注文書の基礎知識

FAX発注書を徹底解説!メリット・デメリットから法的有効性、電子帳簿保存法まで

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fax 発注書

企業間の取引において、古くから利用されてきたFAX発注書。デジタル化が進む現代においても、依然として多くの現場で活用されています。

本記事では、FAX発注書の基本的な役割から、今も使われ続ける理由、メリット・デメリット、正しい書き方と送付マナー、法的有効性、さらには業務効率化や電子帳簿保存法への対応に至るまで、

FAX発注書に関するあらゆる情報を網羅的に解説します。

日々の業務でFAX発注書を利用されている方、これから利用を検討されている方、そしてFAX業務の課題解決を目指す全ての方にとって、本記事が業務改善の一助となれば幸いです。

1. FAX発注書とは?基本と今も使われる理由

FAX発注書とは、企業が商品やサービスを注文する際に、その内容を記載し、ファクシミリ(FAX)を通じて取引先に送信する書類のことです。

ビジネス取引におけるFAX発注書の基本的な役割は、注文する商品名、数量、納期、金額といった詳細情報を取引先に正確に伝えることにあります。

また、発注の事実を証明する証拠書類としての機能も持ち、万が一の取引トラブル発生時には重要な役割を果たします。さらに、社内的には発注内容を記録として残し、情報共有や管理に役立てるためにも用いられます。

インターネットやEDI(電子データ交換)といったデジタル技術が普及した現代においても、FAX発注書が依然として利用され続けているのには、いくつかの理由が存在します。

まず、日本のビジネス文化として、長年にわたる商習慣が根強く残っている点が挙げられます。業務の運用方法を大きく変更することに対する心理的な抵抗感や、変更に伴う工数を懸念し、現状維持を選択する企業が少なくないのです。

加えて、取引先のIT環境もFAX利用を継続させる要因の一つです。

特に中小企業や一部の業種では、EDIやBtoB EC(企業間電子商取引)のような新しいシステムの導入が進んでおらず、FAXが最も手軽で確実な通信手段として機能している場合があります。

FAXの操作自体が特別なITスキルを必要とせず、比較的簡単に扱えるため、デジタルツールに不慣れな担当者でも利用しやすいという利点もあります。

システム導入に伴うコストも無視できません。EDIやBtoB ECの導入には、システム開発費や運用費が発生するため、現状のFAX業務で大きな支障がない企業にとっては、新たな投資へのハードルが高いと感じられることがあります。

また、取引先ごとに異なるBtoB ECシステムを指定された場合、「多画面問題」と呼ばれる、複数のID・パスワード管理の煩雑さが生じることも、結果的にFAXの利用継続を後押しする一因となっています。

長年使用してきたFAX番号を変更することへの抵抗感も、企業がFAX注文を続ける理由の一つとして挙げられます。さらに、紙媒体で記録が残ることによる安心感や、履歴確認の容易さをメリットと感じる企業も存在します。

これらの背景を鑑みると、FAXの利用継続は単なる技術的な選択の問題ではなく、企業間の相互依存関係、既存の業務フローを変更することへのリスク回避志向、そして日本国内におけるデジタル化の進展速度のばらつきといった、より根深い要因が絡み合っていることが理解されます。

ある一社が最新のデジタルシステムを導入しようとしても、取引先が対応できなければ、結局FAXという共通の手段に頼らざるを得ない状況が生まれます。

このように、FAXの「定着」は個々の企業の判断だけでなく、業界全体の構造的な慣性が作用した結果と言えるでしょう。この慣性が、サプライチェーン全体のデジタル化を遅らせる一因となっている可能性も否定できません。

また、FAXの「簡便さ」は、一部の利用者にとっては確かに利点ですが、取引量の増加やデータ連携の必要性が高まるにつれて、その裏に潜む非効率性やエラーの潜在的リスクが顕在化してくることも認識しておく必要があります。

初期の操作の容易さが、後々の業務プロセスにおいて、手作業によるデータ入力や確認作業といった形で、見えないコストや負担を生み出しているケースも少なくないのです。

2. FAX発注書のメリット・デメリットを徹底解説

FAX発注書には、依然として利用されるだけのメリットがある一方で、業務効率やセキュリティの観点から無視できないデメリットも存在します。ここでは、双方の側面を詳しく見ていきましょう。

まずメリットとして、インターネット環境がなくても利用できる点が挙げられます。FAXは電話回線を通じて情報を送受信するため、災害時などでインターネットが不安定な状況下でも、通信手段を確保できる可能性があります。

また、インターネットを介さないやり取りであることから、外部からの不正アクセスによる情報漏洩リスクを低減できるという認識も一部にはあります。ただし、このセキュリティ認識には注意が必要です。

物理的な紙の書類として履歴が残ることも、特に受信側にとっては分かりやすさや安心感につながるメリットとされています。誰がいつ何を発注したのか、手元で確認できる手軽さがあります。

