クレジットカードの基礎知識

後払い決済とクレジットカードどちらがいいの?審査、手数料、信用情報(ブラックリスト)リスクの全貌

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後払い クレジット カード

便利な「後払い」、安心の「クレジットカード」。あなたの「今」と「未来」にとって、本当に賢い選択はどちらか?その境界線とリスクを徹底解剖します。

この記事では、「後払い決済(BNPL)」と「クレジットカード」の決定的な違いから、多くの人が最も懸念する「支払い遅れ(滞納)」が信用情報(CIC・JICC)に与える影響まで、詳細なデータを基に解説します。

「後払い」という言葉の手軽さの裏にある法的な仕組みや、具体的なサービス(Paidy、メルペイなど)の滞納時に何が起こるかを理解することは、あなたの資産と信用を守るために不可欠です。

この記事を読み終える頃には、あなたは自身の決済スタイルに最適な手段を、自信を持って選択できるようになるでしょう。

目次

「後払い」と「クレジットカード」その決定的な違い

手元に現金がなくても商品を購入できるという点では、「後払い決済」も「クレジットカード」も似ています。しかし、その仕組みと「信用」の扱い方において、両者は根本的に異なります。

決済の仕組みと「信用」の扱いの違い

クレジットカード決済は、法律上「信用購入あっせん」と呼ばれる仕組みです。この仕組みは、カード会社が利用者の「信用(クレジット)」を担保し、先に加盟店(お店)へ代金を立て替える方法です。利用者は、その立て替え分を後日(通常は月に一度)、まとめてカード会社に支払います。

この仕組みの核心は、カード発行時に厳格な与信審査が行われる点にあります。利用者は、自身の支払い能力に基づいた「利用可能枠(与信枠)」をあらかじめ与えられ、その範囲内で買い物をします。

一方、後払い決済(BNPL: Buy Now, Pay Later)は、利用者が商品やサービスを受け取った「後」で代金を支払う仕組みです。BNPL事業者がまず加盟店へ代金を支払い、利用者は後日、BNPL事業者へその代金を支払います。クレジットカードとの大きな違いは、決済の「都度」、簡易的な審査が行われる点です。発行時の厳格な審査ではなく、購入の瞬間に「この取引を承認するか」が判断されます。

3つの主要な比較軸(審査・手数料・利用開始)

審査(与信審査)

クレジットカードは、発行時に信用情報機関(CIC、JICCなど)の情報を基にした厳格な審査が必要です。

対して、後払い(BNPL)は、原則として発行時の厳格な審査はありません。「審査なし、または簡易」とされます。メールアドレスや携帯電話番号の登録だけで、すぐに利用開始できる手軽さが最大の特徴です。

なぜBNPLは審査が簡易なのでしょうか。それは、クレジットカードが長期にわたり高額な与信枠を提供する(そして分割・リボ払いなどのリスクを負う)のに対し、BNPLは「利用限度額を低く設定する」ことで、事業者側のリスクを限定しているためです。この簡易さが、クレジットカードの審査に通らない、または持ちたくない層の受け皿となっています。

手数料

クレジットカードは、利用者が3回以上の分割払いやリボ払いを選択すると、利用者に手数料(利息)が発生するのが一般的です。

一方、BNPLは、利用者が分割払いを選択した場合でも、原則として利用者の手数料は無料です。

なぜBNPLは分割手数料が無料なのでしょうか。それは、ビジネスモデルが異なるためです。BNPLは、利用者から手数料を取る代わりに、加盟店(お店)が支払う決済手数料を、クレジットカードよりも高めに設定しています。

加盟店は、高い手数料を支払ってでも、BNPLを導入するメリットがあります。それは、「カゴ落ち(購入手続き中の離脱)率の低減」「客単価の向上」「新規顧客層の拡大」といった効果が期待できるためです。

利用開始時期

クレジットカードは、申し込みから審査、そして物理的なカードが手元に届くまで、一般的に1週間から2週間程度かかります。

後払い(BNPL)は、オンラインでの登録が完了すれば、原則として「すぐ利用できる」ことがほとんどです。

支払い回数の柔軟性とその「わな」

クレジットカードは、一括払いのほか、分割払いやリボ払いなど、支払い方法が非常に柔軟です。

それに対し、従来の後払い(BNPL)は、「原則として一括払いのみ(分割不可)」が基本でした。

しかし、近年はこの状況が変化しています。例えば、Paidy(ペイディ)は「3回、6回、12回あと払い」といったサービスを「分割手数料無料」で提供しています。これは、BNPLが従来の一括後払いから、クレジットカードの「分割払い」の領域に進出してきていることを示しています。

