
不当な要求に「NO」と言うための法的知識。あなたのビジネスを守る一歩がここにあります。
不当な取引から解放され、正当な対価と敬意を得る未来へ。この記事を読めば、下請法という強力な法的根拠を武器に、取引先との力関係を対等に近づけ、あなたの技術やサービスが正しく評価される未来を手に入れることができます。
理不尽な値引きや支払遅延に悩む日々から脱却し、事業成長に集中できる環境を築きましょう。
この記事は、公正取引委員会の公表資料や実際の勧告事例に基づいています。机上の空論ではありません。大手出版社や自動車メーカーさえも指導を受けた具体的なケースを通じて、法律が実際にどのように機能し、中小企業を保護しているのかをリアルに解説します。
法律は難しくありません。ポイントさえ押さえれば、誰でも自社の権利を守れます。本記事では、専門用語を極力避け、チェックリストや具体的な相談手順を示すことで、あなたが明日から何をすべきかを明確にします。もしもの時も、無料で利用できる公的な相談窓口があるので安心です。
目次
そもそも下請法とは?あなたのビジネスを守る「盾」を理解する
下請法は、ビジネスの世界における力の不均衡を是正し、公正な取引環境を確保するための重要な法律です。特に、資本力や企業規模で劣る事業者が不利益を被らないように設計されています。
下請法の目的は弱い立場になりがちな事業者を守るための法律
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といいます。その名の通り、この法律の主な目的は、立場が優位な「親事業者」が、その力を利用して立場の弱い「下請事業者」に対して不公正な取引を強いることを防ぐ点にあります。
多くの取引では、発注側である親事業者が受注側の下請事業者よりも大きな交渉力を持つ傾向があります。この力関係の差が、一方的な代金の減額、支払いの遅延、不当な返品といった問題を引き起こす温床となりがちです。
下請法は、こうした問題を未然に防ぎ、中小零細企業や個人事業主といった下請事業者の利益を保護するための、いわばビジネスにおける「お守り」のような存在なのです。
登場人物の定義は「親事業者」と「下請事業者」
下請法を理解する上で、まず「親事業者」と「下請事業者」という2つの当事者の定義を正確に把握することが不可欠です。
親事業者とは、業務を委託する側の事業者です。一般的には、下請事業者よりも資本金が大きい企業が該当します。
一方、下請事業者とは、業務を受託する側の事業者です。一般的には、親事業者よりも資本金が小さい企業や個人事業主が該当します。
ただし、これらの定義は単なる企業規模の大小で決まるわけではありません。下請法が適用されるかどうかは、後述する「取引の内容」と「両社の資本金」という2つの明確な基準によって法的に判断されます。この基準を満たした場合にのみ、委託者は「親事業者」として下請法上の義務を負い、受託者は「下請事業者」として保護の対象となります。
この取引は下請法の対象?適用の範囲は
自社の取引が下請法の保護を受けられるかどうかを知ることは、権利を守るための第一歩です。下請法が適用されるか否かは、「取引の内容」と「取引当事者双方の資本金」という2つの条件によって機械的に決まります。
この両方の条件を満たして初めて、その取引は下請法の適用対象となります。どちらか一方でも満たさない場合は対象外となるため、ここは非常に重要な確認ポイントです。
4つの対象取引
下請法が対象とする取引は、大きく分けて以下の4種類です。
製造委託
物品の製造や加工を委託する取引です。例えば、自動車メーカーが部品メーカーに特定の部品の製造を委託するケースや、スーパーマーケットが自社のプライベートブランド商品の製造を食品加工業者に委託するケースがこれにあたります。
修理委託
物品の修理を委託する取引です。具体的には、自動車販売業者が顧客から請け負った自動車の修理作業を、専門の修理業者に委託する場合などが該当します。
情報成果物作成委託
プログラム、ウェブサイト、映像コンテンツ、デザインなど、形のない情報成果物の作成を委託する取引です。ソフトウェア会社が新作ゲームソフトの開発業務を別の開発会社に委託する場合や、広告代理店がクライアントから受注したテレビCMの制作を、専門の映像制作会社に委託するケースなどが考えられます。
役務提供委託
運送、ビルメンテナンス、情報処理、警備といったサービスの提供を委託する取引です。例えば、運送業者が請け負った貨物運送の一部を、他の運送業者に再委託するような場合が該当します。
なお、建設業者が請け負う建設工事は下請法の対象外です。この場合は、代わりに建設業法によって下請事業者が保護されることになります。
資本金による区分
