
領収書の書き方一つで、税務調査の不安から解放され、経費精算がスムーズに進む未来を想像したことはありますか。たった一枚の紙、あるいは一つのデータが、あなたの事業の信頼性を左右します。
この記事は、単なる領収書の書き方ガイドではありません。2023年10月から始まったインボイス制度、そして2024年1月から本格義務化された電子帳簿保存法という、日本の経理業務を根底から変える二大改正に完全対応しています。
この記事を読めば、あなたが発行する側であれ、受領する側であれ、「完璧な領収書」を作成・管理する具体的な手法がわかります。「法律が変わって、何が正しいのかわからない」。そんな不安を抱える経理担当者、個人事業主、そしてすべてのビジネスパーソンに寄り添います。
伝統的な5つの基本項目から、8%と10%が混在する複雑な処理、さらにはPDF領収書の法的な保存義務まで、誰もが今日から実践できるレベルで具体的に解説します。税務リスクをゼロにし、自信を持って業務を遂行するための一助となれば幸いです。
目次
領収書の基本 税務調査で認められるための必須記載項目
領収書は、ビジネスを行う上で最も基本的かつ重要な書類の一つです。その役割と法的な意味を正しく理解することが、適切な経理処理の第一歩となります。
領収書が持つ法的な力「証憑書類」とは
領収書は、単にお金を受け取ったことを示す紙片ではありません。法律上、それは「事業のために支出したこと」を証明する、極めて強力な「証憑(しょうひょう)書類」として機能します。証憑書類とは、取引の事実を証明する根拠となる書類全般を指します。
領収書が必要とされる理由は、大きく分けて二つあります。一つは、社内の経費精算プロセスにおいて、すでに支払った経費を二重に精算してしまうといったミスを防ぐためです。
もう一つの、そしてより重要な理由は、税務調査などの対外的な場面で、その支出が確かに事業に必要な経費であったことを証明するためです。
完璧な領収書に伝統的に必須の「5大項目」
インボイス制度が導入される以前から、法的に有効な領収書として認められるためには、伝統的に以下の5つの項目が正確に記載されている必要がありました。これらは、現在においても領収書の骨格を成す最低必要条件です。
取引日(発行日)
実際に金銭の授受が行われた日付を記載します。たとえ発行が数日後になったとしても、取引日自体を記載する必要があります。年の省略(例:「R6年」)は避け、西暦か和暦で正確に記載します。
宛名(受取人)
お金を支払った相手(買い手)の正式な名称です。ここを省略すると、税務上のリスクが生じる可能性があります。
金額
支払われた総額を明確に記載します。
但し書き(取引内容)
「何に対する支払いなのか」を具体的に示す、非常に重要な項目です。
発行者名
お金を受け取った側(売り手)の氏名または名称、住所、連絡先などを記載します。
金額の書き方 改ざんを防ぐ「¥」「,」「-」のルール
領収書の金額欄には、第三者による改ざんを防ぐことを目的とした、特有の記載ルールが存在します。
- 先頭 金額の数字の前に「¥」マーク、または漢数字の場合は「金」を付けます。
- 途中 3桁ごとに「,(コンマ)」を打ちます。
- 末尾 金額の数字の最後に「-(ハイフン)」、「※(米印)」、または漢数字の場合は「也」を付けます。
例えば、「¥123,450-」や「金拾弐萬参阡四百伍拾円也」のように記載します。これらの記号は、金額の前後(特に先頭や末尾)に数字を付け足して経費を水増しするといった不正行為を物理的に防止する役割を果たします。
宛名の書き方「上様」はなぜ危険か
日本の商習慣として、領収書の宛名に「上様(うえさま)」と記載することがあります。しかし、これは税務コンプライアンス上、非常に危険な行為です。
税務調査において、「上様」と記載された領収書は、「誰に宛てた領収書なのかがはっきりしない」とみなされ、経費としての妥当性を疑われる可能性があります。
ただし、法律上、例外が認められている業種も存在します。不特定多数の顧客に商品を販売する小売業、飲食店、タクシー業、駐車場業などは、宛名の記載を省略すること(結果として「上様」と記載すること)が認められています。
しかし、それ以外の一般的な企業間取引(B2B)においては、必ず相手の正式名称を記載・要求する習慣を徹底するべきです。会社員が経費精算する場合、宛名は「(正式な会社名) 御中」となります。個人事業主が事業用の経費として受け取る場合は、「(屋号) (個人名) 様」といった形が望ましいでしょう。