このBNPLの「多回数化」こそが、後述する法律(割賦販売法)との関係や、信用情報へのリスクを複雑にする最大の要因となっています。

(テーブル1)「後払い(BNPL)」vs「クレジットカード」総合比較表

ここまでの比較を、以下の表にまとめます。

比較項目後払い(BNPL)クレジットカード
与信審査(発行時)なし、または簡易信用情報機関に基づく厳格な審査
利用開始までの期間原則、登録後すぐ1週間〜2週間程度
利用者の分割手数料原則無料3回以上の分割・リボで発生
支払い回数の柔軟性サービスにより異なる(一括が基本だが多回数化も進む)高い(一括・分割・リボ)
加盟店の手数料高め低め
利用限度額低め(少額から開始)高め(審査に基づく)

なぜ「後払い」が選ばれるのか? クレジットカードにはないメリット

BNPLが急速に普及している背景には、クレジットカードにはない独自のメリットが存在します。

顧客層の拡大(カードを持たない・使いたくない層の受け皿)

BNPLの最大の強みは、クレジットカードを持てない(審査に通らない)、あるいは持ちたくない若年層にもアプローチできる点です。

また、初めて利用するECサイトに「クレジットカード番号を入力したくない」という、セキュリティ意識の高い層のニーズにも応えます。BNPLは、メールアドレスと電話番号だけで決済が完了するサービスが多いため、カード情報漏洩のリスクを懸念する利用者にとって心理的な安心感があります。

購入プロセスの改善(「カゴ落ち」の防止と客単価アップ)

ECサイトにとって、購入手続きの入力項目が多いことは、利用者の離脱(カゴ落ち)に直結する大きな問題です。BNPLは、入力項目が少なく決済プロセスがシンプルなため、この「カゴ落ち」を防ぐ効果が期待できます。

さらに、「今すぐ支払わなくても良い」という安心感が、高額な商品の購入に対する心理的ハードルを下げます。結果として、事業者にとっては「客単価の向上」にもつながります。

支出管理の容易さ?(「使いすぎ」を防ぐ仕組み)

BNPLは、クレジットカードに比べて利用限度額が低めに設定される傾向があります。これは一見デメリットのようですが、「使いすぎによる支払い遅延のリスクも抑えられる」というメリットとして捉えられています。

しかし、この点には注意が必要です。ある利用者の感想では、デメリットとして「手軽な分、使いすぎる懸念がある」とも指摘されています。

この矛盾は、なぜ生じるのでしょうか。それは、限度額が低いのは「1サービスあたり」の話だからです。利用者は、Paidy、メルペイ、atoneなど、複数のBNPLサービスを併用することが可能です。各サービスの簡易的な審査が、かえってこの「はしご利用」を容易にし、結果として自身の支払い能力を超える負債を抱えてしまうリスクも潜んでいます。

後払い(BNPL)最大の懸念 支払い遅れ(滞納)のリスク

利用者が最も懸念する点は、「もし支払いが遅れたらどうなるか」でしょう。特に「信用情報(いわゆるブラックリスト)に傷がつくのか」は、将来のローン契約などにも関わる重大な問題です。

「後払いだから」は通用しない 滞納が引き起こす深刻な結果

「後払いだから、少しぐらい遅れても大丈夫だろう」という考えは非常に危険です。支払いが遅れると、段階的に深刻な事態へと発展します。

まず、支払いが確認できるまで、そのBNPLサービスの新たな利用が停止されます。

次に、支払い日の翌日から「遅延損害金」が発生します。これは利息の一種です。例えばPaidyの場合、その利率は年率14.6%と定められています。これは、JCBカードのショッピング1回払いの遅延損害金(年率14.6%)と同水準であり、「後払いだから」利率が低いわけでは全くありません。

続いて、メールやSMSでの督促が始まります。これを無視し続けると、電話やハガキによる督促に切り替わります。サービスによっては、督促にかかる「回収手数料」が別途請求されることもあります。

それでも支払われない場合、弁護士からの通知や、最終的には「強制執行(財産の差し押さえ)」といった法的措置に至る可能性もあります。

後払い滞納で信用情報(CIC・JICC)に傷はつくか?

