見積書に有効期限を定めることで、リスクの少ない取引を行い、取引先の契約を促す効果があります。本記事では、見積書に有効期限を記載する際のポイントや注意点、見積書の作成方法などについてわかりやすく解説します。
目次
見積書に有効期限を設定する理由や目的
見積書の有効期限は必ず設定しなくてはいけないわけではありませんが、以下で説明する2つの理由から、設定することが望ましいと考えられています。
契約成立を促す
取引先に見積書を渡しても、すぐに検討してもらえるとは限りません。「日頃の業務が忙しいから」「じっくりと考えて決めたいから」といった理由で、判断を後回しにされることもあるでしょう。
見積書に有効期限を定めることで、期限内に判断してもらうことを促します。期限までに予算について考えたり、契約のために必要な事項を洗い出したりしようという意識も働く可能性があります。見積書の有効期限を設定し、できるだけスムーズに契約してもらえるようにしましょう。
商品・サービスの価格変動に備える
社会情勢や市場の状況などによって、商品の価格を見直す必要が生じることがあります。特に近年は、物価や人件費の高騰で、今までと同じ価格で商品を提供できなくなっている会社も多いでしょう。
見積書の送付後に取引先の検討が長引くと、このようなリスクに対応することが難しくなります。特に、価格変動が起きやすい原料を使っている商品に関しては、有効期限を設定しないと、十分な利益を出すことができなくなるケースもあるでしょう。
見積書に有効期限を設定して、作成から時間が空いた場合にも価格変動に対応できるように備えることが重要です。
一般的な見積書の有効期限
見積書を作成する際、一般的には有効期限を設定します。「見積書に記載された条件で取引ができる期間」を示すものであり、この期間を過ぎてしまうと、再度見積書を作成する
必要があります。
有効期限の長さに決まりはなく、会社の都合によって2週間〜半年程度の間で設定することが一般的です。
目安は2週間から6カ月
見積書の有効期限に制限は設けられていないため、会社の事情などによって自由に設定できます。2週間〜6カ月程度を目安に設定するといいでしょう。それよりも長い期間を設定することもできますが、長すぎると有効期限を設定する意味をあまりなさないため、おすすめはしません。
有効期限を記載したら撤回できない点に注意
民法によると、申込み(契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示)について以下のように述べられています。
(引用)承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。 |
見積書の発行は上記で言う「申込み」に該当するため、有効期限を記載した見積書を発行すると、基本的に撤回できないということがわかります。
見積書の記載例について
見積書に記載すべき項目を順番に解説します。
宛名
会社名や住所など、見積書の提出先となる会社の情報を記載します。大きい規模の会社である場合は、部署や担当者の名前まで記載することが大切です。相手に失礼がないように正しい情報を記載することはもちろん「御中」や「様」といった敬称も適切に使いましょう。
作成日
見積書を作成した日付を記載します。同じ取引先に対する見積書を複数回にわたって作成した際は、この作成日で見分けることもあります。毎回忘れずに記載しましょう。
作成者の情報
見積書の作成者の情報を記載します。会社名や住所、連絡先・担当者名などを記載しましょう。
商品の内容・金額
単価・数量・金額などを商品ごとに記載します。合計額や消費税額、最終的に支払うこととなる税込の金額なども明記しましょう。
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有効期限の記載がない場合はどうする?
見積書に有効期限が書いてなくても、法的には問題ありません。しかし、民法では期限のない申込みについて以下のように定められています。
(引用)承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。 |
これによると、承諾の期間を定めないでした申込み(有効期限が書かれていない見積書)は、相当な期間を経過するまでは撤回することができません。
「相当な期間」とは、取引内容やお互いの事情などから総合的に考えて判断される期間のことです。廃業するまで撤回できないというわけではありませんが、だからと言っていつでも自由に「撤回します」と言うことはできません。
見積書の有効期限が過ぎた場合の対応方法
有効期限を過ぎた後、双方に取引をする意思が残っている場合には、一般的には見積書を再発行することになります。
見積書を再発行する場合、商品の内容が以前と同じであったとしても、金額を更新することがあります。商品が新しい仕様に更新されていたり、取引先が必要としている商品が変わっていたりする可能性もあるため、注意が必要です。
ただし、有効期限を過ぎても商品や金額などの条件に変更がなければ、見積書を再発行をせずに契約しても構いません。民法第524条では、以下のように定められています。
(引用)申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。 |
過去の見積書は効力を失うものの、承諾を「新たな申込み」とみなします。したがって、条件に変更があれば再発行を行い、変更がなければ契約に進むと考えればいいでしょう。
見積書の有効期限に関係する民法第523条について
有効期限を設定した見積書を作成し、取引先に渡した後に撤回すると、民法に抵触する可能性があります。実際に条文を見てみましょう。
(承諾の期間の定めのある申込み) 第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。 2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。 |
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089#Mp-At_523
民法第523条第1項:承諾の期間
前項で紹介した条文のうち「承諾の期間」とは、見積書の有効期限と捉えることができます。「申込み」は、有効期限のある見積書を作成した発行側が行う申込みと捉えます。
第1項には、期間のある申込みを「撤回できない」とあります。つまり、有効期限のある見積書を発行すると、発行側が取引先に対して契約を申し込んだ状態となり、その後に契約の申込みをなかったことにはできないということを意味します。
民法第523条第2項:承諾の通知
第2項の「承諾の通知」とは、見積書に対して「その内容で契約します」と承諾することを指します。
「承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う」とありますが、これは有効期限の設定された見積書は、その期間を過ぎても承諾する旨の通知がなかった場合、効力を失うことを示しています。
見積書の有効期限の設定における注意点
見積書の有効期限を記載する際、注意したいポイントを2つ紹介します。
価格変動が起こる可能性がある
見積書に記載する有効期限の期間に、法的な決まりがあるわけではありません。数週間から数ヶ月の間で設定することが一般的ですが、1年以上の長期間で設定することも可能です。
有効期限を長く設定しすぎると、原材料や人件費の高騰などで、見積書の作成時と同じ価格で商品を提供することが難しくなるケースがあります。また、期限が先だからという理由で取引先が見積書の検討を後回しにしてしまうこともあるでしょう。
しかし、期限を過ぎた見積書は効力がないため、有効期限を短く設定しすぎると、再発行の手間が生じる可能性もあります。これらの点を踏まえ、状況に即した有効期限を設定することを心がけましょう。
提出前にチェックを行う
作成した見積書に誤りがないかどうか、提出前によく確認することも大切です。特に、商品の単価や金額などに入力ミスがあれば、再度見積書を作成する手間が生じます。
後になって間違いに気づけば、取引先に「どうして金額が変更になるのか?」といった不信感を与えることになりかねません。また、前述した通り、有効期限を設定した見積書は発行側の都合で撤回することはできません。無用なトラブルを引き起こさないためにも、見積書は提出前に入念なチェックを行いましょう。
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まとめ
見積書に有効期限を設定することで、商品の価格変動に対応したり、取引先に契約を促したりする効果があります。有効期限を設定することは必須ではありませんが、できるだけ設定した方が望ましいと言えます。
また、有効期限を設定した見積書は、自社の都合で勝手に撤回できないという点に注意が必要です。見積書の作成方法を把握し、スムーズな取引を行いましょう。
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