取引の内容が上記4つのいずれかに該当しても、次に解説する資本金の条件を満たさなければ下請法は適用されません。この資本金区分は、取引内容によって基準が2つのパターンに分かれるため、特に注意が必要です。
多くの事業者がここで自社の取引が対象になるかどうかの判断に迷いがちです。法律の条文は複雑に見えるかもしれませんが、本質的には「どの種類の取引か」を特定し、それに対応する「資本金の組み合わせ」に当てはまるかを確認するだけです。
この判断を容易にするため、以下の早わかり判定表を用意しました。自社の取引がどのケースに該当するかを確認してみてください。
取引内容 | 親事業者の資本金 | 下請事業者の資本金(個人事業主含む) |
パターン1 ・製造委託 ・修理委託 ・情報成果物作成委託(プログラム作成) ・役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理) | 3億円超 | 3億円以下 |
1,000万円超 3億円以下 | 1,000万円以下 | |
パターン2 ・情報成果物作成委託(プログラム作成を除く) ・役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理を除く) | 5,000万円超 | 5,000万円以下 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 1,000万円以下 |
出典: 公正取引委員会ウェブサイトを基に作成
この表を使って、まず自社の取引が「パターン1」と「パターン2」のどちらに該当するかを確認します。次に、そのパターンの中で、親事業者と自社(下請事業者)の資本金が条件に合致するかを照らし合わせます。両方の条件を満たしていれば、その取引は下請法の適用対象です。
これって下請法違反?親事業者に禁止された11の行為
下請法の対象となる取引であることが確認できたら、次に知るべきは「何が違反行為にあたるのか」です。下請法は、親事業者がその優越的な地位を濫用することを防ぐため、具体的かつ明確に11項目の行為を禁止しています。もしあなたの取引先がこれから挙げる行為を一つでも行っている場合、それは下請法違反の可能性が極めて高いといえます。
11の禁止行為リストと具体例
以下に、禁止されている11の行為とその具体例を解説します。
受領拒否
下請事業者に何の責任もないにもかかわらず、発注した物品やサービスの受け取りを拒否する行為です。例えば、親事業者の社内事情で生産計画が変更になったことを理由に、すでに完成して納期通りに納品されようとしている部品の受け取りを拒むケースが挙げられます。
下請代金の支払遅延
納品物を受領した日(役務提供の場合はサービスが提供された日)から起算して60日以内に定められた支払期日までに、代金の全額を支払わない行為です。これは通称「60日ルール」とも呼ばれています。具体例としては、親事業者の社内検査に時間がかかったという理由で、物品の受領日から60日を超えて代金を支払う場合などが該当します。
下請代金の減額
下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注時に取り決めた代金を発注後に減額する行為です。「販売協力金」や「リベート」といった名目で、下請事業者との事前の合意なく一方的に代金から一定額を差し引くケースが見られます。過去には大手自動車会社が下請事業者36社に対し、総額30億円以上もの代金を不当に減額した事例も勧告されています。
不当な返品
下請事業者に責任がないにもかかわらず、一度受け取った物品を返品する行為です。市場での売れ行きが悪かったことを理由に、OEM(相手先ブランドによる生産)で製造を委託した商品を下請事業者に返品するような行為は、これに該当する可能性があります。
買いたたき
その物品やサービスに対して通常支払われる対価に比べて、著しく低い代金を一方的に定める行為です。昨今の原材料費やエネルギーコストが高騰している状況にもかかわらず、下請事業者と十分な価格交渉の場を設けずに、一方的に価格を据え置いたり、さらには引き下げたりする行為は問題となります。
購入・利用の強制
発注した物品の品質を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者が指定する製品、原材料、保険サービスなどを強制的に購入または利用させる行為です。今後の取引継続をちらつかせ、親事業者の自社製品や関連会社が提供する保険サービスへの加入を強要するようなケースが該当します。
報復措置
下請事業者が親事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に通報したことを理由として、その下請事業者に対して取引量を減らしたり、取引を停止したりといった不利益な取り扱いをする行為です。
有償支給原材料等の対価の早期決済