信用情報機関(CICやJICC:日本信用情報機構など)とは、個人のクレジットカードやローンの契約内容、支払い状況(延滞情報など)を収集・管理している機関です。ここに延滞情報が登録されると、将来のクレジットカード発行や、住宅・自動車ローンの審査に重大な悪影響を及わします。

では、BNPLの滞納は信用情報に登録されるのでしょうか。答えは、「利用しているサービスの種類による」です。

多くの利用者が期待する「後払い(BNPL)は信用情報に影響しない」という認識は、半分正しく、半分は決定的に間違っています。

この違いを生むのが、後述する「法律(割賦販売法)」です。先に結論を述べると、Paidyやメルペイなどのサービスでは、特定のプラン(分割払いや利用枠が設定されるプラン)で2カ月以上滞納すると、信用情報機関に延滞情報が登録されます。

Paidyのデータでは、「一括払い(翌月払い)」は「影響なし」である一方、「ペイディプラス」「超あと払い」「Apple専用プラン」は「2カ月以上の延滞で登録」と明記されています。

メルペイのデータでも、「2カ月超」の滞納で「信用情報機関に延滞情報が登録」されるとされています。

つまり、手軽な「翌月一括払い」のつもりで使い始めたサービスでも、知らずに「分割払い」や「利用枠設定(ペイディプラスなど)」に切り替えていると、クレジットカードと全く同じ信用リスクを負うことになるのです。

事例研究 Paidy(ペイディ)とメルペイスマート払い

具体的なサービスで、滞納がどのように進行するかを見てみましょう。

Paidy(ペイディ)のケース

1日遅れた場合、サービスの利用停止となり、遅延損害金(年率14.6%)が発生します。

1週間から10日程度遅れると、電話やハガキによる督促が始まり、回収手数料(例:1件153円)が発生する場合があります。

1カ月遅れると、強制解約や残額の一括請求(期限の利益の喪失)のリスクが生じます。

そして2カ月遅れた場合、「ペイディプラス」や「Apple専用プラン」の利用者は、信用情報機関に登録されます。

メルペイスマート払いのケース

1カ月以降の遅れで、督促ハガキが送付され、サービスが利用停止となります。

2カ月を超えて滞納すると、信用情報機関に延滞情報が登録されます。

3カ月を超えると、弁護士から通知が来る可能性もあります。

(テーブル2)「主要BNPL」滞納リスク比較表

利用者が最も知るべき、信用情報への影響をまとめます。

サービス名(プラン名)信用情報機関への登録条件遅延損害金(年率)
Paidy(翌月一括払い)影響なし(注1)年率14.6%
Paidy(ペイディプラス, Apple専用プラン)2カ月以上の延滞で登録年率14.6%
メルペイスマート払い2カ月超の延滞で登録(サービス規定による)
クレジットカード(参考)61日以上または3カ月以上の延滞で登録(注2)年率14.6%程度(例)

(注1)信用情報への登録はありませんが、Paidy社内や提携先でのブラックリスト(利用停止)にはなります。

(注2)カード会社や契約内容により異なりますが、一般的に2〜3カ月の滞納で信用情報に「異動」情報(事故情報)が登録されます。

法律(割賦販売法)から見る、両者の境界線

法律(割賦販売法)から見る、両者の境界線

なぜBNPLサービスによって、信用情報への登録リスクが異なるのでしょうか。その根本的な理由は、日本の「割賦販売法」という法律にあります。

割賦販売法とは?

割賦販売法(かっぷはんばいほう)は、分割払いやクレジットカード(信用購入あっせん)など、「後で支払う」契約において、消費者を保護するための法律です。

この法律は、事業者が過剰な「信用(与信)」を提供して消費者が支払い不能に陥ることを防ぐため、事業者に適切な与信審査や情報管理を義務付けています。

「2カ月」の壁 なぜ後払いは短期決済が多いのか

BNPLの手軽さの「秘密」は、まさにこの法律にあります。

割賦販売法の規制は、すべての「後払い」に適用されるわけではありません。資料が示すように、「支払い期間が2カ月を超えない場合」は、割賦販売法の厳格な規制の「対象外」となるのです。

これが、多くのBNPLサービスが「翌月一括払い」を採用している理由です。

事業者は、あえて支払い期間を「2カ月以内」に設定することで、割賦販売法が定める厳格な規制(信用情報機関を利用した審査義務など)を合法的に回避し、「簡易審査」や「即時利用開始」という手軽さを実現しているのです。

法律上「クレジットカード」と同じ扱いになる後払い

では、Paidyが提供する「3回、6回払い」の場合はどうなるでしょうか。

これらの支払いは、明らかに期間が「2カ月を超える」ため、割賦販売法の「対象」となります。

法律の対象となるということは、クレジットカードと同様の規制(適切な与信審査や、滞納時の信用情報機関への報告義務など)が適用されることを意味します。

これが、「ペイディプラス(分割払い)」の滞納が「信用情報に登録される」と明記されている法的な根拠です。利用者がBNPLで安易に「分割払い」を選択する行為は、法的にはクレジットカードの分割払いを利用するのとほぼ同じ枠組みに入ることであり、同じ信用リスクを負うことを意味します。