さらに、特別なITスキルがなくても、手書きで注文書を作成し送信できるため、ITリテラシーが高くない担当者でも扱いやすいという利点もあります。

これにより、専門的なシステム導入や人材育成にかかる初期費用を抑えられると考える企業もあります。

特定のFAX番号を入力して送信するため、確実に相手に届くという信頼性も、FAXが選ばれる理由の一つです。

一方で、FAX発注書が抱えるデメリットは深刻なものも少なくありません。最も大きな問題の一つは、受注情報の確認に多大な人的コストがかかる点です。

手書きの文字が判読しづらかったり、普段と異なる注文内容だったりした場合、電話での確認作業が発生し、時間と手間を要します。

人為的ミスが発生しやすいことも重大なデメリットです。

FAXで届いた注文書を紛失して受注漏れが発生する、手書きの数字や商品名を読み間違えて誤った内容で処理してしまう、FAXの通信エラーで注文が正しく届かないといったトラブルが起こり得ます。

さらに、FAX番号の入力ミスによる誤送信のリスクも常に伴います。これは、機密情報が意図しない第三者に渡ってしまう可能性を意味し、先の「セキュリティが高い」という認識とは裏腹の事態を引き起こしかねません。

業務効率の低下も大きな課題です。受信したFAXの内容を基幹システムや販売管理システムに手作業で入力する必要があるため、時間がかかる上に、入力ミスも発生しやすくなります。

紙で保管された大量のFAXの中から特定の注文書を探し出す作業も非効率です。問い合わせがあった際に、該当のFAXを見つけるまでに時間がかかり、顧客対応の遅れにつながることもあります。

FAX用紙やインク代といった消耗品のコスト、FAX機器の維持管理費も継続的に発生します。テレワークのような現代的な働き方への対応が難しい点もデメリットです。

FAXの送受信や確認のためにオフィスに出社しなければならない場合、柔軟な働き方の阻害要因となります。

コミュニケーションの面でも課題があります。FAXは基本的に一方的な情報伝達手段であるため、受信側から追加の商品提案をしたり、関連情報を伝えたりといった双方向のコミュニケーションが取りづらいという問題があります。

これにより、アップセルやクロスセルの機会を逃している可能性も指摘されています。

文字が不鮮明で内容が確認できない場合、送信元に問い合わせる必要が生じ、本来一度で済むはずのやり取りが複数回に及ぶことも、効率を損ねる要因です。

FAXの「セキュリティ」に関する認識は、まさに諸刃の剣と言えます。インターネットを介さないことによる安心感がある一方で、誤送信や物理的な書類の置き忘れ、意図しない人物による閲覧といったヒューマンエラー起因の情報漏洩リスクは、デジタルシステムが持つ監査証跡のような追跡機能を欠く分、より深刻な結果を招く可能性があります。

つまり、FAXのセキュリティは特定の脅威(サイバー攻撃など)からの隔離を意味する一方で、別の種類のリスク(人的ミスや物理的な管理不備)に対しては脆弱性を露呈する可能性があるのです。

これらのFAXに起因する非効率性(手入力、誤り訂正、検索時間など)が積み重なることは、特に成長期にある企業や、市場の変化に迅速に対応する必要がある企業にとって、経営全体の俊敏性や拡張性を著しく損なう要因となり得ます。

一つ一つの作業は小さくとも、その総体は業務プロセスの大きな足かせとなるのです。注文量が増加するにつれて、これらの手作業はボトルネックとなり、人員増強か、あるいは遅延やミスの増加という形で企業の負担を増大させます。

このような手作業への依存は、効率的な業務拡大や、受注データを活用した経営分析などを困難にし、結果として市場競争における対応力を削ぐことにも繋がりかねません。

さらに、FAXによる一方的なコミュニケーションは、顧客との関係構築や収益機会の創出という観点からも、見過ごせない影響を及ぼします。

現代の多くのECサイトやCRMシステムが、顧客の購買履歴に基づいた推奨商品の表示や、パーソナライズされた情報提供といった機能を備えているのに対し、FAXはあくまで静的な文書伝達手段に留まります。

これにより、注文プロセスを通じた顧客エンゲージメントの深化や、顧客単価の向上といった機会を逸失している可能性があり、これは長期的に見れば大きな競争上の不利となり得るでしょう。

3. 【例文付】FAX発注書の正しい書き方と送付マナー

【例文付】FAX発注書の正しい書き方と送付マナー

FAXで発注書を送る際には、相手に正確な情報を伝え、スムーズな取引を行うために、発注書自体の記載内容と、それを送る際のマナーが重要になります。ここでは、具体的な例文を交えながら、正しい書き方と送付マナーを解説します。

A. 発注書自体の書き方

発注書の発行は法律で厳密な様式が定められているわけではありませんが、取引の明確化とトラブル防止のために、記載すべき重要な項目がいくつかあります。これらの項目を網羅することで、発注書がその役割を十分に果たすことができます。

まず、書類のタイトルとして「発注書」と明確に記載します。次に、発注者、つまり自社の情報を記載します。

これには、正式な会社名、所在地、電話番号、FAX番号、担当部署名、担当者名が含まれます。

続いて、発注管理のための「発注番号」を記載します。これは、後々の問い合わせや照合の際に特定の取引を識別しやすくするためのもので、発注ごとに一意の番号を付与することが望ましいです。

