
クレーム対応における適切な言葉選び一つで、激怒していたお客様が生涯のファンに変わることがあります。逆に、たった一言の間違いがSNSでの炎上や企業の信用失墜を招くこともあります。この極意を知っているだけで、あなたは組織を守り、自分自身の評価を大きく高めることができるでしょう。
この記事を読み終える頃には、あなたはどんな剣幕で迫るお客様に対しても、冷静かつプロフェッショナルに対応できる自信を手にしています。恐怖心はなくなり、「話してくれてありがとう」と言われる未来が待っています。
クレーム対応は決して怖いものではありません。正しい型と例文さえ頭に入っていれば、誰にでも再現可能です。今日から使える具体的な例文と、その裏にある心理テクニックを余すことなくお伝えします。不安な気持ちに寄り添いながら、現場ですぐに役立つ実践的なノウハウを解説していきましょう。
目次
クレーム対応の鉄則|相手の心理を読み解く
クレーム対応において最も重要なのは、小手先のテクニックではなく「相手がなぜ怒っているのか」という心理状態を深く理解することです。例文を使う前に、この土台がなければ、どんなに丁寧な言葉も相手の心には響きません。まずは、怒りの裏側にある顧客心理を紐解いていきましょう。
顧客が本当に求めている「3つの心理」とは
お客様がわざわざ時間と労力を割いてクレームを言ってくる背景には、解消したい強い感情があります。これを無視して事務的な対応をすると、火に油を注ぐ結果になります。主な心理は以下の3つです。
1. 困っている状況を理解してほしい(共感欲求)
お客様は、商品が壊れたりサービスが悪かったりしたことで「困っている」「悲しい」「恥をかいた」というマイナスの感情を抱いています。「私の大変さを分かってほしい」という気持ちが根底にあります。まずはこの感情に寄り添うことがスタートラインです。
2. 自分の言い分を正しく聞いてほしい(承認欲求)
「自分は間違っていない」「正当な主張をしている」と認めてもらいたい心理です。いきなり反論や言い訳をされると、自分自身を否定されたと感じて怒りが増幅します。まずは相手の存在と言い分を肯定することから始めます。
3. 問題をすぐに解決してほしい(解決欲求)
感情を受け止めてもらった上で、具体的な解決策や補償、あるいは再発防止策を求めています。ただし、1と2のプロセスを飛ばして解決策だけを提示しても、「事務的だ」「誠意がない」と受け取られることが多いため注意が必要です。
初期対応がすべてを決める「最初の3分」の法則
クレーム対応の成否は、最初の3分間で決まると言われています。この短い時間で信頼関係を築けるかどうかが鍵です。
最初の段階では、事実関係の調査よりも「感情の鎮静化」を最優先にします。お客様は興奮状態にあります。この状態で論理的な説明をしても、耳に入りません。まずはお客様の怒りのエネルギーを出し切ってもらうことに注力します。
具体的には、こちらの話す割合を2割、相手の話を聞く割合を8割に設定します。徹底的に聞き役に回り、相づちを打ち、メモを取りながら相手の言葉を遮らないことが鉄則です。相手が「十分に話した」と感じて一息ついた瞬間こそが、こちらのペースに持ち込むチャンスとなります。
初期対応で目指すべきゴールは、問題の完全解決ではありません。「この担当者なら話を聞いてくれそうだ」という聞く姿勢への信頼を勝ち取ることです。この信頼さえあれば、その後の事実確認や交渉が驚くほどスムーズに進みます。
【電話対応】怒りを感謝に変えるプロセスと例文
電話対応は、声のトーンや間(ま)が重要になるだけでなく、即興での対応力が求められる難易度の高いチャネルです。ここでは、電話対応の流れに沿って、そのまま使える例文を紹介します。
第一声の「限定的謝罪」とお詫びのフレーズ
電話を受けた直後、相手が怒っていることが分かった場合、事実確認もできていない段階で「全面的な謝罪(こちらの非を認めること)」をするのはリスクがあります。しかし、謝らないと相手の怒りは収まりません。
そこで有効なのが**「限定的謝罪」**です。これは「(事実関係はまだ分からないが)お客様に不快な思いをさせたこと」「手間を取らせたこと」に対してのみ謝罪する方法です。
基本のお詫びフレーズ:
- 「この度は、私どもの不手際によりご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。」
- 「大変ご迷惑をおかけしております。心よりお詫び申し上げます。」
状況が不明な場合のフレーズ:
- 「せっかくお電話をいただきましたのに、ご不便をおかけし申し訳ございません。」
- 「お忙しい中、貴重なお時間を割いてご連絡いただき、ありがとうございます。」
