
協賛金を受け取った際、「領収書をどう書けばいいのか?」と悩む経理担当者や中小企業オーナー、イベント主催者の方も多いでしょう。協賛金とはイベントや活動を支援するための資金ですが、そのお金を受領した場合には適切な領収書の発行と保管が求められます。
本記事では協賛金の基本から領収書が必要なケース、正しい領収書の書き方、手書きと電子発行の違いや注意点、さらには領収書の基礎知識や収入印紙の取り扱いまで、ビジネスライクな文体で丁寧に解説します。
実務にそのまま活用できる具体例やフォーマット、よくあるミスとその回避方法も盛り込みましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
協賛金とは何か?その定義と提供する目的
協賛金(きょうさんきん)とは、企業や個人が祭りやイベント、スポーツ大会、展示会、慈善事業などの運営を支援するために提供する金銭的援助のことです。簡単に言えば、ある企画や活動を成功させるために、第三者がスポンサーとして協力するためのお金です。
例えば、地域のお祭りで企業が協賛金を出すと、その企業名がパンフレットや会場に掲示される、といった形で支援者として紹介されることが一般的です。
協賛金を提供する目的や背景には、単なる善意による支援だけでなく企業側のメリットもあります。協賛企業は、自社の名前やロゴをイベントのプログラムや会場看板、パンフレット、ウェブサイトなどに掲載してもらうことで広告・宣伝効果を得ることができます。
協賛金の額が大きいほど、広告スペースが大きく取られたり優遇されたりするケースもあり、企業の認知度向上やイメージアップにつながります。また、日頃から取引のある取引先企業や地域社会への貢献・関係維持(いわゆる交際目的)として協賛金を支出する例もあります。
一方で、寄附金という言葉もありますが、協賛金と寄附金は若干ニュアンスが異なります。協賛金は上述のように支援する側にも何らかの見返り(名前の掲載や広告効果)があるのに対し、寄附金は純粋な支援であり見返りを伴わないものを指すのが一般的です。
経理処理上も、協賛金は内容によって「広告宣伝費」「交際費」「寄附金」等に振り分けられますが、「協賛金」という勘定科目は存在しません。
したがって、協賛金を受け取った場合でも支払った場合でも、その内容に応じて適切な勘定科目(例えばイベントでの広告掲出があれば「広告宣伝費」、取引先との関係強化目的なら「交際費」、純粋な寄附的性格なら「寄附金」等)で計上する必要があります。
企業が協賛金を提供する背景にはこのような会計上・税務上の扱いも関係しており、提供側・受領側ともに正しい処理が求められます。
協賛金に領収書が必要となるケースとその理由
イベント主催者などが協賛金を受け取ったとき、領収書を発行すべきケースとはどのような場合でしょうか。また、協賛金に領収書が必要となる理由は何でしょうか。
まず結論から言えば、協賛金を受け取ったら基本的に領収書を発行するのが望ましいです。特に、協賛金を支払った側(協賛企業や支援者)が法人や事業者の場合、領収書はほぼ必須と言って良いでしょう。理由は以下の通りです。
税務上の証拠書類として必要になるため
企業が協賛金を支出した場合、それが広告宣伝費や交際費など経費として損金算入できるケースがあります。税務調査などで経費計上の根拠を示す際に、領収書は重要な証拠書類です。
もし領収書(またはそれに準ずる受領証)がなければ、支出を経費として認めてもらえず、結果として納める税金が増えてしまう可能性があります。協賛金が寄附金的な扱いになる場合でも、一定の範囲で損金(経費)算入が認められることがありますが、その際も領収書の保存が求められます。
会計処理・経理上の記録のため
法人は法律上、取引の記録を一定期間保存する義務があります。特に金銭の出入りに関する伝票や証憑書類(領収書や請求書など)は原則7年間(法人税法等で定められた期間)保存しなければなりません。
