
信頼できる会社はどこか、銀行系と独立系の違い、そして安全な業者を見抜くための法則について解説します。
今すぐ資金が必要だ。しかし、違法な業者だけは絶対に避けたい。ファクタリングで「大手」を選ぶことは、安全な資金調達への第一歩です。
この記事では、信頼できる大手ファクタリング会社を正しく見極めるための専門的な知識を解説します。
「銀行融資が間に合わない」「取引先に知られたくない」といった不安を抱える経営者や個人事業主の方でも、ポイントを押さえれば、自社に最適な優良企業を選ぶことが可能です。
目次
ファクタリングの「大手」とは? 経営者が知るべき3つの分類
ファクタリング会社を選ぶ際、多くの経営者が「大手」というキーワードを重視します。この背景には、資金調達という企業の信用に関わる取引において、失敗したくないという強い動機があります。
なぜ経営者は「大手」のファクタリングを選ぶべきか
資金調達の必要性に迫られているとき、経営者の最大の懸念は「違法な業者に騙されないか」という点です。ファクタリングを装った、実質的な高金利の貸付を行う悪質な業者(偽装ファクタリング)が社会問題化したこともあります。
経営者が「大手」を選ぶ理由は、まさにこのリスクを回避するためです。
「大手」とされる企業は、コンプライアンス(法令遵守)体制が整備されています。契約内容が透明であり、不当な手数料を請求されるリスクが低いといえます。また、企業の経営基盤が安定しているため、取引の途中でファクタリング会社が倒産するといった予期せぬトラブルの心配も少ないです。
つまり、「大手」を選ぶことは、手数料の安さやスピード以上に、取引の「安全性」と「信頼性」を確保するための最も合理的な選択となります。
「大手」の定義 銀行系・ノンバンク系・独立系の特徴
ただし、「大手」と一口に言っても、その運営元によって性質は大きく異なります。ファクタリング会社は、主に「銀行系」「ノンバンク系」「独立系」の3つに分類されます。
自社のニーズ(「スピード重視」か、「手数料の安さ重視」か)によって、選ぶべき「大手」は変わってきます。それぞれの特徴を理解することが、最適な会社選びの第一歩です。
銀行系ファクタリング 絶対的な信頼と低い手数料
銀行系ファクタリングとは、メガバンクや大手金融機関、またはそのグループ企業が運営するファクタリングサービスを指します。
具体的な企業例としては、三菱UFJファクター、みずほファクター、SMBCファイナンスサービスなどが挙げられます。
特徴と注意点
銀行系の最大の強みは、その圧倒的な「信頼性」と「低い手数料」です。手数料の相場は1%台からと、他の分類と比較して最も低く設定されています。
しかし、注意点が2つあります。
第一に、契約形態が主に「3社間ファクタリング」であることです。3社間ファクタリングは、売掛先(取引先)の承諾が必須となります。
第二に、審査が厳格で、資金調達までに時間がかかることです。審査や手続きに2週間以上を要することも珍しくありません。
多くの経営者がイメージする「大手」はこの銀行系ですが、実態は「取引先に知られずに、今すぐ資金が必要」という中小企業の緊急ニーズには応えにくいサービスといえます。国際ファクタリングや診療報酬ファクタリング、大企業向けの保証サービスなどが中心です。
ノンバンク系ファクタリング 信頼とスピードのバランス
ノンバンク系ファクタリングは、消費者金融やクレジットカード会社など、貸金業(ノンバンク)が運営するサービスです。クレディセゾン系列のセゾンファンデックスなどがこれに該当します。
特徴と注意点
銀行系に次ぐ「信頼性」と、銀行系よりは柔軟な「スピード」を両立しているのが特徴です。手数料も銀行系と独立系の中間に位置します。
ただし、ノンバンク系も注意が必要です。
第一に、2社間ファクタリング(取引先に通知しない方法)を利用する場合、「債権譲渡登記(さいけんじょうととうき)」を求められることが多いです。債権譲渡登記とは、その売掛債権の権利がファクタリング会社に移ったことを法的に証明する手続きです。