「申し訳ございません」の一点張りではなく、「ご連絡ありがとうございます」と感謝を伝えることで、相手の「文句を言っている」という罪悪感を薄め、建設的な話し合いの土台を作ることができます。
相手の話を聞き出す「傾聴」の相づち例文
相手が怒りの事情を話し始めたら、決して遮ってはいけません。適切な相づちを入れることで「あなたの話を真剣に聞いています」というシグナルを送ります。
基本の相づち
- 「さようでございますか。」
- 「はい、おっしゃる通りでございます。」
- 「それは大変なご迷惑をおかけいたしました。」
共感を示す相づち(マジックフレーズ)
- 「私でも、その状況でしたら同じように感じると思います。」
- 「○○様のお怒りはごもっともでございます。」
- 「そのようなことがあったとは、大変驚いております。」
詳細を聞き出すためのクッション言葉
- 「恐れ入りますが、もう少し詳しくお聞かせ願えますでしょうか。」
- 「差し支えなければ、その時の状況を具体的にお教えいただけますでしょうか。」
声のトーンは、相手が高い場合は低めに、相手が早口の場合はゆっくりと話す「ペーシング」の技術を使います。相手の感情に巻き込まれず、落ち着いた対応を演出することが重要です。
事実確認と代替案提示の切り出し方
相手が話し終え、少し落ち着いたタイミングを見計らって事実確認に移ります。尋問口調にならないよう、クッション言葉を挟むのがコツです。
事実確認のフレーズ
- 「念のための確認でございますが、お手元の商品番号をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
- 「解決に向けて正確に状況を把握したく存じますので、いくつかご質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
- 「私の認識に間違いがあってはいけませんので、復唱させていただきます。」
事実確認の結果、こちらに非がある場合の解決策提示は、相手に選択肢を与える形式が望ましい場合があります。
解決策・代替案の提示
- 「すぐに新しい商品をお送りいたしますが、いかがなさいましょうか。」
- 「今回の件につきましては、全額返金にて対応させていただきたく存じますが、ご意向はいかがでしょうか。」
- 「交換または返金、どちらかご都合の良い方をお選びいただけますでしょうか。」
「〜してあげます」というニュアンスは禁物です。「〜させていただきたい」という謙譲表現を使い、決定権はお客様にあるという姿勢を示します。
電話を切る際の後味を良くするクロージング
対応の最後、電話を切る瞬間が「クレーム処理」を「顧客満足」に変える最後のチャンスです。
クロージングのフレーズ
- 「本日は貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。社内で共有し、再発防止に努めます。」
- 「また何かお気づきの点がございましたら、私、○○まで直接ご連絡くださいませ。」
- 「寒暖差の激しい折、どうぞご自愛くださいませ。」(気遣いの言葉)
最後に相手の体調を気遣う言葉や、名乗りを改めて行うことで、「一人の人間として向き合ってくれた」という印象を残すことができます。
【メール対応】そのまま使える謝罪・対応テンプレート

メールでのクレーム対応は、記録に残るため、より慎重な言葉選びが必要です。一方で、電話と違い推敲する時間があるため、完成度の高いテンプレートを持っておくことが強力な武器になります。
お詫びメールの基本構成(件名から結びまで)
メールの構成は以下の順序で組み立てます。
- 件名: 一目でお詫びと分かる内容にする。
- 宛名: 会社名、部署名、お名前(フルネーム)。
- 導入: お詫びの言葉(結論ファースト)。
- 経緯・原因: なぜその問題が起きたのか簡潔に。
- 対応策: 具体的な解決方法や補償内容。
- 再発防止策: 今後どうするのか。
- 結び: 重ねてのお詫び。
件名の例
- 「【重要】商品○○の不備に関するお詫びと対応につきまして」
- 「【お詫び】配送遅延に関するご報告」
商品不良・欠品に関する謝罪メール例文
件名:ご注文商品「○○」の不良に関するお詫びと交換対応について
○○様
平素は当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。
担当の△△でございます。
この度は、お届けいたしました商品「○○」に不備がございましたこと、深くお詫び申し上げます。
楽しみにお待ちいただいていたところ、多大なるご迷惑とご不快な思いをおかけし、誠に申し訳ございません。