親事業者が有償で支給した原材料などの代金を、本来の下請代金の支払期日よりも早い時期に支払わせたり、下請代金から差し引いたり(相殺)する行為です。
割引困難な手形の交付
下請代金を現金ではなく手形で支払う場合に、手形の満期日(サイト)が長すぎて、下請事業者が金融機関で割り引いてもらうことが困難な手形を交付する行為です。一般的に、繊維業では90日、その他の業種では120日を超える手形がこれに該当するとされています。
不当な経済上の利益の提供要請
下請代金の支払いとは別に、自己のために金銭、サービス、その他の経済上の利益を不当に提供させる行為です。親事業者の決算対策への協力と称して協賛金を要求したり、自社イベントの費用の一部を下請事業者に負担させたりするケースが考えられます。
不当な給付内容の変更・やり直し
下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注後に無償で発注内容の変更を行ったり、納品後にやり直しをさせたりして、下請事業者の利益を不当に害する行為です。
当初の仕様書には記載されていなかった内容の修正作業を、追加の対価を支払うことなく無償で要求したり、発注を一方的に取り消し、その結果下請事業者がすでに仕入れた資材の費用などを負担させたりする行為が該当します。
公正な取引の姿、親事業者が果たすべき4つの義務

下請法は、前述の11の禁止行為を定めるだけでなく、親事業者が積極的に遵守すべき4つの義務も課しています。これらの義務がきちんと果たされている状態こそが、下請法が目指す公正で健全な取引の基本形です。下請事業者としては、これらの義務が守られているかどうかも、取引の健全性を測る重要な指標となります。
4つの義務
書面の交付義務(3条書面)
親事業者は、発注に際して、発注内容、納期、下請代金の額、支払期日といった法律で定められた事項をすべて記載した書面(通称「3条書面」)を、直ちに下請事業者に交付しなければなりません。口頭での発注や、後から書面を渡すといった行為は認められておらず、トラブルの大きな原因となります。
この書面交付義務は、単なる手続き上のルールではありません。公正取引委員会の調査によると、下請法違反の中で最も多いのが、この「発注書面の不交付・記載不備」です。
明確な書面が存在しない、あるいは内容が曖昧であることは、その後の「不当な給付内容の変更」や「下請代金の減額」といった、より深刻な違反行為を誘発する温床となります。つまり、発注時に適切な書面を交付してもらうことは、将来のトラブルを防ぐための最初の、そして最も重要な防衛線なのです。
支払期日を定める義務
親事業者は、下請事業者との合意のもと、納品物を受領した日(または役務が提供された日)から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払期日を定めなければなりません。
書類の作成・保存義務(5条書面)
親事業者は、下請取引に関する記録(給付を受領した日、下請代金の額、支払日など)を記載した書類(通称「5条書面」)を作成し、その取引が終了した日から2年間保存する義務があります。これは、取引の透明性を確保し、万が一の際に調査を可能にするための重要な義務です。
遅延利息の支払義務
万が一、親事業者が定められた支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、ペナルティとして遅延利息を支払う義務が生じます。この遅延利息は、物品を受領した日から60日を経過した日から、実際に支払いが行われる日までの日数に応じて、未払い金額に対し年率14.6%という高い利率で計算されます。
法律違反の末路、実際の勧告事例と厳しい罰則
下請法違反は、単なる当事者間のトラブルでは済みません。違反行為が発覚した場合、公正取引委員会による調査が入り、その結果によっては厳しい行政措置が取られます。特に悪質と判断された場合には企業名が公にされ、社会的な信用を大きく損なうという深刻な結末が待っています。
近年の具体的な違反事例
近年、公正取引委員会が勧告を行った事例には、時代の変化を反映した新しいタイプの違反行為も見られます。
金型の無償保管強要
製造業において、製品を作るための金型を下請事業者に貸与するケースは少なくありません。しかし、その金型を使う製品の発注が長期間ないにもかかわらず、下請事業者に対して無償でその金型を保管させ続ける行為が問題視されています。
これは、本来親事業者が負担すべき保管コストを下請事業者に転嫁するものであり、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当します。この問題は、大手企業がコスト削減圧力の中で、サプライチェーンの下流に位置する弱い立場のパートナーへ間接的なコスト負担を押し付けているという、より大きな構造的問題の表れともいえます。
