インボイス)適格請求書(インボイス)
発行者の氏名・名称必要必要必要
登録番号不要必要必要
取引年月日必要必要必要
取引内容必要必要(軽減税率対象品目はその旨)必要(軽減税率対象品目はその旨)
税率ごとの合計額不要必要(税抜または税込)必要(税抜または税込)
適用税率不要税率ごとの消費税額等 または 適用税率のいずれか両方必要
税率ごとの消費税額等不要税率ごとの消費税額等 または 適用税率のいずれか両方必要
受領者の氏名・名称(宛名)不要不要必要

個人事業主・小規模法人向けの特例措置

ただし、個人事業主や小規模な法人にとっては、事務負担を軽減するための重要な救済措置が設けられています。その代表的なものが「少額特例」です。

基準期間(法人は前々事業年度、個人事業主は前々年)の課税売上高が1億円以下の事業者などは、税込1万円未満の支払いについては、インボイスの保存がなくても帳簿への記載のみで仕入税額控除が認められます。この特例は2029年9月30日までの期間限定の措置ですが、多くの事業者にとって実務上の負担を大きく軽減してくれます。

実践編:電子マネーの正しい仕訳(会計処理)方法

利用明細データを法律の要件に従って正しく保存できたら、次のステップは会計帳簿への記録、すなわち「仕訳」です。電子マネーの会計処理は、その支払い方式によって勘定科目の使い方が異なります。大きく分けて「プリペイド方式」と「ポストペイ方式」の2種類を理解することが、正確な帳簿作成の鍵となります。

プリペイド方式(Suica、楽天Edyなど)の仕訳

Suicaや楽天Edyのように、事前にチャージ(入金)してから利用する方式をプリペイド方式と呼びます。この場合の会計処理は、チャージした時と、実際に利用した時の2段階で行うのが原則です。

チャージ時の処理

現金や預金から電子マネーにチャージした時点では、まだ経費は発生していません。これは、単に「現金」という会社の資産が「電子マネー」という別の形の資産に変わっただけだからです。そのため、会計上は「仮払金」や「貯蔵品」といった資産の勘定科目を用いて処理します。

(例)現金10,000円をSuicaにチャージした

借方貸方
仮払金 10,000円現金 10,000円

経費利用時の処理

実際に電車に乗ったり、加盟店で備品を購入したりした時に、初めて経費が発生したと認識します。このタイミングで、チャージ時に計上した「仮払金」を取り崩し、具体的な経費科目(旅費交通費、消耗品費など)に振り替える仕訳を行います。

(例)Suicaで取引先への移動にかかった電車代500円を支払った

借方貸方
旅費交通費 500円仮払金 500円

ポストペイ方式(QUICPay、iDなど)の仕訳

QUICPayやiDのように、利用した金額が後日、紐付けられたクレジットカードや銀行口座から引き落とされる方式をポストペイ方式と呼びます。こちらも処理は2段階に分けて考えます。

経費利用時の処理

店舗で支払いをした時点で経費は発生しますが、この時点ではまだ会社の口座からお金は支払われていません。そのため、後で支払う義務が発生したことを示す「未払金」という負債の勘定科目を使って記録します。

(例)QUICPayで事務用の消耗品3,000円を購入した

借方貸方
消耗品費 3,000円未払金 3,000円

口座引き落とし時の処理

後日、クレジットカード会社などから銀行口座の利用代金が引き落とされたら、「未払金」という負債(支払いの義務)が消滅したことになります。そこで、借方に「未払金」を計上して消し込む処理を行います。

(例)利用代金3,000円が普通預金口座から引き落とされた

借方貸方
未払金 3,000円普通預金 3,000円

特殊なケースの仕訳

個人用電子マネーで事業経費を支払った場合

個人事業主によくあるケースとして、プライベート用の電子マネーで事業の経費を立て替える場面が挙げられます。この場合、事業主個人が事業のためにお金を貸した(立て替えた)と考え、「事業主借」という勘定科目を使います。これにより、事業が事業主から一時的にお金を借りた、という会計記録になります。

