
「消費税の計算」と聞くと、複雑で損をしている気がしませんか。インボイス制度も始まり、ルールを理解しないまま、余計な税金を納めているかもしれません。もし、自社に最も有利な計算方法を選び、納税額を合法的に最小化できるとしたら、どうでしょう。
この記事を最後まで読めば、あなたはインボイス制度下における複雑な消費税計算の「3つの型」を理解できます。そして、「原則課税」「簡易課税」「2割特例」のどれが自社のキャッシュフローを最大化するかを、自信をもって判断できるようになります。
難解な専門用語は使いません。日常の「税込・税抜」の基本から、事業者が「国に納める税額」の計算までを、順を追って解説します。
個人事業主や小規模な会社の経理担当者の方でも、自社の状況に当てはめてシミュレーションできるよう、具体的なステップでご案内します。もう計算で迷うことはありません。
目次
日常と実務の第一歩「消費税」の基本計算ルール
事業者の納税額計算(本番編)に入る前に、日常の買い物や請求書発行で不可欠な、基本的な消費税の計算方法をおさらいします。ここを誤ると、後続のすべての計算が崩れてしまいます。
「税込価格」の計算方法(標準税率10%・軽減税率8%)
税込価格は、税抜価格に消費税率を加えたものです。
計算式は非常にシンプルです。
標準税率10%の場合: 税込価格 = 税抜価格 × 1.1
軽減税率8%の場合: 税込価格 = 税抜価格 × 1.08
なお、消費税額だけを個別に知りたい場合は、税抜価格に0.1(10%)または0.08(8%)を掛けます。
「税抜価格」の計算方法(「割り戻し計算」)
税込価格から元の税抜価格を算出する計算を「割り戻し計算」と呼びます。
計算式は以下の通りです。
標準税率10%の場合: 税抜価格 = 税込価格 ÷ 1.1
軽減税率8%の場合: 税抜価格 = 税込価格 ÷ 1.08
例えば、税込11,000円の商品(10%対象)から消費税額を算出する場合、まず税抜価格を計算します(11,000円 ÷ 1.1 = 10,000円)。その差額である1,000円が消費税額となります。
「8%」と「10%」が混在する理由 軽減税率の対象品目
2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴い、生活必需品への負担を軽減する目的で「軽減税率制度」が導入されました。これにより、事業者は「標準税率(10%)」と「軽減税率(8%)」の2つの税率を同時に扱う必要が生まれました。
軽減税率(8%)の対象となるのは、「飲食料品(酒類・外食を除く)」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」の2つのカテゴリーです。
外食とテイクアウト
ここで間違いやすいのが「外食」の定義です。
同じ飲食料品でも、店内のイートインスペースで飲食する場合は「外食」にあたり10%が適用されます。一方、持ち帰る(テイクアウト)場合は「飲食料品の譲渡」にあたるため8%となります。
一体資産
おもちゃ付きのお菓子のように、食品とそれ以外がセットになった商品を「一体資産」と呼びます。これは、「税抜価格が1万円以下」かつ「食品の価格が占める割合が3分の2以上」の場合に限り、全体が8%の対象となります。
この複数税率に対応するため、事業者は売上と仕入れを「8%対象」と「10%対象」に分けて記帳(区分経理)する義務が生じました。これは、後述するインボイス制度対応の大前提となる、非常に重要な実務です。
インボイス制度で激変! 請求書の「端数処理」の絶対ルール
消費税を計算すると「99.9円」のように、1円未満の端数(はすう)が出ることがあります。2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)に伴い、この端数処理のルールが厳格化されました。
以前のよくある方法(現在は認められません)
