会計の基礎知識

リースの仕訳・会計処理の方法とは?基礎から新会計基準までを解説

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リース 仕訳

リース取引の仕訳を正確に行い、会社の財務状況を正しく管理したいとお考えではないでしょうか。経理担当者にとって、リース会計は複雑で間違いやすい業務の一つです。特に、数年後に迫る会計基準の大きな変更は、多くの企業にとって無視できない課題となっています。

この記事を読めば、リース会計の基本から具体的な仕訳方法、そして来るべき新リース会計基準の要点まで、すべてを体系的に理解できます。読み終えるころには、日々の業務に自信が持てるだけでなく、将来の変化にも的確に対応できる知識が身につくでしょう。

リース会計の世界は、専門用語が多く、一見すると難解に感じるかもしれません。

しかし、ご安心ください。この記事では、ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いといった基本から、具体的な数値を交えた仕訳例、中小企業向けの簡便な処理方法まで、一つひとつ丁寧に解説します。

貴社がこれからも法令を遵守し、戦略的な経営判断を下せるよう、本記事で得られる知識が確かな土台となります。

目次

リース会計の基本

リース会計を理解する第一歩は、現行の会計基準における2種類のリース取引、「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の違いを明確に把握することです。この分類は、取引の経済的な実態に基づいており、会計処理の方法を根本から決定づける重要な要素となります。

ファイナンスリースとは?売買取引とみなされる理由

ファイナンスリースとは、実質的に資産を分割払いで購入するのと同じ経済的価値を持つリース取引を指します。会計上、ファイナンスリースと判断されるためには、以下の2つの条件を両方満たす必要があります。

一つ目の条件は「解約不能(ノンキャンセラブル)」です。これは、リース期間中に契約を一方的に解約できないことを意味します。二つ目の条件は「フルペイアウト」であり、支払うリース料総額の現在価値が、その資産のおおよその購入金額(見積現金購入価額)の90%以上であることを指します。

これらの条件を満たす取引は、単なるレンタルではなく、資産の所有に伴う経済的な利益とリスクが借り手に移転しているとみなされます。そのため、会計処理も売買取引に準じて行われ、借り手は資産と負債を貸借対照表に計上する「オンバランス処理」が求められます。

これは、会社がその資産を経済的に支配している実態を財務諸表に正しく反映させるためです。

オペレーティングリースとは?賃貸借取引としての扱い

オペレーティングリースとは、ファイナンスリース以外のすべてのリース取引を指します。これは、資産を一時的に借りるだけの純粋なレンタル契約と考えることができます。

ファイナンスリースの条件である「解約不能」および「フルペイアウト」のいずれか一つでも満たさない場合、その取引はオペレーティングリースに分類されます。会計処理は、一般的な賃貸借取引として扱われ、支払ったリース料をその都度、費用として計上します。この方法を「オフバランス処理」と呼び、資産や負債は貸借対照表に計上されません。

この会計処理の違いは、企業の財務指標に大きな影響を与えます。オペレーティングリースを多用すると、貸借対照表上の資産と負債が少なく見えるため、自己資本比率や総資産利益率(ROA)といった指標が実態よりも良く見えることがあります。

このような会計上の見え方は、企業の本当の財政状態を隠してしまう可能性があると指摘されており、後述する新リース会計基準が導入される大きな動機の一つとなりました。

特徴ファイナンスリースオペレーティングリース
経済的実態売買取引賃貸借取引
会計処理オンバランス(資産・負債計上)オフバランス(費用処理)
契約条件解約不能+フルペイアウト上記以外
費用計上減価償却費+支払利息支払リース料
キャッシュフロー計算書投資活動・財務活動に影響営業活動に影響

どちらのリースを選ぶべきか?経営戦略上のポイント

リース契約の選択は、単なる会計処理の問題ではなく、企業の経営戦略にも関わります。

ファイナンスリースは、長期間にわたって使用する設備や機械など、最終的に所有権の獲得を希望する資産に適しています。また、初期投資を抑えつつ、資産を確実に確保したい場合にも有効な選択肢となります。

