請求書の書き方 インボイス制度とはいつから開始?現行の方式との違いや事業者への影響を解説 2023/07/02

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、インボイスと呼ばれる請求書の発行に関する制度です。本記事では、インボイス制度の開始日や、区分記載請求書等保存方式との違い、事業者への影響などについてわかりやすく解説します。

いつから始まる?インボイス制度とはどのような制度?

2023年10月1日から始まるインボイス制度(適格請求書等保存方式)とは「インボイス(適格請求書)」の発行に関する制度です。インボイスは売り手が買い手に対して、正しい税率や消費税を伝えるために用いられます。

売上の際に預かった消費税から、仕入れの際に支払った消費税を差し引いて納税できる「仕入税額控除」を受けるためには、インボイスが必要となります。インボイス制度に対応しないと仕入税額控除が受けられないことから、課税事業者と、課税事業者と取引のある免税事業者は、インボイス制度に登録することを検討しましょう。

なお、インボイスは事前に登録を行なった適格請求書発行事業者しか発行できません。インボイス制度が始まる2023年10月からインボイスを発行するためには、2023年の3月末までに登録をする必要がありましたが、9月末まで登録を受け付けることが発表されています。

参照:インボイス制度の概要|国税庁
   申請手続|国税庁

インボイスと現行の区分記載請求書の違い

区分記載請求書とは、仕入税額控除を受けるために使われる従来の請求書です。仕入税額控除を受けるためには、インボイス制度が導入される前日である2023年9月30日までは、この区分記載請求書が必要です。

区分記載請求書には、以下の項目を記載します。

・請求書発行事業者の氏名または名称(①)
・取引年月日(②)
・取引の内容(軽減対象税率の対象品目である場合はその旨)(③)
・税率ごとに合計した対価の額(④)
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(⑤)

インボイスでは、上記に加えて以下の3つの項目を記載します。

・適格請求書発行事業者の登録番号(A)
・適用税率(B)
・税率ごとに区分した消費税額等(C)

参照:Ⅲ 区分記載請求書等保存方式
   4 適格請求書の記載事項

現行の区分記載請求書等保存方式とは?

区分記載請求書等保存方式は、消費税の軽減税率がスタートした2019年10月1日から導入された制度です。標準税率である10%と、軽減税率の8%と異なる税率が存在することから、消費税の申告を行うために、区分記載請求書によって税率を区分して金額を記載する必要が生じました。

軽減税率が始まる2019年10月1日から、インボイス制度が始まる2023年10月1日までの限定的な制度であり、経過措置としての意味合いがあります。

参照:適格請求書等保存方式の概要(4ページ)

インボイス制度が重要視される背景

インボイス制度が導入される背景として、10%と8%、2種類の消費税が存在することが挙げられます。仕入税額控除を行う上で、インボイスによって税額を正しく把握することが求められるためです。

また、免税事業者は買い手から預かった消費税を納税せず、自らの手元に残しておくことが認められています。インボイス制度の登録事業者になるための申請は課税事業者しか行えませんが、インボイス制度を導入することで課税事業者を増やし、免税事業者の益税を是正しようという狙いがあるものと考えられています。

免税事業者からの仕入れに係る経過措置とは何か?

インボイス制度は免税事業者が登録できない制度であることから、免税事業者が事業を行う上で不利になったり、課税事業者の負担が増えたりといった事態が発生するものと考えられます。それに考慮して設けられるのが「免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置」です。

インボイス制度の導入後は、免税事業者などインボイス制度の登録事業者以外から行なった課税仕入れは、基本的に仕入税額控除を受けられません。しかしこの経過措置によって、導入から6年間は、免税事業者などからの課税仕入れも一定の割合に基づいて控除することが認められます。経過措置のスケジュールは以下の通りです。

期間割合
2023年10月1日〜2026年9月30日仕入税額相当額の80%
2026年10月1日〜2029年9月30日仕入税額相当額の50%
2029年10月1日〜なし

参照:適格請求書等保存方式の概要(16ページ)