以前は、請求書に記載する商品やサービスの明細(例:商品A 999円、商品B 1,999円…)ごとに消費税を計算し、その都度端数処理(例:切り捨て)を行って合計する方法も認められていました。
インボイス制度下の必須ルール
インボイス制度下では、一の適格請求書(つまり1枚の請求書)につき、税率ごと(10%対象の合計額、8%対象の合計額)に消費税額を算出します。そして、その合計額に対して1回だけ端数処理を行います。
なお、「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」のどの方法を選ぶかについては、事業者の任意とされています。
このルール変更は、単なる書式の変更ではありません。これは、古いレジやExcelの請求書テンプレートを使い続けている事業者に対し、「請求書発行システムの改修」を実質的に強制するものです。
なぜなら、明細ごとに端数処理(特に切り捨てや切り上げ)を繰り返すと、最終的に国に納めるべき消費税額との間にズレ(誤差)が積み重なってしまうからです。
税の公平性を担保するため、税率ごとに合計して一度だけ処理する、という正確性を求めるルールになりました。意図せず「不適格な請求書」を発行し、取引先に迷惑をかけている(取引先が仕入税額控除できなくなる)リスクがないか、確認が必要です。
事業者が納める「消費税納税額」の計算構造
ここからが本題です。事業者が最終的に国に納める消費税額は、日常の「税込・税抜」の計算とはまったく異なる構造をしています。
消費税納税の基本原則:「預かった消費税」−「支払った消費税」
消費税は、最終的に消費者が負担する税金です。事業者は、顧客から一時的に消費税を「預かり」、それを国に納付する役割を担っています。
ただし、事業者は仕入れや経費の支払い(例:原材料費、通信費、広告費など)の際、自らも消費税を「支払って」います。
したがって、国に納付する消費税額は、以下の基本式で計算されます。
納付する消費税額 = 課税売上げに係る消費税額 − 課税仕入れ等に係る消費税額
「課税売上げに係る消費税額」とは、顧客から「預かった」消費税を指します。「課税仕入れ等に係る消費税額」とは、自社が仕入れや経費で「支払った」消費税を指します。
この「支払った消費税」を差し引くことを、専門用語で「仕入税額控除」(しいれぜいがくこうじょ)と呼びます。この「仕入税額控除」をどのように計算するかこそが、消費税計算の最大の論点となります。
あなたはどれ? 納税額の計算方式は3種類
この「仕入税額控除」の計算方法は、すべての事業者が同じではありません。事業者の売上規模や事前の選択によって、大きく分けて3つの方式が存在します。
1つ目は「原則課税(本則課税)」です。これはすべての事業者の基本となる計算方法で、「支払った消費税」を実額で計算します。
2つ目は「簡易課税」です。これは中小事業者(基準期間の課税売上高5,000万円以下)が選択できる、計算が簡単な特例です。
3つ目は「2割特例」です。これはインボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった事業者だけが使える、期間限定の強力な特例です。
選択の分岐点:「基準期間の課税売上高」と「インボイス登録」
どの方式が選択できるか、あるいはどの方式が有利かは、いくつかの条件で決まります。
最も重要なのが「基準期間の課税売上高」です。「基準期間」とは、個人事業主の場合は「前々年」、法人の場合は「前々事業年度」を指します。
この売上高が1,000万円を超えるか、5,000万円を超えるか。そして、インボイス登録のためにあえて免税事業者から課税事業者になったのか。この3点が、あなたの選択肢を決定します。
パターン1:原則課税(本則課税)における仕入税額控除の計算

最も複雑ですが、すべての事業者がまず理解すべき基本の方式です。「支払った消費税」を実額で正確に計算し、控除します。
原則課税とは?