一方、オペレーティングリースは、パソコンや複合機など、技術革新が速く、頻繁な入れ替えが必要な資産に適しています。短期間のプロジェクトで利用する資産や、貸借対照表をスリムに保ち、財務指標への影響を抑えたい場合にも選ばれることが多いです。

このように、資産の性質や使用期間、自社の財務戦略などを総合的に考慮して、最適なリース契約を選択することが重要です。

現行基準におけるリース取引の具体的な仕訳方法

ここからは、現行の会計基準に基づき、リース取引の具体的な仕訳方法を例を挙げて解説します。ファイナンスリースとオペレーティングリースでは、処理が大きく異なるため、それぞれの流れを正確に理解しましょう。

ファイナンスリースの仕訳(原則:売買処理)

ファイナンスリースは、資産の購入として扱われるため、契約開始時から期間満了まで、複数の段階で仕訳が必要になります。ファイナンスリースはさらに「所有権移転」と「所有権移転外」に分かれ、主に減価償却の計算方法が異なります。

所有権移転ファイナンスリースの仕訳例

所有権移転ファイナンスリースは、リース期間満了後、資産の所有権が借り手に移転する契約です。

前提条件

  • リース資産の現金購入価額: 100万円
  • リース料総額: 120万円(利息相当額20万円を含む)
  • リース期間: 5年
  • 資産の法定耐用年数: 5年(定額法で償却)

契約時(資産の引き渡し時)

リース資産と、将来支払う義務であるリース債務を計上します。計上額は、利息相当額を除く資産本体の価額です。

借方金額貸方金額
リース資産1,000,000円リース債務1,000,000円

支払時(毎月のリース料支払い)

毎月の支払額には、元本返済部分と利息部分が含まれています。これらを分けて仕訳します。例えば、年間支払額24万円のうち、元本返済が20万円、利息が4万円の場合、以下のように処理します。

借方金額貸方金額
リース債務200,000円現金預金240,000円
支払利息40,000円

決算時(減価償却)

自社で所有する他の固定資産と同様に、減価償却を行います。所有権が移転するため、資産の法定耐用年数に基づいて計算します。

償却費 = 100万円 ÷ 5年 = 20万円

借方金額貸方金額
減価償却費200,000円減価償却累計額200,000円

期間満了時

リース期間が終わり、所有権が完全に移転したら、「リース資産」勘定から「機械装置」などの固有の資産勘定へ振り替えます。

所有権移転外ファイナンスリースの仕訳例

所有権移転外ファイナンスリースは、リース期間満了後、所有権は移転せず、資産を返却する契約です。契約時と支払時の仕訳は所有権移転ファイナンスリースと同じです。

決算時(減価償却)

減価償却の計算方法が異なります。所有権が移転しないため、資産のリース期間を耐用年数として償却します。これを「リース期間定額法」と呼び、残存価額は原則ゼロとして計算します。

償却費 = 100万円 ÷ 5年(リース期間) = 20万円

借方金額貸方金額
減価償却費200,000円減価償却累計額200,000円

オペレーティングリースの仕訳(賃貸借処理)

オペレーティングリースの会計処理は非常にシンプルです。資産や負債の計上は不要で、支払ったリース料を費用として計上するだけです。

前提条件

  • 月々のリース料: 3万円

支払時

毎月のリース料を「リース料」などの費用勘定で処理します。

借方金額貸方金額
リース料30,000円普通預金30,000円

中小企業向けの簡便的な会計処理

ファイナンスリースの原則的な処理は複雑で、経理担当者の負担が大きくなります。そのため、中小企業会計指針では、所有権移転外ファイナンスリースに限り、オペレーティングリースと同様の「賃貸借処理」を行うことが認められています。

この簡便法を適用すると、資産や負債の計上、減価償却や利息計算が一切不要になり、支払ったリース料を費用として計上するだけで済みます。実務上、多くの中小企業がこの方法を採用しています。

項目原則処理(売買処理)簡便処理(賃貸借処理)
契約時仕訳資産・負債を計上仕訳なし
支払時仕訳リース債務と支払利息を計上支払リース料を費用計上
決算時仕訳減価償却費を計上仕訳なし