協賛金の支払いも会社にとっては一つの取引ですから、支払った証拠として領収書を受け取り保管する必要があります。協賛金受領側(イベント主催者等)も、発行した領収書の控えを同様に保存する義務があります。
協賛企業側の内部手続きのため
企業によっては、協賛金を支払う際に請求書(請求書兼協賛依頼書)の提出を求めてくることがあります。これは社内の支払いフロー上、何らかの請求書がないと支出処理ができないためです。
領収書と請求書の違いを整理すると、請求書は「○○円を支払ってください」という請求の明細書、領収書は「○○円を確かに受領しました」という受取の証拠書です。協賛金の場合、原則として領収書があれば請求書は不要です。
協賛企業が領収書を受け取れば、支払いの事実が証明されますので重ねて請求書を発行する必要はありません。
ただし、協賛企業の経理処理上どうしても請求書が必要な場合は、主催者側で協賛金の請求書を発行し(支援依頼書として送付し)、入金後に領収書を改めて発行する対応をとるケースもあります。いずれにせよ、最終的には領収書の発行によって金銭の授受を確定させるのが重要です。
協賛者(個人)の希望による場合
協賛金の支払い主が個人事業主や個人のスポンサーであっても、領収書の発行を求められることがあります。
個人事業主であれば経費処理のために必要ですし、個人であっても領収書を記念品代わりに受け取りたい、あるいは確定申告で寄附金控除等に使いたいというケースも考えられます(※寄附金控除は国や自治体、認定NPO法人等への寄附でないと使えない場合が多いですが、いずれにせよ金銭を渡した証明として欲しいというニーズはありえます)。
以上のように、協賛金を受け取った側は相手から求められなくても領収書を発行するのが原則と考えておきましょう。発行しないでいると、後日「領収書を発行してほしい」と依頼されて慌てることにもなりかねません。
また、協賛金は寄附や広告費として税務上デリケートな支出でもありますから、きちんと書式を整えた領収書を発行・保存しておくことが双方の安心につながります。
協賛金の領収書の書き方(宛名・日付・金額・但し書きなど)
協賛金の領収書の書き方は、基本的には通常の領収書と同じです。ただし、協賛金特有の事情を踏まえ、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、領収書に記載すべき基本項目と、その具体的な書き方・注意点を順を追って解説します。
実際に手書きする場合でも、パソコンで作成する場合でも同じ項目を満たすようにしましょう。
領収書には以下の内容を必ず含めます。
タイトル(証憑名)と番号
書類の一番上には「領収書」または「領収証」と明記します。あわせて管理用に通し番号(No.)を振っておくと便利です(市販の領収書にはあらかじめ番号が印刷されています)。番号は社内管理用ですが、あれば後で照合しやすくなります。
日付(受領日)
実際に協賛金を受け取った日付を記入します。和暦(令和○年○月○日)でも西暦(20XX年XX月XX日)でも構いませんが、公的な書類ですので「令和」など和暦で書くケースも多いです。重要なのは実際の入金日や受領日と一致させることです。
例えば請求書を発行して先に振り込みを受けた場合は、振込入金日の日付で領収書を発行します。日付が間違っていると、会計帳簿との整合が取れずトラブルのもとになります。
宛名(支払った人・組織の名前)
領収書を発行した相手先の正式名称を記入します。協賛金の場合、多くは協賛してくれた企業名や団体名になるでしょう。正式な法人名(株式会社◯◯ など)を「◯◯株式会社 御中」のように書くのが一般的です(「御中」は会社・団体宛ての場合に付ける敬称です)。個人名の場合は「山田太郎 様」と「様」を付けます。
宛名は空欄や「上様」など曖昧な書き方は避け、必ず実際の支払者を特定できる名称を書きましょう。協賛金は通常事前にやり取りがあるため宛名不明ということは少ないですが、正式名称に略称を使わないよう注意します(例:〇〇県体育協会に対して「県体協」などと書かない)。
