会社経営 キャッシュ・フロー計算書とは?基礎知識や読み解き方を徹底解説 最終更新日: 2023/01/21   公開日: 2023/01/21

企業の資金状況を示す「財務三表」のひとつに、キャッシュ・フロー計算書という書類があります。今回はキャッシュ・フロー計算書について、意味や作成する重要性、構成などわかりやすく解説します。損益計算書や貸借対照表との関係性も記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。

キャッシュ・フロー計算書とは?

キャッシュ・フロー計算書とは、会計期間におけるキャッシュの増減を表した会計書類のことをいいます。「期首からどのような要因でキャッシュが出入りしたのか」「期末時点の残高はいくらなのか」を計算するためのものです。

金融商品取引法が適用される上場企業などを除けば作成する義務はありませんが、企業の規模や法人・個人にかかわらず作成すれば資金の把握や資金調達方法の評価に役立ちます。

キャッシュ・フローとは?

キャッシュ・フローとは、文字通り「お金の流れ」という意味があります。ビジネスにおいて、一定期間にお金がどれくらい入り、どれくらい出て行ったのかを表す用語です。具体的には、「キャッシュ・イン(入ってきたお金)」から「キャッシュ・アウト(出ていったお金)」を差し引いた収支のがキャッシュ・フローとなります。

なお、ここでいうキャッシュとは現金・預金だけでなく、換金性が高くなお且つ換金可能な金額がおおよそ分かる資産も含まれます。例えば、3ヵ月以内に満期がくる定期預金や一定の投資信託なども対象です。

先述したキャッシュ・フロー計算書を作成することで、自社におけるキャッシュ・フローを把握できます。その際はいつ・どのような要因でお金が出入りしたのかを明確にするため、「営業活動」「投資活動」「財務活動」という3つの活動に分けてキャッシュ・フローを表示することになっています。

キャッシュ・フローを把握することで、資金繰りを予測して手元の現金不足防止を図ったり、売上債権回収の回収率や売上債権の貸倒にいち早く気が付けたりといったメリットを得られます。逆に把握できていないと、企業活動を円滑に進められなくなる場合もあるため注意が必要です。

営業活動によるキャッシュ・フロー

キャッシュ・フロー計算書で最初に記載される項目が、営業活動によるキャッシュ・フローです。現金での売上取引、現金で支払った給料・賃金・経費などが含まれます。

いわば、本業の営業活動を行ううえで生じたキャッシュの増減を表した項目です。

投資活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の次に記載される項目が、投資活動によるキャッシュ・フローです。現金での固定資産の購入・売却や有価証券の購入・売却、貸付金回収による現金収入などが含まれます。

将来的な利益獲得や自社の成長を図るための投資活動で、「どれだけのキャッシュを支出したのか」これにより「どれくらいのキャッシュを回収したのか」を示す項目です。

財務活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の次に記載される項目が、財務活動によるキャッシュ・フローです。借入金による現金収入・その返済による現金支出、社債発行による現金収入・配当金の支払いによる現金支出などが含まれます。

つまり、「事業のための資金をどのくらい調達してどのくらい返済したのか」「投資を受けた場合はどれくらいのキャッシュを配当金として支払ったのか」などを示す項目となっています。

キャッシュ・フロー計算書の重要性

現金や預金の流れなら貸借対照表、会社の利益なら損益計算書でも確認できます。それでもキャッシュ・フロー計算書を作成するのは、貸借対照表や損益計算書では追いきれないお金の流れも把握することが可能になるからです。

例えば損益計算書では、代金後払いで商品を販売したときにまだお金が入っていなくても「売上があった」として計上します。また、貸借対照表でも「売掛金」が増えるのみとなります。つまり、この2つの会計書類だけでは実際のお金の流れを正確に見ることができないということです。

その結果、「利益」があるにもかかわらず今使えるお金が手元になく、仕入れ代金などの支払いが不可能となり倒産してしまう事態に陥りかねません。逆に帳簿上では赤字経営となっていても、手元にはお金が残っているというケースもあります。

取引の成立と実際に収入を得るタイミングの時間差による、「帳簿上の情報と現状のズレ」を把握して経営に活かすため、キャッシュ・フロー計算書を作成することが大切です。そのうえで、将来の資金計画を策定すれば情報と現状のズレによる倒産を効果的に対策できます。

また、先述したようにキャッシュ・フロー計算書でキャッシュ・フローを把握していれば、打ち上げ債権回収の回収率や売上債権の貸倒といった状況にいち早く気が付けます。必要に応じて早めに現金化をするなどの対策を講じて手元の資金を増やし、資金繰りの健全化につなげることも可能です。健全な資金繰りを続けていれば、金融機関などから融資を受ける際も有利になるため、会社の設備投資や事業拡大を目的とした資金調達も円滑となります。

