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会社員の副業は個人事業主になる方がいい?メリット・デメリットを解説

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副業人材は増加傾向にあります。副業を始めるにあたって個人事業主になるべきか悩まれている会社員の方もいるのではないでしょうか。本記事では個人事業主について確認した上で、個人事業主になるメリット・デメリットを解説していきます。

個人事業主とは

個人事業主とは個人で事業を営み、事業所得を得ている人のことです。

個人事業主は法人を設立せず、個人として事業を営んでいます。例えば、小売業、運送業、修繕業、理容業、デザイナー、ライター、プログラマーなどが挙げられます。

開業届を提出していなくても個人事業主と名乗る分には問題ありませんが、税務署に開業届を提出することで個人事業主と税務上でもみなされます。

なお、開業届の提出の有無にかかわらず、会社員が本業の収入とは別に20万円を超える収入がある場合は確定申告をしなければなりません。

関連リンク:個人事業主とは?フリーランスや自営業との違いやメリット・デメリットも解説!

会社員(サラリーマン)の副業で個人事業主になることはできる?

前述のように会社員(サラリーマン)は開業届を税務署に提出することで個人事業主と税務上でもみなされます。

しかし、副業で個人事業主になることが認められないケースもあります。例えば、公務員の副業は法律において禁止されています。会社員の場合は副業が法律で禁止されているわけではないものの、副業を就業規則で禁止している企業もあります。禁止の理由は企業によって異なりますが、「競業避止義務」「秘密保持義務」「職務専念義務」に基づくことが多いです。就業規則で禁止されているにもかかわらず、副業で個人事業主になると懲戒処分の対象になることもあります。

会社員の副業は開業手続きが必要?

開業届は会社員の副業であっても事業開始の日からひと月以内に提出が必要です。

しかし、実際のところ開業届を提出していない人も少なくないようです。開業時に開業届を提出していない方のほとんどが、所得が課税の対象となる20万円を超えたタイミングで提出していると見受けられます。

開業届を提出していない場合、副業で得た収入を雑所得として税務署に申告できます。アフィリエイトやネットオークションなどで得た収入の場合、本業の収入を上まわらない限りは雑所得としてみなされることが大半です。

会社員をしながら個人事業主になるタイミング

前述のように個人事業主の開業届の提出は必須ではありませんが、会社員をしながら個人事業主になるのはどのタイミングがよいのでしょうか。

副業の所得が年間20万円を超えたタイミングで個人事業主になる方が多いようです。副業で得た収入を雑所得として確定申告することもできますが、個人事業主になることで青色申告特別控除を受けられるなど税制面で優遇されます。また、コロナ禍には個人事業主を支援するための制度がありましたが、こうした制度の利用も開業届を提出していなければ受けられません。

また、年間20万円以上の利益が出た場合、本業化や起業する可能性も出てくるでしょう。副業収入がある程度あるのであれば、長いスパンで考えても開業届を出しておいた方がメリットが多いと言えます。

事業所得としての副業と、それ以外の副業の違いとは

会社員の副業といっても事業所得としての副業と、それ以外の副業があるため、両者がどのように違うのか疑問を思う方もいるのではないでしょうか。それぞれの違いを確認していきましょう。

・所得の区分
個人事業主の事業収入のほとんどが事業所得として扱われますが、その規模によっては副業で得た収入の場合は雑所得として扱われることがあります。事業所得か雑所得かは事業規模や継続性、反復性などといった観点から総合的に判断されます。

会社員の場合、アフィリエイトのような単発的な収入であったり、オークションのような反復性があまりない収入であったりすることも珍しくありません。そのため、収入が雑所得として扱われるケースも多々あります。

・確定申告の申告書類
確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告は青色申告特別控除(65万円の特別控除、青色10万円控除)の対象となるため税制面でお得です。また、赤字が出た場合は3年間の繰り越しも認められます。

一方、雑所得は白色申告しかできないため青色申告の場合よりも税負担が重くなることもあります。

関連リンク:雑所得とは一体なに?計算方法や税率について徹底解説

個人事業主として副業をするメリット・デメリット

会社員が副業で個人事業主になることにはメリットとデメリットがあります。メリット、デメリットをよく確認し、自身が副業で個人事業主になるべきなのか今一度検討してみてください。

