ペーパーレス化とは紙の書類を使わずに、電子的に業務を行うことを指します。本記事ではペーパーレス化のメリットや進め方などをわかりやすく解説します。ペーパーレス化の成功事例についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ペーパーレスとは?
ペーパーレスとは、その名の通り紙を使わずにビジネスを行うことを指します。作成した文書を紙に印刷することなく、電子データのまま活用します。また、紙で受領した書類はスキャンなどの方法で電子化して保存します。
契約書や申請書類・会議資料・カタログなど、業務の幅広い場面ですでに紙の書類が浸透しており、なかなかペーパーレス化が進まないという企業があるのも事実です。しかし、ペーパーレス化を通じた生産性の向上などを期待して、多くの企業が紙の書類を使った業務を削減しようと取り組んでいます。
ペーパーレス化の必要性
各企業がペーパーレス化を推進する必要性について「生産性の観点」と「環境上の観点」の2つから解説します。
生産性の観点における必要性
紙の書類をデジタル化することによって、生産性の向上やセキュリティの強化といった効果が期待できます。紙やインク、郵送に必要な切手や封筒にかかる費用を削減することもできるでしょう。
ペーパーレス化を行い、場所や物に縛られない環境を整えれば、自宅やサテライトオフィスなどで働くことも可能です。 また、電子的にデータを集計して分析することにより、情報を経営に活かしやすくなります。
環境上の観点における必要性
紙の原料には木材が使われているため、生産のために森林を伐採する必要があります。森林伐採によって、二酸化炭素を酸素に変える機会が失われ、地球温暖化に大きな影響を及ぼすものと考えられます。
さらに、紙を廃棄するときも二酸化炭素が出ることを考えると、紙が自然破壊に及ぼす影響は多大なものであると言えるでしょう。このような背景から、環境保護の観点からもペーパーレス化の推進が求められています。
ペーパーレス化に該当する書類
ビジネスではさまざまな場面で紙を使用しますが、どのような書類がペーパーレス化の対象として考えられるのでしょうか。本項では4つの書類を紹介します。
①ビジネス文書
ここでいうビジネス文書とは、以下をはじめとする書類を指します。
・業務で使う書類:企画書、報告書、プロジェクト管理表など
・勤怠に関する書類:休暇届など
・経理に関する書類:請求書、領収書など
・関係性構築のための書類:挨拶状、案内状など
②会議資料
以前は会議のために全員分の資料を印刷して配布することが一般的でした。しかし、現在は資料をデータで共有したり、議事録をデータで作成したりすることが当たり前となりつつあります。
また、WEB会議が普及することによって、会議に関連する作業を電子的に完結させることも増えています。このような会議は「ペーパーレス会議」と呼ばれ、専用のシステムも登場しています。
③パンフレット・カタログ
会社の商品やサービスを案内するためのパンフレット・カタログも、ペーパーレス化の対象に含まれます。パンフレットなどをデジタル化することで、営業を担当する社員はこれらを持ち運ぶ必要がなくなり、お客様への案内が効率的になるでしょう。また、価格の改定など、掲載する情報の更新や修正も簡単に行えます。
④チラシ・販促物
チラシやポスターといった販促物もペーパーレス化の対象になり得ます。パンフレットと同様に、社員が持ち運ぶ必要がなくなる他、後から訂正を加えたい時にも便利です。
ペーパーレス化の対象外となる書類
ペーパーレス化が注目を浴びているからと言って、全ての書類をペーパーレス化していいわけではありません。緊急時に閲覧する可能性の高い書類に関しては、端末の充電やネットワークの調子に影響されないよう、いつでも閲覧できるようにしておかなくてはいけません。業務でトラブルが発生した時や、災害が発生した時に閲覧するマニュアルなどがその例です。
また、免許証や許可証の類は、データではなく現物を持っていることに意味があります。例えば、車の運転をする時は自動車免許を携帯しておかなくてはいけないという決まりがあるため、ペーパーレス化の対象外です。