非上場企業では作成が義務付けられていない

キャッシュ・フロー計算書の作成は、金融商品取引法が適用される上場企業を中心に作成が義務付けられています。その一方で、非上場企業や個人事業主に関しては作成義務の規定がないため、作成しなくても問題ありません。

とはいえ、キャッシュ・フローの把握は健全な資金繰りや黒字倒産のリスクを回避するために必要不可欠です。事業活動を円滑に進めるためにも、キャッシュ・フロー計算書を作成して損はありません。

キャッシュ・フロー計算書の区分別の構造

「キャッシュ・フローとは?」でもご紹介した通り、キャッシュ・フロー計算書は大きく分けて3つの項目に分けてキャッシュ・フローを表示することになっています。

●キャッシュフロー計算書の構造

営業活動本業で生じたお金の動き
投資活動将来的な利益や成長のために生じたお金の動き
財務活動資金調達に関わるお金の動き

「どんなときに得た・流れたお金なのか」に応じて、上記3つの項目に振り分けながら表示します。これにより、自社の成長に必要な投資を事業で稼いだお金でどれくらい賄えているのかを分析することが可能です。

営業活動によるキャッシュ・フローの構造

営業活動によるキャッシュ・フローとは、主に以下のような項目で構成されています。

・税引前当期純利益
・減価償却費
・売上債権の増加額
・仕入債務の増加額
・投資有価証券損益
・固定資産売却損益
・法人税等の支払額
・棚卸資産の減少額
・その他資産や負債の増加額

分かりやすく言えば、本業の活動で得たり流れたりしたお金のことです。また、本業に関わるお金とは言い切れずとも、「投資活動」や「財務活動」に該当しないお金の動きも営業活動の項目に含めます。例えば仕入れや納税のために支払ったお金・災害発生時に受け取った保険金なども営業活動によるキャッシュ・フローです。

併せて知っておきたいポイントとしては、営業活動の項目における2通りの表示方法である「直接法」と「間接法」も挙げられます。

直接法とは、営業活動によるキャッシュ・フローを取引ごとに総額で示す方法です。一方で間接法は、税引前当期純利益から営業外収益・費用や特別利益・損失の営業活動に無関係な部分を相殺します。そのうえで非資金項目などを除外し、売上債権や仕入債権を間接的に加減する形でキャッシュ・フローを求めるやり方です。

比較的作成が簡単な間接法を取り入れるケースが多いですが、「なぜお金が動いたのか」までは把握できません。その点、直接法は各取引を項目として表示する手間がかかる分、お金が動いた要因を把握しやすいです。

営業活動によるキャッシュフローの見方

営業活動によるキャッシュ・フローは本業におけるお金の動きを表しているため、プラスの状態が望ましいです。

プラスの状態なら本業の利益で十分なキャッシュを残せており、そこから新たな投資や借入金の返済をすることも困難ではないと言えます。「外部に頼らなくても本業の稼ぎだけで企業活動が行える」という健全な状態の証明です。

一方でマイナスになっていると本業で十分な稼ぎを得られていないことになるため、外部から借入をしても資金不足で倒産する可能性が考えられます。そのため、早急な対処が必要です。

キャッシュ・フローマージンの計算式

本業での売上高に対して得られたキャッシュの割合を、「キャッシュ・フローマージン」と呼びます。以下の計算式でキャッシュ・フローマージンを算出すれば、自社の儲けが低いのか高いのかを測ることが可能です。

キャッシュ・フローマージン
=営業活動によるキャッシュ・フロー ÷ 売上高 × 100

業種によって望ましい割合は異なりますが、一般的には「6~8%程度」が目安のひとつとされています。継続してこの割合を達成できている会社は、数字上は順調に経営できている会社と考えられています。

投資活動によるキャッシュ・フローの構造

投資活動によるキャッシュ・フローは、以下のような項目で構成されています。

・定期預金の純増減額
・固定資産の売却による収入
・固定資産の取得による支出
・投資や有価証券の取得、売却による支出
・貸付金の実行による支出

上記のように、自社の将来的な利益獲得や成長、資産運用を目的とした投資活動にどれだけのキャッシュが動いているかを表します。

営業活動によるキャッシュ・フローではプラスであることが望ましいですが、投資活動においては「マイナスなら絶対に悪い状態」とは断言できません。会社の維持・成長には、新しい設備の導入などによる支出や貸付金による資産運用などが必要不可欠だからです。むしろ、成長する意欲が強く投資を積極的に続けている会社ならマイナスとなる場合が多いです。