金額(受領金額)
実際に受け取った協賛金額を税込金額で正確に記入します。金額はアラビア数字で構いませんが、改ざん防止の観点から工夫が必要です。具体的には、数字の前に「¥」や「金」と記載し、後ろに「也(なり)」や「-」「※」などを付ける習慣があります。
例えば協賛金30万円の場合、「金 ¥300,000 也」といった書き方をします。「也」は漢字の〆(しめ)に相当し、それ以上文字を続けられないようにする効果があります。
また、3桁ごとにカンマ区切りを入れることで数字を明瞭にし桁の読み違いを防止します(1000000だと読みづらいですが1,000,000なら一目瞭然です)。可能であれば金額は消費税額を含む総額を記載し、必要に応じて領収書の余白や下部に内訳(税抜金額と消費税額)を併記すると親切です。
特に協賛金が課税取引(後述のように広告扱いの場合など)に当たる場合は、消費税額を明示しておくと相手先で経理処理がしやすくなります。
但し書き(支払い目的や内容)
但し書きとは、領収書における「〜として」「〜の代金として」というように支払われた金銭の用途や理由を示す説明文です。協賛金の場合、ここが非常に重要なポイントになります。ただ「協賛金」とだけ書くのではなく、何の協賛金かを具体的に記載するようにしましょう。
例えば、○○祭りの協賛金であれば「○○祭協賛金として」、地域イベントの広告協賛なら「○○イベント広告協賛金として」、スポーツ大会であれば「第◯回◯◯カップ協賛金として」など、イベント名や用途を明示します。
このように書くことで、協賛企業側でもどの勘定科目で処理すべきか判断しやすくなる利点があります(広告協賛と明記されていれば広告宣伝費、寄附的協賛であれば寄附金等)。但し書きに曖昧な表現しかないと、後日経理担当者が「これは一体何の支払いだったか?」と混乱する原因にもなるため注意しましょう。
※但し書きには必要に応じて「非課税取引」や「課税取引」である旨を補足しても良いです。例えば純粋な寄附的協賛金で消費税非課税なら「(本協賛金は消費税非課税)」と付記したり、広告協賛で消費税課税なら消費税額を明示したりします。ただし長くなりすぎる場合は無理に書かず、重要な点(イベント名や広告の有無)だけ記載すれば十分です。
発行者(受領側の情報)
領収書を発行するあなた(受領者側)の情報も明記します。通常、領収書の末尾か下部に、発行者の住所・名称・押印欄があります。ここにはイベント主催者の正式名称(団体名や会社名)、所在地や連絡先(住所、電話番号)を記載しましょう。
加えて、社印や団体の印鑑を押すのが一般的です。会社の場合は社判(角印)や代表者印を、任意団体など印鑑がない場合は代表者のサインでも構いません。
近年、電子発行では押印省略も増えていますが、紙で発行する場合は押印があると正式な証憑書類として信用度が上がります。発行者欄には単に団体名を書くより、「○○イベント実行委員会(住所〇〇市…)」といった具合に誰がどこで発行した領収書かが一目で分かる情報を記載しましょう。
収入印紙(必要な場合のみ)
紙の領収書で受領金額が一定額以上の場合は、忘れずに収入印紙を貼付します。収入印紙とは印紙税という税金を納めるための切手のような証票です。
領収書は法律上「金銭の受取書」に該当し、5万円以上の受取金額を証明する領収書には所定額の収入印紙を貼ることが義務付けられています(印紙税法)。
例えば5万円以上100万円以下の領収書には200円分の印紙を貼る、といった細かいルールがあります(後述の「基礎編」で詳述)。協賛金は高額になりやすいので注意しましょう。印紙を貼ったら、発行者の社印や署名で消印(けしいん)を行います。