インボイス制度の導入による事業者への影響

インボイス制度の導入による影響を、立場別に解説します。

課税事業者への影響

インボイスを発行できる適格請求書発行事業者になるための申請を行います。国税庁のホームページなどで入手できる「適格請求書発行事業者の登録申請書」を記入し、管轄のインボイス登録センターに提出しましょう。提出先が税務署ではない点に注意が必要です。

インボイス制度が始まる2023年10月1日からインボイスを発行するためには、2023年9月30日までに申請を行う必要があります。

また、e-Taxを通じて、パソコンやスマートフォンから申請を行うことも可能です。e-Taxを利用して申請をする場合は、マイナンバーカードなどの電子証明書が必要になります。

参照:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁
   申請手続|国税庁
   適格請求書等保存方式の概要(17ページ)

免税事業者への影響

免税事業者は、免税事業者のままでいるか、課税事業者かつ適格請求書発行事業者になるか、いずれかを選択します。

免税事業者でいる場合、取引先の課税事業者は仕入税額控除ができず、手元に残る金額が減ってしまう可能性があります。「儲けを減らしたくない」と考える取引先から、価格を下げるように提案されたり、取引を中止されてしまう恐れがあるでしょう。

課税事業者および適格請求書発行事業者になる場合には、上記のリスクなく取引を継続できる可能性があります。しかし、課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の申告義務が発生するため、儲けは減ってしまうでしょう。

経理担当者への影響

前述した通り、インボイスは既存の区分記載請求書に加えて以下の3つの項目を追加します。

・適格請求書発行事業者の登録番号
・適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等

勤務先が適格請求書発行事業者であれば、課税事業者の取引先に求められた場合、インボイスを発行しなくてはいけません。インボイスを発行できるよう、テンプレートを作成しておくなどの準備を行いましょう。

参照:適格請求書等保存方式の概要(10ページ)

その他の影響

インボイス制度は課税事業者および免税事業者が影響を受ける制度であるため、その他の一般消費者は影響を受けません。また、区分記載請求書等保存方式の導入時のような税率の変更もないため、これまで通りに買い物を続けられます。

会社員についても、給料に消費税はかからないため、特に生活が変わることはありません。

しかし、経費精算の際、経理担当者からインボイスの提出を求められることがあります。会社によっては「免税事業者からの領収書は経費として認めない」とルールを定める可能性もあります。会社のルールを事前によく確認しておくことが求められるでしょう。

インボイス制度に必要な対応

売り手としてインボイスを交付する場合、事前に適格請求書発行事業者になるための申請を行う必要があります。免税事業者の方は、まず課税事業者になるための手続きが必要ですが、2023年10月1日から2029年9月30日までの間は、適格請求書発行事業者になるための手続きのみで構いません。

登録後は、インボイスの基準を満たした請求書を発行する準備をします。請求書のテンプレートの整備や、請求システムの切り替えなどの対応を行いましょう。また、値引きや返品・修正の際もインボイスを発行するため、対応方法について社内で確認しておくことが大切です。

買い手の場合、仕入税額控除を受けるためにはインボイスを受領・保管することが必要です。取引先がインボイス制度の登録事業者でない場合は、仕入税額控除ができず利益が下がってしまう恐れがあるため、取引先が登録事業者であるかどうか確認してから取引を行うなどの対応を行います。

また、取引先からの仕入れを担当している社員や、経費を使う可能性のある社員にインボイス制度の概要について説明し、対応方法を共有するなどの準備が求められます。

参照:適格請求書等保存方式の概要(問5)

関連リンク:2023年からのインボイス制度とは何か、わかりやすく解説!【図解あり】
     :インボイス制度による個人事業主の対応は?対策や注意点をわかりやすく解説!
     :インボイス制度とは?消費税免税事業者への影響や取るべき対応をわかりやすく解説

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まとめ

インボイス制度は2023年10月1日に開始する制度であり、会社員や個人事業主に大きな影響を与えるものと考えられています。

導入時はインボイスの発行方法や保存方法などについて、混乱が発生すると予想されています。インボイス制度の登録事業者となる場合は、対応方法などについて事前に確認しておくことが大切です。

また、制度の導入に関して、申請期間の延長などの変更が生じています。関連するニュースなどをチェックし、制度の動向にあわせた対応をするように心がけましょう。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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