建設業の基礎知識

免税事業者は消費税を請求しないのが正解?損をしないための新常識と価格交渉術

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これからの事業をより安定させ、手元に残る利益を確実に増やしていく。そんな未来を手にするためには、消費税という仕組みを正しく味方につけることが欠かせません。免税事業者のままでも、適切な価格設定の方法を身につければ、取引先との良好な関係を保ちながら、自分の報酬を最大化させることができます。

この記事を読み終えるころには、多くの個人事業主が抱く「消費税を請求するのは後ろめたい」という不安が消え去っています。具体的にどのように請求書を書き、どのような言葉で取引先と対話すればよいのか、その正解がはっきりと見えるようになります。実務でそのまま使える知識を得ることで、迷いのない事業運営が可能になるはずです。

税金や法律の話は難しく感じられるかもしれませんが、安心してください。一つひとつの要素を丁寧に解きほぐしていくことで、誰にでも実践できる再現性の高い方法としてお伝えします。読者の皆さんが抱える現状への不安に寄り添い、今日からすぐに取り組めるステップを提示します。あなたの努力が正当な報酬として報われるための準備を、ここから一緒に始めていきましょう。

免税事業者が消費税を請求しても問題ない理由

多くの免税事業者が、請求書を作成する際に「消費税」という項目を設けるべきかどうかで悩みます。中には「自分は国に消費税を納めていないのだから、相手から受け取るのは不当ではないか」と考える人もいます。

しかし、結論から言えば、免税事業者が消費税相当額を請求することは、法的に全く問題がありません。むしろ、事業を継続するための健全なコスト回収として必要な行為です。

消費税の仕組みと「益税」という言葉の誤解

まず理解しておきたいのは、消費税は「預かり金」ではないという点です。かつては、消費者が支払った消費税を事業者が一時的に預かり、それを国に納めるというイメージが強く持たれていました。

しかし、過去の裁判例においても、消費税は対価の一部であり、事業者が預かっているものではないという判断が示されています。つまり、あなたが請求する金額の中に消費税相当額が含まれていたとしても、それは「商品の価値」の一部なのです。

「益税」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、免税事業者が受け取った消費税分を納付せずに自分の利益にすることを指して、批判的に使われることが多い言葉です。しかし、この言葉自体が制度の誤解に基づいています。

免税事業者の制度は、小規模な事業者の事務負担や納税負担を軽減するために、国が正式に認めている仕組みです。ルールに則って免税の恩恵を受けることは、決して「不当な利益」を得ているわけではありません。

むしろ、免税事業者は多くの場面で消費税を「支払う側」になっています。パソコンを買うとき、文房具を買うとき、電気代を支払うとき、あなたは常に消費税を支払っています。これらの支払った消費税は、どこからも還付されません。

あなたが請求する金額に消費税相当額を乗せないということは、自分が支払った消費税分をすべて自腹で負担することを意味します。これでは、事業を続ければ続けるほど、本来得られるはずの利益が削られていってしまいます。

消費税を請求しないという決断をする前に、この「対価の一部」という考え方をしっかり持ってほしいと思います。あなたの技術、あなたの時間、あなたが提供するサービスには、それに見合った価値があります。

その価値の中に、事業を運営するためのコストとして消費税分が含まれるのは、ビジネスとして極めて自然なことです。自信を持って、自分の仕事の対価を定義することから始めましょう。

自分の経費にも消費税がかかっている現実

個人事業主やフリーランスとして活動していると、売上ばかりに目が行きがちですが、経費の面を直視することも大切です。

例えば、ライターであれば資料代や取材のための交通費、デザイナーであればソフトのサブスクリプション代や高機能な機材、エンジニアであればサーバー代や通信費など、あらゆる経費に消費税がかかっています。これらの経費は、あなたが事業を行うために不可欠な投資です。