ここで一つ注意点があります。会計上は簡便な賃貸借処理が認められていても、税法上はファイナンスリースが「売買」であるという事実は変わりません。このため、会計と税務でズレが生じ、税務調整が必要になるのではないかと心配になるかもしれません。

しかし、実務上は、リース料が毎月均等払いのような一般的な契約であれば、会計上で費用計上した「支払リース料」の金額が、税法上の「減価償却費」の限度額と一致するため、結果的に税務調整は不要となるケースがほとんどです。この点は、中小企業の経理担当者にとって非常に重要なポイントです。

リース料と消費税の会計処理

リース料と消費税の会計処理

リース料には消費税が課されますが、その会計処理もリースの種類によって異なります。特に、消費税をどのタイミングで仕入税額控除するかが重要なポイントです。

ファイナンスリースにおける消費税の扱い(原則一括控除)

ファイナンスリースは「売買」とみなされるため、消費税の扱いも資産の購入に準じます。原則として、リース契約を開始した時点で、リース料総額にかかる消費税の全額を一括で仕入税額控除します。これを「一括控除」と呼びます。

仕訳例(税抜経理)

  • リース資産本体価格: 600万円
  • リース料総額にかかる消費税: 60万円

契約時

借方金額貸方金額
リース資産6,000,000円リース債務6,600,000円
仮払消費税等600,000円

このように、契約時に消費税全額を「仮払消費税等」として計上し、その期の消費税申告で控除します。

オペレーティングリースにおける消費税の扱い(分割控除)

オペレーティングリースは「賃貸借」なので、家賃の支払いなどと同様に、リース料を支払う都度、その支払額に含まれる消費税を仕入税額控除します。これを「分割控除」と呼びます。

仕訳例(税抜経理)

  • 月々のリース料: 11万円(うち消費税1万円)

支払時

借方金額貸方金額
リース料100,000円普通預金110,000円
仮払消費税等10,000円

賃貸借処理を選択した場合の特例と注意点

中小企業が所有権移転外ファイナンスリースについて簡便的な「賃貸借処理」を選択している場合、消費税の処理についても特例が認められています。

この場合、原則の一括控除ではなく、オペレーティングリースと同様の分割控除を選択することが可能です。これにより、会計処理と消費税の処理方法を一致させることができ、経理業務の簡素化につながります。

2027年適用開始の新リース会計基準の重要ポイント

2027年適用開始の新リース会計基準の重要ポイント

現在、日本の会計基準は大きな転換期を迎えています。2027年4月1日以降に開始する事業年度から、新しいリース会計基準の適用が予定されており、これまでの会計処理が根本から変わる可能性があります。

なぜ基準が変わるのか?国際基準との調和

この変更の最大の目的は、日本の会計基準を国際財務報告基準(IFRS)と整合させることです。現行基準では、オペレーティングリースが貸借対照表に計上されない「オフバランス処理」が認められています。

しかし、この処理は企業の隠れた負債となり、投資家が企業の財政状態を正確に判断するのを妨げるという批判がありました。新基準は、この問題を解消し、財務報告の透明性を高めることを目指しています。

主な変更点:すべてのリースが原則オンバランスに

新リース会計基準の最も大きな変更点は、借り手においてファイナンスリースとオペレーティングリースの区別を廃止し、原則としてすべてのリース取引をオンバランス処理に統一することです。

これにより、これまで費用処理していたオフィスの賃貸借契約なども、資産と負債として貸借対照表に計上する必要が出てきます。

項目現行基準新リース会計基準
リース区分ファイナンス vs. オペレーティング原則として単一モデルに統一
オペレーティングリースの処理オフバランス(費用処理)オンバランス(資産・負債計上)
計上科目支払リース料 など使用権資産・リース負債
リースの定義形式的な要件で判断資産を支配する権利の有無など経済的実態で判断

新しい勘定科目:「使用権資産」と「リース負債」

新基準では、リース契約によって得られる「資産を使用する権利」を「使用権資産」として資産計上し、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債計上します。

リース負債は、将来支払うリース料総額を現在価値に割り引いて計算されます。使用権資産は、このリース負債の額を基礎とし、契約時に支払った費用などを加味して算定されます。

例外:短期リースと少額リースの扱い

すべてのリースをオンバランス化すると実務上の負担が非常に大きくなるため、例外規定も設けられています。リース期間が12ヶ月以内の「短期リース」や、リース料総額が300万円以下のリース、資産の新品購入時の価額が少額(例:5,000米ドル以下)である「少額リース」については、引き続き簡便な費用処理(オフバランス処理)が認められます。

新リース会計基準はあなたの会社に影響があるか?