原則課税(本則課税、一般課税とも呼ばれます)は、その名の通り、消費税計算の最も原則的な方法です。
売上にかかる消費税額から、仕入れや経費で実際に支払った消費税額をそのまま差し引いて納税額を計算します。
この方式とインボイス制度は、密接に関連しています。原則課税を選択している事業者は、2023年10月1日以降、取引先から適格請求書(インボイス)を受け取り、それを保存しなければ、原則として仕入税額控除(経費で支払った消費税の控除)ができません。インボイス制度の影響を最も強く受けるのが、この方式の事業者です。
仕入税額控除の3つの計算方法
原則課税を選んだ場合でも、「支払った消費税」の全額を控除できるかどうかは、「課税売上割合」によって決まります。「課税売上割合」とは、会社の全売上のうち、消費税がかかる売上(土地の売却代金や受取利息などの「非課税売上」以外)がどれだけあるかを示す割合です。
全額控除
最もシンプルな計算方法です。
条件は、課税期間の課税売上高が5億円以下であり、かつ課税売上割合が95%以上であることです。この場合、支払った消費税の全額を控除できます。
国内だけでBtoB事業や小売業を営んでいる企業の多くは、ここに該当します。しかし、例えばその年にたまたま「土地の売却(非課税売上)」や「海外への輸出(免税売上)」が発生すると、課税売上割合が95%を割り込み、計算が複雑化するリスクがあります。
個別対応方式
課税売上割合が95%未満の場合に選択できる方式で、経理担当者の負担が最も大きい方式です。
計算には、仕入れや経費(支払った消費税)を、その使い道に応じて3つに分類する必要があります。
1つ目は「課税売上のみに対応する仕入れ」(例:販売商品の仕入れ)で、これは全額控除できます。
2つ目は「非課税売上のみに対応する仕入れ」(例:土地売却のための仲介手数料)で、これは一切控除できません。
3つ目は「上記2つに共通する仕入れ」(例:オフィスの家賃、光熱費、通信費)で、これは支払った消費税に課税売上割合を掛けた金額のみ控除できます。
なぜこのような複雑な分類が必要なのでしょうか。それは、消費税がかかっていない売上(非課税売上)を上げるために支払った消費税まで控除(国から返金)されてしまうと、事業者が不当に得をしてしまうからです。税の公平性を保つためのロジックですが、すべての取引でこの分類を行う実務コストは膨大です。
一括比例配分方式
これも課税売上割合が95%未満の場合に選択できる方式です。
計算は、支払った消費税の総額に課税売上割合を掛けます。個別対応方式のように仕入れを3つに分類する必要がなく、計算が簡単です。
ただし、計算は楽ですが、一度この方式を選択すると、原則として2年間は個別対応方式に変更できないという注意点があります。
原則課税が有利になるケース
この複雑な原則課税をあえて選ぶのには、理由があります。
実際の仕入率が高い場合、つまり簡易課税(後述)の「みなし仕入率」よりも、実際の仕入率(売上原価率や経費率)が高い場合(例:卸売業や小売業)です。
また、大きな設備投資、システム開発、大規模な広告宣伝など、多額の経費(支払消費税)が発生した年度も有利になることがあります。
売上にかかる消費税よりも、仕入れにかかる消費税の方が多くなった場合、その差額が国から「還付」されます。簡易課税では還付は絶対に発生しません。
パターン2:簡易課税制度におけるみなし仕入率での計算

中小事業者の事務負担を軽減するために設けられた、特別な計算ルールです。
簡易課税とは?
簡易課税制度は、実際の「支払った消費税」の額を一切計算しません。
その代わりに、「預かった消費税」の額に、業種ごとに国が定めた一定の割合(みなし仕入率)を掛けた金額を、「支払った消費税」とみなして計算する特例です。
適用条件
この制度を利用するには、2つの条件を満たす必要があります。
1つ目は、基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下であることです。
2つ目は、適用を受けたい課税期間の開始の日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出していることです。
計算式
計算式は非常にシンプルになります。
納付する消費税額 = 預かった消費税 − (預かった消費税 × みなし仕入率)
業種別「みなし仕入率」の詳細
みなし仕入率は、利益率が低い(=仕入率の高い)業種ほど、高く設定されています。自社の事業がどれに該当するか、正確に把握することが重要です。
第1種事業(卸売業:他から仕入れた商品をそのまま他の事業者へ販売)は90%です。
第2種事業(小売業:消費者への販売、農業・漁業(飲食料品))は80%です。
第3種事業(製造業、建設業、農業(飲食料品以外))は70%です。
第4種事業(飲食店業、その他の事業(第1,2,3,5,6以外))は60%です。