(例)プライベート用のSuicaで事業の電車代500円を支払った

借方貸方
旅費交通費 500円事業主借 500円

ポイントを利用して支払った場合

ポイントで支払った分をどのように会計処理するかは、悩ましい問題の一つです。会計上は、主に二つの方法が認められており、どちらの方法を採用しても問題ありませんが、一度採用した方法は継続して適用することが重要です。

一つ目は「値引処理」です。これは、ポイント利用分を単純な「値引き」として扱い、実際に現金や電子マネーで支払った金額だけを経費として計上する、シンプルで分かりやすい方法です。

(例)2,000円の消耗品を、1,000ポイントと現金1,000円で支払った

借方貸方
消耗品費 1,000円現金 1,000円

二つ目は「両建処理」です。これは、ポイント利用を「雑収入」として認識する方法です。経費は本来の金額である2,000円で計上し、同時にポイント利用分の1,000円を収入があったものとして記録します。取引の実態をより正確に反映できるというメリットがあります。

(例)同上のケース

借方貸方
消耗品費 2,000円 現金 1,000円
雑収入 1,000円 

究極の効率化:会計ソフト連携で経理業務を自動化する

究極の効率化:会計ソフト連携で経理業務を自動化する

ここまで、電子マネーの利用明細の保存方法、関連する法律の要件、そして手作業での仕訳方法を解説してきました。しかし、正直なところ、これらすべての作業を手作業で完璧にこなすのは、大変な手間と時間を要します。取引の数が増えれば増えるほど、時間的コストは増大し、入力ミスなどのヒューマンエラーも発生しやすくなります。

ここで、経理業務のあり方を根本から変える強力な解決策が「クラウド会計ソフトとの連携」です。freeeやマネーフォワード クラウドといった現代の会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードだけでなく、多くの電子マネーサービスとも直接連携する機能を備えています。この連携機能を活用することで、これまで手作業で行っていた業務の大部分を自動化できます。

会計ソフト連携のメリット

取引データの自動取得

会計ソフトと電子マネーのアカウントを一度連携設定すると、その後は利用履歴が自動でソフト内に取り込まれます。もう、毎月ウェブサイトにログインして明細をダウンロードし、フォルダにリネームして保存するといった作業は不要になります。この機能だけでも、経理にかかる時間を劇的に削減することが可能です。

AIによる勘定科目の自動推測

ソフトに取り込まれた取引データに対し、搭載されたAIがその内容(支払先、金額、摘要など)を分析し、「この支払先なら旅費交通費でしょう」「この取引は消耗品費ですね」というように、適切な勘定科目を自動で推測してくれます。利用者はそれを確認し、承認ボタンをクリックするだけです。

使えば使うほどAIがあなたの支出パターンを学習し、推測の精度は向上していきます。

電子帳簿保存法への自動対応

API連携によって自動取得された取引データは、電子帳簿保存法が求める「真実性の確保」や「可視性の確保」といった複雑な要件を、システム側で満たすように設計されています。利用者は複雑な法律の要件を都度意識することなく、日々の取引を登録するだけで、法に準拠した形でデータを安全に保存できるのです。

ミスの削減と透明性の向上

手入力の作業がなくなることで、金額の打ち間違いや勘定科目の選択ミスといったヒューマンエラーを限りなくゼロに近づけることができます。正確な会計帳簿は、迅速で的確な経営判断を助けるだけでなく、なにより確定申告や将来の税務調査に対する不安を解消してくれます。

法改正によって経理業務の複雑さが増したことは、裏を返せば、テクノロジーを活用して業務を抜本的に効率化する絶好の機会とも言えます。クラウド会計ソフトの導入は、単なる経費削減のツールではなく、変化の激しい時代を乗り切るための戦略的なIT投資と位置づけることができるでしょう。

電子マネー経費精算に関するよくある質問(FAQ)

Q1: プライベート利用分と事業利用分が混在してしまった場合はどうすればよいですか?