消印とは、貼った印紙と領収書用紙の両方にかかるようにハンコを押すことで、再利用防止のために行います。例えば収入印紙を貼った上から社判を押すか、またはボールペンで跨るように会社名を書いても構いません。印紙の貼り忘れは法的に厳しくペナルティの対象となりますので、金額が大きい協賛金領収書を発行する際は必ずチェックしましょう。
以上が領収書の基本的な構成要素と書き方です。では、具体的にどのような形式になるか、領収書の記載例を示してみます。
領収書 No.0001
令和5年10月1日
ABC株式会社 御中
金 ¥100,000 也
但し 第5回〇〇地域交流フェスティバル協賛金として
発行者:〇〇地域交流フェスティバル実行委員会
住所:〇〇県〇〇市〇〇町1-2-3
TEL:00-0000-0000
(印)
上記は架空の「〇〇地域交流フェスティバル」の協賛金100,000円を受領した際の領収書例です。宛名、日付、金額、但し書き、発行者情報が盛り込まれ、金額には「¥」「也」が付き、5万円超なので収入印紙(200円相当)を貼付する想定です。このような形式を参考に、自社・自団体用に書式をアレンジするとよいでしょう。
※なお、領収書をインボイス(適格請求書)として発行する場合の注意も触れておきます。2023年10月から始まったインボイス制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために適格請求書の発行・保存が必要です。
協賛金が課税取引(広告費扱い等)であり、かつ発行者がインボイス発行事業者登録をしている場合は、領収書にも適格請求書の要件を満たす記載をするのが望ましいです。具体的には、領収書に発行者の登録番号(Tから始まる13桁の番号)を記載し、但し書きや別欄に適用税率と消費税額を明示します。
こうすることで、その領収書自体が請求書と同等の役割を果たし、協賛企業側は消費税の仕入税額控除を受けることができます(※受領側が課税事業者の場合)。
一方、協賛金がそもそも非課税(寄附的なもの)であればインボイス要件は関係ありませんし、発行者がインボイス登録していない任意団体等であれば従来通りの領収書を発行することになります。この点は発行者側ですぐに対応できることではありませんが、協賛企業との事前の取り決めとして「領収書はインボイス対応か否か」を確認しておくと丁寧でしょう。
手書き領収書と電子発行(PDFなど)の違い・有効性と保存方法
近年は紙の領収書だけでなく、PDFなど電子データで領収書を発行するケースも増えてきました。手書きと電子発行(デジタル発行)ではどのような違いがあり、それぞれどのように扱えばよいかを解説します。
手書き領収書の場合
手書き(または紙で印刷)する領収書は、従来から馴染みのある形式です。市販の領収書の冊子を使ってボールペンで記入したり、パソコンで作成したものを印刷して押印する形になります。手書き領収書のポイントは以下の通りです。
法的効力
手書きであろうと内容が適切に書かれていれば、もちろん正式な領収書として法的に有効です。自署・押印があることで信用度も高まります。
収入印紙の貼付
前述の通り、紙の領収書で金額が5万円以上の場合は収入印紙を貼る必要があります。手書き領収書ではこの対応を確実に行いましょう。
現物の受け渡し
紙の領収書は原本が1枚きりです。相手に郵送する場合は紛失しないよう配慮が必要です。控えを手元に保管し、相手には原本を渡します(控えには「控」と押印するケースもあります)。
保存方法
受領者側(発行者側)は控えを、支払者側(協賛企業側)は受け取った原本を、それぞれ紙のまま保管します。法定保存期間は通常7年間です。紙のままファイルや箱に綴じて保管することになります。
その他
手書きの場合、消せる筆記具は使わない(フリクション等はNG)、修正がある場合は二重線+訂正印で対応する、など基本的な文書管理のマナーを守るようにします。なるべく丁寧な字で読みやすく記入し、特に金額を間違えたときは書き直すくらいの慎重さが必要です。
電子発行(PDF領収書)の場合