そして、「発注日」として、発注書を発行する日付を明記します。

次に、受注者、つまり取引先の情報を記載します。正式な会社名、所在地、そして可能であれば担当部署名や担当者名を敬称(「御中」や「様」)とともに記載します。

発注書の中心となるのは「注文内容」の詳細です。ここには、注文する商品やサービスについて、品名・品番、規格、数量、単位(例:個、セット、式など)、単価、そして各品目の金額(数量×単価)を正確に記載します。

複数の品目を注文する場合は、それぞれ行を分けて記載し、見やすく整理することが重要です。

全ての品目を記載した後、「合計金額」として、消費税込みの総支払額を明記します。

納期については、商品をいつまでに納品してほしいか、またはサービスをいつまでに完了してほしいかという「希望納期」を具体的に記載します。

また、商品の「納入場所」が発注者の住所と異なる場合は、その指定場所も明記する必要があります。

支払いに関する条件も重要です。

「支払条件」として、支払い方法(例:銀行振込、手形など)や支払期日(例:月末締め翌月末払いなど)を記載します。

最後に、「備考欄」を設け、上記以外に伝えておくべき特記事項や要望(例:梱包方法の指定、納品時の注意事項など)があれば記載します。

これらの項目を、相手にとって分かりやすいレイアウトで配置することが求められます。

一般的には、書類上部にタイトルと発注者情報、発注番号、発注日を配置し、次に受注者情報、中央部分に注文内容の詳細な表、そして下部に合計金額、納期、納入場所、支払条件、備考欄といった順序で記載すると、情報が整理され、受け取った側が必要な情報を迅速に把握できます。

B. 送付状の重要性と書き方

FAXで発注書を送る際には、発注書本体だけでなく「送付状」(FAX送信票、添え状とも呼ばれます)を添付するのがビジネスマナーです。

送付状は、誰から誰に、何を送ったのかを明確に伝える役割を果たし、FAXのページ欠落といった送信トラブルが発生した場合にも、その発見と対応を早めるのに役立ちます。

送付状に記載すべき主な項目は以下の通りです。まず「送信日」として、FAXを送信する日付を記載します。次に「宛先」です。

相手の会社名(株式会社なども略さずに正式名称で)、部署名、担当者名を明記し、会社や部署宛の場合は「御中」、個人宛の場合は「様」と敬称を正しく使い分けます。

続いて「差出人情報」として、自社の会社名、部署名、担当者名、電話番号、FAX番号を記載します。

「表題(件名)」は、送付状の目的が一目でわかるように、「注文書送付のご案内」などと簡潔かつ明確に記載し、本文よりもやや大きめのフォントで中央揃えにするなど、目立たせる工夫をすると良いでしょう。

FAXは途中で通信が途切れてページが欠ける可能性があるため、「総ページ数」の記載は非常に重要です。

「総ページ数:2ページ(本状含む)」のように、送付状自体を含めた総枚数を明記することで、相手が全ページを正しく受信できたかを確認するのに役立ちます。

本文は、時候の挨拶などを含む丁寧な言葉遣いを心がけます。ビジネス文書では、冒頭に「拝啓」といった頭語を、結びに「敬具」といった結語を用いるのが一般的です。

本文では、「このたび、下記の通り注文書をFAXにてお送りいたしましたので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。」といったように、何を送付したのかを簡潔に伝えます。

そして、「記」書きを用いて、送付書類の内容と枚数を箇条書きで分かりやすく記載します。例えば、「・〇〇〇注文書 1枚」のように記し、最後に「以上」と記載して締めくくります。

状況に応じた送付状の文面も考慮すると、より丁寧な印象を与えます。

例えば、発注内容に誤りがあり訂正した注文書を再送付する場合は、「〇月〇日にお送りいたしました注文書に誤りがございましたため、訂正した注文書を再度FAXにてお送りさせていただきます。

この度は、大変ご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。

お手数をおかけいたしますが、前回の注文書は破棄いただき、本書に基づきご手配いただきますようお願い申し上げます。」といった謝罪と指示を明確に伝える文面になります。

急ぎで注文したい場合は、「【至急】注文書送付のご案内」といった件名にし、本文でも「このたび、急ぎで注文したい品がございますので、注文書をFAXにてお送りいたします。

ご確認いただき、迅速にご対応いただけますと幸いです。」と緊急性を伝えることが有効です。

追加注文の場合は、「先日ご注文いたしました商品に関しまして、追加で発注したい品目がございますので、追加注文書をFAXにてお送りいたしました。

ご査収の上、合わせてご手配をお願い申し上げます。」といった文面が考えられます。

C. FAX送信時のマナーと注意点

発注書と送付状を準備したら、次は実際にFAXを送信する際の注意点です。まず最も重要なのは、送信前にFAX番号を必ず確認することです。

誤送信は、情報漏洩のリスクがあるだけでなく、誤送信先や本来の送信先に多大な迷惑をかけることになります。

番号を手入力する際はもちろん、短縮ダイヤルや履歴から送信する場合も、宛先が正しいかダブルチェックする、あるいは社内で登録済みの正規リストと照合するといった対策が有効です。