第5種事業(サービス業:運輸、金融、保険、不動産以外)は50%です。
第6種事業(不動産業)は40%です。
簡易課税の注意点
簡易課税はメリットが大きい反面、注意すべき点もあります。
注意点1:2年間の拘束
一度簡易課税を選択すると、原則として2年間は原則課税に戻れません。例えば、大きな設備投資を計画している年に簡易課税が適用されると、原則課税なら受けられたはずの「還付」が受けられず、損をする可能性があります。
注意点2:複数事業の罠
2種類以上の事業(例:製造業と小売業)を営む場合、売上を事業区分ごとに分けて計算する必要があります。もし区分していない売上があった場合、その区分不明な売上については、自社が営む事業のうち最も低いみなし仕入率が適用されるというペナルティがあります。
注意点3:インボイス
これはインボイス制度下における絶大なメリットです。簡易課税は、売上(預かった消費税)のみで納税額を計算します。そのため、仕入れ先がインボイス登録事業者か免税事業者かを気にする必要がなく、インボイスの保存も仕入税額控除の要件ではありません。インボイスの管理や経費の分類といった、煩雑な事務作業から解放されます。
簡易課税が有利になるケース
簡易課税が有利になるのは、以下のような場合です。
実際の経費率が低い場合、つまり実際の粗利率(売上に対する利益の割合)が、みなし仕入率から算出される粗利率(1 – みなし仕入率)よりも低い場合です。
具体例として、第5種事業(サービス業)のフリーランスを挙げます。みなし仕入率は50%です。この方の実際の経費が売上の20%しかない場合、原則課税なら売上の80%分に相当する消費税を納めるイメージですが、簡易課税なら50%分で済みます。
また、インボイスの管理や経費の分類を徹底的に排除したい場合にも適しています。
パターン3:2割特例(インボイス登録者限定の激変緩和措置)
インボイス制度の開始に伴い新設された、今、最も注目すべき特例措置です。
2割特例とは?
2割特例は、インボイス制度の開始を機に、免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった事業者の税負担と事務負担を軽減するための、期間限定の特例措置です。
正式名称は「インボイス発行事業者の登録を受けた者の経過措置」です。
対象者は、インボイス制度の登録をきっかけに、新たに課税事業者になった事業者です。(※元から課税事業者だった場合や、基準期間の売上が1,000万円を超えている場合は対象外です)
適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。
計算方法:「売上税額の2割」を納めるだけ
計算方法は、3つの中で最もシンプルかつ強力です。
納付する消費税額 = 預かった消費税 × 20%
これは、簡易課税の計算に当てはめると、みなし仕入率80%に相当します。
簡易課税との比較
この「みなし仕入率80%相当」というのが、いかに強力かがわかります。簡易課税のみなし仕入率と比較してみましょう。
簡易課税では、第1種(卸売業 90%)、第2種(小売業 80%)、第3種(製造業 70%)、第4種(飲食業 60%)、第5種(サービス業 50%)、第6種(不動産業 40%)となっています。
2割特例(80%)は、簡易課税の第1種(卸売業)を除く、すべての業種(小売、製造、飲食、サービス、不動産)よりも有利な条件となっています。
例えば、簡易課税のサービス業(第5種)では、納税額は預かった消費税の50%です。しかし2割特例を使えば、納税額は預かった消費税の20%で済みます。税負担が半分以下になるのです。これは、政府が「インボイス登録のハードルを下げる」ために、期間限定で非常に手厚い(採算度外視の)インセンティブを与えていることを示しています。
さらに、簡易課税の適用には「事前の届出」が必須です。しかし、2割特例は事前の届出が不要で、確定申告書に適用する旨を付記するだけで選択できます。
結論として、2023年10月以降に初めて課税事業者になった(なる)対象者は、ほぼ例外なく2割特例を選択するのが最も有利です。
インボイス制度が「原則課税」に与えるその他の影響
2割特例や簡易課税を選択しない「原則課税」の事業者は、インボイス対応に関して、以下の追加ルールを理解する必要があります。
経過措置:免税事業者からの仕入れ
取引先が免税事業者のままで、インボイスが発行されない場合、原則課税の事業者は仕入税額控除ができなくなります。しかし、急激な負担増を避けるため、経過措置が設けられています。
この措置は、原則課税の事業者のみに関係します。
控除できる割合は期間によって段階的に引き下げられます。2026年9月30日までは、免税事業者から仕入れた場合でも仕入税額相当額の80%まで控除可能です。次に、2026年10月1日から2029年9月30日までは50%まで控除可能となります。そして2029年10月1日以降は、控除は0%(全額自己負担)となります。