PDFやメールで発行する電子領収書は、IT化・ペーパーレス化が進む中で一般化しつつあります。電子データの領収書も紙と同様に法的に有効であり、正しく運用すれば双方にとってメリットがあります。
法的効力
電子データの領収書(例えばPDFファイル)は、紙と同等に有効な受取証として認められます。電子署名などがなくても、メール送付されたPDFやシステム発行のデータであっても、その内容が正しければ問題ありません。結論として、領収書はPDFで発行しても全く問題ありません。
収入印紙の扱い
電子領収書最大の利点の一つは、印紙税を節約できることです。印紙税は「あくまで紙の文書」に課される税金のため、PDFなど電子的に交付する領収書には収入印紙は不要です。
極端な例を言えば、100万円の協賛金領収書を紙で発行すると200円の収入印紙が必要ですが、PDFでメール送付すれば印紙代0円で済むわけです。
ただし、相手がそのPDFを印刷して利用する場合でも印紙は不要です。発行時点で電子交付であれば印紙税は課税されません。このメリットは大きいため、最近では高額取引ほどPDF領収書で処理したいという企業もあります。
即時性とコスト
PDFで発行すれば、メールですぐに相手に届けることができます。郵送費や紙代、印刷の手間も省け、遠方のスポンサーにも瞬時に送付可能です。相手側も届いたPDFを自分で好きなだけコピーできますので、「なくしたので再発行してほしい」といった要望にも、データを再送するだけで対応できます。
注意点(電子帳簿保存法への対応)
電子発行した領収書は紙と違い、電子データとしての保存要件を満たす必要があります。日本では電子帳簿保存法により、電子取引で授受したデータ(メールで受け取った領収書など)は原則として電子データのまま保存しなければなりません。
つまり、受け取った側(協賛企業側)はPDFを印刷して紙で保存するだけでは原則NGで、電子データとして保存・管理することが求められます(ただし2024年現在は宥恕措置により紙保存も容認されていますが、近い将来完全電子化が原則化されます)。発行側も、送信したPDF領収書の控えを自社でしっかり保管しておきましょう。
具体的には、PDFファイルをフォルダに整理し、ファイル名に日付や相手先名を入れるなど検索できる形で保存します。規程を定め、改ざんされていないことを担保できれば、自社控えは紙に印刷して保管せずとも電子保存で問題ありません。
電子帳簿保存法上は、必要に応じてタイムスタンプを付与したり、検索機能確保(例えばファイル名・フォルダ名に取引日付や相手名を含める等)を行うことが求められます。難しく感じるかもしれませんが、中小企業の場合それほど高度な仕組みは要らず、きちんと整理された電子フォルダにPDFを保存しておけば大半の要件は満たせます。
相手への配慮
電子領収書を送付する際は、事前に相手が電子での受領を希望しているか確認すると丁寧です。特に年配の経理担当者などは紙の領収書でないと落ち着かない場合もあります。メールで送る旨を伝え、確実に届いたか確認しましょう。
また、PDFにパスワード設定をして機密性を高める、電子署名サービスを利用するなどの方法もありますが、協賛金領収書程度であれば過度に厳重にしなくても大丈夫でしょう。重要なのは「相手がそのPDFを問題なく閲覧・保存できること」を確認することです。
印刷する場合
受け取った側が結局PDFを印刷して紙で保管するケースも多いでしょう。その場合、印紙は先述の通り不要ですが、印刷した紙はあくまで写しである点に注意です。税務調査でその紙を提示すると「原本は電子ですね?電子で保存してますか?」と確認されることがあります。
電子で受け取った以上、極力データも一緒に保存しておくか、あるいは社内ルールで紙保存を正式に位置付ける対応(要税務署長承認事項)を取る必要があります。このあたりは企業ごとの対応になりますが、中小企業であれば電子データと印刷したものの両方を7年間保存しておくくらいの心づもりでいれば安心でしょう。