一方的な単価引き下げ
原材料価格やエネルギーコストの上昇などを訴える下請事業者との十分な協議を経ずに、親事業者が一方的に発注単価を引き下げる「買いたたき」の事例は後を絶ちません。
不当な減額
「拡売費」「物流協力金」「発注手数料」といった様々な名目をつけ、下請事業者に責任がないにもかかわらず、下請代金から一方的に金額を差し引く「減額」の事例も頻繁に報告されています。
違反した場合のペナルティ
下請法に違反した親事業者には、以下のようなペナルティが科されます。
公正取引委員会による勧告・指導
違反行為が認められた場合、公正取引委員会は親事業者に対し、違反行為の取りやめや、下請事業者が被った不利益の原状回復(減額分の返還など)を求める「勧告」や「指導」を行います。
企業名と違反内容の公表
これが最も大きな制裁の一つです。公正取引委員会から「勧告」を受けると、その事実は企業名、違反内容の概要などと共に、公正取引委員会のウェブサイトで公表されます。一度公表されると、その情報は半永久的に残り、企業のブランドイメージや社会的信用に計り知れないダメージを与えます。
罰金
書面の交付義務(3条書面)や書類の作成・保存義務(5条書面)に違反した場合、または公正取引委員会の調査を拒否したり虚偽の報告をしたりした場合には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。この罰金額自体は、大企業にとっては軽微かもしれません。
しかし、下請法の本当の抑止力は、この罰金額ではなく、前述した「企業名の公表」による社会的な信用の失墜にあります。評判を重んじる日本のビジネス文化において、コンプライアンス違反企業というレッテルを貼られるリスクは、金銭的なペナルティよりもはるかに大きいのです。
勇気を出して行動へ、違反が疑われる場合の対処法
「この取引、もしかして下請法違反かもしれない」と感じたとしても、どう行動すればよいか分からず、泣き寝入りしてしまうケースは少なくありません。しかし、正しい手順を踏めば、状況を改善できる可能性は十分にあります。重要なのは、感情的にならず、冷静に、順序立てて行動することです。
ステップ1:証拠を集める
将来の交渉や法的な手続きを有利に進めるためには、客観的な証拠が何よりも重要です。「ひどい扱いを受けた」という感情的な訴えだけでは、残念ながら状況は動きません。
契約書、発注書、仕様書、覚書といった契約関連書類をはじめ、納品書、受領書、検収書、請求書などの取引の記録をできる限り具体的に、時系列で整理して集めましょう。
また、メールやビジネスチャットでのやり取りのスクリーンショットやデータ、不当な減額や支払遅延などを告げられた際の電話や会議の録音データも有効な証拠となり得ます。担当者との打ち合わせの内容は、日時、場所、相手の氏名・役職、発言内容を具体的に記載した議事録やメモとして残しておくことが重要です。
ステップ2:事実関係を整理し、通知する
集めた証拠をもとに、いつ、誰が、どのような行為を行い、それが下請法のどの禁止項目に該当する可能性があるのかを客観的に整理します。
もし可能であれば、弁護士などの専門家に相談の上、内容証明郵便などを利用して、違反の事実と是正を求める通知書を相手方に送付することも有効な手段となり得ます。これにより、こちらの真剣な姿勢を示すとともに、正式な記録を残すことができます。
報復を恐れないで
下請事業者が行動を起こす際に最も大きな障壁となるのが、「通報したら取引を切られるのではないか」という報復への恐怖です。多くの事業者は、目先の不利益を我慢してでも、継続的な取引を失うリスクを避けたいと考えるでしょう。
しかし、その心配は法律によって取り除かれています。下請法では、下請事業者が違反行為を公正取引委員会などに通報したことを理由として、親事業者が取引を停止したり、発注量を減らしたりといった不利益な取り扱いをすること(報復措置)を、明確に禁止しています。
つまり、あなたの正当な権利主張は、法律によってしっかりと守られているのです。この「報復措置の禁止」規定は、下請事業者が安心して声を上げるための重要なセーフティネットとなっています。
あなたは一人じゃない、無料で使える専門相談窓口
当事者同士での話し合いで問題が解決しない場合や、そもそも直接交渉することに不安を感じる場合は、公的な専門機関に助けを求めるのが賢明です。これらの相談窓口は、専門的な知見からアドバイスをくれるだけでなく、無料で利用でき、相談者の秘密も厳守されるため、安心して利用することができます。
まずは「下請かけこみ寺」へ
全国48都道府県に設置されている「下請かけこみ寺」は、中小企業の取引上の悩みに対応するために設けられた、最初の相談窓口として最適な場所です。