もしあなたが消費税を請求しないと決めた場合、これらの経費に含まれる消費税分は、すべてあなたの純利益から差し引かれることになります。売上の10パーセントを請求しないという判断は、単に「10パーセント安く売る」以上の打撃を経営に与えます。利益率が低い事業であればあるほど、消費税分の請求漏れは致命的な赤字を招く原因となりかねません。

例えば、10万円の案件を受注したとします。このとき、消費税10パーセントを請求すれば、手元には11万円が入ります。しかし、請求しない場合は10万円のままです。一方で、この案件のために3万円の経費(税込)を使ったとしましょう。

請求した場合は「11万円マイナス3万円」で8万円の利益ですが、請求しない場合は「10万円マイナス3万円」で7万円の利益になります。この1万円の差は、あなたの生活や次の仕事への投資に直結する大きな金額です。

免税事業者だからといって、世の中の消費税という仕組みから完全に切り離されているわけではありません。支払うときはしっかり支払っているのですから、受け取るときも相応の金額を求めるのはフェアな取引です。

自分を安売りすることは、自分自身を苦しめるだけでなく、あなたの仕事の質を維持することを難しくさせます。適切な経費回収を行うという意識を持つことが、プロフェッショナルとしての第一歩になります。

インボイス制度が請求実務に与える本当の影響

2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、免税事業者の請求業務に大きな変化をもたらしました。これまでと同じように請求書を作成していても、相手方との間で認識のズレが生じる可能性が出てきたからです。ここでは、制度の仕組みを正しく理解し、どのような影響があるのかを冷静に分析していきます。

取引先が負担するコストの正体

インボイス制度において、免税事業者が発行する請求書は「適格請求書」にはなりません。これが取引先にどのような影響を与えるかというと、取引先が納める消費税の計算において、「仕入税額控除」が受けられなくなるという点に集約されます。簡単に言えば、取引先があなたに支払った消費税分を、自社の納税額から差し引くことができなくなるのです。

例えば、あなたが11,000円(税込)で仕事を受けたとします。これまでは、取引先はその中の1,000円分を自分が納める税金から引くことができました。しかし、あなたが免税事業者のままだと、取引先はこの1,000円分を原則として全額を引くことができず、実質的に1,000円分のコストアップになってしまいます(経過措置期間中は一定割合の控除が可能です)。これが、一部の企業が免税事業者に対して「インボイスに登録してほしい」あるいは「消費税分を値下げしてほしい」と要求してくる主な理由です。

ただし、ここで重要なのは「取引先のコストが増えるからといって、すべてをあなたが肩代わりする必要はない」ということです。取引先にとっての1,000円の負担増は、あくまで制度の変更によるものであり、あなたの仕事の価値が下がったわけではありません。相手のコスト増を理由に、一方的にあなたの報酬を削るという判断は、本来のビジネスの原則から外れています。

取引先が大手企業であれば、こうした税負担の増大を織り込み済みで予算を組んでいる場合もあります。また、あなたのスキルがその企業にとって不可欠であれば、わずかな税負担を理由に関係を断つようなことはしません。相手が何を懸念しているのかを正確に把握することで、感情的にならずに解決策を探る道が開けます。

経過措置の仕組みを味方につける

インボイス制度には、免税事業者からの仕入れであっても、一定期間は消費税の一部を控除できるという「経過措置」が設けられています。これが非常に重要なポイントです。制度開始から2026年9月までの3年間は、消費税相当額の80パーセントを控除することができます。つまり、取引先の負担増は本来の消費税10パーセントのうち、わずか2パーセント分に抑えられる計算になります。

この経過措置の存在を知っているかどうかで、交渉の余地は大きく変わります。もし取引先から「10パーセント分を全額引いてほしい」と言われた場合、「現在は経過措置期間中であり、御社の実質的な負担増は2パーセント程度のはずです。ですので、10パーセント全額の値下げは受け入れられません」と論理的に反論することが可能です。

