会計の基礎知識

資金繰りとは?悪化する要因や安定させるために気をつけることを紹介

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資金繰り

事業においては、従業員の給与やオフィスの家賃・光熱費など、さまざまな支払いが発生します。資金が不足してこれらの支払いが遅延すると、取引先の信頼を損ねるだけではなく、事業の経営に支障をきたしかねません。資金不足に陥ることを防ぐためには、資金繰り表を作成して今後の収支を適切に管理することが有効です。今回は、資金繰りが悪化する要因や資金繰りを安定させるために取り組みたいことなどについて、わかりやすく解説します。

企業における資金繰りとは?その重要性は?

資金繰りとは、事業における現金や預貯金を調整し、過不足がないように適切に管理することを指します。

ビジネスを行う上では、将来お金を受け取る権利である「売掛金」や、建物や機械のような「固定資産」など、資産をさまざまな種類に分類して考えます。しかし、それらは今すぐに使える資産ではないため、オフィスの家賃を払ったり、従業員に給与を支払ったりすることはできません。

したがって、事業を安定して経営するためには、資金繰りによってすぐに使えるお金(現金や預貯金など)を上手に管理していくことが重要と考えられています。

キャッシュフローとの違いは?

キャッシュフローとは、過去に生じたお金の流れを振り返る際に使う言葉です。これまでのお金の流れを明らかにすることで、経営状況の振り返りや問題点の洗い出しをするなどの使い方をすることが一般的です。

それに対して資金繰りは、今後のお金の使い方を考えていくことを指します。具体的には、数ヶ月や半年などの期間において、問題なく支払いが行えるかどうかを考えます。もし資金が不足しそうであれば、融資や売掛金の早期回収などの方法によって資金を調達することになります。

資金繰りが悪化する要因

支払いをするためのお金が減り、資金不足に陥る恐れがあることを「資金繰りが悪化する」と表します。資金繰りの悪化に明確な定義があるわけではありませんが、一般的には今後3ヶ月以内に資金が悪化する見込みがあれば、資金繰りが悪化していると言えるでしょう。

資金繰りが悪化する要因にはさまざまなものがあります。

  • 赤字が続いている
  • 取引先の支払いが遅い
  • 在庫商品が過剰である
  • 設備投資が過剰である

赤字が続くことはもちろん、売上が出ていても、取引先の入金が遅ければ資金繰りが悪化する恐れがあります。例えば、1,000万円の売上が発生したとしても、商品の原価が50%であれば、500万円の支払いが生じます。1,000万円の売上高がすぐに振り込まれればいいですが、入金がない中で500万円の支払いの期日が迫れば、資金繰りの悪化に陥る可能性が十分あります。

他にも、在庫商品の管理や設備投資が適切でないために資金繰りが悪化してしまうケースもあるでしょう。

資金繰りが悪化するとどのような事態になる?

資金繰りが悪化したらどうなるか?

資金繰りが悪化するとどのような事態に陥るのでしょうか。具体的な例を4つ紹介します。

不渡りを出す

当座預金の残高不足などを理由に、小切手や約束手形の支払いができなくなることを「不渡り」と呼びます。

不渡りには、記載ミスがあった場合や偽造・変造があった場合など、さまざまな種類があります。中でも、指定の金額を支払えないことを「1号不渡り」と呼び、6ヶ月間のうち2回の1号不渡りを出すと、銀行取引の停止処分を受けます。

銀行取引停止処分を受けると、当座預金の取引は止まり、融資を受けることもできなくなります。手元にある現金で取引を行うことになるため、事業の継続が難しくなるでしょう。また、不渡りを出すと会社の信用が損なわれ、他の金融機関からであっても融資を受けにくくなるといったデメリットもあります。

取引先からの信用を損なう

資金繰りが悪化していることが取引先に知られると、信用を失う可能性があります。取引先は売掛金を回収できないリスクを考慮し、支払サイトを短めに設定したり、現金取引への移行を持ちかけたりするかもしれません。そうなると、自社の資金繰りがさらに悪化する要因となるでしょう。

また、取引先から「倒産するのではないか?」と思われると、会社への影響を避けるために、取引中止や商品の引き上げといった対策が行われてしまうかもしれません。

ビジネスチャンスを逃す

資金繰りが悪化すると、いざという時にお金を出すことができず、ビジネスチャンスを逃すことがあります。例えば、設備投資にお金をかければ大型の案件を受注できたかもしれないのにもかかわらず、お金を用意できないために案件を逃すといったケースです。事業拡大のための費用を捻出できなければ、会社としての競争力もいずれ低下してしまうでしょう。

給与が未払いになる

給与の支給日までにお金が用意できず、給与の支払いが遅れる可能性もあります。給与の支払いが少しでも遅れると、従業員は会社に対して不信感を抱くでしょう。「この会社は大丈夫なのか?」と疑う気持ちが生まれると、日々の仕事を行うモチベーションも低下してしまうかもしれません。

資金繰りを安定させるために気をつけること

資金繰りを安定させるために気をつけること

資金繰りを安定させるために、経営者や財務担当者はどのような点に気をつければいいのでしょうか。具体的な対策法を4つのポイントに分けて紹介します。

現在の状況を確認する

まずは現在の状況を正しく把握するために、手元にある資金の残高を確認した上で、今後数ヶ月間の資金繰りについて考えてみましょう。問題なく支払いができそうかどうかチェックし、大まかな見通しを立てます。

この時、貸借対照表や各会計帳簿もあわせて確認を行います。まだ回収できていない売掛金や使っていない固定資産など、いずれ現金化できそうな資産が見つかるかもしれません。

