
納税通知書が届くたび、多くの方が「この支払いでポイントが貯まれば」と考えます。結論から申し上げますと、税金のクレジットカード払いは、ポイント還元率と手数料のバランスを正しく理解すれば、現金納付よりも「得」になります。
しかし、その判断を誤ると、ポイント以上に手数料を支払う「手数料負け」に陥る危険もあります。
さらに、近年はクレジットカード払いよりも有利になり得る、強力なライバルも登場しています。
目次
クレジットカード納税の損益分岐点とスマホ決済との比較
クレジットカード払いの最大の魅力は、支払額に応じたポイント還元です。しかし、この支払い方法には、必ずシステム利用料(決済手数料)が発生します。この手数料は、納税者自身が負担しなければなりません。
したがって、「得」をするための絶対条件は、「受け取るポイント」が「支払う手数料」を上回ることです。この「手数料負け」を回避することが、本記事の最大のテーマとなります。
ここで、納税方法を検討するうえで、もう一つの重要な視点があります。それは、競合する支払い方法の存在です。
読者の真のニーズは「お得に納税すること」であり、その手段は必ずしもクレジットカードの直接払いに限りません。近年の調査によれば、「スマホ決済」(特に楽天ペイなど)は、納税時の手数料が無料でありながら、チャージの方法次第でポイントも貯められる場合があります。
読者は、「クレジットカードで直接支払う(手数料あり)」という方法と、「クレジットカードでチャージしたスマホ決済で支払う(手数料なし)」という方法を、比較検討する必要があります。
本記事では、まず「クレジットカードの直接払い」を深掘りしつつ、この強力な競合についても後ほど解説します。
クレジットカード納付 5つの主要メリット
クレジットカード納付には、手数料というデメリットを上回る可能性のある、5つの明確なメリットが存在します。
1. クレジットカードのポイントが貯まる
最大のメリットは、ポイント還元です。住民税や固定資産税、あるいは所得税や消費税など、税金は一度の支出が数万円から数十万円と高額になるケースも少なくありません。
必ず支払わなければならないこの支出で、クレジットカードのポイントを獲得できるのは、非常に大きな利点です。
2. 支払いを先延ばしできる(キャッシュフロー改善)
クレジットカードで納付した場合、納付期限までに手続きを完了させれば、実際の銀行口座からの引き落としは、カード会社が定めた支払日(多くは翌月や翌々月)になります。
これにより、納税期限から実際の支出までに1か月から2か月程度の猶予が生まれます。手元の現金をすぐに減らすことなく、資金繰り(キャッシュフロー)に余裕を持たせることができます。
これは特に、売上の入金サイクルがある個人事業主や法人にとって大きなメリットです。
3. 分割払いやリボ払いで負担を平準化できる
税金は原則として一括での納付が求められます。しかし、クレジットカード払いを選択した場合、カード会社の提供する支払い方法(分割払いやリボ払い)を後から選択できる場合があります。
例えば、高額な固定資産税や相続税の納付も、クレジットカードの機能を利用して月々の支払額を平準化できます。「地方税お支払サイト」では、Web上での手続き時に「一括払い」のほかに「分割払い」「リボ払い」を選択することが可能です。
ただし、ここで注意が必要です。読者は2種類の手数料を支払う可能性があります。(1) 納税サイトに支払う「システム利用料」と、(2) カード会社に支払う「分割・リボ手数料」です。
重要な点として、(1)の「システム利用料」は、たとえ分割払いを選んだ場合でも、税額と合算された合計金額に対して分割手続きが行われるため、手数料も分割して支払う形になります税額本体とは別に一括で請求されるケースが一般的です。
4. 24時間いつでも・どこでも納付できる
金融機関の窓口や税務署、コンビニエンスストアに出向く必要がありません。インターネット環境さえあれば、自宅やオフィスのパソコン、あるいはスマートフォンから、24時間いつでも納付手続きを完了できます。