まとめると、手書き領収書と電子領収書はいずれも有効ですが、それぞれ以下のような違いがあります。
手書き(紙):従来方式で誰にでも理解されやすい。高額時は印紙必要。物理的管理(郵送・ファイリング)手間あり。
電子(PDF等):迅速でコスト低減。印紙不要で経費節約。データ管理が必要だが保存・検索は容易。紙の紛失リスクなし。
自社や相手先の状況に応じて、最適な発行方法を選択しましょう。最近では国税庁も領収書類の電子化保存を推進していますので、特に問題なければ電子発行を活用することをおすすめします。
【基礎編】領収書の一般的な書き方・見本と印紙税法の基礎知識
ここからは少し視点を広げて、領収書全般の基礎知識について整理します。協賛金に限らず領収書には共通するルールや注意点がありますので、理解しておきましょう。
領収書とは何か(基本のおさらい)
領収書とは、金銭を受け取った事実を証明するための書類です。代金を受け取った側(受領者)が、支払った側(支払者)に対して発行します。領収書には通常、取引日付(受領日)、金額、支払った人の氏名(宛名)、受け取った側の氏名(発行者情報)、取引の内容(但し書き)などが記載されます。
領収書は支払側・受取側双方にとって大事な書類で、会計上および税務上の根拠資料としての役割を果たします。領収書やレシートがないと経費計上が認められず税金が増えてしまうこともあるため、法律で定められた期間しっかり保存することが求められています。
領収書という書類は、その性質上複数の法律に関係しています。主なものを挙げると
- 民法・商法:代金支払に対する受取証としての機能(債権債務の証拠)
- 印紙税法:領収書は「課税文書」とされ、記載金額に応じた印紙税が課せられる
- 法人税法・所得税法:経費や控除の証拠書類としての保存義務(7年保存など)
- 消費税法:一定の領収書は適格請求書(インボイス)となりうる(要件を満たせば)
- 電子帳簿保存法:電子的な領収書データの保存ルール
このように様々な法律の観点から扱いが決まっているため、領収書を正しく発行・処理しないと予期せぬトラブルになりやすい面もあります。「単に紙切れ1枚」と侮らず、形式的にも内容的にも整った領収書を発行することが大切です。
領収書の基本的な書き方(一般フォーマット)
領収書の書き方自体は先ほど協賛金の場合で説明した内容と同じです。おさらいするとタイトル→日付→宛名→金額→但し書き→発行者情報(+印紙)という順序・項目で記載します。市販の領収書ひな形でも同様のレイアウトになっています。ポイントを簡潔にまとめると:
- タイトル:「領収書」もしくは「領収証」
- 日付:金銭を受領した日付(令和◯年◯月◯日 等)
- 宛名:支払者の正式名称+御中(法人)/様(個人)
- 金額:¥◯◯◯◯◯◯(税込金額)+也(など)※改ざん防止措置
- 但し書き:◯◯代として(取引の内容を具体的に)
- 発行者:受領者の住所・氏名(会社名等)・押印
- 収入印紙:該当金額なら所定の額を貼付+消印
要件を満たしていれば、必ずしも市販の用紙でなくても構いません。ExcelやWordで自作した様式でも、手書きメモを転用しても、上記項目が揃っていれば立派に領収書として通用します。
例えばレシートと呼ばれるもの(スーパーのレジから出る細長い紙など)でも、日付・金額・発行元が記載されていれば広義の領収書に当たります。実務では経費精算の際にレシートも領収書として扱われます。
ただし一般に「領収書ください」と言うと、社名入りで宛名を書いた正式な領収書を指すことが多いでしょう。
収入印紙と印紙税法の基本
収入印紙(印紙税)についてもう少し詳しく触れます。印紙税法では、領収書は「第17号文書:金銭または有価証券の受取書」に該当し、受取金額が5万円以上のものに課税されます(2025年現在の法令基準)。