お客様からいただきました情報を元に確認いたしましたところ、出荷前の検品作業における確認漏れが原因であることが判明いたしました。管理体制の不備を痛感しており、弁解の余地もございません。
つきましては、至急、良品を再送させていただきたく存じます。
本日、最短指定にて発送の手配をいたしました。
■再送商品:○○
■お届け予定日:○月○日(○曜日)
■お問い合わせ番号:1234-5678-9012(ヤマト運輸)
なお、お手元の不備のありました商品につきましては、大変お手数をおかけしますが、同封の着払い伝票にてご返送いただけますでしょうか。
(※または「ご返送は不要でございます。お手数ですが破棄をお願いいたします」など)
今後は二度とこのようなことがないよう、検品体制の見直しとスタッフ教育を徹底してまいる所存です。
略儀ではございますが、まずはメールにて、お詫びとご連絡を申し上げます。
接客態度・言葉遣いへの指摘に対する謝罪例文
件名:当店のスタッフによる接客態度のお詫び
○○様
平素より格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
株式会社○○、店長の△△でございます。
この度は、当店スタッフの接客態度により、○○様に大変ご不快な思いをさせてしまいましたこと、心より深くお詫び申し上げます。
ご指摘いただきました内容を本人および該当時間帯のスタッフに確認いたしましたところ、お客様のお気持ちに寄り添わない、配慮に欠けた言動があった事実を確認いたしました。
日頃よりお客様への感謝と丁寧な接客を指導している立場として、監督不行き届きであり、恥ずかしい限りでございます。
当該スタッフに対しましては、厳重注意を行うとともに、改めて接遇マナーの再教育を実施いたしました。また、店舗全体でも朝礼等の時間を用い、全スタッフへ意識改善の徹底を図ってまいります。
本来であれば直接お伺いしてお詫びすべきところではございますが、まずはメールにて非礼をお詫び申し上げます。
この度は、貴重なご意見を賜り、誠にありがとうございました。
勝手なお願いではございますが、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。
返信が遅れた場合の謝罪例文
件名:お問い合わせへの回答遅れに関するお詫び
○○様
いつも大変お世話になっております。
株式会社○○の△△でございます。
この度は、お問い合わせへの返信が大変遅くなりましたこと、深くお詫び申し上げます。
○月○日にメールをいただいておりながら、私の確認不足により、本日までのご連絡となってしまいました。
○○様をお待たせし、ご不安な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。
お問い合わせいただきました件につきまして、以下の通り回答させていただきます。
(回答内容を記載)
今後は、お問い合わせに対する確認体制を強化し、迅速な対応を徹底してまいります。
この度は、私どもの不手際によりご迷惑をおかけしましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
お客様の勘違いだった場合のやんわりとした指摘例文
お客様の操作ミスや勘違いである場合、「お客様の間違いです」とストレートに伝えてはいけません。「分かりにくい説明だったこちらが悪い」というスタンスで伝えます。
例文:
「私の説明が不十分で、○○様に誤解を与えてしまい申し訳ございません。
改めて確認いたしましたところ、本商品につきましては○○という仕様になっております。
恐れ入りますが、一度××の操作をお試しいただけますでしょうか。
説明書の記載につきましても、分かりにくい点がございましたこと、お詫び申し上げます。
もし上記操作でも改善しない場合は、再度詳しく調査いたしますので、ご遠慮なくお申し付けください。」
火に油を注ぐ「NGワード」と正しい言い換え

どんなに丁寧に対応していても、たった一つの単語が引き金(トリガー)となって、相手が激昂することがあります。ここでは絶対に避けるべきNGワードと、安全な言い換え表現を学びます。
無意識に使ってしまう「D言葉」の禁止
「D言葉」とは、「でも」「だって」「ですが」「どうせ」といった、言い訳や反論のニュアンスを持つ言葉です。これらは相手の話を否定する接続詞として機能するため、絶対に使ってはいけません。
- NG: 「ですが、それは当社の規定で決まっておりまして…」
- OK: 「おっしゃる通りでございます。ただ、誠に心苦しいのですが、当社の規定により…」
- NG: 「だって、そのようにお伝えしましたよね?」
- OK: 「私の説明不足で申し訳ございません。再度ご説明させていただきますと…」