忙しいビジネスパーソンや個人事業主にとって、時間を拘束されないこの利便性は大きな魅力です。
5. 現金の用意や持ち運びが不要になる
納税のために、銀行のATMで高額な現金を引き出したり、それを窓口まで持ち歩いたりする必要がなくなります。紛失や盗難のリスクを回避できる点も、精神的なメリットと言えるでしょう。

メリットがある一方で、クレジットカード納付には絶対に知っておかなければならない4つの重大な注意点(デメリット)があります。
これらを理解しないまま手続きを進めると、思わぬ損害やトラブルにつながる可能性があります。
1. システム利用料(決済手数料)が必ず発生する
繰り返しになりますが、これが最大のデメリットです。クレジットカード納付は、国や自治体への直接納付ではありません。間に決済代行会社が入る仕組みであり、その手数料(システム利用料)を納税者が負担する必要があります。
この手数料は、受け取るポイントよりも高くなる可能性があり、その場合は「手数料負け」となります。
2. 領収証書が発行されない
クレジットカードで納付した場合、金融機関やコンビニで支払ったときにもらえるような領収証書(領収日付印が押された半券)は発行されません。
これは、多くの人が不安に感じる点です。なぜ発行されないのでしょうか。その理由は、この支払い方法の仕組みにあります。
クレジットカード納付は、法律上、「指定納付受託者」と呼ばれる決済代行会社(国税の場合は株式会社エフレジなど)に対して、納税者が「税金の納付を委託する(立替払いを依頼する)」という契約行為にあたります。
読者(納税者)は、自治体や税務署に「直接」現金を渡しているわけではありません。領収証書は「金銭の受領事実を証明する書類」ですので、直接金銭を受け取っていない自治体は、読者宛の領収証書を発行できないのです。
納税の証明は、後述する「納付手続き完了画面」の保存や「カードの利用明細」によって行います。
3. 納税証明書の発行に時間がかかる
これが、実務上最も注意すべきデメリットです。クレジットカードで納付した場合、決済代行会社を経由するため、自治体や税務署が納付の事実を確認できるまでにタイムラグが生じます。
特に注意が必要なのが「自動車税」の納付です。
現在は「JNKS(ジェンクス)」というシステムにより、車検時に納税証明書の提示が原則省略できるようになっていますが、これには「納付情報がシステムに反映されていること」が条件です。
クレジットカード納付の場合、この反映に「数週間から1か月程度」かかる場合があります。
もし、自動車税を納付した直後に車検(継続検査)を受ける予定がある場合、システム反映が間に合わず、車検を受けられない事態が発生します。
車検の時期が近い場合、クレジットカード納付は避け、コンビニや窓口で現金納付すべきです。
4. 納付後の取り消しは一切不可
一度、納付手続きを完了させてしまうと、その後のキャンセルは、いかなる理由があっても不可能です。
もし金額を間違えて入力してしまった、あるいは二重に納付してしまった場合でも、カード決済そのものを取り消すことはできません。
その場合は、税務署や自治体に事情を説明し、払いすぎた税金を返してもらう「還付手続き」を別途行う必要があります。
還付には多くの時間と手間がかかるうえ、その際に支払ってしまったシステム利用料は原則返金されません。手続きの最終確認画面では、金額に間違いがないか、細心の注意を払う必要があります。
「手数料負け」の損益分岐点を計算する
クレジットカード納付が「得」になるか「損」になるか。その核心が、この「手数料負け」の計算です。
そして、多くの人が見落としている、あるいは混同している非常に重要な事実があります。
それは、支払う税金の種類によって、手数料の計算式が全く異なるということです。
国税と地方税で異なる手数料体系
読者が支払う税金は、大きく「国税」と「地方税」に分かれます。そして、それぞれ納付手続きを行うサイトが異なります。
国税(所得税、消費税、相続税など)は「国税クレジットカードお支払サイト」を利用します。地方税(住民税、固定資産税、自動車税など)は「地方税お支払サイト」を利用します。
