
仕事中に負ったけがの治療費を自分ですべて支払ったとき、そのお金を確実に取り戻す方法があります。労災様式7号を正しく作成して提出すれば、立て替えた金額のすべてがあなたの口座に振り込まれます。家計の不安を解消し、治療に専念できる将来を手に入れましょう。
これまで多くの労働者が、慣れない書類作成に戸惑いながらも、この手続きを経て無事に医療費の還付を受けています。実際に窓口で高額な支払いを済ませた方々が、この制度を利用して金銭的な負担をゼロにしています。
正しい手順を知れば、事務手続きが得意でない人でも、漏れなく申請を完了できる実在性の高い仕組みです。「書類が難しそう」「会社にどう頼めばいいかわからない」と不安に思う必要はありません。この記事では、項目ごとの書き方や注意点を専門用語を避けながらわかりやすく紹介します。手順通りに進めれば、誰でも再現性をもってスムーズに手続きを終えることができます。
目次
労災様式7号の役割と制度の仕組み
労災保険制度における様式7号は、正式名称を「療養補償給付たる療養の費用請求書」と言います。この書類は、仕事中に発生したけがや病気の治療費を、労働者が一時的に全額立て替えた場合に、その費用を国に請求するために使います。
本来、労災保険の対象となる治療は、労働者がお金を払わずに受けられるのが原則です。しかし、特定の条件下では窓口で10割の支払いが発生することがあり、その際の救済措置としてこの様式が存在します。
日本の労働法では、業務上のけがに対する責任は事業主にあると考えられています。しかし、個別の会社がすべてを補償するのは負担が大きいため、国が保険制度を運営しています。
様式7号は、その保険金を労働者本人が直接受け取るための重要な申請書です。これを知っているかどうかで、手元に残るお金の額が大きく変わります。
なぜ様式7号が必要になるのか
多くの人が、病院では健康保険証を出して3割の負担で受診することに慣れています。しかし、仕事中のけがである業務災害に対して健康保険を使うことは法律で認められていません。
労災指定病院であれば、書類を出すだけで窓口負担はゼロになります。ところが、受診した病院が「労災指定」を受けていない場合、病院は国に直接費用を請求できません。そのため、患者であるあなたが一度全額を支払い、後から国に「立て替えた分を返してください」と申請する必要があります。この申請に使うのが様式7号です。
急な事故で救急搬送された先が、たまたま指定外の病院だったというケースは珍しくありません。そのような不測の事態においても、労働者が損をしないように設計されているのがこの制度です。
業務災害と通勤災害の明確な境界線
労災には「業務災害」と「通勤災害」の2種類があり、使う書類が厳格に分かれています。様式7号は、あくまで「業務災害」のための書類です。仕事をしている最中や、会社の施設内で休憩しているときの事故などがこれに該当します。
一方で、家から会社へ向かう途中や、仕事帰りの道中でのけがは「通勤災害」となります。通勤災害の場合は、様式16号の5という別の書類を使わなければなりません。様式を間違えると労働基準監督署から差し戻されてしまい、お金が戻るのが遅れてしまいます。
まずは自分のけががどちらに該当するかを正確に判断しましょう。寄り道をせずに会社へ向かっていたか、業務の命令に従っていたか、という点が判断の分かれ目になります。
労災指定病院との仕組みの違いを理解する
労災指定病院と指定外の病院では、事務的な流れが全く異なります。指定病院では、国と病院が直接つながっており、労働者はその間を通る「様式5号」を提出するだけで済みます。これを「療養の給付」と呼び、現物(医療サービス)をそのまま受け取る仕組みです。
一方、指定外の病院では、労働者が病院に10割の現金を支払い、その後で国から現金を受け取ります。これを「療養の費用の請求」と呼び、現金で払い戻しを受ける仕組みです。様式7号はこの現金給付の手続きを担う唯一の書類です。指定外の病院だからといって、労災が使えないわけではありません。ただ手続きの順番が「先払い・後受け取り」になるだけだと考えれば、不安は少なくなります。
様式7号で請求できる費用の詳細
様式7号を使って請求できるのは、診察代だけではありません。治療に直接必要だと認められる幅広い費用が対象となります。ただし、何でも認められるわけではなく、一定の基準があります。ここでは、どのような費用が還付の対象になるのかを詳しく見ていきましょう。