多くの担当者は、この細かい経過措置のルールまで把握していないことがあります。あるいは、知っていてもあえて伏せて交渉してくるかもしれません。こちらが正確な知識を持って接することで、「この人は制度をよく理解しているな」という印象を与え、安易な値下げ要求を抑制する効果も期待できます。

この経過措置は、2026年10月からは50パーセント控除に変わり、最終的に2029年10月に完全に控除がなくなります。このように段階的に変化していくスケジュールを把握しておくことで、長期的な視点での価格戦略を立てることができます。今のうちから少しずつ価格交渉の練習をしておくことは、数年後の完全実施に向けた大切な準備となります。

消費税を請求しないことによる長期的なデメリット

「今回は消費税分を請求しないでおこう」という一時の妥協が、数年後のあなたを苦しめる結果になるかもしれません。目先のトラブルを避けるための選択が、実は自分の首を絞めている可能性があるのです。ここでは、消費税を請求しないことによる長期的なリスクを具体的に掘り下げます。

一度下げた価格を戻せないリスク

ビジネスの世界において、一度合意した単価を後から引き上げるのは、下げるよりも何倍も困難です。あなたが「免税事業者だから」という理由で消費税分の10パーセントを値引いた価格で契約を結んでしまうと、それがあなたの「定価」として定着してしまいます。将来的にあなたが課税事業者になったときや、物価が高騰して値上げをお願いしたいとき、取引先は「なぜ今さら上げるのか」と難色を示すでしょう。

特に、消費税を「請求しない」という形で実質的な値下げを行った場合、それは取引先にとって「当たり前の価格」になります。担当者が変われば、過去の経緯は忘れられ、単に「安い業者」という認識だけが残ります。後から「実はあのときは無理をしていたんです」と言っても、ビジネスの場では通用しません。最初から適正な価格で取引を始めることが、いかに重要であるかがわかります。

また、一度値下げを受け入れると、他の部分でも「融通が利く人だ」と思われ、不当な要求が重なるリスクもあります。納期を無理に短縮されたり、本来の業務範囲外の仕事を押し付けられたりといった、負の連鎖が始まりかねません。自分の提供する価値に対して正当な対価を求める姿勢は、自分を守るための防波堤になります。

もし、どうしても一時的に価格を調整しなければならない場合は、それが「限定的な対応であること」を明確に示す必要があります。「今回のみの特別価格」や「インボイス制度導入に伴う期間限定の調整」といった文言を契約書や見積書に明記しておくべきです。しかし、最も望ましいのは、最初から消費税相当分を含めた納得感のある価格を提示し続けることです。

事業の継続性と利益率の低下

個人事業主にとって、売上の10パーセントは、会社員でいうところの「ボーナス」や「昇給分」をはるかに超える重みを持っています。この10パーセントを失うことは、あなたの手元に残る純利益が劇的に減ることを意味します。利益が減れば、新しい機材の購入やスキルの習得、さらには老後のための貯蓄や日々の生活の質にも大きな影響が出ます。

利益率が低い状態で仕事を続けると、どうしても「数をこなす」必要が出てきます。睡眠時間を削り、休日を返上して働き続ける日々は、長くは続きません。心身の健康を損なえば、事業そのものが立ち行かなくなります。あなたが長く元気に、質の高いサービスを提供し続けるためには、余裕を持った利益の確保が絶対に必要です。

また、利益が少ないと、万が一のトラブルへの対応も難しくなります。仕事で使う道具が壊れたとき、急に体調を崩して働けなくなったとき、手元に資金的な余裕があれば乗り切ることができますが、ギリギリの経営では廃業の危機に直結します。「消費税を請求しない」という判断は、そうした万が一の備えを自ら手放しているのと同じことです。

さらに、あなたが安売りを続けることで、同業他社の相場を下げてしまうという側面もあります。業界全体の単価が下がれば、それは巡り巡って自分の将来の首を絞めることになります。適正な価格を請求し、適切な利益を得ることは、あなた個人のためだけでなく、あなたの所属する業界全体の健全性を保つためにも重要な役割を果たしています。プロとしての誇りを持ち、自分自身の価値を正当に評価しましょう。