この2つのサイトは、運営主体(国税庁と地方税共同機構)も手数料体系も異なります。
読者はまず、自分が支払う税金がどちらなのかを正確に把握し、正しい手数料テーブルを参照する必要があります。
国税(所得税・消費税など)の手数料
国税の納付は、「国税クレジットカードお支払サイト」(指定納付受託者:トヨタファイナンス株式会社株式会社エフレジ)を利用します。
手数料の体系は以下の通りです。決済金額1万円までは76円(税込83円)など、納付額1万円ごとにおよそ84円(税込)前後の手数料がかかる計算になります。
つまり、手数料率は納付額にかかわらず、ほぼ一定で約0.84%(税込)と概算できます。
手数料の体系は以下の通りです。決済金額1万円までは90円(税込99円)など、納付額1万円ごとにおよそ99円(税込)前後の手数料がかかる計算になります。
つまり、手数料率は納付額にかかわらず、ほぼ一定で約0.99%(税込)と概算できます。
地方税(住民税・固定資産税など)の手数料
地方税の納付は、2023年4月から本格的に始まった「地方税お支払サイト」(eL-QR利用)を利用します。
手数料の体系は、国税と異なり、納付額に応じて階段状に設定されています(※2024年時点の目安)。
- 1円~10,000円:37円(税込40円前後)
- 10,001円~20,000円:112円(税込123円前後)
- 20,001円~30,000円:187円(税込205円前後)
- 30,001円~40,000円:262円(税込288円前後)
- 40,001円~50,000円:337円(税込370円前後)
ここで、国税と地方税の手数料を比較してみましょう。例えば、5万円を納付する場合、国税の手数料は約418円(税込)、地方税の手数料は約370円(税込)です。
この比較から分かる通り、地方税(eL-QR)のシステム利用料は、国税よりも若干安価に設定されています。
シミュレーション ポイント還元率「何%」から得になる?
「手数料負け」をしないためには、クレジットカードのポイント還元率が「何%」以上あればよいのでしょうか。上記で判明した2つの異なる手数料体系に基づき、具体的な損益分岐点を試算します。
国税(所得税など)の損益分岐シミュレーション
国税の手数料率は、納付額にかかわらず約0.84%0.99%(税込)でほぼ一定です。
| 納付税額 (A) | システム利用料目安(税込)(B) | 損益分岐還元率 (B/A) | 還元率1.0%の実質損益 |
| 30,000円 | 250円297円 | 0.83%0.99% | + 49円+3円 |
| 50,000円 | 418円495円 | 0.84%0.99% | + 82円+5円 |
| 100,000円 | 836円990円 | 0.84%0.99% | + 164円+10円 |
| 300,000円 | 2,508円2,970円 | 0.84%0.99% | + 492円+30円 |
この表から、国税を支払う場合、ポイント還元率が0.840.99%以上のクレジットカードを使えば、「手数料負け」を回避できることがわかります。
地方税(住民税・固定資産税など)の損益分岐シミュレーション
地方税の手数料率は、納付額によって変動します。
| 納付税額 (A) | システム利用料目安(税込)(B) | 損益分岐還元率 (B/A) | 還元率1.0%の実質損益 |
| 10,000円 | 40円 | 0.40% | + 60円 |
| 30,000円 | 205円 | 0.69% | + 95円 |
| 50,000円 | 370円 | 0.74% | + 130円 |
| 100,000円 | 783円 | 0.79% | + 217円 |
この表が示す事実は非常に重要です。地方税(eL-QR)の場合、損益分岐点は納税額によって変動しますが、国税よりも有利(約0.4%~0.8%)です。特に1万円の納付では、還元率0.5%のカードでも損益分岐点をクリアできます。
結論:還元率1.0%以上のカードで「手数料負け」は回避可能