この登記には費用と時間がかかるため、即日での資金調達が困難になる場合があります。
第二に、ノンバンク系は法人向けサービスが中心で、個人事業主は利用できないケースが多い点です。
独立系ファクタリング スピードと柔軟性の「大手」
独立系ファクタリングは、銀行やノンバンクの系列に属さない、ファクタリングを専門に扱う業者が提供するサービスです。
現在のファクタリング業界の大半を占めているのが、この独立系です。
特徴と注意点
独立系の最大の強みは、圧倒的な「スピード」と「柔軟性」です。
取引先に知られない「2社間ファクタリング」を中心に展開しており、AI審査の導入やオンライン完結型の仕組みにより、最短即日(最短30分~)での入金に対応する業者が数多く存在します。
また、審査基準も柔軟で、銀行審査に通りにくい中小企業や、ノンバンク系では断られがちな個人事業主・フリーランスでも利用しやすい環境が整っています。
資金繰りに悩む経営者の「今すぐ」「秘密裏に」「柔軟な審査で」という現実的なニーズに最も応えているのが、この「独立系」の優良企業です。
OLTA、ビートレーディング、PMG、PayToday、トップ・マネジメントなど、豊富な取引実績を持つ企業が、この分野での「大手」といえます。
ただし、独立系の中には悪質な業者も紛れ込んでいるため、企業選定には細心の注意が必要です(後述します)。
失敗しないファクタリング会社の選び方 最重要5つの比較ポイント

ファクタリングの3つの分類を理解したら、次に具体的な会社を比較検討するための「5つのものさし」を解説します。
手数料の相場と内訳
手数料は、企業の利益を直接圧迫する重要な要素です。契約形態によって手数料の相場は大きく異なります。
2社間ファクタリングの手数料相場は10%から20%程度、3社間ファクタリングの手数料相場は1%から9%程度とされています。
なぜ2社間の手数料はこれほど高いのでしょうか。
それは、ファクタリング会社が負うリスクの高さにあります。
3社間の場合、売掛先がファクタリング会社へ直接入金するため、ファクタリング会社のリスクは「売掛先の倒産」に限られます。
一方、2社間の場合、利用者が売掛先から入金された資金をファクタリング会社に支払う(送金する)流れになります。このため、ファクタリング会社は「売掛先の倒産リスク」に加え、「利用者が資金を使い込むリスク」や「架空の請求書(架空債権)であるリスク」も負うことになります。
2社間の高い手数料は、この追加リスクの対価なのです。
なお、ファクタリングは貸金ではないため、手数料の上限を定める法律(利息制限法など)は適用されません。しかし、相場を著しく超える手数料(例 30%超)を提示する業者は、違法なヤミ金(偽装ファクタリング)である可能性が極めて高いため、絶対に契約してはいけません。
入金スピード(オンライン完結・AI審査)
ファクタリングを利用する最大の動機はスピードです。特に独立系の大手は、テクノロジーを活用して入金スピードを競っています。
銀行系が2週間以上かかるのに対し、独立系では「最短30分」や「最短50分」、「最短2時間」といったサービスが登場しています。
このスピードを実現しているのが、「オンライン完結」と「AI審査」です。
従来のように対面での面談や契約書の郵送が不要になり、必要書類をウェブ上で提出するだけで、AIが審査を行い、即座に見積もりや契約が可能になっています。
2社間・3社間の選択肢(取引先への通知)
これは、「スピード・秘密厳守」と「手数料の安さ」のトレードオフです。
2社間ファクタリング
メリットは、取引先(売掛先)への通知や承諾が不要である点です。これにより、取引先に知られずに資金調達が可能になります。
デメリットは、前述のとおり手数料が高くなることです。
3社間ファクタリング
メリットは、ファクタリング会社のリスクが低いために手数料が安い点です。