発注側からの値下げ要求に対する法的防御策

取引先から「インボイスがないなら消費税分を引くのが当然だ」と強く言われたとき、萎縮してしまう必要はありません。日本には、立場の弱い事業者が不当に扱われるのを防ぐための法律がしっかりと整備されています。これらの法律を知識として持っておくだけで、あなたの立ち振る舞いはぐっと力強くなります。

独占禁止法と下請法が守るあなたの権利

まず知っておくべきは「独占禁止法」と「下請法」の存在です。特に独占禁止法における「優越的地位の乱用」という考え方は、免税事業者を守るための強力な盾になります。これは、取引上の立場が強い側が、弱い側に対して不当な不利益を強いることを禁じるものです。

具体的には、取引先が免税事業者であることを理由に、これまで支払っていた消費税分を一方的に全額カットすることは、法的に問題がある可能性が高いとされています。公正取引委員会は、インボイス制度の導入に際して、発注側企業が注意すべき点を明確に示しています。十分な協議を行わずに一方的に価格を引き下げることや、登録を強要することは、法令違反になる恐れがあるという強い警告が出されています。

また、あなたが法人や一定規模以上の個人事業主から仕事を受けている場合、下請法の対象になることがあります。下請法では、発注後に代金を不当に減額すること(下請代金の減額の禁止)や、通常支払われる対価よりも著しく低い代金を不当に定めること(買いたたきの禁止)が厳格に禁じられています。これらの法律は、相手が「知らなかった」では済まされない重いものです。

こうした法的根拠があることを理解していれば、交渉の際に「公正取引委員会のガイドラインでは、一方的な値下げは避けるよう示されていますね」といった一言を添えることができます。これだけで、相手の担当者は「この相手に無理な要求をすると、会社のコンプライアンス上の問題になる」と認識し、強硬な態度を軟化させる可能性があります。法律は、戦うためだけでなく、対等な話し合いの場を作るためにあるのです。

公正取引委員会のガイドラインを読み解く

公正取引委員会は、インボイス制度に関連した「Q&A」や「ガイドライン」を公開しており、その内容は非常に具体的です。そこには「免税事業者からの仕入れであっても、仕入税額控除ができない分を即座に全額値引きさせることは、優越的地位の乱用にあたる場合がある」とはっきり書かれています。

特に注目すべきは、「双方が納得するまで協議したか」というプロセスが重視されている点です。相手が一方的に「次回の請求から10パーセント引きます」と通告してくるのは、協議とは言えません。

もしそのような連絡が来た場合は、「まずは制度への対応について、お互いに納得できる形を協議させてください」と返信しましょう。それだけで、あなたは法律で守られた正規のプロセスに相手を引き戻すことができます。

また、ガイドラインでは、単価の据え置きだけでなく、発注数量の減少や取引の停止をチラつかせて登録を迫ることも問題視されています。もし、取引先から不当な圧力を感じた場合は、各地の弁護士会が設置している相談窓口や、公正取引委員会の相談窓口を利用することも検討してください。

一人で悩んでいると、どうしても「自分が我慢すればいい」と思いがちですが、国の機関がこれだけ明確に「不当な扱いは許さない」と言っているのですから、堂々としていて良いのです。正しい知識は、あなたを不安から解放し、冷静な判断力を与えてくれます。法的背景を理解した上で、あくまでビジネスパートナーとして、建設的な対話を求めていきましょう。

取引先を納得させる具体的な価格交渉術

知識を備えたら、次は実践です。実際にどのように伝え、どのように書面を整えれば、角を立てずに自分の利益を守れるのか。ここでは、具体的なコミュニケーションのコツと、実務的な工夫について詳しく解説します。