シミュレーションの結果、国税・地方税のいずれにおいても、ポイント還元率1.0%の標準的な高還元クレジットカードを利用すれば、「手数料負け」を回避し、確実に利益(ポイント)を得られることが分かります。
還元率0.5%のカードでは、地方税の少額納付以外では手数料負けする可能性が高いです。税金の支払いには、高還元率(1.0%以上)のカードを利用することが鉄則です。
手数料回避の最適解 スマホ決済「楽天ペイ」ルート
クレジットカードの直接払いにおける「手数料」を、そもそも支払わずに済む方法があります。それが、一部のスマホ決済(請求書払い)の活用です。
特に「楽天ペイ(請求書払い)」などは、地方税のeL-QR決済において、システム利用料がかからない仕様になっています。これにより、納税者は手数料無料で納税が可能です。
ポイント還元についての注意点
「楽天カード」から「楽天キャッシュ」(楽天ペイでの支払原資)にチャージする場合、通常0.5%のポイント還元があります。
支払時の還元(請求書払い利用分)は0%であることが多いですが、チャージ分の0.5%は確保でき、かつシステム手数料がかからないため、結果としてクレジットカードの直接払いよりも手残りが多くなるケースがあります。
さらに、いわゆる「ポイ活」上級者は、Apple Payなどを経由して「他の高還元率カード」から楽天キャッシュにチャージするルートなどを活用し、より高い還元率を目指す場合もあります。
この「スマホ決済ルート」は、手間はかかりますが、クレジットカードの直接払いよりも有利になるケースが多く、現時点での有力な納税方法の一つです。
クレジットカードで支払える税金の種類
クレジットカードで支払える税金には、国税と地方税があります。
対象となる国税
「国税クレジットカードお支払サイト」を通じて、ほぼ全ての国税が納付可能です。
- 申告所得税及び復興特別所得税
- 消費税及び地方消費税
- 法人税、地方法人税
- 相続税、贈与税
- 源泉所得税
- 酒税、たばこ税、石油石炭税
- 登録免許税、自動車重量税(告知分)
- 印紙税(告知分) など
対象となる地方税
「地方税お支払サイト」を通じて、以下の主要な地方税が納付可能です。
- 住民税(市県民税、普通徴収分)
- 固定資産税・都市計画税
- 自動車税種別割・軽自動車税種別割
- 個人事業税
- 不動産取得税
eL-QRによる全国自治体への対応
かつては「お住まいの自治体がクレジットカード納付に対応しているか」を個別に調べる必要がありました。しかし、その状況は2023年4月に一変しました。
「地方税統一QRコード(eL-QR)」の運用が開始されたためです。
eL-QRは、地方税の納付書に印刷された統一規格のQRコードです。これにより、原則として全国どの自治体が発行した納付書でも、一つのサイト(地方税お支払サイト)からキャッシュレス納付が可能になりました。
したがって、読者が確認すべきことはただ一つです。それは、「手元の納付書にeL-QR(eLマーク)が印字されているか」どうかです。このマークが印字されていれば、その納付書はクレジットカードで支払うことができます。
地方税(住民税・固定資産税など)の納付手順
eL-QR(エルキューアール)が印字された納付書を使った、最も一般的で、手数料も比較的安価な地方税の納付手順を解説します。
納付に必要なもの
- eL-QR(eLマーク)が印字された納税通知書・納付書
- スマートフォン(カメラが使えるもの) または パソコン
- クレジットカード(Visa, Mastercard, JCB, American Express, Diners Clubなど)
「地方税お支払サイト」での納付手順
- eLTAX(エルタックス)の「地方税お支払サイト」にアクセスします。サイトのトップページにある「eL-QRでお支払い」ボタンを選択してください。
- カメラが起動(またはカメラアプリの選択)を求められるので、許可し、手元の納付書にあるeL-QRを読み取ります。もしQRコードが読み取れない場合は、納付書に記載の「eL番号」を手入力することも可能です。