デメリットは、取引先(売掛先)への通知と承諾が必須であることです。そのため、資金調達までに時間がかかる場合があります。
多くの経営者は、「ファクタリングの利用が取引先に知られると、『あの会社は資金繰りが苦しいのではないか』と信用不安を招くかもしれない」と懸念します。
そのため、手数料が高くても、取引の安全と秘密を守れる「2社間ファクタリング」を選択するケースが一般的です。「大手」の独立系がオンライン完結型の2社間サービスに注力しているのは、まさにこの市場ニーズに応えるためです。
個人事業主・フリーランスの利用可否
自社の事業形態が、利用したいファクタリング会社の対象となっているかは、必ず確認すべきポイントです。
銀行系・ノンバンク系
法人向けサービスが中心で、個人事業主は利用できないことが多いです。
FinTech系(大手IT企業)
例えば、上場企業グループであるマネーフォワードが提供する「マネーフォワード アーリーペイメント」は、法人企業が対象であり、個人事業主は利用できません。
独立系
多くの独立系大手は、個人事業主・フリーランスの利用が可能です。
利用可能なサービスの例として、OLTA、PayToday、ビートレーディング、PMG、トップ・マネジメントなどが挙げられます。
「大手」というキーワードで検索すると、銀行系や大手FinTech系が目立ちますが、個人事業主の方がそれらのサービスに申し込んでも、対象外となる可能性が高いです。個人事業主の方は、「独立系」の「大手」を選ぶ必要があります。
買取可能額(少額・大口)
必要な資金額(売掛債権の額)に対応しているかを確認します。
少額の資金調調達
独立系は柔軟に対応しており、「1万円から」といった少額債権の買取が可能なサービスもあります。OLTAは買取額の下限を設定していません。
大口の資金調達
PMG(最大2億円)やトップ・マネジメント(最大3億円)など、数億円単位の買取に対応できる独立系大手もあります。
一方で、最低買取額が設定されている場合もあります。例えば、マネーフォワード アーリーペイメントは50万円以上、トップ・マネジメントは30万円以上となっています。
大手ファクタリングサービス一覧 比較
ここまでの分析を基に、ファクタリングの3分類と、主要な「大手」サービスを一覧表で比較します。
ファクタリング3分類(銀行系・ノンバンク系・独立系)の特徴比較
| 項目 | 銀行系 | ノンバンク系 | 独立系 |
| 手数料相場 | 低 (1%~) | 中 (2%~15%) | やや高 (2%~20%) |
| 入金スピード | 遅 (2週間~) | 中 (1週間~) | 速 (最短即日) |
| 主な契約 | 3社間 | 2社間・3社間 | 2社間(オンライン完結) |
| 審査難易度 | 高 | 中 | 柔軟 |
| 個人事業主 | 困難 | 困難な場合が多い | 〇 (対応多数) |
| 特徴 | 絶対的な信頼性 | 信頼とスピードのバランス | スピードと柔軟性 |
主要「大手」ファクタリングサービス 比較一覧
| サービス名 | 運営会社 | 分類 | 手数料 | スピード | 個人事業主 | オンライン |
| OLTAクラウドファクタリング | OLTA(株) | 独立系 | 2%~9% | 最短即日 | 〇 | 〇 |
| 三菱UFJファクター | 三菱UFJファクター(株) | 銀行系 | 1%~ | 遅 (2週間~) | 不可 | 不可 |
| みずほファクター | みずほファクター(株) | 銀行系 | 1%~ | 遅 (1週間~) | 不明 | 不可 |
| 今スグまとめ払い | (株)セゾンファンデックス | ノンバンク系 | 要問合せ | 要問合せ | 〇 | 一部 |
| マネーフォワード アーリーペイメント | マネーフォワードケッサイ(株) | FinTech系 | 1%~10% | 最短2営業日 | 不可 | 〇 |