総額表示への切り替えと見積書の工夫

「消費税」という項目が目立つことで、どうしても相手の意識がそこに向いてしまいます。これを避けるための一つの有効な手法が、「総額表示(税込表示)」への完全移行です。見積書や請求書を作成する際に、わざわざ「本体価格 10,000円、消費税 1,000円」と分けるのではなく、「制作単価 11,000円(税込)」と一行で記載するようにします。

免税事業者が「税込」と書くこと自体は、慣習的に広く認められています。これは「消費税相当額を含んだ、最終的な支払金額」という意味で使われます。こうすることで、相手は「消費税という税金を払っている」という意識から、「この仕事に対する総額を払っている」という意識にシフトしやすくなります。価格交渉の際も、「消費税分をどうするか」ではなく、「この仕事の総価値はいくらか」という議論に持ち込むことができます。

また、見積書の中に、自分の付加価値を具体的に書き込むことも効果的です。単に「デザイン費」と書くのではなく、リサーチ、ラフ案作成、修正対応回数、納品後のサポートなど、工程を細分化して記載します。これにより、相手は「これだけの手間がかかっているなら、この総額は妥当だ」と納得しやすくなります。

もし、インボイス制度を理由に値下げを求められた場合は、「インボイスには対応しておりませんが、その分、他社よりも柔軟な修正対応をさせていただいております」といった、サービス面でのプラスアルファを強調するのも一つの手です。お金の話を、サービスの質の会話に変換することで、お互いに納得感のある着地点を見つけやすくなります。

誠実なコミュニケーションで関係を維持する

交渉において最も大切なのは、相手を敵だと思わないことです。取引先の担当者も、上司から「コストを抑えろ」と言われて板挟みになっているだけかもしれません。まずは相手の立場を尊重しつつ、こちらの窮状も誠実に伝えるという姿勢が、良い結果を生みます。

例えば、「インボイス制度への対応で御社にご負担をおかけすることは大変心苦しく思っております」と、まずは相手の懸念に寄り添う一言から始めましょう。その上で、「しかしながら、昨今の物価高騰もあり、現在の単価からさらに10パーセントを差し引かれますと、事業の継続自体が極めて困難になってしまいます。御社には引き続き質の高いサービスを提供し続けたいと考えておりますので、何卒ご配慮いただけないでしょうか」と伝えます。

このように、「事業を続けたい」「質を維持したい」という前向きな理由を添えることで、相手も「無理に値下げさせて、この人に辞められては困る」と考えてくれる可能性が高まります。感情的になって「法律で決まっているはずだ!」と詰め寄るのではなく、あくまで「一緒に良い仕事をするためのパートナーとしての相談」という形を取るのがコツです。

また、メールだけでなく、可能であれば電話やオンライン会議で直接話す時間を作ることも有効です。文字だけのやり取りでは冷たく感じられる内容も、声のトーンや表情が加わることで、あなたの誠実さが伝わりやすくなります。信頼関係がしっかり築けていれば、税制の変化という荒波も、二人三脚で乗り越えていくことができるはずです。

課税事業者になるべきかどうかの判断基準

ここまで「免税事業者のまま、いかに消費税分を確保するか」についてお話ししてきましたが、状況によっては、あえて「課税事業者(インボイス登録)」になることが、結果として得をする場合もあります。どちらの道が自分にとって幸せなのか、判断するための基準を整理しましょう。

2割特例を利用したシミュレーション

インボイス制度への登録を検討する際、最も強力な助けとなるのが「2割特例」という負担軽減措置です。これは、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合に、売上にかかる消費税額の「2割」を納めるだけで済むというものです。通常、サービス業などであれば売上の5割から6割程度を納税することになる場合が多いですが、この特例を使えば納税額を大幅に抑えられます。

例えば、年間売上が550万円(税込)の場合、預かった消費税は50万円です。この2割である10万円を納めればよいため、手元には40万円が残ります。もし、免税事業者のままで10パーセントの値下げ(50万円のマイナス)を受け入れたとしたら、手元に残るお金はゼロです。この場合、明らかに課税事業者になって2割特例を利用した方が、手元に残るお金は多くなります。