この大きな変更は、すべての企業に等しく影響するわけではありません。自社が対象となるのか、どのような影響があるのかを正しく理解することが不可欠です。

適用対象となる企業(上場企業・大会社など)

新リース会計基準の強制適用対象となるのは、主に金融商品取引法の適用を受ける上場企業およびその子会社・関連会社です。また、会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)など、会計監査人の設置が義務付けられている企業も対象となります。

中小企業への影響は限定的(任意適用が基本)

上記に該当しない多くの中小企業については、新リース会計基準の適用は任意です。つまり、強制的に会計処理を変更する必要はなく、現行の会計基準(賃貸借処理を含む)を継続して使用することが可能です。

ただし、注意が必要なケースもあります。大企業の連結子会社である場合は、親会社の連結決算のために新基準への対応が求められる可能性があります。また、将来的に株式上場(IPO)やM&Aを計画している中小企業は、投資家への情報開示の観点から、早期に新基準へ対応しておくことが望ましいでしょう。

適用された場合の財務諸表へのインパクト

新基準が適用されると、企業の財務諸表の見え方は大きく変わります。特に、これまでオペレーティングリースを多用してきた企業、例えば店舗を賃借している小売業などは影響が甚大です。

まず、貸借対照表が膨張します。これまでオフバランスだったリース契約が資産(使用権資産)と負債(リース負債)として計上されるため、総資産と総負債が大幅に増加します。

次に、財務指標が変動します。総資産が増加するため、自己資本比率や総資産利益率(ROA)は低下する傾向にあります。一方で、支払リース料(営業費用)が減価償却費(営業費用)と支払利息(営業外費用)に分解されるため、営業利益やEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は増加することがあります。

また、財務制限条項への抵触リスクも考えられます。金融機関からの借入契約には、自己資本比率などを一定水準以上に保つことを定めた「財務制限条項」が付いていることがあります。負債の増加によってこの条項に抵触し、融資の一括返済を求められるといった深刻な事態に陥るリスクも考慮すべきです。

この変更は、単なる会計ルールの更新ではありません。リースの定義が広がるため、法務や購買部門を巻き込み、社内のあらゆる契約を見直してリースに該当するかを判定する必要があります。これは経理部門だけの問題ではなく、全社的なプロジェクトとして捉えるべき重要な経営課題なのです。

まとめ

本記事では、リース会計の仕訳について、基本から最新の動向までを網羅的に解説しました。最後に要点を再確認しましょう。

現行基準のポイントとして、リースは経済的実態に基づき「ファイナンスリース(売買)」と「オペレーティングリース(賃貸借)」に大別されます。ファイナンスリースは原則オンバランス処理、オペレーティングリースはオフバランス処理を行い、中小企業は所有権移転外ファイナンスリースについて簡便な賃貸借処理を選択できます。

新リース会計基準のポイントは、2027年4月から上場企業や大会社などを対象に強制適用される点です。借り手側のリース区分は廃止され、原則すべてのリースがオンバランス処理(使用権資産・リース負債の計上)となります。中小企業の多くは強制適用の対象外ですが、連結子会社などは対応が必要になる場合があります。

リース会計をマスターする鍵は、ルールの背景にある「なぜ」を理解することです。取引の経済的実態を捉えることで、今日の正しい仕訳を実践できるだけでなく、未来の基準変更にも自信を持って対応できます。この知識が、貴社の財務報告の正確性と透明性を高める一助となれば幸いです。

この記事の投稿者:

hasegawa

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