伝統的な5項目(宛名、日付、金額、但し書き、発行者)は、領収書が法的に有効であるための基本です。しかし、現代の税務コンプライアンスにおいて、これらはもはや「十分条件」ではありません。インボイス制度という新しいルールに対応するため、これらは「最低必要条件」に過ぎなくなったのです。
「但し書き」の極意 税務署に否認されないための具体例

領収書の中で、金額と並んで税務調査で厳しくチェックされる項目が「但し書き」です。ここが曖昧であると、事業の経費として認められないリスクが飛躍的に高まります。
なぜ「お品代」は危険なのか 使途不明金のリスク
「お品代として」「商品代として」といった但し書きは、絶対に避けるべきです。なぜなら、これでは「具体的に何を購入したのか」が全く不明確だからです。
支払いの内容が不明確な支出は、経理処理の段階で経費として計上しにくくなります。最悪の場合、税務調査官から「事業とは関係のない私的な支出ではないか」と疑われ、「使途不明金」とみなされるリスクがあります。使途不明金と判断された支出は、経費(損金)として認められず、結果として追徴課税の対象となる可能性があります。
さらに、意図的に事実と異なる但し書きを発行したり、あるいは未記入の領収書を受け取って自分で記入したりする行為は、私文書偽造という犯罪に問われる可能性すらある、重大なコンプライアンス違反です。
勘定科目別 経理が迷わない「但し書き」具体例一覧
但し書きの真の目的は、その領収書を受け取った経理担当者(あるいは未来の自分)が、その支出を会計上のどの「勘定科目(かんじょうかもく)」に分類すればよいかを、一目で判断できるようにすることです。
例えば、「コーヒー代」と書かれていれば「会議費」として処理できますが、「飲食代」とだけ書かれていると、それが「会議費」なのか「交際費」なのか判断に迷います。
以下に、経理担当者が迷わないための、勘定科目別の具体的な記載例を示します。
| 勘定科目 | 適切な記載例(OK) | 不適切な記載例(NG / リスク高) |
| 消耗品費 | ・事務用品代として ・文房具代として ・トナーカートリッジ代として | ・お品代 ・商品代 |
| 会議費 | ・会場使用料として ・お茶代として(A社様と打合せ) ・コーヒー代として | ・飲食代(会議か交際か不明) |
| 交際費 | ・飲食代として(B社様ご接待) ・菓子折代として(C社様手土産) ・御中元代として | ・お品代 ・飲食代(内容・相手が不明) |
| 旅費交通費 | ・宿泊代として(D出張) ・レンタカー代として ・〇〇駅~△△駅 電車代 | ・交通費(内訳不明) |
| 研修費 | ・セミナー参加費として(〇〇講座) ・書籍『△△』代として | ・書籍代(趣味の購入か事業用か不明) |
このように、但し書きは単なる「説明文」ではなく、会計処理の「分類タグ」への橋渡しとなる重要な情報です。この支出がどの勘定科目に分類されるべきかを意識し、「誰が読んでも誤解しない」具体的な記載を心がける必要があります。
インボイス制度完全対応 適格請求書としての領収書
2023年10月1日から、領収書の法的な役割は根本的に変わりました。インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始により、領収書は単なる「支払いの証明」から、「消費税の仕入税額控除の計算根拠」へと、その役割の重心を大きくシフトさせたのです。
なぜ領収書の書き方が変わったのか インボイス制度と仕入税額控除
インボイス制度の下では、買い手(受領者)が支払った消費税を、自社が納める消費税額から差し引くこと、すなわち「仕入税額控除(しいれぜいがくこうじょ)」を受けるために、原則として「適格請求書(インボイス)」の要件を満たした領収書や請求書を保存することが不可欠となりました。
つまり、発行者がインボイス対応の領収書を渡さなければ、受領者は仕入税額控除ができず、結果としてより多くの消費税を納める(=損をする)ことになります。これにより、領収書の発行者には、受領者の税務申告を手助けするための、より厳格な記載義務が課されることになりました。
新たに必須となった3項目 登録番号・適用税率・消費税額
インボイスとして認められる領収書を発行するためには、前述の伝統的な5項目に加えて、新たに以下の3項目を記載することが必須となりました。
適格請求書発行事業者の登録番号