特に重要書類や急ぎのFAXを送る場合、あるいは初めてFAXを送る相手には、送信前後に電話で一報を入れると、より確実に相手の手元に届けることができます。

送信後に電話で到着確認をする旨を送付状に記載しておくのも良いでしょう。

初めての相手には、本送信の前にテスト送信を行い、正常に届くか確認することも有効な手段です。

送信する書類の読みやすさにも配慮が必要です。FAXで送信すると、文字が潰れたり、薄くなったりすることがあります。

元の書類の文字が小さい、印字が薄いといった場合は、拡大コピーする、コピーの濃度を調整するなどして、相手が読みやすい状態にしてから送信しましょう。

一度に大量の枚数をFAXで送信するのは避けるべきです。送信に時間がかかるだけでなく、通信エラーの原因になったり、相手先のFAX機を長時間占有してしまったりする可能性があります。

機密性の高い書類や親展扱いの書類をFAXで送るのも、原則として避けるべきです。FAXは必ずしも担当者が最初に受け取るとは限らず、誤送信した場合の取り消しも困難だからです。

送信する時間帯にも配慮しましょう。緊急でない限り、相手先の営業時間内に送信するのがマナーです。

万が一、FAXを誤送信してしまった場合は、速やかかつ誠実に対応することが求められます。まず、誤送信先に連絡を取り、事情を説明して謝罪の上、受信したFAXの破棄を依頼します。

次に、本来の送信先にも連絡し、誤送信の事実と対応状況を報告し、謝罪します。社内の上長や関連部署にも速やかに報告し、指示を仰ぐ必要があります。誤送信の内容や機密性の度合いを正確に把握し、関係者に伝えることが重要です。

送信前のチェックリストを作成し、送信先情報の一致確認、送信書類の内容とバージョンの確認、送信前後の履歴把握などを徹底することで、誤送信のリスクを大幅に低減できます。

送付状の書き方や送信時のマナーに関する詳細な指針は、単に情報を伝達するという機能的な側面を超えて、日本のビジネス文化における相手への配慮や敬意の表現がいかに重視されているかを示しています。

これらの手順を遵守することは、円滑な取引関係を維持するための重要な要素と見なされることが多いのです。細部にわたる配慮は、取引相手に対する誠実さの表れと受け取られ、良好なビジネス関係の構築に寄与します。

一方で、誤送信防止策や発生時の対応手順がこれほどまでに詳細に語られるということは、FAXという通信手段が本質的に抱える脆弱性を浮き彫りにしています。

FAXの「手軽さ」や「確実性」といった認識とは裏腹に、誤送信のリスクは常に存在し、その対策は送信者の手作業による注意深さに大きく依存しています。

この手作業によるリスク管理の負担は、FAX利用における隠れたコストと言えるでしょう。

また、発注書に記載すべき項目が多岐にわたることは、サプライヤー側からの問い合わせを未然に防ぎ、取引の曖昧さを排除しようとする意図の表れです。

発注者、受注者、発注日、発注番号、詳細な商品情報、数量、単価、納期、支払条件といった情報を網羅することで、取引に関するほとんどの疑問点を事前に解消し、結果として双方の業務効率を高めることに繋がります。

このように、発注書の作成段階での情報提供の徹底は、その後のコミュニケーションコストを削減し、誤解に基づくトラブルを回避するための予防策としての意味合いも持つのです。

4. FAX発注書の法的効力と注意点

FAXで送受信される発注書が、法的にどのような意味を持つのかは、多くのビジネス担当者が気にする点でしょう。一般的に、発注書単体では法的な契約を成立させる効力を持たないとされています。

発注書は、あくまで発注者側の一方的な「注文の意思表示」であり、契約が成立するためには、受注者側の「承諾の意思表示」と合わせて、双方の意思が合致する必要があります。

しかし、特定の条件下ではFAX発注書が法的な意味合いを帯びることがあります。

例えば、発注者と受注者の間で事前に締結された基本契約書(取引基本契約など)の中に、「発注書の発行をもって契約が成立する」といった趣旨の条項が含まれている場合です。

この場合、FAXで送信された発注書であっても、その発行をもって契約が成立したと見なされる可能性があります。

より一般的なのは、発注書に対して受注者が「発注請書」や「注文請書」といった形で承諾の意思を示す書類を発行した場合です。

この発注書と請書が揃うことによって、双方の合意が形成されたと見なされ、契約が成立し、法的な効力が発生すると考えられます。このやり取りがFAXを介して行われたとしても、同様に扱われるのが通常です。

発注書が単独で法的拘束力を持たないとしても、取引におけるその重要性は変わりません。発注書は、「確かにこのような内容で注文の意思があった」という証拠として機能します。

これにより、受注者は安心して商品の準備やサービスの提供に着手でき、発注者側も注文内容を明確に記録として残すことができます。

口頭での注文のみで、後になって「そんな注文はしていない」といったトラブルが発生するリスクを軽減する上で、発注書の存在は大きな意味を持ちます。

特に注意が必要なのは、建設業における契約です。建設業法第19条では、建設工事の請負契約の当事者は、契約内容を記載した書面に署名または記名押印し、これを相互に交付しなければならないと定められています。