したがって5万円以上の領収書には決められた金額の収入印紙を貼らねばなりません。印紙を貼る金額は受取金額の大小によって異なります。一部例を挙げると
- 5万円以上100万円以下の領収書:200円の印紙
- 100万円超〜200万円以下:400円の印紙
- 200万円超〜500万円以下:600円の印紙
(※以降金額が増えると印紙税も漸増し、最高で50万円超の印紙税が定められています。詳しくは印紙税額一覧表を参照。)
例えば協賛金として30万円を受け取った場合、その領収書には200円の印紙が必要です。協賛金として300万円を受け取ったなら1,000円の印紙が必要です。この印紙は領収書の発行者(受領者側)が郵便局や金券ショップ等で購入し、領収書に貼付することで納税したことになります。
もし印紙を貼り忘れた場合どうなるかというと、領収書自体の効力は失われませんが、後日発行者が過怠税(ペナルティ)を含めて印紙税を納付しなければならなくなります。
過怠税は本来の印紙税額の2倍(自主申告すれば1.1倍)と定められており、非常に重いペナルティです。悪質な場合はさらに高額の額面を課されることもあります。ですから、発行者は印紙の貼り忘れに細心の注意を払う必要があるわけです。
また、一度貼った印紙を再利用すると法律違反になるため、必ず消印処理をして使い回しできないようにします。なお印紙税は「あくまで紙の文書」に対する税なので、繰り返しになりますが電子領収書には印紙不要です。
この点を逆手に取り、故意に紙の領収書に印紙を貼らずPDFで送り直すことで納税回避を図るのは認められませんので、正規の方法で発行するようにしてください。
領収書の保存義務と期間
最後に、領収書の保存義務について確認します。法人企業であれ個人事業主であれ、仕事上の取引に関する領収書は税務上一定期間の保存が義務付けられています。法人の場合は原則7年間、個人事業主の場合も青色申告で7年間(白色申告でも5年間)の保存が必要です。
また、消費税の課税事業者であれば、インボイス制度下では適格請求書の写しを7年間保存することが課されています。協賛金の領収書も取引証憑ですから、発行側・受取側ともに少なくとも7年間は保管しておきましょう。
保存の形態は紙ならファイル綴じ、電子ならフォルダ管理など、自社に合った方法で構いません。重要なのはいざという時にすぐ提示できるよう整理しておくことです。雑多に箱に放り込んでおくと、後で税務調査で探すのに苦労します。
発行日や相手名ごとにインデックスを付けるなどして、管理を徹底しましょう。経理担当者は定期的に領収書ファイルを確認し、不備や抜けがないか点検することも大切です。
よくある誤りとその回避方法
最後に、協賛金の領収書に関してありがちなミスやトラブル事例と、その防止策についてまとめます。うっかりミスを防ぎ、実務でスムーズに活用するためにチェックしてみてください。
宛名を「上様」や無記名にしてしまう
協賛金領収書で宛名を書かないのはNGです。相手の正式名称を記載しないと証拠能力が下がり、経理処理上も困ります。必ず正式名称+御中/様を記載しましょう。手書きでその場ですぐ名前が分からない場合でも、後で追記するか正式名称を確認してから発行します。
但し書きが曖
「協賛金として」「寄附として」だけでは内容が不明確です。後で税務調査の際に指摘を受ける可能性もあります(本当に広告の対価なのか寄附なのか等)。面倒でもイベント名や支援内容を具体的に書くことを習慣づけましょう。特に広告宣伝費として処理できるかどうかは文言で判断されることもあるため、「広告」「スポンサー料」など該当するキーワードを入れると親切です。
金額を訂正した形跡がある
金額を書き間違えて二重線で消して書き直すと、見るからに不審な領収書になります。できれば書き損じたら新しく書き直すのが理想です。どうしても訂正する場合は、二重線を引いて訂正箇所に発行者印(訂正印)を押し、正しい金額を余白に記載します。