また、倉庫には価格を下げることで売れる可能性のある在庫商品が眠っている可能性もあります。「価格を下げて売るのはもったいない気がする」と感じるかもしれませんが、そのような商品を売り払うことで売上が生じる上、在庫管理するためのコストも下げられます。

日々の業務フローを見直す

経理情報や受発注・在庫管理といった日頃の業務を見直し、無駄に感じる点があれば改善します。

例えば、売掛金を期日までに回収できるよう、請求書を確実に発行し、必要があれば入金の催促をするといったルールを設けるなどの取り組みが考えられます。在庫管理システムを取り入れるなどして発注タイミングを改善し、常に適正な在庫数を保つようにすることも有効でしょう。

また、会計帳簿を見直して経費を削減できる点がないかチェックしてみるのもおすすめです。

資金を調達する

会社の業績が良くなかったり、多額の設備投資の必要が生じたりするケースでは、会社の稼ぎだけでは資金繰りを改善する目処が立たない時があります。そんな時は、資金調達によって経営状況の改善を目指すこともあります。

まずは普段利用している銀行に融資の相談をしてみるといいでしょう。銀行からの融資は比較的金利が低く、限度額が高く設定されている傾向にあります。決算書・事業計画書などの書類や、面談による審査が行われるため、時間がかかりやすい点に注意が必要です。

また、中小企業や小規模事業者などに向けて融資を行う「日本政策金融公庫」を利用したり、売掛金を早期に現金化するファクタリングのサービスを利用したりすることも選択肢として挙げられます。

参照:日本政策金融公庫

資金繰り表を活用する

資金繰り表とは、今後数ヶ月の入出金の予定を可視化し、各種支払いが問題なく行えるかどうかチェックするために作成する表です。資金が足りなくなる可能性があれば、その金額や時期に応じて資金を調達するなどの対策を行います。

資金繰り表を作成することで、資金繰りの改善が期待できることはもちろん、経営状況を把握しながら落ち着いて日々の経営に取り組めるようになります。また、金融機関から融資を受ける際に、融資が必要な理由や将来の返済見込みを説明しやすくなり、信頼を得やすくなることもメリットと言えるでしょう。

関連リンク:資金繰り表って?作り方、活用方法を解説

資金繰り表を活用した分析方法

資金繰り表を活用した分析方法

資金繰り表を作成した後はどのように役立てればいいのでしょうか。資金繰り表の基本的な仕組みや、それを踏まえた分析方法などについて解説します。

資金繰りの分析はなぜ大事か

資金繰りの分析は、経営に必要な資金が足りなくなることを防ぐために有効と考えられています。

取引先や銀行からの信頼を守るために、各支払いは遅延なく行う必要があります。会社としてきちんと稼げていても、売掛金の回収タイミングなどによって必要なタイミングで資金が用意できず、倒産に追い込まれる「黒字倒産」のリスクを回避することも重要です。

また、資金繰り表の分析によって資金が十分であるとわかれば、リスクを管理しながら将来のための投資を行うこともできるでしょう。

一般的な資金繰り表の構造

資金繰り表は貸借対照表や損益計算書と異なり、共通のフォーマットが設けられているわけではありません。しかし、一般的な資金繰り表は以下の3つの項目によって成り立ちます。

・経常収支

会社の本業に関する収支

例:仕入・従業員の給与・売掛金・買掛金など

・経常外収支

会社の本業以外の収支

例:設備投資に関する支出・税金・その他の補助的な収入(利息や配当金)など

・財務収支

資金の調達に関連する収支

例:銀行からの融資、配当金の支払いなど

資金繰り表を活用したチェックポイント

資金繰りを使って経営状況の分析を行う際は、以下をはじめとするポイントを確認しましょう。

・経常収支がプラスであるかどうか

会社の本業を表す経常収支はプラスであることが基本です。資金繰り表を見るときは、まずは経常収支がマイナスになっていないかどうかチェックしましょう。損益計算書で黒字であっても、現金のやりくりがうまくいかないために経常収支がマイナスになることもあります。

・翌月繰越がプラスであるかどうか

資金繰り表は基本的に「前月繰越+収入-支出=翌月繰越」の計算式で成り立っています。資金の残高である翌月繰越の欄をプラスに保ち、必要な資金を確保することが重要です。今後3ヶ月程度の資金が確保できているかどうか確認し、必要であれば売掛金の早期回収、未払金の支払いの後ろ倒しなどの対策を検討しましょう。

・財務収支が経常収支の範囲内に収められているか

財務収支は銀行からの融資などを含むため、事業拡大のための設備投資などをしている際は、マイナスになることが一般的です。したがって、財務収支に多少のマイナスがあっても気にする必要はありません。しかし、マイナスが大きいと資金繰りが危うくなるため、マイナスは経常収支の範囲内に納めることが望ましいでしょう。

資金繰り表の作成ならINVOYがおすすめ

「INVOY」は、経理業務に必要な請求書などの書類をオンライン上で発行・管理するサービスです。受け取った請求書のデータ化やカード支払いなど、業務に役立つさまざまな機能を提供しています。

INVOYのプランと費用は以下の通りです。

プラン費用
Freeプランずっと0円
Standardプラン980円/月(税込)

Standardプランでは、連携した銀行口座の情報を元に資金繰り表を作成することも可能です。

その他にも、INVOYは経理業務や経営に役立つ多様なサービスを提供しています。以下のリンクからぜひご利用ください。

まとめ

事業における支出を管理するためには、資金繰り表の作成が大切です。今後の支出を把握することで資金ショートを防ぐだけではなく、適切な場面で設備投資を行うなど、より落ち着いて経営判断を行うことができるでしょう。

資金繰り表には決まったフォーマットがないため、Excelなどを使って自ら作成することもできます。また、INVOYを使って資金繰り表を作成することも可能です。

この記事の投稿者:

nakashima

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