A1: 最も望ましいのは事業専用の電子マネーを用意することですが、混在してしまった場合は、利用明細の中から事業に関連する支出のみを抽出し、それだけを経費として計上します。会計ソフトを使っている場合は、事業用の取引のみを登録し、プライベートな取引は「対象外」として処理する機能があります。

帳簿上は、事業主貸・事業主借の勘定科目を使って個人の資金とのやり取りを明確に記録します。

Q2: 電子マネーのチャージ上限額を超えてしまいそうな場合はどうすればよいですか?

A2: 高額な備品購入などでチャージ上限額を超える場合は、その支払いのみクレジットカードや銀行振込を利用するなど、複数の決済手段を使い分けるのが現実的です。また、ポストペイ型の電子マネー(QUICPay+など)や、クレジットカードと紐づけて利用限度額を柔軟に設定できるサービスを選ぶのも一つの解決策です。

Q3: 海外で電子マネーを利用した場合の経費精算はどうなりますか?

A3: 海外出張などで利用した場合も、事業に関連する支出であれば経費として計上できます。利用明細には通常、現地通貨での利用額と、換算レート、日本円での決済額が記載されていますので、日本円の金額を基に仕訳を行います。為替手数料などが別途かかる場合は、それも「支払手数料」などの勘定科目で経費計上します。

Q4: 従業員が立て替えた電子マネー決済はどのように精算すればよいですか?

A4: 従業員が個人の電子マネーで経費を立て替えた場合、まずは従業員に利用明細を提出してもらい、経費精算システムや申請書で経費申請をしてもらいます。経理担当者はその内容を確認し、承認した上で、従業員へ現金や給与振込などで立替分を支払います。

この際の仕訳は「旅費交通費 / 未払金(従業員)」→「未払金(従業員) / 現金預金」のようになります。

まとめ

電子マネーによる経費精算は、新しいルールの下では少し複雑に感じられるかもしれません。しかし、本記事で解説したポイントを押さえて正しく運用すれば、これほど効率的で便利な経理手法はありません。最後に、明日からすぐに実践できるアクションプランをまとめます。

基本原則の再確認

  • 経費の証明は、紙の領収書ではなく「利用明細データ」が主役です。
  • 電子データで受け取った明細は、必ず電子データのまま保存します(電子帳簿保存法)。
  • 消費税の仕入税額控除のため、レシートに「T」から始まる登録番号があるか確認する習慣をつけましょう(インボイス制度)。
  • 会計処理は、プリペイド式とポストペイ式の違いを意識して、正しい手順で行います。

明日から始めるためのToDoリスト

  1. まず、事業専用の電子マネー(またはクレジットカード)を一つ決めましょう。公私の利用を明確に分けることが、経理をシンプルにするための最も重要な第一歩です。
  2. 契約している電子マネーの公式サイトにログインし、月次の利用明細をPDFやCSV形式でダウンロードする手順を実際に確認し、実行してみましょう。
  3. パソコン内に、電子取引データを保存するための簡単なルールを作ります。例えば、「2025年」→「10月経費」のようなフォルダ分けと、「日付_支払先_金額.pdf」といったファイル名の統一ルールです。
  4. そして最も重要なアクションとして、主要なクラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード クラウドなど)の無料体験を試してみてください。API連携によるデータ自動取得が、あなたの経理業務をどれだけ楽にしてくれるかを、ぜひご自身で実感してください。

法律の変更は、一見すると面倒な業務が増えたように思えるかもしれません。しかし、これは国全体がデジタル化による生産性向上へと大きく舵を切った証拠でもあります。この変化の波を前向きに捉え、便利なデジタルツールを賢く活用することで、あなたは経理という煩雑な作業から解放され、事業をさらに成長させるための貴重な時間を手に入れることができるのです。

この記事の投稿者:

hasegawa

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