企業の経理業務に欠かせない入金消込ですが、詳しい内容や方法についてはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、入金消込の意味ややり方について、基礎的な内容からわかりやすく解説します。
目次
入金消込とは何?
入金消込とは、顧客からの売上高が確定しているものの、まだ入金がされていない時に使う勘定科目である「売掛金」を入金時に消し込むための作業です。
消込とは
そもそも消込とは、お金を受け取れる権利である「債権」やお金を支払う義務である「債務」の残高を消していくために行う作業です。
「入金消込」は、顧客からの入金金額を確認して、債権である売掛金を消します。反対に、こちらが支払う側である「支払消込」の場合は、実際の支払いと照らし合わせて債務である買掛金を消していく作業です。
売掛金や買掛金など、日々の取引で使う勘定科目は、以下の5つのいずれかのグループに分類されます。
分類 | 内容 | 例 |
資産 | 価値を持つ財産など | 現金、売掛金、預金など |
負債 | マイナスの財産など | 買掛金、支払手形など |
純資産 | 資産から負債を差し引いたもの | 資本金など |
収益 | 商品やサービスの提供などで得た収入 | 売上高、雑収入など |
費用 | 支払った経費 | 給与、仕入高、消耗品費など |
この表からわかる通り、売掛金は顧客から入金してもらえるため「資産」、買掛金はこちらが支払う必要があるため「負債」に分類されます。
複式簿記で帳簿に記載する時は、これらのどのグループに分類されるかによって、記載すべき位置が変わります。
借方 | 貸方 | |
資産 | 増加 | 減少 |
負債 | 減少 | 増加 |
純資産 | 減少 | 増加 |
収益 | 取消 | 発生 |
費用 | 発生 | 取消 |
例えば、資産グループである売掛金が増加した際は、帳簿の左側である「借方」、減少した時は右側である「貸方」に記入します。
入金消込の流れ
それでは、前項で解説した借方・貸方のルールに基づいて、入金消込を行なった時の帳簿上の書き方について見ていきます。
例えば、1月15日に顧客に100万円の商品を売り、代金は後日支払うことになったとしましょう。その場合は、帳簿に以下のように記入します。
1/15 借方 貸方
売掛け金 1,000,000円 売上高 1,000,000円
売掛金は資産グループであるため左の借方に、 売上高は収益グループであるため右の貸方に記入します。
この後、1月31日に顧客から現金で100万円が入金されたことを確認できたとしましょう。その際は以下の仕訳を行います。
1/31 借方 貸方
売掛け金 1,000,000円 売上高 1,000,000円
資産グループである現金が増加したため左の借方に、同じく資産グループである売掛金が減少したため、右の貸方に記載します。
エクセルを用いた入金消込処理の流れ
入金情報の入力
エクセルを使って入金消込を管理する場合は、まず通帳を見て、以下の情報を入力しましょう。
・入金日
・相手の名義
・入金金額
売掛金と入金金額の確認
入力した通帳の内容を元に、売掛金と入金作業の突き合わせ作業を行います。この作業は、複数いる顧客の中で「この顧客からは○円の入金が確認できた」といった情報を明確にしていくものです。
多くの企業では、どの顧客からいくら入金されるかを明らかにした「入金管理表」を作成していることでしょう。入金金額の確認は、この入金管理表と作成したエクセルを見比べる事で行うことが一般的です。
関数やフィルタリング機能を活用
取引の件数が少なければ、正しく入金されていることを確認できた際、斜線を引いていくといった対応でも問題ないでしょう。
しかし件数が増えた際は、エクセルの関数の機能などを使って、ミスなく確実に入金確認することが大切です。入金確認で使える代表的な関数は、次の通りです。
・COUNTIF関数:重複がないかどうかをチェックする
・VLOOKUP関数:企業名の突き合わせを行う
・SUMIF関数:指定したデータの合計を計算する
また、入金確認の作業にはエクセルのフィルタリング機能も活用できます。顧客名や企業名などで絞り込み、エクセルを見やすくした状態で入金を確認する方法です。
エクセルで消込処理を行う際のデメリット
取引件数がそれほど多くない場合などでは、多くの企業がエクセルで入金消込の処理を行っていることでしょう。しかし、エクセルでの消込処理にはいくつかのデメリットがあります。
会計ソフトへの登録が必要となる
売掛金に関連する経理上の作業は、前述した通り「商品が売れた時」「入金があった時」の2回にわたって帳簿に反映することが求められます。エクセルで入金管理をしていても、この2回の仕訳を会計ソフトに登録することが必要です。
金額を間違えたり、入力自体を忘れてしまったりと、会計ソフトに反映させる段階でミスが発生することも考えられるでしょう。
見比べる作業が負担になる
エクセルを使って入金情報を管理する場合は、エクセルの情報と入金管理表などの情報を見比べることになります。入金された金額はもちろん、顧客名や企業名などに関しても、間違いないか細かくチェックしていくことが必要です。
発生する取引の件数にもよりますが、これらの作業を人の手に頼って行なっていると、かなりの時間が必要となる場合もあるでしょう。また、細かな作業を黙々と行う必要があり、作業を行う従業員の負担にもなりかねません。
慣れや経験が求められる
エクセルを使って入金消込を行うためには、事務作業にある程度慣れている従業員であることが望ましいでしょう。エクセルの扱いに慣れていないと、関数やフィルタリング機能を使いこなすのが難しいなどの理由から、時間がかかってしまうこともあります。
入金額に差額があった場合などには、経理についての知見がないとどのように対処していいのかわかりにくいこともあります。単に取引先の入金ミスなのか、振込手数料や税金などにより差額が生じているのかなど、判断して適切に対処することが認められるためです。
1件1件の入金確認に時間を使っていては、入金の督促が遅れたり、決算前に慌てたりすることになりかねません。
入金消込の効率化の方法は?