税務署に登録申請して取得する「T」から始まる13桁の番号です。この番号が記載されていなければ、インボイスとは認められません。
適用税率
取引内容ごとに、消費税率が「8%」(軽減税率)なのか「10%」(標準税率)なのかを明記する必要があります。
税率ごとに区分した消費税額等
8%対象の取引にかかる消費税額と、10%対象の取引にかかる消費税額を、それぞれ分けて合計し、記載する必要があります。
「適格簡易請求書」とは レシートやタクシー領収書の正しい扱い
多くの事業者が日常的に受け取るレシートや、タクシーの領収書などは、厳密には「インボイス」そのものではなく、「適格簡易請求書(てきかくかんいせいきゅうしょ)」として扱われます。
これは、前述の小売業、飲食店、タクシー業、駐車場業など、不特定多数の消費者に商品やサービスを提供する業種(B2C)に限り、発行が認められている簡略版のインボイスです。
適格請求書(インボイス)との最大の記載内容の違いは以下の2点です。
- 買い手(受領者)の氏名または名称(つまり「宛名」)の記載が不要です。
- 「税率ごとに区分した消費税額」または「適用税率」の、どちらか一方の記載があれば足ります。
このため、スーパーのレシートや飲食店のレシートも、登録番号、日付、取引内容、税率ごとの合計額、消費税額または適用税率、発行者名が記載されていれば、仕入税額控除のための有効な証憑書類となります。
8%と10%が混在する場合の具体的な記載例
現代の消費税制では、軽減税率(8%:飲食料品など)と標準税率(10%:それ以外)が混在しています。もし一つの取引に8%と10%の商品が混在する場合、領収書やレシートには、その内訳を明確に区分して記載する義務があります。
これは、受領者が仕入税額控除を計算する際、税率ごとに正しく分類する必要があるためです。市販の領収書用紙も、複数税率に対応したフォーマットを選ぶ必要があります。以下に記載例を示します。
税抜ベースの記載例
8%対象(税抜) 3,000円
8%消費税 240円
10%対象(税抜) 500円
10%消費税 50円
税込ベースの記載例
税率8% 税込金額 3,240円 (うち消費税 240円)
税率10% 税込金額 550円 (うち消費税 50円)
このように、インボイス制度は領収書の記載項目を複雑化させましたが、それは受領者の正確な納税計算を支えるために不可欠な変更なのです。
収入印紙のルール 5万円の基準と節約方法
領収書を発行する際に注意すべきもう一つの法律が「印紙税法」です。一定金額以上の領収書には、「収入印紙」を貼付し、納税する義務があります。
収入印紙は「いくらから」必要か 5万円の壁
紙の領収書は、印紙税法上の「金銭又は有価証券の受取書」(第17号文書)に該当します。
現在の法律では、その領収書に記載された受取金額が5万円以上の場合、収入印紙を貼付する義務が発生します。
注意すべきは「5万円」という基準です。
- 49,999円以下 非課税(印紙は不要)
- 50,000円ちょうど 課税(200円の印紙が必要)
受取金額が5万円以上100万円以下の場合は200円、100万円超200万円以下の場合は400円と、金額に応じて必要な印紙税額が上がっていきます。
5万円の判定 税抜か税込か
実務上で最も判断に迷うのが、「5万円以上」を税抜金額で判定するのか、税込金額で判定するのか、という点です。
ルールは明確です。領収書に消費税額が明確に区分記載されている場合(例:「合計 53,900円(うち消費税 3,900円)」や「税抜金額 50,000円、消費税 5,000円」など)、税抜金額で5万円未満かどうかを判定します。
上記の例では、税抜金額は49,000円(53,900円 – 3,900円)または50,000円となるため、前者は非課税、後者は課税となります。
もし、消費税額が区分記載されておらず、「合計 53,900円(税込)」としか書かれていない場合は、税込金額である53,900円で判定するため、200円の印紙が必要となります。
収入印紙が不要になる2大節約術 クレジットカードと電子発行
この印紙税は、合法的に節約(回避)できる二つの大きな例外があります。
電子発行(PDF・メール)
印紙税は「課税文書」という「紙」の書類に課される税金です。したがって、領収書をPDFやメールなどの電子データで発行した場合、それは「課税文書」を作成したことにならず、印紙税法の対象外となります。たとえ受取金額が1,000万円であっても、収入印紙は一切不要です。
クレジットカード決済