否定の接続詞を使いたくなったら、まずは「肯定(YES)」で受け止め、その後に「しかし(BUT)」ではなく、「状況説明」として話を繋げる「YES-AND法」を意識します。
上から目線に聞こえる危険なクッション言葉
丁寧語のつもりでも、相手にとっては慇懃無礼(丁寧すぎて失礼)に聞こえたり、上から目線に感じられたりする言葉があります。
- 「参考までに」
- NG理由: 自分の知識をひけらかしているように聞こえる場合がある。
- 言い換え: 「一つご提案させていただくなら」「よろしければ」
- 「なるほど」
- NG理由: 評価を下しているような印象を与える。目上の人やお客様には不適切。
- 言い換え: 「左様でございますか」「おっしゃる通りです」
- 「普通は〜です」「基本的には〜です」
- NG理由: 「あなたは普通ではない(異常だ)」と暗に批判しているように聞こえる。
- 言い換え: 「弊社の通例といたしましては」「多くの場合、○○という対応をさせていただいておりますが」
責任逃れに聞こえるフレーズの改善案
「担当者が不在でして」
お客様には関係のない内部事情です。「不在のため、私が責任を持って承ります」または「戻り次第、至急ご連絡させます」と対応策を伝えます。
「確認します」の連発
とりあえず逃げている印象を与えます。「○○について確認いたしますので、2分ほどお待ちいただけますでしょうか」と、何を確認するのか、どれくらい待つのかを具体的に伝えます。
特殊ケース・理不尽な要求への対応例文
正当なクレームではなく、悪質な要求や過度な負担を強いる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に対しては、お客様扱いではなく「毅然とした対応」が必要になります。
金銭や過度な補償を要求された時の断り方
商品の代金以上の金銭要求や、精神的苦痛に対する慰謝料などを請求された場合、現場判断で約束してはいけません。
例文:
- 「誠に恐れ入りますが、商品代金以外のご要求につきましては、私どもの規定により応じかねます。」
- 「お気持ちは重々承知しておりますが、金銭での解決はいたしかねます。あくまで商品の交換、または返品での対応とさせていただいております。」
「できない」とはっきり伝えることが重要です。曖昧な返答は相手に期待を持たせ、交渉を長引かせる原因になります。
「上を出せ・社長を出せ」と言われた時の対応
すぐに上司に代わると、「ゴネれば偉い人が出てくる」と学習されてしまいます。まずは一次対応者として粘り強く対応します。
例文:
- 「あいにく責任者は席を外しております。私が責任を持って上司に報告し、当社の総意として対応させていただきます。」
- 「社長の○○に代わりましても、ご回答内容は変わりません。担当である私からご説明申し上げます。」
もし上司に代わる場合も、電話を保留にする前に事情を全て共有し、上司が電話に出た第一声で「事情は全て聞いております」と伝える連携が必要です。
長時間の拘束・暴言への毅然とした対応
何時間も電話を切らせない、大声を出す、人格否定をするなどの行為があった場合は、対応を打ち切る警告を行います。
例文:
- 「そのような大声でお話しされますと、正確な聞き取りができず、適切な対応ができかねます。冷静にお話しいただけますでしょうか。」
- 「これ以上、同様のお話を繰り返されるようでしたら、誠に遺憾ながらお電話を切らせていただきます。」
- 「私個人の人格を否定するようなご発言につきましては、看過できません。これ以上の対応はいたしかねます。」
組織として「ここまで言われたら電話を切る」という基準(ガイドライン)を設けておくことが、スタッフのメンタルを守るために不可欠です。
まとめ
クレーム対応は、誰もが避けたいと思う業務の一つです。しかし、ここまで紹介してきた「相手の心理理解」と「適切な例文」という武器を持っていれば、必要以上に恐れることはありません。
重要ポイントの再確認
- 初期対応: まずは相手の感情に寄り添い、怒りを吐き出させる。「限定的謝罪」と「傾聴」で信頼を作る。
- 言葉選び: 「D言葉」などのNGワードを避け、肯定的な言葉で会話を組み立てる。
- 線引き: 正当なクレームには誠心誠意対応し、理不尽な要求には毅然と断る。
クレームはお客様からの「期待の裏返し」でもあります。あなたの誠実な対応が、その期待に応え、信頼という資産を築く第一歩になります。
今日、もしクレームの電話が鳴ったら、深呼吸をして、この記事の例文を思い出してください。「ピンチはチャンス」。冷静なあなたなら、きっと素晴らしい対応ができるはずです。



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