入金消込は時間や手間がかかる作業であるため、できるだけ効率的に行いたいという企業も多いのではないでしょうか。そこで本項では、入金消込を効率化するための方法を3つご紹介します。
振込の際に顧客ナンバーを入力してもらう
入金消込で間違えやすいのが、銀行口座への振込です。 顧客から正しい金額が振り込まれたかどうか通帳を見て確認しますが、金額や振込名義が機械的に並んでいるだけで、後から見た時に一見わかりにくいということも多くあります。
また、通帳に記載される振込名義はカタカナ表記であることも、突き合わせ作業をわかりにくくさせる原因の一つです。
銀行振り込みにおける入金を見逃さないためには、振込名義と一緒に、顧客ナンバーや取引ナンバーなどを入力してもらう方法があります。それらのナンバーを確認することで、ミスなく効率的に入金確認を行うことにつながります。
リアルタイムで入金を確認する
入金消込の際は銀行口座への入金を確認しますが、何度も銀行に行って通帳を記帳するといった方法では手間がかかってしまいます。銀行まで行き来する時間や体力が必要になることに加え、入金してから記帳をして金額を確認するまで、タイムラグが発生してしまうでしょう。
この課題を解決するのが、口座への入金をメールなどで知らせてくれる機能です。多くの銀行がこの機能に対応しているため、確認の上、導入してみるといいでしょう。
また、ネットバンキングに対応させることも有効です。パソコンやスマートフォンからいつでも口座の情報を確認できるため、入金消込の作業を効率化したい場合には、導入をおすすめします。
システムでの自動化を行う
通帳を確認して一つずつ入金消込を行う方法では、時間や手間がかかったり、ヒューマンエラーが起きたりと、何かと非効率になってしまいます。そこで取り入れたいのが、自動で入金消込を行うシステムやツールです。
入金消込システムは、銀行口座の入金情報や請求書の情報をもとに、正しく入金されたかを自動でチェックしてくれるシステムです。金融機関と連携させることで入金情報を取得して自動で消込が行われます。
また、会計ソフトと連携できるシステムも多いため、売掛金に関する経理作業全般を効率化できるでしょう。
入金消込システムの自動化によるメリット
入金消込システム・ツールで作業を自動化することによって得られるメリットを、4つのポイントから解説します。
入金消込が正確になる
入金消込は、企業の取引における金銭を管理するものであり、的確に行うことが求められます。経理担当者が一つずつ消込を行うことも可能ですが、時間がかかる上、ミスが発生する可能性もあります。システムを導入することで入金消し込みを行えば、正確かつスピーディーに作業が行えるでしょう。
入金消込が属人化しない
経理に関する事務作業はある程度のスキルが必要なことから、特定の従業員しか行えないなど、作業が属人化してしまうケースがあります。
しかし、入金消込システムを導入すれば、経理業務に慣れていない従業員でも作業が行いやすくなるでしょう。高度な経理スキルを持たない従業員や、新たに採用した未経験の人材でも経理業務に携わることが可能になるため、人手不足の解消にも期待できます。
入金をリアルタイムで確認できる
従来の方法で銀行口座への入金を確認して入金消込を行うには、通帳を記帳したり、ネットバンキングにアクセスしたりする必要がありました。入金消込システムは銀行口座と連携することで、自動でリアルタイムに入金を把握できるようになります。
取得した入金データはシステムによって確認され、入金消込まで自動で行われます。まだ振り込まれていない金額(売掛金の残高)をリアルタイムで把握でき、経理業務を効率化することができるでしょう。
経理担当者の負担軽減
経理業務は金銭を扱うことから細かい作業が多く、根気強さが必要となることがあります。また、間違えてはいけないというプレッシャーから、経理担当者に心理的な負担がかかるケースもあります。
入金消込システムを導入することで経理業務が正確かつスムーズになれば、経理業務におけるストレスを軽減することに繋がるでしょう。
銀行振込だと手続きが煩雑になることも
顧客や取引先企業から金銭を受け取る時は、銀行口座へ直接振り込んでもらっている企業が多いでしょう。しかし銀行振り込みでは、経理業務における課題が発生することもあります。銀行振込による消込でどのようなデメリットが発生するのか、順番にチェックしてみましょう。
カタカナ表記が見にくい
銀行口座に入金を行った顧客と、実際に商品を買った顧客を紐づけるためには、名前による判断をすることが一般的です。しかし、銀行振込における名義はカタカナ表記であるため、読みにくいと感じる経理担当者も存在します。
入金額の間違いが発生する
銀行振込は顧客自身が金額を入力して振り込むため、入金金額の間違いが発生しやすいというデメリットがあります。正しい金額が振り込まれているか確認が必要な上、金額が間違っていれば、追加の入金をお願いしたり、差額を返金したりなど、新たな処理が発生してしまいます。
顧客ナンバーの入力を忘れる
銀行振込のデメリットの一つである「顧客が判別しづらい」という点を解消するため、中には「顧客名 + 顧客ナンバー」といった振込名義を設定しての振込をお願いしている企業もあるでしょう。入力は顧客の手に任されているため、入力ミスや入力漏れが発生して、かえって管理が煩雑になるケースもあります。
まとめ
入金消込は重要な業務である反面、作業に時間がかかる点や正確性が求められる点から、非効率な業務フローであるケースも多く見受けられます。
そこで活用したいのが、自動で入金消込を行うシステム・ツールです。入金確認から消込までを自動で行うため、人の手に頼った作業よりも正確でスピーディーな処理が可能です。システムを使って的確に入金消込を行うことで、売掛金を漏れなく回収していきましょう。
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