お客様がクレジットカードで支払った場合、その場で発行する領収書(お客様控え)には、「クレジットカード利用」と明確に記載する必要があります。
このように記載されていれば、その時点では発行者(お店)は「金銭」を受け取っておらず、後日クレジットカード会社から代金を受け取る「債権」が発生したに過ぎないとみなされます。そのため、これは「金銭の受取書」には該当せず、収入印紙は不要となります。
正しい貼り方と「消印」の押し方
収入印紙が必要な場合、領収書に貼り付けただけでは納税したことにはなりません。貼付した収入印紙に、領収書の紙と印紙の彩紋(模様)にまたがるように「消印(けしいん)」を押す必要があります。
消印は、その収入印紙が使用済みであることを示し、再利用を防ぐためのものです。消印には、発行者の印鑑(会社の角印や、担当者の認印など)を使用します。もし印鑑がない場合でも、ボールペンなどで発行者の氏名や屋号を署名(サイン)することでも代用できます。
領収書トラブルの対処法 訂正・紛失・再発行
どれだけ注意していても、領収書の記載ミスや紛失といったトラブルは発生するものです。その際に、法的に正しく、かつ迅速に対処する方法を知っておくことが重要です。
書き間違えた場合の正しい訂正方法
領収書の金額や宛名を書き間違えてしまった場合、修正液や修正テープ、砂消しゴムなどを使用することは絶対に避けてください。これらは元の記載内容を隠蔽(いんぺい)するため、領収書自体の証拠能力が無効になってしまう可能性があるためです。
法的に有効な訂正方法は、まず間違った箇所(例:「50,000円」)に二重線を引くことから始まります。この際、元の文字が読めるように引くことが重要です。
次に、二重線を引いた部分の上、またはそのすぐ近くに、発行者の訂正印を押印します。この印鑑は、発行者欄に押す印鑑(角印や担当者印)と同じものを使うのが望ましいです。
最後に、上部や横などの空きスペースに、正しい内容(例:「40,000円」)を明確に記載します。
ただし、訂正箇所が多岐にわたる場合や、金額という最重要項目を訂正した場合は、税務調査などで疑義を持たれる可能性が残ります。可能であれば、訂正ではなく新しい領収書を再発行してもらうのが最も安全な方法です。
領収書を紛失した場合の代替手段
経費精算を行う受領者(会社員や個人事業主)にとって、領収書の紛失は大きな問題です。しかし、領収書がないからといって、即座に経費計上を諦める必要はありません。以下の代替手段が認められています。
レシート
前述の通り、インボイス制度対応のレシートは、領収書と全く同等、あるいはそれ以上の情報量を持つ強力な証憑書類です。領収書をもらい忘れたり、紛失したりしても、レシートがあれば経費精算は可能です。
出金伝票(しゅっきんでんぴょう)
領収書もレシートもない場合の最終手段が、「出金伝票」の作成です。これは、社内(または自分)で作成する「現金が出て行ったこと」を記録する伝票です。
出金伝票には、以下の5項目を正確に記載する必要があります。
- 取引日
- 支払先
- 勘定科目
- 摘要(支払いの目的)
- 取引金額
電車代やバス代、慶弔費など、そもそも領収書が発行されにくい支出の精算にも使われます。
その他の証拠(利用明細書など)
クレジットカードの利用明細書、銀行の振込明細書、電子マネーの利用履歴、あるいは結婚式の招待状(慶弔費の場合)など、支払いの事実を客観的に証明できる他の書類も、領収書の代替として有効です。
特にキャッシュレス決済の履歴は、紛失のリスクがないため、経費管理の観点からも推奨されます。
領収書の再発行は義務か 発行側が拒否できる理由
受領者が領収書を紛失した場合、「再発行してください」と依頼することがあります。しかし、発行者(お店や取引先)には、その依頼に応じる法的な義務はありません。
発行者が再発行を拒否する最大の理由は、不正利用のリスクです。もし、紛失したという領収書と、再発行した領収書の2枚が、意図的に経費として二重計上(水増し請求)された場合、発行者もその不正に加担したと疑われるリスクを負うことになります。
そのため、多くの企業は「領収書の再発行はいたしかねます」というルールを定めています。
2024年改正対応 電子領収書と電子帳簿保存法

領収書の扱いは、インボイス制度だけでなく、「電子帳簿保存法(でんしちょうぼほぞんほう)」、通称「電帳法」によっても劇的に変化しています。特に2024年1月からの変更は、すべての事業者に影響を及ぼします。
PDFの領収書は法的に有効か?