個人事業主として副業をするメリット

必要経費の計上が認められる

会社員が個人事業主になれば副業で使用する物品の費用を経費に計上し、収入から差し引けます。税金は収入から経費を差し引いた所得分にかかるため、経費計上による節税効果を得られます。

例えば、副業の仕事で使うパソコンやタブレット、スマートフォン、書籍、文房具なども経費に計上可能です。また、自室を副業の事務所としている場合は家賃や水道光熱費、消耗品の一部も経費になります。

青色申告特別控除を利用できる

個人事業主になれば青色申告が認められます。青色申告は白色申告よりも最大で65万円の特別控除を受けられるため税金面でお得です。

青色申告特別控除を使うことで課税対象となる金額を抑えられるため、手元に残るお金が多くなることもあります。

本業の所得と副業の所得を損益通算できる

損益通算とは異なる収入源の利益と損失を相殺することです。副業で個人事業主をしている会社員の場合、会社からの所得と副業の事業所得が対象になります。

例えば、副業を始めてすぐは初期投資費用などで収入よりも経費の方が割高になることも多いです。このケースでは会社からの給与と副業で生じたマイナス分を相殺でき、所得税や住民税の負担を軽くできます。副業収入がなく、経費によってマイナスになったとしても損をしたと落ち込むばかりではなく、税負担が軽くなったと前向きな気持ちになります。

家族への給与が経費として認められる

会社員が個人事業主として請け負っている業務を家族に手伝ってもらった場合、青色事業専従者給与を利用することで家族に支払った給料を経費としてみなせます。

会社員をしながら個人事業主として業務をするのは大変なことであり、家族のサポートが必要な状況に陥ることもあるかもしれません。家族への給与が経費としてみなされるのであれば、家族に業務を手伝ってもらいやすくなります。

将来的な起業に向けての準備になる

会社員をしながら副業で個人事業主をしている方の中には将来的に起業したいという目標がある人も多いと見受けられます。

個人事業主として帳簿付けや資金繰りなどを自分で行なうことで、起業における不安が軽くなる他、起業後は経理業務や事務作業をスムーズに進められます。

また、個人事業主として業務に従事していると、自分が会社員としての適性が強いか個人事業主としての適性が強いか見えてくることもあります。

赤字を3年間繰り越せる

副業の所得申告において青色申告を利用することで、事業の赤字を翌年から最長3年まで繰り越せます。

例えば、令和5年に10万円の赤字が出た場合、令和6年が20万円の黒字だったとしても、この年に前年度分の10万円差し引けます。つまり、令和6年の課税対象額は10万円になります。

個人事業主として副業をするデメリット

青色申告は複雑で分かりにくい

前述のように個人事業主になれば青色申告の対象となり税制面で優遇されます。しかし、青色申告で最大65万円の控除を受けるには、白色申告の単式簿記と比べて複雑な複式簿記で帳簿をつけなければなりません。

白色申告であれば簡易簿記で問題ないため、簿記の知識がない人や経理作業に苦手意識がある人も容易に行えます。また、青色申告のように税務署で申請手続きを確定申告前に行う必要もありません。

しかし、近年では会計ソフトが充実しているため、会計ソフトを活用すれば簿記の知識がない人も複式簿記での帳簿付けを負担なく行えるでしょう。

疲労が増大する可能性がある

会社員が個人事業主も兼ねる場合、本業に加えて副業の業務をこなさなければならないためハードになります。また、副業のコア業務に加えて、経理業務を行うのは容易なことではありません。場合によっては睡眠時間や休息時間を削って、副業の業務や確定申告に向けた準備が必要になります。

忙しい人の中には税負担が多少重くなっても、比較的容易に完了する白色申告の方がメリットを感じる人もいます。

失業保険の対象外になる

会社員が本業の仕事を失うと失業保険が給付されます。しかし、個人事業主として開業している場合、会社を退職したとしても無職とはみなされないため失業保険の対象にはなりません。