- 読み取った納付情報(自治体名、税目、納付額など)が画面に表示されます。内容に間違いがないか確認し、「お支払いへ進む」を選択します。
- 支払い方法の選択画面で「クレジットカード」を選択します。
- 納付手続き完了メールの送信先となるメールアドレスを入力します。その後、外部の決済サイト(エフレジ等の指定納付受託者が運営する決済画面)へ自動的に遷移します。
- クレジットカード情報(カード番号、有効期限、セキュリティコード)を入力します。支払回数(一括払い、分割払い、リボ払い)もここで選択します。
- 最終確認画面が表示されます。「納付税額」と「システム利用料」が別々に表示され、その「合計金額」が明示されます。これが実際にカード会社へ請求される金額です。必ず確認してください。
- 全ての内容に同意し、「納付手続きを実行する」ボタンを押します。
- 「納付手続き完了」の画面が表示されたら、この画面が領収証書の代わりとなるため、必ずスクリーンショットを撮影するか、ページを印刷して保存してください。
国税(所得税・消費税など)の納付手順
所得税の確定申告や消費税の納付など、国税の納付は、地方税とは異なる専用サイト「国税クレジットカードお支払サイト」を利用します。
2つのアクセス経路(e-Tax連携と直接アクセス)
このサイトへのアクセス方法は2通りあり、どちらを選ぶかで利便性が大きく異なります。
最も推奨されるのは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)から連携してアクセスする方法です。確定申告をe-Taxで行った場合、そのままe-Taxのメッセージボックスに格納される「納付区分番号通知」から専用サイトへアクセスできます。
この方法の最大のメリットは、納付区分番号、税目、課税期間、そして最も重要な納付税額といった情報が、専用サイトへ自動的に引き継がれる点です。これにより、納税額の手入力による金額間違い(取り消し不可能な致命的ミス)を、システム的に防ぐことができます。
e-Taxを利用しない場合は、国税庁のWebサイトなどから「国税クレジットカードお支払サイト」に直接アクセスし、すべての情報を手入力します。
「国税クレジットカードお支払サイト」での納付手順
- サイトにアクセスし、注意事項(領収証書は発行されない、取り消し不可など)に同意します。
- 納付情報(住所、氏名、税目、納付税額など)を画面の指示に従って手入力します。(e-Tax連携の場合は、引き継がれた情報の確認のみです)
- 支払い情報として、利用するクレジットカードの情報(カード番号、有効期限など)を入力します。
- 最終確認画面で、「納付税額」と、国税の手数料体系で計算された「決済手数料」の「合計金額」を必ず確認します。
- 「納付」ボタンを押し、手続きを完了させます。
- 納付手続きの完了画面を必ず印刷または保存します。また、入力したメールアドレスに「納付手続完了メール」が届くため、こちらも併せて保管してください。
納付受託者の仕組みと手数料の理由
これらの手続きで、なぜ手数料が発生するのかを理解するために、「納付受託者」という仕組みを解説します。
クレジットカード納付は、国や自治体に代わって「指定納付受託者」が納税者から金銭(立替払い)を受領する仕組みです。私たちが支払うシステム利用料(決済手数料)は、これら納付受託者が提供する決済システムの利用料です。
これは納付受託者や決済代行会社の収入となるものであり、国や自治体の収入になるものではありません。
納税後の注意点(領収書と納税証明書)
納付手続きが完了しても、まだ終わりではありません。手続きの「証拠」に関して、現金払いとは決定的に異なる点があり、これを怠ると後でトラブルになる可能性があります。
領収証書が発行されない理由
前述の通り、この方法は「納付の委託」であるため、国や自治体から納税者宛の領収証書(領収日付印のあるもの)は発行されません。
納付の証明方法(完了画面とカード明細)
では、何を以って「支払った証明」とするのでしょうか。法的な支払いの証明は、以下の2つの書類で行います。