この「書面の相互交付」は、原則として契約書の原本を双方が保持することを意味します。

FAXで送信された書類はコピーであり、原本の交付とは見なされないため、建設業の請負契約においては、FAXによる注文書や請書のやり取りだけでは、この法律の要件を満たさないとされるのが一般的です。

これは、一般的な商取引におけるFAX発注書の扱われ方とは異なる、建設業特有の重要な注意点です。建設工事に関する請負契約書や注文請書は、印紙税の課税対象となる場合があり、この点も留意が必要です。

多くの商取引において、発注書と請書のFAX交換によって契約が成立すると見なす実務慣行は、迅速な取引開始と事務処理の効率化を両立させるための現実的な対応と言えます。

しかし、この実用主義的なアプローチは、建設業のように特定の法律によってより厳格な手続きが求められる分野では通用しません。

このことは、企業が事業を行う業界の法規制を正確に理解し、それに準じた契約プロセスを構築することの重要性を示唆しています。

また、発注書単体での法的効力の曖昧さは、特に基本契約がない場合や、請書の発行が遅れる場合に、受注者にとってリスクとなり得ます。

発注書を受け取った段階で受注者が生産準備を開始したものの、その後発注者側の事情でキャンセルされた場合、受注者が損失を被る可能性があります。

このため、受注者側としては、請書の発行を確実に行う、あるいは基本契約で契約成立時点を明確に定めておくといった自衛策が求められます。

FAXの即時性が、かえって契約成立のタイミングに関する認識のずれを生む温床とならないよう注意が必要です。

建設業界における原本主義の厳格な適用は、皮肉にも、同業界における電子契約のような、法的に有効かつ効率的なデジタル代替手段への移行を促進する一因となるかもしれません。

FAXでは法的な要件を満たせないという制約が、より高度なデジタルソリューション導入のインセンティブとして機能する可能性があるのです。

単にFAX業務をPC-FAXなどに置き換えるだけでは、この根本的な法的課題は解決されないため、業界特有のニーズが技術革新を後押しする構図が見て取れます。

5. FAX発注業務の課題と効率化・電子化のポイント

FAXによる発注業務は、長年にわたり多くの企業で採用されてきましたが、その運用には数々の課題が潜んでいます。これらの課題を認識し、適切な効率化や電子化を進めることが、業務改善の鍵となります。

まず、FAX受注業務における大きな課題として、受注情報の確認にかかる人的コストが挙げられます。手書きの文字が読みにくい場合や、通常と異なる注文内容の場合には、電話での確認作業が発生し、担当者の時間と労力が割かれます。

また、FAX用紙やインク代といった物理的なコストも継続的に発生します。

次に、人為的ミスが発生しやすい点も深刻な問題です。

FAXで届いた注文書を紛失して受注漏れが発生する、手書きの数字や商品名を読み間違えて誤った数量や品物を手配してしまう、FAXの通信状況が悪く注文内容が欠落してしまうといったリスクが常に伴います。

これらのミスは、顧客満足度の低下や経済的な損失に直結する可能性があります。

さらに、受注情報を調べたいときに時間がかかるという問題もあります。紙で受注管理を行っている場合、過去の取引履歴や現在の処理状況を確認するのに手間と時間がかかります。

特定のFAXを探し出すために、ファイル棚を漁ったり、古いものであれば倉庫まで探しに行ったりする必要が生じることもあります。

受注情報をExcelなどに入力してデジタルデータ化するとしても、受注件数が多い場合はその入力作業自体が大きな負担となり、入力ミスも発生しやすくなります。

これらの課題を解決し、業務を効率化するための手段として、以下のような電子化のポイントが考えられます。

一つは、PC-FAXやインターネットFAX(クラウドFAX)の導入です。これらは、パソコンの画面からFAXの送受信を行えるようにするもので、紙の出力が不要になるため、ペーパーレス化を促進できます。

受信したFAXはPDFなどの電子ファイルとして保存・管理できるため、物理的な保管スペースの削減や、後述する電子帳簿保存法への対応にも繋がります。

クラウドFAXの場合、インターネット環境があればどこからでもFAXの確認ができるため、テレワークとの親和性も高いと言えます。

ただし、PC-FAXやクラウドFAXを導入しただけでは、受信したFAXの内容(特に手書き文字)を自動でデータ化するわけではないため、内容の確認やシステムへの入力作業が完全になくなるわけではありません。

もう一つの有力な手段が、FAX-OCR(光学文字認識)技術の活用です。これは、FAXで受信した注文書(手書き文字を含む)の画像データから文字情報を自動で読み取り、テキストデータに変換する技術です。

これにより、従来手作業で行っていたシステムへのデータ入力作業を大幅に削減し、入力ミスや作業時間の短縮が期待できます。

OCRでデータ化された情報は、キーワード検索が可能になるため、過去の注文内容の検索も容易になります。

ただし、FAX-OCRの導入にはコストがかかるほか、読み取り精度は100%ではなく、特に手書き文字の癖や書類の様式によっては誤認識が発生する可能性もあります。

また、取引先に使用してもらう発注書のフォーマットをある程度標準化する必要が生じる場合もあります。

さらに、RPA(Robotic Process Automation)を組み合わせることで、OCRでデータ化された情報を基幹システムへ自動入力するといった、一連の処理を自動化することも可能です。