投資活動によるキャッシュ・フローの見方

投資活動によるキャッシュ・フローで重要なポイントは、固定資産の取得や売却による支出です。営業活動によるキャッシュ・フローを構成する「減価償却費」や「減損損失」を、固定資産の取得や売却による支出が上回っていれば投資を積極的に行えているという証明になります。

基本的に投資活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっている企業は、営業活動と財務活動のキャッシュ・フローもプラスでない限りは注意が必要と考えて良いでしょう。例えば営業活動と投資活動がプラスで財務活動がマイナスの状態は、採算が取れない事業の整理や資産売却による借入金の返済などで経営の体力が削られている企業に見受けられます。また、投資活動と財務活動のどちらもプラスの状態は、本業で利益を獲得できておらず固定資産の売却などでどうにか資金繰りを行っているような企業にありがちです。

財務活動によるキャッシュ・フローの構造

財務活動によるキャッシュ・フローは、以下のような項目で構成されています。

・借入金による収入
・借入金の返済による支出
・社債発行による収入
・社債償還による支出
・株式発行による収入
・配当金の支払いによる支出
・自己株式取得による支出

事業のための資金をどれくらい調達し、返済や還元にどれくらいのキャッシュが出ていったのかを表します。ちなみに自己株式取得とは、自社の株式を買い取ることです。自己株式を取得すると、代わりに現金が出ていき自己資本が減少します。

財務活動によるキャッシュ・フローの見方

財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっている状態は、資金調達のために借り入れなどを行っている状況を表します。逆に、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっている場合は借入金の返済を行っている状態です。

一般的に企業の業績が良ければ、営業活動がプラスで財務活動がマイナスの状態となります。借入金の返済額も賄えるほどの利益を、本業で得られていることの証明です。

損益計算書や貸借対照表との関係性

キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書や貸借対照表と連動する書類です。3つの書類における関係性を理解したうえで上手に活用すれば、より精度の高い経営分析が可能になります。

キャッシュ・フロー計算書と損益計算書の関係性

損益計算書とは、一定期の期間に行った事業でどれくらいの損失や利益がどのように出たのかを表す書類です。事業で得た収益から費用を差し引いたお金を「利益」として、経営成績を確認できます。その性質上、営業活動によるキャッシュ・フローと密接に関係する書類とも言えます。

営業活動によるキャッシュ・フローは、損益計算書に記載された税引前当期純利益をもとに、減価償却費などお金の動きに関わらない項目を除いて導き出します。そのため、売掛金の回収が遅れていたり多くの在庫を抱えていたりすると、「損益計算書では利益が出ているのに営業活動によるキャッシュ・フローは赤字」という状態になります。そうなれば資金不足による黒字倒産のリスクが生じるため、早急な対応の必要性を見出せます。

このように、キャッシュ・フロー計算書には損益計算書の情報を補完する役割があります。

キャッシュ・フロー計算書と貸借対照表の関係性

貸借対照表とは、決算日など特定のタイミングにおける自社の資産・負債・純資産の金額や内訳を記す表のことです。資産から負債を差し引いたお金を「純資産」として、自社の財政状態を把握する際に役立ちます。

貸借対照表の「流動資産」や「流動負債」は営業活動によるキャッシュ・フロー、「固定資産」や「投資有価証券」は投資活動によるキャッシュ・フローに対応しています。また、貸借対照表の「現金・預金の合計額」はキャッシュ・フロー計算書の「現金及び同等物」とほぼ同額です。

つまりキャッシュ・フロー計算書で表示されたプラスやマイナスは、貸借対照表の資産や負債の増減に直結しています。ただし、貸借対照表はあくまで「この時点で会社にどれくらいお金があるのか」を示す表です。前期よりも現金が増えているか減っているかは分かっても、なぜそのように動いたのかまでは把握できません。そこで、現金の動きについてそれが営業活動によるものなのか資金調達によるものなのかを把握する際に役立つのが、キャッシュ・フロー計算書ということになります。

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キャッシュ・フロー計算書を1から作成するには、一定期間分の取引を把握できる資料を集めるなど手間がかかります。作成の手間を削減するには、日頃の入出金状況を記録してくれるツールを活用することが大切です。

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まとめ

キャッシュ・フロー計算書とは、会計期間の中でキャッシュ(現金や預金など)がどこで・どれくらい動いたのかが分かる会計書類です。作成が義務付けられているのは上場企業などですが、非上場企業や個人事業主も健全な資金繰りを実現するために作成することが大切です。損益計算書や貸借対照表とも結びつきがある書類なので、この3つを連動させることで経営分析の正確性を向上させられます。キャッシュ・フロー計算書の作成をスムーズにするなら、日頃の入出金を楽に管理できる「INVOY」をぜひご活用ください。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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