PayPayの「PayPayクレジット」なども、名称は「後払い」に似ていますが、実態は割賦販売法に基づく「信用購入あっせん(クレジットカード)」そのものです。

後払い(BNPL)請求とクレジットカードを組み合わせる「上級テクニック」

後払い(BNPL)請求とクレジットカードを組み合わせる「上級テクニック」

リスクを理解した上で、さらに賢く決済手段を使いたいと考える人もいるでしょう。

ポイント二重取りの仕組み(コード決済+クレジットカード)

現金払いをクレジットカード決済に変えるだけでもポイントは貯まりますが、「コード決済(PayPay、d払いなど)」と「クレジットカード」を組み合わせることで、ポイントの「二重取り」が可能です。

方法はシンプルです。d払いやPayPayなどのコード決済アプリの支払い方法として、ポイント還元率の高いクレジットカードを紐付けます。

店舗でコード決済を使って支払うと、「コード決済側で得られるポイント」と、「支払い元として設定したクレジットカード側のポイント」が両方貯まる仕組みです。

注意点 Paidy(ペイディ)の請求はクレジットカードで支払えるか?

では、「BNPLの請求(例:Paidyの翌月の請求)」を、さらにクレジットカードで支払えば、ポイントがもっと貯まるのではないでしょうか?

この点について確認が必要です。Paidyの支払い方法は、「コンビニ払い(手数料390円)」「銀行振込(振込手数料あり)」「口座振替(手数料無料)」の3択が基本です。このリストに、クレジットカード払いは含まれていません。

かつて存在した「ペイディカード」は、Paidyが発行するクレジットカード機能であり、Paidyの請求を支払うためのものではありませんでした(また、この機能は2025年9月でサービスを終了します)。

結論として、多くのBNPLサービス(Paidyなど)の「請求そのもの」を、他のクレジットカードで支払うことはできません。ポイントの二重取りは、あくまで「店舗での決済時」に「コード決済+クレジットカード」の組み合わせで行うテクニックです。

結論 あなたの決済スタイルに最適なのは「後払い」か「クレジットカード」か

「後払い(BNPL)」と「クレジットカード」、どちらが優れているかという問いに、単一の答えはありません。重要なのは、両者の特性を理解し、自身の利用シーンとリスク許容度に合わせて使い分けることです。

要点の再確認 それぞれのメリットとデメリット

まず、後払い(BNPL)のメリットは、審査が簡易(または無い)で、すぐに利用を開始できる点、初めてのサイトにカード情報を渡さなくて良い点です。一方、デメリットは、利用限度額が低いこと、サービスによっては分割払いができないこと、そして何より「信用情報に登録されるサービス」と「されないサービス」が混在しており、利用者が意識せずに信用リスクを負う危険性があることです。

次に、クレジットカードのメリットは、利用限度額が高く、ポイント還元率や付帯サービス(保険など)が充実している点です。また、分割・リボなど支払い柔軟性が高く、利用実績が「良い信用(クレジットヒストリー)」として蓄積される点も挙げられます。デメリットとしては、厳格な発行審査が必要であること、使いすぎのリスクがあること、サービスによっては年会費がかかることが挙げられます。

利用シーン別の使い分け

最後に、どのような人にどちらの決済手段を推奨するか、提言をまとめます。

クレジットカードは、将来的に住宅ローンや自動車ローンを組む予定があり、そのために良い信用情報(クレジットヒストリー)を育てたい人に推奨されます。また、ポイント還元や付帯サービス(旅行保険、空港ラウンジなど)を最大限に活用したい人や、支出を月一回にまとめて家計管理をシンプルにしたい人にも適しています。

一方、後払い(BNPL)は、クレジットカードの審査に通らない、または様々な理由で持ちたくない人に適しています。また、初めて利用するECサイトなど、クレジットカード情報を登録することに抵抗がある場面で、一時的に利用したい場合にも便利です。

後払い(BNPL)を利用する場合、そのリスクを最小限に抑えるため、可能な限り「翌月一括払い(支払い期間が2カ月を超えない)」の範囲で利用を完結させてください。

もし「ペイディプラス」や「3回以上の分割払い」といった便利な機能を利用する場合は、その瞬間から、あなたはクレジットカードと全く同じ信用リスクを負っていることを強く自覚し、計画的に利用することが不可欠です。

この記事の投稿者:

hasegawa

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