この特例は、2026年9月30日の属する課税期間まで利用可能です。つまり、少なくとも今後数年間は、この計算式をベースに損得を考えることができます。まずは自分の昨年の売上をベースに、「10パーセント値下げされた場合の損失」と「2割特例で納税した場合の金額」を書き出してみてください。数字で可視化することで、漠然とした不安が具体的な経営課題へと変わります。※2026年1月現在

ただし、納税額以外にも考慮すべき点があります。それは「事務作業の負担」です。課税事業者になると、消費税の申告のために日々帳簿を細かくつける必要が出てきます。最近は会計ソフトが自動化されているため以前ほど大変ではありませんが、それでも一定の手間はかかります。この手間を「信頼を得るための投資」と思えるかどうかも、判断の分かれ目になります。

将来のビジョンとインボイス登録のメリット

課税事業者になるメリットは、単にお金の計算だけではありません。「信頼性」という目に見えない価値も手に入ります。特に大手企業や、コンプライアンスを重視する企業との取引を増やしていきたいと考えている場合、インボイスを発行できることは強力な武器になります。

「あの人はインボイスに対応しているから、経理処理が楽で助かる」という評価は、新しい案件の発注に繋がることがよくあります。逆に、免税事業者のままだと、取引先の経理担当者から「あの人はインボイスがないから、処理が面倒だ」と思われ、次第に声がかからなくなるというリスクもゼロではありません。自分のビジネスをこれからどんどん拡大させていきたいという野心があるなら、早い段階で課税事業者への転換を済ませておくのも、賢明な戦略です。

一方で、今後も特定の個人顧客だけを相手にする場合や、小規模な取引がメインで、相手も免税事業者ばかりであれば、登録を急ぐ必要はありません。あなたのビジネスの「客層」が誰であるかを冷静に見極めてください。顧客が消費税の控除を必要としていないのであれば、あなたは無理をして税金を納める必要はないのです。

大切なのは、「周りがやっているから」という理由で流されないことです。自分の事業規模、利益率、取引先の性質、そして「これからどうなりたいか」という将来像。これらを総合的に判断して、自分が最も納得できる道を選びましょう。どちらを選んでも、それは間違いではありません。あなたが自分の意志で決断したことが、これからの事業の自信に繋がります。

まとめ

最後に、この記事で見てきた重要なポイントをもう一度確認しましょう。

まず、免税事業者が消費税相当額を請求することは、法的に正当な行為です。消費税は「対価の一部」であり、あなたが事業を運営するためのコストを回収するために欠かせないものです。自分を安売りせず、適切な利益を確保する姿勢を持ちましょう。

次に、インボイス制度の仕組みと経過措置を正しく理解することが大切です。取引先の負担が増えるのは事実ですが、それは段階的であり、80パーセント控除などの猶予も設けられています。知識という武器を持っていれば、一方的な値下げ要求に対しても論理的に交渉することができます。

また、不当な要求からは法律(独占禁止法や下請法)があなたを守ってくれます。公正取引委員会のガイドラインを念頭に置き、対等な立場で話し合いの場を作ることが重要です。誠実なコミュニケーションを心がけ、価格以外の価値を提案することで、取引先との良好な関係を維持しましょう。

そして、「2割特例」などの支援策を活用したシミュレーションを行い、自分にとって課税事業者になるべきかどうかの判断を下してください。数字で計算し、将来のビジョンと照らし合わせることで、最適な選択が見えてきます。

「消費税を請求しない」という消極的な選択ではなく、自分の仕事に誇りを持ち、正当な報酬を求める。その一歩が、あなたの事業をより豊かで持続可能なものに変えていきます。この記事で得た知識を胸に、自信を持って明日からの仕事に取り組んでください。あなたの成功を、心から応援しています。

この記事の投稿者:

武上

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