ここでは、企業間取引や下請法に詳しい専門の相談員や弁護士が、無料で相談に応じてくれます。相談内容はもちろん、相談したこと自体も秘密として扱われるため、取引先に知られる心配はありません。
また、匿名での相談も可能なので、まずは気軽に現状を話してみることから始められます。代金の未払いや減額、原材料費高騰に伴う価格交渉の悩み、不当な返品など、実際に多くの事業者が抱える様々な問題に対応した実績があります。
最終的には「公正取引委員会」へ
「下請かけこみ寺」での相談を経ても解決が難しい場合や、明らかに悪質な違反行為を通報したい場合は、下請法を所管する国の機関である「公正取引委員会」に相談・申告することになります。
公正取引委員会は、下請法違反の疑いがある事案について調査を行い、実際に違反が認められれば、親事業者に対して勧告などの行政措置を行う強力な権限を持っています。全国各地に地方事務所が設置されており、電話やオンラインでの相談も受け付けています。
相談窓口 | 特徴 | 連絡先 |
下請かけこみ寺 | 中小企業の取引全般の悩みに対応。匿名相談可。弁護士相談も無料。まずはここから相談するのがおすすめ。 | フリーダイヤル: 0120-418-618 (平日9:00-17:00) |
公正取引委員会 | 下請法違反の申告・調査を行う国の機関。具体的な違反行為の通報や、正式な調査を求める場合に利用。 | フリーダイヤル: 0120-060-110 (平日10:00-17:00) |
違反を防ぎ、信頼されるパートナーになるために

下請法違反は、下請事業者に不利益を与えるだけでなく、親事業者にとっても企業イメージの低下や法的なリスクを招くものです。意図せず違反してしまう「うっかり違反」を防ぎ、下請事業者との間で長期的で良好なパートナーシップを築くためには、社内体制の見直しとコンプライアンス意識の徹底が不可欠です。
下請法違反防止チェックリスト
自社の取引が下請法を遵守できているか、以下のチェックリストで定期的に確認することをお勧めします。
発注時
- □ 法律で定められた事項(納期、金額、支払期日など)を全て記載した発注書面(3条書面)を、発注後直ちに交付していますか?
- □ 電話や口頭だけで発注を済ませたり、内容が曖昧なまま発注したりしていませんか?
代金決定・支払時
- □ 下請代金を決定する際、一方的に金額を提示するのではなく、下請事業者と十分に協議を行っていますか?「買いたたき」になっていませんか?
- □ 納品物を受領した日から60日以内に支払期日を設定し、その期日を厳守していますか?
- □ 「協力金」「歩引き」「値引き」といった名目で、下請事業者に責任がないにもかかわらず、一方的に代金を減額していませんか?
- □ (事前の書面による合意がない場合)銀行の振込手数料を下請事業者に負担させていませんか?
取引全般
- □ 発注を担当する従業員は、下請法の基本的な知識を持っていますか?定期的な研修などを実施していますか?
- □ 社内で共有できる下請法に関するマニュアルや、取引の各段階で使えるチェックリストを整備していますか?
- □ 取引で使用する契約書や発注書のひな形は、弁護士など法律の専門家によるリーガルチェックを受けていますか?
- □ 定期的に内部監査を実施し、実際の下請取引が社内ルールや法律に則って適正に行われているかを確認する仕組みはありますか?
まとめ:正しい知識で自社を守り、公正な取引を築こう
本記事では、下請法違反の具体的な内容から、万が一の際の対処法、そして違反を未然に防ぐためのポイントまでを網羅的に解説しました。最後に、重要な点を改めて確認します。
要点再確認
下請法は、資本力の差などから生じる不公正な取引から、中小企業や個人事業主を守るための強力な法律です。自社の取引が、まず「取引内容」と「資本金」の条件から下請法の適用対象となるかを確認することが全ての始まりとなります。
親事業者には「支払遅延」「不当な減額」「買いたたき」など、法律で明確に禁止されている11の行為があります。これらの違反のサインを見逃さないことが重要です。
もし違反が疑われる場合は、一人で悩まず、契約書やメールなどの証拠を確保した上で、「下請かけこみ寺」といった無料の専門相談窓口を積極的に頼ってください。
下請法についての正しい知識を持つことは、理不尽な要求に対して毅然と「NO」と主張し、自社の技術やサービスの価値を正当に守るための不可欠な武器となります。この記事で得た知識を活用し、自信を持って日々の取引に臨み、あなたのビジネスを健全に、そしてさらに大きく成長させてください。
下請法が検収7日以内は本当?知らないと損する代金支払いの知識
取引先から「検収は7日以内に行う」と伝えられた際に、それが法律上の義務なのか疑問に思ったことはないで…