ペーパーレス化を進めるメリット
閲覧や検索がしやすい
書類を電子化して適切に保管することで、場所や利用する端末を問わず、いつでも書類を確認できます。
紙の書類を利用すると、探している書類がなかなか見当たらないということも少なくありません。整理して保管しようとしても、分類や整理の方法を決め、それを社員に周知して徹底してもらう必要があります。また、出先にいる社員やテレワーク中の社員が書類を確認したい場合に、わざわざ会社に戻ったり、社内にいる社員に確認してもらったりすることになり、時間を取られてしまいます。
書類をデータ化して、共有フォルダやクラウドサービスなどに保管しておけば、自分の好きなタイミングで書類を確認できます。タイトルや本文などで検索をかけられるため、書類を探す時間も削減されるでしょう。業務が効率化され、働きやすい環境が整います。
コスト削減になる
紙の書類を扱っている場合には、紙代やインク代はもちろん、プリンターの導入やメンテナンスに関する費用が発生します。請求書や納品書・契約書などを印刷して取引先に送付する際は、郵送代も発生するでしょう。
また、紙の書類を大量に保管する場合には、ダンボールやファイル、倉庫などにかかる費用も発生します。書類を廃棄する時には、専門の業者に依頼したり、シュレッターを使ったりしなくてはいけません。
ペーパーレス化を行えば、上記のコストを抑えられます。端末やスキャナー・共有フォルダは必要ですが、既存のものや無料のツールなどを使えば、導入時にかかる料金を抑えられるでしょう。ペーパーレス化によって書類の保管用に借りていたオフィスのスペースや倉庫が不要になれば、大幅なコスト削減にも期待できます。
共有や修正がしやすい
紙の書類の場合、資料を共有する際は回覧を回したり、社員の人数分印刷したりする必要がありました。また、修正する際は複数人で同時に作業を行うことができず、非効率です。せっかく作成した書類であっても、間違いを見つけた時には修正して印刷し直すなど、時間のロスが発生することもあるでしょう。
ペーパーレスにすることで、これらの問題が解消できます。書類のデータや保管場所を社員に共有するだけで、伝達がスムーズに済みます。情報やノウハウを広く共有することで、社員の育成にとっても良い影響を及ぼすかもしれません。
データを編集する必要が生じても、作業を容易に済ませられます。使うツールによっては複数人で同時に編集することもでき、 生産性の向上が期待できるでしょう。
紛失や情報漏えいのリスクを軽減できる
紙の書類は紛失しやすく、社内のどこに置いたかわからなくなったり、外出時に置き忘れてしまったりといった事態が発生する可能性があります。個人情報を記載している書類であれば、情報保護の観点から大きな問題になります。特に、大規模な情報漏えいが発生した場合には、企業イメージを損なうなどの悪影響を及ぼすでしょう。対策についても、施錠できるキャビネットや倉庫の利用など、アナログな方法で行うこととなります。
デジタル化した書類であれば、閲覧制限をして限られた社員しか見られないといった設定ができます。閲覧や編集などに関する記録である「ログ」を管理することで、改ざんや持ち出しといったリスクも抑えられるでしょう。また、もしフォルダ内で書類を見失ってしまっても、検索機能によって簡単に探し出すことが可能です。
環境保護に繋がる
紙の原料となる木を伐採することで、自然破壊につながると考えられています。このまま伐採が進むと、温暖化や野生動物の減少といった事態が加速することでしょう。また、森林が破壊されることでその地域に住んでいた動物が追い出されて、動物の持つウイルスが人間に感染することがあります。それにより、人間社会で感染症が拡大しやすくなることも危惧されています。
ペーパーレス化によって紙の消費量を抑制すれば、森林破壊による影響を抑制することに繋がります。近年叫ばれているSDGs(持続可能な開発目標)に取り組むことで、環境に配慮している企業であると認知され、企業イメージ向上も期待できるでしょう。
ペーパーレス化を進めるデメリット
書類が見にくい