結論から言えば、メールの添付ファイルなどで送られてくるPDF形式の領収書は、法的に完全に有効です。
発行者と受領者の間で、電子データで授受することに同意がなされていれば、紙の領収書と全く同じ効力を持ちます。
発行者にとっては、PDFで領収書を発行することで、用紙代や印刷コスト、郵送コスト、そして前述した収入印紙代といった複数のコストを大幅に削減できるという、非常に大きなメリットがあります。
「電子取引」データの保存義務化 紙での保存は不可
現代の経理実務における最大のルール変更が、この「電子取引」データの保存義務化です。
2024年1月1日以降、法人・個人事業主を問わず、すべての事業者は、データで受け取った取引情報(=電子取引)を、データのまま保存することが法律で義務付けられました。
電子取引の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- メールに添付されたPDFの領収書や請求書
- Amazonや楽天などのECサイトからダウンロードする領収書データ
- EDI(電子データ交換)システムを通じた取引情報
ここで最も注意すべき点は、「受け取ったPDFの領収書を、印刷して紙だけで保存する」という従来の方法が、もはや法律違反(NG)となったことです。
この電子データの保存には、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できるようにしておく、といった検索要件を満たす必要があります。ただし、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などには、この検索要件が免除される緩和措置も設けられています。
「スキャナ保存」とは 紙の領収書を電子化するルール
電帳法には、義務である「電子取引」とは別に、「スキャナ保存」という任意(希望者のみ)のルールがあります。
これは、「紙」で受け取った領収書やレシートを、スキャナやスマートフォンのカメラで読み取り(撮影し)、電子データとして保存する制度です。
一定の要件(解像度200dpi以上、カラー画像など)を満たしてスキャナ保存を行えば、紙の領収書原本を廃棄することが法的に認められます。近年、タイムスタンプ要件が緩和されるなど、導入のハードルは下がっています。
「電子取引」(データでもらったものはデータのまま保存=義務)と、「スキャナ保存」(紙でもらったものをデータ化して保存=任意)は、似て非なるルールであり、明確に区別して理解する必要があります。
領収書の保管期間 法人と個人事業主の違い
領収書やレシート、出金伝票といった証憑書類は、法律で定められた期間、適切に保管する義務があります。この期間は、法人と個人事業主、さらに確定申告の種類によって異なります。
法人(会社)の場合
- 原則として7年間の保存義務があります。
- 例外として、その事業年度に赤字(繰越欠損金)が生じた場合は10年間保存する必要があります。これは、その赤字を将来の黒字と相殺するために必要な措置です。
個人事業主の場合
- 青色申告 原則として7年間の保存義務があります。
- 白色申告 5年間の保存義務があります。
ここで重要なのは「起算日(いつから数えるか)」です。この保管期間は、領収書の発行日からカウントするのではありません。その領収書が含まれる事業年度の、確定申告書の提出期限の翌日からカウントを開始します。
まとめ 完璧な領収書対応でビジネスを加速させる
本記事では、領収書の基本的な書き方から、インボイス制度、印紙税、電子帳簿保存法という複雑な法律要件までを網羅的に解説しました。最後に、完璧な領収書対応のために押さえるべき要点を再確認します。
領収書の基本「証憑書類」
領収書は「宛名、日付、金額、但し書き、発行者」の5項目が必須の法的な「証憑書類」です。
インボイス制度への対応
発行者は「登録番号」と「税率ごとの内訳」の記載が追加で必須となりました。受領者も、レシート(適格簡易請求書)を含め、これらの記載があるか確認する必要があります。
但し書きの具体性
「お品代」は税務リスクが高く厳禁です。経理担当者が「勘定科目」を判断できるよう、具体的に記載します。
収入印紙のルール
5万円以上(税抜判定あり)の紙の領収書に必要ですが、電子発行(PDF)またはクレジットカード決済であれば、金額に関わらず不要です。
電子帳簿保存法の義務
PDFなどデータで受領した領収書は、データのまま保存することが法律上の義務です。印刷して紙だけで保存する行為は認められません。
厳格な保管期間
領収書は、法人は原則7年(赤字の場合は10年)、個人事業主は5年(青色申告は7年)の厳格な保管義務があります。
領収書に関するコンプライアンス(法令遵守)は、もはや「守り」の経理コストではありません。
インボイス制度と電子帳簿保存法という二大改正の波を好機と捉え、領収書の発行・受領を電子化し、決済をキャッシュレスに移行することは、印紙代や管理コストを削減するだけでなく、税務リスクを根本から排除する「攻め」の経営戦略と言えるでしょう。



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