これらの電子化ツールを導入することで、FAX業務における課題の多くは改善の方向に向かいます。

特に、電子データとして管理することで、目的の文書を迅速に検索できるようになり、重要なFAXを紛失するリスクも軽減できます。

大量の紙書類に目を通す必要がなくなるため、無駄な工数の削減や、ヒューマンエラーのリスク軽減にも繋がります。

FAX業務のデジタル化ソリューションを選択する際には、自社が抱える具体的な課題(例えば、紙の削減が主目的か、データ入力の自動化が急務かなど)を明確にし、既存のIT環境や予算と照らし合わせて最適なものを選ぶことが重要です。

単に紙をなくしたいだけであればクラウドFAXでも十分かもしれませんが、データ入力の負荷が非常に大きい場合にはFAX-OCRの導入がより効果的でしょう。

解決したい課題と導入するソリューションがミスマッチであれば、期待した効果は得られません。

また、FAX-OCRのような技術を導入する際には、新たな運用上の注意点が生じることも理解しておく必要があります。

例えば、OCRの読み取り精度を上げるために、取引先に特定の発注書フォーマットの使用を依頼する必要が出てくるかもしれません。

これは、自社の業務効率化のために、取引先に変更の負担を強いる可能性があり、慎重なコミュニケーションが求められます。内部の効率化と外部の取引先との関係性のバランスを考慮することが肝要です。

さらに、PC-FAXやFAX-OCRといった部分的な改善策は、FAX業務の「苦痛」をいくらか和らげる効果がある一方で、結果的にFAXという通信手段そのものの延命につながり、EDIやWebポータルといった、より統合的で高度なデジタル取引システムへの本格的な移行を遅らせてしまう可能性も考慮に入れるべきです。

目先の課題解決に注力するあまり、より大きな変革の機会を逸してしまうことのないよう、長期的な視点でのシステム戦略が求められます。

6. FAX発注書の保管方法と電子帳簿保存法対応

FAX発注書の保管方法と電子帳簿保存法対応

FAXで送受信した発注書は、他の取引書類と同様に、法律で定められた期間、適切に保管する義務があります。特に近年改正が重ねられている電子帳簿保存法への対応は、多くの企業にとって重要な課題となっています。

まず、発注書の保管期間ですが、法人税法上、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間とされています。

ただし、青色申告法人で欠損金が生じた事業年度、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた場合には、その保管期間は10年間に延長されます。

電子帳簿保存法との関連で重要になるのは、FAXで授受した発注書が「電子取引」に該当するかどうか、そしてその場合の保存方法です。FAX機器のタイプによって、その取り扱いが異なります。

従来型の、受信した内容を紙に出力するタイプのFAXで受け取った発注書は、「書面による取引」として扱われ、原則としてその紙の状態で保存します。

この紙の書類は、スキャナ保存の要件を満たせば、スキャンして電子データとして保存し、原本である紙を破棄することも可能です。

一方、クラウドFAXサービスを利用したり、複合機やFAXソフトで受信したFAXデータをPDFなどの電子データとして直接パソコンやサーバーに保存したりする場合、これは「電子取引」に該当します。

2022年1月1日以降(宥恕期間は2023年12月31日で終了)に行われた電子取引のデータは、原則として電子データのまま保存することが義務付けられています。

つまり、電子的に受け取ったFAX発注書を紙に印刷して保存することは、原則として認められません。送信側が紙の書類をFAXで送ってきたとしても、受信側が電子データとして受け取った場合は、電子取引として扱われます。

同様に、自社がクラウドFAXなどから電子データとして発注書を送信した場合も、その送信控えは電子データとして保存する必要があります。

電子取引に該当するFAXデータを保存する際には、電子帳簿保存法が定める以下の要件を満たす必要があります。

一つ目は「真実性の確保」です。これは、保存されたデータが改ざんされていないことを担保するための措置です。

具体的には、タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムの利用、あるいは訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用するといった方法のいずれかを選択する必要があります。

二つ目は「可視性の確保」です。保存された電子データを、必要に応じて速やかに確認・表示・印刷できる状態にしておくことを指します。

具体的には、保存場所にパソコン、ディスプレイ、プリンターといった機器とその操作マニュアルを備え付けること、そしてシステムの概要書を備え付けることが求められます。

三つ目は「検索機能の確保」です。保存された電子データを、取引年月日、取引金額、取引先名といった主要な項目で検索できるようにする必要があります。

また、日付や金額の範囲を指定して検索できる機能や、複数の項目を組み合わせて検索できる機能も原則として必要です。

ただし、この検索機能については緩和措置があります。税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、範囲指定検索や複数項目組み合わせ検索の機能は不要となる場合があります。

さらに、基準期間(電子取引が行われた日の属する年の前々年)の売上高が5,000万円以下の小規模事業者(2024年1月1日以降の改正により、以前の1,000万円以下から基準が変更)で、同様にデータのダウンロードの求めに応じられる場合は、全ての検索機能の確保が不要となる場合があります。