- 納付手続き完了画面(または完了メール)
- 後日発行されるクレジットカードの利用明細書
この2点が、領収証書の代わりとなります。
特に個人事業主や法人が経費(租税公課)として計上する際は、税務調査などで提示を求められる場合に備え、この2点を必ずセットで保管してください。
自動車税(車検)における納税証明書発行の遅延
デメリットの項目で警告した通り、クレジットカード納付は納税情報が自治体のシステムに反映されるまでに時間がかかります。
近年は車検時の納税証明書提示が原則不要(JNKS連携)になりましたが、納付直後(数週間以内)はデータ反映が間に合わず、車検が受けられないケースがあります。
納付後すぐに車検を受ける必要がある方は、クレジットカード納付を選んではいけません。その場合は、金融機関やコンビニエンスストアの窓口で現金納付し、その場で領収日付印が押された納税証明書(車検用)を受け取ってください。
個人事業主・法人のための会計処理ガイド

個人事業主(フリーランス)や法人の経理担当者にとって、税金のクレジットカード払いは「いつ、どの勘定科目で」記帳するかが問題となります。正しい会計処理(仕訳)の方法を解説します。
クレジットカード納付時の記帳ルール(発生主義)
会計処理の原則として「発生主義」があります。これは、現金の入出金があった日ではなく、取引が「発生した」日に記帳するルールです。
税金のクレジットカード納付において、取引が「発生した」日とはいつでしょうか。それは、(1) 銀行から引き落とされた日ではなく、(2) カード決済を行った日(=納付手続き完了日)です。
このルールは、決算対策において非常に重要です。
例えば、個人事業主(12月決算)が、12月30日にクレジットカードで事業税を納付したとします。
実際の銀行引き落としが翌年の1月27日だったとしても、取引が発生した「12月30日」の日付で記帳するため、今年の経費として計上できるのです。これにより、その年の所得を圧縮し、節税につなげることが可能になります。
仕訳例:税金納付時(カード利用日)
(例:固定資産税 100,000円、システム利用料 783円をカードで支払った)
この場合、2つの費用(税金本体と手数料)が発生し、同時に「後でカード会社に支払う義務(未払金)」が発生します。
借方には「租税公課 100,000円」と「支払手数料 783円」を計上します。税金本体は「租税公課」、システム利用料は「支払手数料」または「雑費」で処理します。
貸方には、負債として「未払金 100,783円」を計上します。現金が減ったわけではないため「普通預金」ではありません。
仕訳例:銀行引き落とし時(カード利用代金支払日)
(例:上記100,783円が普通預金から引き落とされた)
後日、カード会社から請求があり、銀行口座から引き落とされた時点で、「未払金」という負債を消去します。
借方に「未払金 100,783円」、貸方に「普通預金 100,783円」を計上します。ここで初めて「普通預金」が減少し、仕訳が完了します。
まとめ 賢い納税者になるための最終チェックリスト
税金のクレジットカード払いを成功させ、確実に「得」をするために、手続きの前に以下の6つの点検項目を必ず確認してください。
- 支払うのは「国税」(所得税など)か、「地方税」(住民税など)か?(手数料の計算体系が異なります)
- 地方税の場合、納付書に「eL-QR」が印字されているか?(印字されていれば、地方税お支払サイトで納付可能です)
- 使用するカードの還元率は「1.0%」以上あるか?(手数料負けを回避するための目安です)
- 「国税」か「地方税」か、正しい手数料で損益をシミュレーションしたか?(本記事の表を参照し、損をしないか確認してください)
- 「納税証明書」はすぐに必要か?(自動車税の納付後すぐに車検が控えている場合は、カード払いは避けてください)
- 納付手続きの「完了画面」は必ず保存したか?(それがあなたの領収書の代わりとなります)



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