副業収入分だけで生活できるのであれば問題ありませんが、お小遣い程度の収入の場合は個人事業を廃業し、失業保険をもらう方がよいでしょう。

なお、廃業届を提出したにもかかわらず副業のビジネスを継続している場合は失業保険の不正受給とみなされます。

税金の負担が重くなる

会社員をしながら副業で多くの収入を稼ぎたい方は、税負担が重くなる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

個人事業主に課される税金は累進課税となりますので、個人事業主としての収入が増えれば増えるほど所得税の税率も高くなります。

また、所得が年間290万円を超えた場合は個人事業税が発生します。その他にも、所得が増えれば児童手当などの給付金を受け取れなくなることもあります。場合によっては、収入は増えたものの、自由に使えるお金は以前とさほど変わらないということもありえます。

会社員が個人事業主として副業する際に、必要な準備や手続き

ここでは、会社員が個人事業主として副業する際に必要な準備や手続きについて解説していきます。

開業前の準備・手続き

出典:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf

会社員が開業するために必要な準備・手続きは開業届の提出のみです。開業届を提出すれば個人事業主を名乗れますが、実際に個人事業主として仕事に従事するとなるとさまざまな準備が必要になります。

以下に開業前に必要な準備・手続きをまとめましたので確認してください。

・開業届を入手し、必要事項を記入して税務署に提出する(事業開始から1カ月以内)
・青色申告承認書を記入し、税務署に提出する
・クレジットカードを準備する
・経理業務の方法を検討する(会計ソフトの利用の有無)
・屋号を決める

開業届の提出方法には窓口への持参と郵送、e-Tax上での送信(ネット提出)の3種類があります。ご自身にとってもっとも都合の良い方法で提出してください。

また、青色申告を受けたい人は開業届と一緒に青色申告承認申請書を税務署に提出しておくと安心です。青色申告承認申請書の提出期限は事業開始から2カ月以内と定められていますが、提出を忘れないためにも早めの提出がおすすめです。

開業後の手続き

開業後については以下の手続きを行います。

・事業用の銀行口座の開設(必要な場合に限る)
・確定申告に使う会計ソフトを購入(必要な場合に限る)

個人事業主が事業用の銀行口座を業務で使わなければならないというルールはありません。しかし、事業用の口座と本業の勤務先企業から給与が振り込まれる口座を分けておくことで、帳簿管理や経理業務がスムーズになります。また、事業用の口座は取引先から信用を得やすいという利点もあります。

確定申告や経理業務は会計ソフトを使わなくても可能ですが、専用のソフトを使用することで経理業務にかかる時間や負担を大きく軽減できる他、確定申告書のミスを防ぐこともできます。

個人事業主としての副業、確定申告はどうなる?

会社員の方が副業で個人事業主になった場合、勤務先とは別に所得が20万円を超えたら確定申告が必要になります。本業の勤め先で行われる年末調整はその企業の分しか対象にならないため、副業所得については所得税の精算を自分で行わなければなりません。

副業による所得が20万円以下の場合は確定申告を行う義務はありませんが、確定申告を行うことで源泉徴収されていた分の金額が還付されます。

関連リンク:
会社員の副業に確定申告は必要?判断基準、手順、注意点などを解説
副業はいくらから確定申告が必要?税金の計算方法や20万以下の場合も解説

経理業務の課題解決はINVOYにおまかせ

個人事業主として業務に従事している場合、副業であっても経理業務は避けて通れません。本業と副業の業務に加えて、経理を行うのは大きな負担でしょう。

経理業務に負担を感じている方はFINUX社が提供するINVOYを活用することで請求書発行から受取、支払いまでを簡略化できるなど、経理業務における時間や負担を軽減できます。また、受け取った請求書をデータ化し、そのままカードで支払うこともできるため、支払い漏れも回避しやすくなります。

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まとめ

物価高や円安などによる生活苦からの脱出や自身のスキルアップを理由に副業で個人事業主になりたいと考える会社員は増えています。副業で個人事業主になることで余剰資金が増え、娯楽や貯蓄にまわせるお金も増えます。

とはいえ、本業が終わった後や休日に副業の仕事を行うのはとても大変なことです。経理業務はツールを活用して簡略化するなど、業務負担を軽減するための工夫も両立を成功させるための鍵となります。

この記事の投稿者:

reg@olta.co.jp

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