これは中小企業にとって重要なポイントです。

社内で電子データを適切に保管するためのルールを定め、セキュリティ対策も含めた管理体制を構築することが、法令遵守と業務効率化の両立に繋がります。

電子帳簿保存法、特に電子取引データの電子保存義務化は、企業がFAXプロセスを見直す強力な外的要因となっています。

従来、電子的に受信したFAXを印刷して紙で保管していた企業も、この法改正により、電子データのまま適切な要件を満たして保存するという、新たな業務フローの構築を迫られています。

これは、結果的にペーパーレス化やデジタル文書管理の導入を促進する力となっています。

しかし、企業によっては、従来型の紙出力FAXとクラウドFAXのような電子FAXソリューションを併用しているケースも少なくありません。

このような場合、同じ「発注書」という書類であっても、受信方法によって保存方法や法的要件が異なるという、複雑なハイブリッド環境が生じます。

紙で受け取ったものは紙(またはスキャナ保存)、電子で受け取ったものは電子データで、それぞれ異なるルールに基づいて管理する必要があり、これは管理業務の煩雑化やミスのリスクを高める可能性があります。

小規模事業者に対する検索機能の緩和措置は、リソースの限られた企業への配慮として評価できますが、それでもなお「データのダウンロードの求めに応じられる」という条件は、ある程度のレベルで整理されたデジタル記録管理体制が前提となります。

つまり、高度な検索システムは不要だとしても、電子FAXの記録をアクセス可能で、整理され、検索可能なデジタル形式で保管しておく必要性は依然として残ります。これは、完全なデジタル管理からの免除ではなく、一部要件の簡素化と理解すべきです。

7. FAX発注からの移行:代替システムと導入の考え方

FAXによる発注業務には多くの課題があることから、より効率的で現代的な代替システムへの移行を検討する企業が増えています。ここでは、主な代替システムとその導入に関する考え方を紹介します。

まず、比較的導入しやすいのが「クラウドFAX(インターネットFAX)」です。これは、物理的なFAX機を使わずに、インターネット経由でFAXの送受信を行うサービスです。

受信したFAXはPDFなどの電子ファイルとして扱えるためペーパーレス化に貢献し、どこからでもアクセスできるためテレワークにも対応しやすいというメリットがあります。

既存のFAX番号をそのまま利用できるサービスも多く、取引先に大きな変更を強いることなく導入できる場合があります。

ただし、クラウドFAXはあくまでFAXの送受信をデジタル化するものであり、手書き文字の判読や、誤送信のリスクといったFAX特有の問題を根本的に解決するわけではありません。

次に「Web EDI(Electronic Data Interchange)」が挙げられます。EDIは、企業間で取引データを標準化された形式で電子的に交換する仕組みです。

Web EDIは、インターネット回線を利用するため、従来の専用線EDIに比べて導入コストを抑えられる場合があります。発注データが直接システム間で連携されるため、手入力によるミスがなくなり、業務効率が大幅に向上します。

ただし、Web EDIを導入するには、取引先との間でシステムやデータ形式を合わせる必要があり、事前の調整や合意が不可欠です。また、EDIは信頼性が高い反面、導入や運用に一定のコストがかかることも考慮に入れる必要があります。

より柔軟性が高く、近年注目されているのが「WEB注文システム(BtoB ECサイト)」です。これは、企業がオンラインのプラットフォーム上で商品を選択し、発注する仕組みです。

発注側は24時間いつでも注文でき、受注側も注文データをリアルタイムで受け取れるため、双方にとって利便性が向上します。注文データは最初からデジタルであるため、転記ミスがなく、受注登録業務の時間とミスを大幅に削減できます。

さらに、多くのWEB注文システムには、新商品の案内やキャンペーン情報を通知する機能も備わっており、FAXのような一方的な情報伝達ではなく、双方向のコミュニケーションを促進し、販売機会の拡大にも繋がる可能性があります。

BtoB ECは、EDIに比べて比較的安価に導入できる場合が多く、FAXの代替手段として有力な選択肢の一つとされています。

最も手軽な代替手段としては、「メール」や「チャットツール」の活用があります。PDF化した発注書をメールに添付して送信したり、チャットツールで注文内容を連絡したりする方法です。

多くの企業が既にこれらのツールを導入しているため、新たなシステム投資なしにFAXからの移行を図れる点がメリットです。

FAXからこれらの代替システムへ移行する際には、いくつかの重要なポイントがあります。最も大切なのは、取引先とのコミュニケーションです。

長年FAXでの取引に慣れ親しんできた取引先に対して、一方的にFAXを廃止すると、混乱を招いたり、関係が悪化したりする可能性があります。

まずは、メールやEDI、WEB注文システムといった代替案を提示し、移行による双方のメリットを丁寧に説明し、理解と協力を得ることが不可欠です。全ての取引先と一斉に移行するのが難しい場合は、段階的なアプローチも有効です。