これは、簡易課税や2割特例の事業者には関係のない話です(そもそも支払った消費税を計算しないため)。原則課税の事業者のみ、免税事業者からの請求書を区別し、「80%控除」の仕訳を行うという、さらなる事務負担が発生します。
少額特例:1万円未満の仕入れ
もう一つの負担軽減策が「少額特例」です。
「税込1万円未満」の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくとも、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
対象者は、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者です。
適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。
結論:どの消費税計算方法を選ぶべきか
ここまで解説した3つの方式(原則課税、簡易課税、2割特例)を比較し、あなたが今すぐやるべきことを整理します。
3つの納税額計算方式の比較
3つの方式をいくつかの項目で比較します。
まず計算方法です。原則課税は実額計算(預かり税額 – 支払税額)、簡易課税はみなし計算(預かり税額 × (1 – みなし仕入率))、2割特例は激変緩和計算(預かり税額 × 20%)です。
次に対象者です。原則課税は全事業者、簡易課税は基準期間売上5,000万円以下の事業者、2割特例はインボイスで新規に課税事業者になった者です。
事前届出については、原則課税は不要、簡易課税は必要(適用したい期間の開始前日までに)、2割特例は不要(申告時に選択)です。
適用期間は、原則課税と簡易課税(要件を満たす限り)は恒久ですが、2割特例は期間限定(〜令和8年9月30日まで)です。
有利なケースとして、原則課税は実際の経費率が高い場合や大規模な設備投資をした場合、売上赤字(還付)の場合です。簡易課税は実際の経費率が低い場合や事務負担を減らしたい場合です。2割特例は第1種・第2種以外の業種で、事務負担を最小限にしたい新規事業者に有利です。
最後にインボイス(仕入側)の管理については、原則課税は管理必須(80%経過措置の適用も必要)ですが、簡易課税と2割特例は管理不要です。
パターン別:ネクストアクション
ご自身の状況に合わせて、次にとるべき行動を確認してください。
パターンA:インボイスを機に初めて課税事業者になった方
結論は、ほぼすべての場合で「2割特例」を選択してください。事前届出は不要です。
次の課題として、2割特例は令和8年9月で終了します。その後のために、今のうちから「原則課税」と「簡易課税」のどちらが有利かシミュレーションを開始してください。簡易課税(みなし仕入率50%のサービス業など)を選ぶ場合は、届出の準備が必要です。
パターンB:以前から課税事業者(売上5,000万円以下)の方
「原則課税」と「簡易課税」のどちらが有利か、直近の決算書でシミュレーションしてください。
シミュレーションとして、(支払った消費税の実額) と (預かった消費税 × あなたの業種のみなし仕入率) を比較します。「支払った消費税の実額」が「みなし」より多ければ、原則課税が有利です。
簡易課税を選択・変更するには「期限」があります。また、一度選ぶと2年間変更できない「2年縛り」も考慮してください。
パターンC:課税売上高5,000万円超の方
あなたは「原則課税」しか選択できません。
あなたのミッションは「節税」ではなく「完璧な事務処理」です。インボイス制度への対応(インボイスの発行、受領したインボイスの管理、免税事業者からの仕入れ(80%控除)の経理処理、端数処理ルールのシステム対応)を徹底してください。
まとめ:正しい消費税の計算は経営戦略そのものである
消費税の計算は、単なる「税込・税抜」の計算ではありません。インボイス制度の登場により、「どの計算方式を選択するか」という経営上の重大な意思決定に変わりました。
「2割特例」は、新規課税事業者にとって非常に有利な制度ですが、期間限定です。
「簡易課税」は事務負担を大幅に減らしますが、2年間の拘束というデメリットがあります。
「原則課税」は、還付の可能性がありますが、インボイス管理と経過措置という複雑な実務が求められます。
自社の業態(みなし仕入率)、実際の経費率、そして事務処理にかけられるコストを正確に把握してください。そして、最適な計算方法を選択することが、今後のキャッシュフローを大きく左右します。判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ速やかに相談することをお勧めします。



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