診察代から手術代までの範囲
労災保険の療養補償給付には、多くの費用が含まれます。まず、医師による診察や検査に要した費用です。レントゲン検査や血液検査、MRI撮影など、治療方針を決めるために必要な検査はすべて含まれます。
次に、処置や手術の費用です。傷口の縫合やギプス固定、複雑な手術にかかった費用も対象となります。
また、入院が必要になった場合の入院費や食事代も、一定の範囲内で認められます。これらはすべて、病院から発行された領収書の金額に基づいて計算されます。治療のために必要不可欠なステップであれば、基本的にはすべて認められると考えて良いでしょう。自分の判断ではなく、医師の指示に基づいた治療であることが重要です。
処方薬と院外薬局の取り扱いルール
病院の外にある院外薬局でお薬を受け取った場合も、そのお薬代を請求できます。この際、注意しなければならないのが書類の枚数です。病院での診察代を請求するための様式7号とは別に、薬局での薬剤費を請求するための様式7号も作成しなければなりません。
つまり、病院と薬局の両方で自費を支払ったなら、様式7号を2セット用意することになります。どちらも「指定外」の機関であれば、合算して一枚に書くのではなく、それぞれの機関ごとに書類を分けるのが原則的なルールです。薬局でもらう領収書には、調剤技術料や薬剤料などが細かく記載されています。それらの総額を正しく転記しましょう。お薬代は意外と高額になることもあるため、忘れずに申請を行う必要があります。
認められない費用の具体例
労災保険はあくまで「治療」を目的とした制度です。そのため、治療に直接関係のない費用は様式7号で請求しても認められません。
代表的なものとして、個室を希望した際の「差額ベッド代」があります。また、会社に提出するための「診断書作成料」も、療養の費用には含まれません。入院中のパジャマ代やテレビ代といった個人的な消耗品費も対象外です。領収書の中にこれらの項目が含まれている場合は、その金額を除いた合計額を書類に記入する必要があります。
何が対象で何が対象外か迷ったときは、労働基準監督署の窓口で相談するのが最も確実です。基本的には「医学的に見て治療に絶対必要なもの」に限定されると覚えておきましょう。美容目的や、より高い快適性を求めた費用は自己負担となります。
健康保険から労災への切り替え手順
仕事中のけがであるにもかかわらず、つい癖で健康保険証を出して受診してしまうケースは非常に多いです。この場合、窓口で支払ったのは3割分だけですが、そのままでは様式7号を使うことができません。労災は10割負担が基本だからです。間違えて健康保険を使ってしまったときの修正手順を解説します。
病院の窓口で精算し直す方法
まず、受診した病院の窓口に早急に連絡を入れましょう。「仕事中のけがだったので、健康保険から労災に切り替えたい」と伝えます。同じ月内の受診であれば、病院側で健康保険の精算を取り消し、労災への切り替えに対応してくれることがほとんどです。
この場合、窓口で残りの7割分を支払い、代わりに10割分の領収書を受け取ります。その領収書を添えて様式7号を作成すれば、後から10割分がすべて返ってきます。この方法が最も手間がかからず、スムーズに解決します。もし月をまたいでしまった場合でも、病院によっては対応してくれることがあります。まずは諦めずに病院の事務担当者に相談してみることが大切です。
健康保険組合へ返還金を支払う流れ
もし病院での切り替えができないと言われた場合は、より公的な手続きが必要になります。まず、自分が加入している健康保険組合に連絡し、「労災への切り替えのため、健保が負担した7割分を返したい」と伝えます。すると、健保組合から納入告知書という振込用紙が届きます。その用紙を使って、健保組合に7割分のお金を振り込んでください。
振込が終わると「領収証書」が発行されます。この「健保への返還金の領収書」と「病院でもらった3割の領収書」の両方を添えて様式7号を提出することで、最終的に10割分が還付されます。少し面倒な手順ですが、これを怠ると労災保険の申請が受理されません。一つひとつのステップを丁寧に進めていくことが、確実な還付への道です。
放置することのリスク