例えば、IT化に積極的な取引先から順次移行を進めたり、まずはクラウドFAXを導入して社内のペーパーレス化を図りつつ、並行して主要な取引先とWEB注文システムへの移行を協議するといった方法が考えられます。

また、新しいシステムの導入には初期投資や運用コストが伴うため、特に発注件数が少ない企業にとっては、費用対効果を慎重に検討する必要があります。

FAXからの移行は、単なる技術的なシステムの入れ替えではなく、取引先という外部のステークホルダーを巻き込んだ「変革管理プロセス」であるという認識が重要です。

社内システムの変更とは異なり、注文方法の変更は双方の合意と協力なしには成り立ちません。

したがって、移行を推進する企業は、システムの選定だけでなく、取引先への説明、説得、場合によっては移行支援といったコミュニケーション活動にも注力する必要があります。

移行の成否は、取引エコシステム全体の適応意欲に左右されると言っても過言ではありません。

幸い、クラウドFAXから本格的なEDIまで、多様な代替手段が存在するため、企業は自社のリソース、技術力、そして取引関係の特性に合わせて、最適な移行パスを選択できます。

必ずしも急進的な変革である必要はなく、段階的な移行も可能です。

例えば、まず物理的なFAX機をクラウドFAXに置き換え、次に主要な取引先にWebポータルの利用を促し、さらに大口の取引先とはEDI連携を目指すといった、柔軟な戦略を描くことができます。

そして、代替システムの選択は、単に注文方法が変わるだけでなく、買い手と売り手のコミュニケーションのあり方や関係性そのものを変容させる可能性を秘めています。

FAXが主に取引文書の交換という静的な役割を担っていたのに対し、例えばBtoB ECプラットフォームは、プロモーション機能や通知機能を通じて、より動的でデータに基づいたインタラクションを可能にします。

これにより、発注システムは単なる業務ツールから、顧客関係管理や販売促進のための戦略的なチャネルへと進化する可能性を秘めているのです。

8. まとめ:FAX発注書と上手く付き合い、業務改善を目指す

本記事では、FAX発注書の基本的な定義から、依然として利用される理由、メリット・デメリット、正しい書き方と送付マナー、法的有効性、さらには業務効率化や電子帳簿保存法への対応、そして代替システムへの移行に至るまで、多角的に解説してきました。

FAX発注書は、その歴史の長さにもかかわらず、日本のビジネスシーンにおいて、特定の取引先との関係性やIT環境、あるいは長年の商習慣といった理由から、今なお一定の役割を担っています。

しかし同時に、業務効率の観点、ヒューマンエラーの発生リスク、そして電子帳簿保存法のような現代的な法令遵守の要請といった側面から見ると、多くの課題を抱えていることも明らかです。

重要なのは、FAX発注書の利便性(特定の状況下における手軽さや確実性など)と、その限界(非効率性や潜在的リスクなど)の両面を正しく理解することです。

もし、取引先の事情などでFAXを継続して使用せざるを得ない場合でも、本記事で紹介したような正しい書類の作成方法、丁寧な送付マナー、そして法令に準拠した適切な保管方法を実践することで、リスクを最小限に抑え、業務の質を高めることができます。

それと同時に、企業は常に業務改善の視点を持ち、FAX業務が抱える課題を克服するための積極的な取り組みを検討すべきです。

クラウドFAXの導入によるペーパーレス化、FAX-OCRによるデータ入力の自動化、そして将来的にはEDIやWEB注文システムといった、より高度なデジタルソリューションへの戦略的な移行は、業務効率の大幅な向上、コスト削減、データ精度の向上、そして長期的なコンプライアンス体制の確立と競争力の強化に繋がります。

最終的に目指すべきは、画一的なFAXの即時全廃ではなく、自社の状況や取引先との関係性を考慮しつつ、バランスの取れたアプローチで業務プロセスを進化させていくことです。

既存のワークフローや取引先の意向を尊重しつつも、常に新しい技術や手法に目を向け、発注業務全体の最適化を目指すという継続的な努力が、これからの企業には求められています。

FAX依存の受発注プロセスから、よりデジタル化されたプロセスへの移行は、一朝一夕に達成できるものではなく、技術の進展、取引先の対応能力、そして法規制の変化といった外部環境を継続的に評価しながら進めるべき、長期的な進化の道のりです。

企業は、この変化の潮流の中で、自社がどの段階にいるのかを常に把握し、柔軟に対応していく必要があります。

そして、FAX発注書の管理方法を見直し、あるいはFAXからの移行を成功させることは、単に一つの業務が改善されるに留まらず、企業全体のデジタル成熟度を高め、データを戦略的に活用する能力を養うことにも貢献します。

非効率なFAXプロセスは、貴重なリソースを消費し、エラーが発生しやすく、統合されていないデータを生み出します。一方で、デジタル化された代替手段は、構造化され、アクセスしやすく、分析可能なデータを生成します。

このデータは、販売分析、在庫管理、財務予測など、より高度な経営判断に活用できる貴重な資産となり得ます。

したがって、「FAX問題」への取り組みは、よりデータ駆動型で俊敏な組織を構築するための、大きなデジタルトランスフォーメーションの取り組みにおける、重要な一歩と位置づけることができるでしょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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