紙の場合、書類を眺めて全体像を把握したり、複数の書類を並べて見比べたりといった作業が簡単です。しかし、デジタル化した書類は紙の書類と同じような感覚で扱うのが難しいことがあります。大きなディスプレイを用意するなどして、見やすさを確保することが求められます。
導入コストが高い
これまで紙で作成していた書類をデジタル化する場合には、スキャン作業などに膨大な手間がかかります。ペーパーレス化をすることで紙代などを削減できる可能性はありますが、導入時は人件費や機器代に多くのコストがかかる可能性があります。
故障のリスクがある
パソコンのタブレットといった機器が故障すれば、必要なタイミングで書類の閲覧や編集ができなくなってしまいます。1つの機器に依存しない体勢を整え、常にバックアップを取るなどの対策が必要です。
リテラシーが必要である
書類をペーパーレス化すると、パソコンの操作が苦手な社員はかえってやりづらさを感じることがあります。また、使用者のセキュリティ意識が不足していれば、情報漏えいなどのトラブルが発生することもあるでしょう。社員のリテラシー教育を行い、こうした事態に備える必要があります。
ペーパーレス化の推進に関する法律・制度
近年は、会計に関する書類を電子データとして保管することを認める「電子帳簿保存法」などの法律により、ペーパーレス化の流れが加速しています。
電子帳簿保存法は施行後に何度も改正されていますが、2022年の改正では、データとして受け取った書類はデータのまま保存しておかなくてはいけないという内容が盛り込まれました。取引先などからメールやメッセージで受け取った書類は、印刷せずにデータとして保管することが求められます。
参照:電子帳簿保存法が改正されました
関連リンク:タイムスタンプとは?仕組みや役割、必要性、利用方法などをわかりやすく解説
ペーパーレス化がなかなか進まない理由と現状
ペーパーレス化が進まないことに対する理由として、考えられるポイントを2つ紹介します。
紙を使った業務がルール化されている
社内のルールや業界における慣習、法律などによって紙の書類を使うことが定められているケースです。
しかし、これまでに説明した理由からペーパーレス化の重要性が認知されつつあり、書類をデジタル化しても法律的には問題ないということも多くあります。実際に、紙を使った手続きの多い行政サービスに関しても、ペーパーレス化が進む傾向にあります。
業務に変更が生じることによるストレスを感じる
長年にわたって紙を使った業務に取り組んできたため、改めてペーパーレス化することにストレスを感じる方もいます。経営層や役職者がペーパーレス化を推進したいと思っていても現場が消極的であるケースや、その逆のケースもあるでしょう。
ペーパーレス化で得られるメリットを共有して、なるべく抵抗感が出ないように進めていくことが大切です。また、IT技術を使うことに慣れていない社員に向けて、リテラシー教育を行ってもいいでしょう。
ペーパーレス化を自社で推進する流れ
ペーパーレス化を社内で推進する流れを、4ステップに分けて解説します。
目的を明確化し、プロジェクトを立ち上げる
まずは現状の課題を把握し、ペーパーレス化を行う目的を整理しましょう。ペーパーレス化そのものをゴールとするのではなく、ペーパーレス化によって達成したい状況をゴールとして設定するのがポイントです。具体的には、以下のような例が挙げられます。
・情報共有のスピードを向上させることによる効率化
・紛失や情報漏えいを防止することによるセキュリティ強化
・情報整理にかける時間の削減
・紙代や保管スペースの削減
また、ペーパーレス化は各部署を巻き込む全社的な取り組みとなるため、メンバーを選定してプロジェクトを立ち上げることが一般的です。
ペーパーレス化する書類を決める
全ての書類をやみくもにペーパーレス化するのではなく、ペーパーレス化する書類の基準を決めた上で取り組みます。参考として、ビジネスで使われることの多い書類を分類して紹介します。
<情報の蓄積や共有を目的とした書類>
・会議資料
・営業資料
・会計書類
・ヒヤリハット
・カタログ
・チラシ
<依頼を目的とした書類>
・稟議書
・申請書
・見積依頼書
・決裁書