この際、改ざんでないことを明確にするため「○○円を○○円に訂正」と注記するとベターです。とはいえ現実には手間なので、慎重に記入して訂正が出ないようにしましょう。
収入印紙の貼付漏れ
前述の通り致命的なミスです。特に現場で手書き発行する場合、印紙を持ち合わせていないと貼り忘れる危険があります。あらかじめ領収書発行前に金額を確認し、印紙が必要な場合は用意してから発行しましょう。
もし貼り忘れに気づいたら、速やかに税務署で事情を説明し印紙税を納付することになります(自主申告すればペナルティが軽減される可能性があります)。二度とミスを繰り返さないよう、チェックリストを作るのも有効です。
インボイス対応の漏れ
協賛金が課税対象で相手が仕入税額控除を必要としているのに、発行者がインボイスに未対応だと相手に迷惑をかけることがあります。任意団体などでインボイス未登録の場合は仕方ありませんが、相手先に事前に伝えて了承を得る、もしくは領収書とは別に参考として消費税額等を通知するなどの配慮をしましょう。
逆に自社が協賛金を支払う立場で領収書をもらう場合、相手が適格請求書発行事業者かどうかもチェックポイントです(広告費として消費税控除できるかに関わるため)。
経理処理を誤る
協賛金の領収書を受け取った経理担当者が、そのまま「協賛金」という科目で仕訳しようとしてしまうケースがあります。繰り返しになりますが「協賛金」勘定科目はなく、内容に応じた科目選択が必要です。
領収書の但し書きや契約内容をよく確認し、適切に「広告宣伝費」「交際費」「寄附金」等で記帳しましょう。不明な場合は上司や税理士に相談することをおすすめします。
領収書を発行し忘れる/もらい忘れる
イベント後の事務処理が忙しいと、領収書発行自体を失念してしまうこともあります。また協賛企業側でも忙しいと受領漏れが生じることがあります。
後から発行となると日付の整合性など問題が出る可能性があるため、金銭授受と領収書発行はセットで行うようスケジュールを組みましょう。イベントならイベント当日もしくは直後に発行、振込なら入金確認日当日~翌日には郵送するなど、タイミングを逃さないのが大切です。
以上の点に注意すれば、協賛金の領収書発行で困ることはぐっと減るでしょう。特に収入印紙や但し書きの内容など、普段の売上代金の領収書とは異なる部分を重点的にチェックしてください。
まとめ
協賛金の領収書について、定義から必要性、具体的な書き方、発行方法の違い、そして基礎知識まで詳しく解説してきました。協賛金とはイベントや活動を支援するための資金提供であり、企業側にも広告・宣伝などのメリットがあること、そして税務上の扱いによって経理処理が変わることを押さえておきましょう。
領収書はなぜ必要かという点では、支払側・受取側双方の証拠書類として重要であり、税務署対応や会計監査上なくてはならないものであることをご理解いただけたと思います。
協賛金の領収書の書き方は基本フォーマットに沿って、日付・宛名・金額・但し書き・発行者情報を正確に記載し、場合によっては収入印紙を貼付します。
特に但し書きは協賛金の内容を具体的に示すよう工夫し、金額の書き方や印紙の貼付忘れにも注意しましょう。手書きと電子発行の選択についても、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて適切な方法を選び、電子の場合は保存要件に留意する必要があります。
領収書は小さな書類ですが、法律や税務にまたがる重要な役割を担っています。本文中で触れたポイントを踏まえ、正しい領収書を発行・管理することで、協賛金のやり取りを円滑かつ確実なものにしてください。適切な領収書発行は協賛企業との信頼関係を築く一助にもなります。この記事が、経理担当者やイベント主催者の皆様にとって実務の参考になれば幸いです。長文お読みいただきありがとうございました。
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