健康保険を使ったまま放置することは、法律違反になる可能性があります。また、後から「やはり労災だった」と判明した際に、過去に遡って精算を求められることもあります。その時の手間は、今手続きを行うよりもはるかに大きくなります。気づいた時点で、速やかに行動を開始しましょう。正しい保険を使うことは、労働者としての義務でもあります。
労災様式7号の具体的な書き方マニュアル

様式7号は記入欄が多く、一見すると複雑に見えます。しかし、書くべき内容はあなたの個人情報と、事故の状況、そして会社と病院の情報に集約されます。ここでは、項目ごとに迷いやすいポイントを重点的に解説します。
労働者情報の正確な記入
書類の上半分は、あなたの基本情報を書く欄です。氏名、生年月日、住所を住民票の通りに正確に記入してください。ここで特に注意したいのが「給付基礎日額」という欄です。これは労災の給付額を計算する際のものですが、自分でお金を立て替えた際の還付に限っては、空欄のままで構いません。労働基準監督署があなたの賃金データから自動的に計算してくれるからです。
また、振込先口座は必ず本人名義のものを選んでください。家族名義や会社名義の口座には振り込んでもらえません。銀行名、支店名、口座番号、そして口座名義のフリガナを間違いなく記載しましょう。
災害発生状況の記述のコツ
この欄は、労働基準監督署が「これが本当に労災かどうか」を判断する最も重要な部分です。「いつ」「どこで」「どのような作業中に」「どんな原因で」「どの部位をけがしたか」を具体的に書きます。例えば、「令和○年○月○日 10時、社内倉庫にて、棚の上にある荷物を取ろうと脚立に登った際、バランスを崩して転落し、右足首を骨折した」といった具合です。
主観的な感想ではなく、事実を客観的に記述するのがコツです。監督署の担当者は、この説明文を読み、会社の事業内容やあなたの職種と矛盾がないかを確認します。もし、仕事とは全く関係のない私的な行為中の事故だと判断されると、支給は認められません。当時の状況を思い出しながら、誰が読んでも理解できるように書きましょう。
マイナンバーの取り扱い
現在の様式7号にはマイナンバーの記入欄があります。基本的には記入が推奨されていますが、もし記入を避ける場合は、運転免許証のコピーなどの本人確認書類を別途添付する必要があります。
会社を通じて提出する場合、マイナンバーを見られたくないという人も多いでしょう。その場合は、マイナンバー欄を空欄にして会社に渡し、後で自分で監督署の窓口へ持参した際にその場で記入するという方法もあります。自分の情報の安全を守りつつ、手続きを円滑に進める方法を選択しましょう。
監督署の窓口では、マイナンバーの記入について柔軟に対応してくれます。不安があれば、事前に電話で問い合わせてみるのも良いでしょう。個人情報の保護は、国も非常に重視しているポイントです。
事業主の証明をもらう際のポイント
書類の最下部には、事業主の署名と捺印をもらう欄があります。これは、「この災害が間違いなく業務中に起きたことを会社として認めます」という証明です。この欄を埋めない限り、基本的には受理されません。
会社への依頼方法
多くの会社では、総務部や労務担当者がこの事務を代行してくれます。「仕事中のけがで自費を支払ったので、様式7号の事業主証明をいただきたい」と依頼しましょう。会社側も労災が発生したことは把握しているはずですので、スムーズに応じてもらえるはずです。
もし小さな会社で担当者が不慣れな場合は、この記事を参考に見せても良いでしょう。会社が証明を出すことは、会社の義務でもあります。これを拒否することは、労働者に対する不当な扱いとみなされる可能性があります。冷静に、かつ毅然とした態度で協力を求めましょう。必要であれば、労働基準監督署のアドバイスを仰ぐことも有効です。
会社が証明を拒否した場合の対策
稀に、労災を隠したいなどの理由で会社が証明を拒否することがあります。これは「労災隠し」につながる違法な行為です。
もし証明がもらえない場合は、その欄を空欄にしたまま「事業主が証明を拒否した理由書」という書面を自分で作り、監督署に相談してください。監督署が調査を行い、事実確認ができれば、会社の証明がなくても受給することが可能です。
決して諦めず、公的な機関を頼りましょう。あなたが泣き寝入りする必要はありません。法は、正当な権利を主張する労働者を守るために存在します。
提出方法と受理後の流れ
書類がすべて完成し、領収書の原本も揃ったら、いよいよ提出です。提出先や方法を間違えないようにしましょう。