業務で使用している書類をリストアップし、取り組みやすく、かつ業務に支障をきたす可能性の低いものから取り組むといいでしょう。
関係者に内容を共有する
各部署で実際の作業を行う社員にペーパーレス化の内容を共有します。これまでに決定した内容だけではなく、ペーパーレス化を行うメリットを共有することで、社員が納得してペーパーレス化に取り組むきっかけとなります。また、経営層の理解のもと、全社的に取り組んでいるプロジェクトであることを説明することも大切です。
計画的にペーパーレス化を進める
ペーパーレス化をスムーズに進めるために、計画的にプロジェクトを推進します。計画する上では、以下をはじめとするポイントを決定しましょう。
・KPIの設定
・プロジェクトの日程
・現場でペーパーレス化を推進する担当者
・進捗状況の把握方法
ペーパーレス化の効果を把握するためには、KPIを設定することが特に重要です。ペーパーレス化によって削減できた業務時間の割合や、対象となる書類のペーパーレス化に成功した割合など、具体的な数値をKPIとして設定することで、精度の高い計画を立てられるでしょう。
目的を達成するまでの状況が細かく把握でき、問題が起きた場合も早急に気付くことが可能です。また、KPIを設定することで、目的に対する意識が高まるメリットもあります。
はじめに設定した期間が終了した際は振り返りを行い、どの程度ペーパーレス化が進んだのか分析します。現場の感覚をつかむためにも、社員へのアンケートやヒアリングを行うことも大切です。
ペーパーレス化の推進に役立つツール
ペーパーレス化を推進するにあたっては、以下をはじめとするさまざまなツールが利用できます。
・文書管理システム
・OCR(光学的文字認識)
・クラウドストレージ
・電子契約システム
・電子帳票システム
文書管理システムは、書類の発行から管理まで一貫して行えることが一般的です。また、承認や権限管理といった機能を備えているものも多くあります。
OCRはOptical Character ReaderもしくはOptical Character Recognitionの略であり、日本語では「光学的文字認識」などと表します。スキャンやカメラ撮影によって、取り込んだ書類をPDFなどに変換することが可能です。
ペーパーレス化の成功事例
請求書の作成・管理システム「INVOY」を使って、ペーパーレス化に成功した事例を2点紹介します。
湖東フラワー様
観葉植物の栽培を行う湖東フラワー様は、INVOYの導入による請求書のペーパレス化に取り組みました。取引先とやり取りする機会が増える中でも、INVOYの利用によって請求書作成の負担が軽減され、作業スピードが向上したと言います。
参照:市場環境の変化に適応して請求管理サービスを使用し始めました。
株式会社ANDART様
アートの共同保有プラットフォームサービスを提供する株式会社ANDART様は、請求書を発行するにあたって、以前は他社の文書作成ソフトを利用していました。しかし、ファイル管理がしにくいと感じ、INVOYを導入いただきました。INVOYの導入後は、自分が送付した請求書がINVOY上に登録されることで、管理がしやすくなったと言います。
参照:請求書の作成・管理がとても楽になり、他のことに時間を割けるようになりました!
経理業務を楽にするならINVOYがおすすめ
経理業務は請求書や領収書といったさまざまな書類を使う必要があり、発行や管理に手間がかかります。この特性から、経理業務をペーパーレス化できず、効率的に業務に取り組めないという方も多いのではないでしょうか。
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まとめ
ペーパーレス化を行うことで、生産性の向上やコスト削減など、さまざまなメリットが期待できます。環境保護や企業イメージの観点からも、ペーパーレス化に取り組むことは意義のあることと言えるでしょう。
ペーパーレス化に取り組む際は、目的や計画を設定することが重要です。各種ツールの導入も検討しながら、ペーパーレス化に取り組んでいきましょう。
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