管轄の労働基準監督署へ提出
提出先は、病院の近くの監督署ではなく、「会社の所在地を管轄する労働基準監督署」です。例えば、出張先で事故に遭い、現地の病院で治療を受けたとしても、書類を出すのは自分の会社があるエリアの監督署になります。
提出方法は、窓口への持参か郵送のどちらかを選べます。窓口に持参すると、その場で記入漏れをチェックしてもらえるため安心です。郵送の場合は、配達記録が残る書留などを利用しましょう。
領収書の原本は一点物ですので、紛失を防ぐための配慮が必要です。コピーを手元に残しておくことも忘れないでください。
審査期間と入金の時期
書類を提出してから、実際にお金が振り込まれるまでには、通常1ヶ月から2ヶ月ほどかかります。監督署が内容を精査し、必要に応じて会社や病院に確認を行うためです。
審査が終わると、郵送で「支給決定通知」というハガキが届きます。そこには振り込まれる金額と予定日が記載されています。ハガキが届いてから数日以内に、指定した口座に入金されます。通帳を記帳して、金額が正しいか確認しましょう。
もし申請からあまりに時間がかかっている場合は、提出した監督署の給付係に問い合わせてみてください。進捗状況を教えてもらうことができます。
失敗しないためのチェックリスト
手続きを一度で終わらせるために、提出前に以下の項目を確認しましょう。
- 領収書は原本が入っているか
- 振込先口座番号に間違いはないか
- 事業主の証明(社印)は漏れていないか
- 災害状況の説明は具体的か
- 様式7号の用紙は最新のものか
- 病院用と薬局用で書類を分けているか
- 自分の印鑑(または署名)は漏れていないか
- 連絡先の電話番号は書いたか
- 受診した期間に間違いはないか
- 3割負担ではなく10割負担の領収書か
これらの項目を1つずつチェックするだけで、不備による差し戻しを劇的に減らすことができます。特に領収書の不備は、手続きを大幅に遅らせる原因になります。原本であることを再度確認してください。丁寧な準備が、早い還付につながります。
よくある質問と回答
2年前の領収書でも間に合いますか
労災保険の療養費の請求には「2年」という時効があります。費用を支払った日の翌日から数えて2年以内であれば、申請は可能です。もし手元に古い領収書があるなら、諦めずに計算してみてください。ただし、時間が経つほど事実確認が難しくなるため、早めの申請を心がけましょう。
病院までの交通費も請求できますか
通院にかかった交通費も、一定の条件を満たせば請求できます。ただし、様式7号とは別の「様式7号(3)」という書類を使います。基本的には、片道2キロメートル以上の距離がある場合や、公共交通機関を利用した場合などが対象です。タクシー代が認められるのは、歩行が困難など特別な理由がある場合に限られます。
転院した場合はどうなりますか
転院した場合は、転院先の病院が指定病院か指定外病院かを確認しましょう。転院先も指定外であれば、その病院分として新たに様式7号を作成する必要があります。病院が変わるごとに、一から書類を準備すると覚えておけば間違いありません。それぞれの病院で受けた治療の内容と、支払った金額を正確に分けて管理しましょう。
まとめ
労災様式7号は、あなたが立て替えた大切なお金を取り戻すための大切な鍵です。
最後に重要なポイントを再確認しましょう。
- 様式7号は、指定外病院で10割支払った時に使うものである
- 必ず領収書の原本を添付し、時効である2年以内に提出する
- 会社に事業主証明をもらう必要があり、拒否された場合は監督署に相談する
- 病院と薬局など、複数の機関にかかった場合はそれぞれ書類を作成する
- 入金までは概ね1ヶ月から2ヶ月程度の時間がかかる
仕事中のけがで心身ともに大変な時期に、慣れない書類を書くのは負担に感じるかもしれません。しかし、正当な権利として、支払った費用は1円残らず取り戻すべきものです。
この記事で紹介した手順を一つずつ進めていけば、必ず手続きを完了できます。まずは手元にある領収書を整理し、様式7号の用紙を印刷することから始めてみてください。一歩踏み出せば、お金の不安は解消され、心穏やかに回復を待つことができるようになります。あなたの健康が一日も早く回復することを願っています。



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