| ビートレーディング | (株)ビートレーディング | 独立系 | 2社 平均10.3% 3社 平均6.8% | 最短50分 | 〇 | 〇 |
| PMG | (株)PMG | 独立系 | 2%~ | 最短2時間 | 〇 | 〇 |
| PayToday | PayToday(株) | 独立系 | 1%~9.5% | 最短30分 | 〇 | 〇 |
| トップ・マネジメント | (株)トップ・マネジメント | 独立系 | 2社 3.5~12.5% | 最短2時間 | 〇 | 〇 |
安全な取引のための必須知識 ファクタリングの仕組みと法的注意点

「大手」を選んだとしても、契約内容を理解していなければ危険です。ここでは、悪質な業者を確実に見抜くための法的知識と、安全な取引のためのチェックリストを提供します。
2社間・3社間の取引フローと「債権譲渡登記」の罠
まず、2社間と3社間の取引の流れ(お金の流れ)を正確に理解します。
2社間フロー
- 利用者が売掛先に請求書を発行する。
- 利用者がファクタリング会社に請求書を売却(債権譲渡)する。
- ファクタリング会社が利用者に代金(手数料を引いた額)を入金する。
- 支払期日に、売掛先が利用者に売掛金を支払う。
- 利用者が、受け取った売掛金をファクタリング会社に送金する。
3社間フロー
- 利用者が売掛先に請求書を発行する。
- 利用者がファクタリング会社に申込み、売掛先に債権譲渡の通知・承諾を得る。
- ファクタリング会社が利用者に代金を入金する。
- 支払期日に、売掛先がファクタリング会社に直接売掛金を支払う。
ここで注意すべきが、2社間ファクタリングにおける「債権譲渡登記」です。
2社間ファクタリングは取引先に通知しません。そのため、ファクタリング会社は「利用者が同じ請求書を別の会社にも売却する(二重譲渡)」リスクを負います。
このリスクを防ぐため、ファクタリング会社は法務局に「この債権の権利は当社にあります」と登記(債権譲渡登記)を行うことがあります。これは、二重譲渡が起きた場合に、法的に自社の権利を主張するため(第三者対抗要件)です。
しかし、この登記情報は誰でも閲覧可能です。
取引先がわざわざ見ることはなくとも、銀行が融資審査の際などに登記情報を確認し、ファクタリングの利用事実を知る可能性があります。これでは「秘密裏に」という2社間のメリットが損なわれます。また、登記には費用と時間がかかります。
最近の独立系大手(PMG やトップ・マネジメントなど)は、審査次第でこの「登記不要」を強みとしています。スピードと完全な秘密保持を望む場合、登記の有無は重要な比較ポイントです。
審査に必要な書類一覧(法人・個人事業主)
審査をスムーズに進めるため、以下の書類を事前に準備しておくとよいでしょう。
法人・個人事業主 共通
- 代表者の本人確認書類(運転免許証など)
- 売掛債権の存在を証明する書類(請求書、発注書、納品書、取引基本契約書など)
- 入出金明細(事業用口座の通帳コピーなど、直近数ヶ月分)
法人のみ
- 商業登記簿謄本
- 決算書(直近2~3期分)
- 印鑑証明書
個人事業主のみ
- 確定申告書(直近2~3期分)
- 印鑑証明書
オンライン完結型のサービスでは、これらの書類をPDFや写真データとしてアップロードするだけで完結します。
重要 悪質・違法業者(ヤミ金)を見分ける6つのチェックリスト
「大手」という看板を掲げていても、実態がヤミ金(偽装ファクタリング)であるケースが後を絶ちません。
以下の項目が1つでも当てはまれば、それはファクタリングではありません。絶対に契約しないでください。
契約書に「償還請求権」と書かれている
解説
「償還請求権(しょうかんせいきゅうけん)」とは、もし売掛先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合、ファクタリング会社が、利用者に対してその金額を請求(返済を要求)できる権利のことです。
法的意味
これがある場合、実態は「債権の売買(ファクタリング)」ではなく、「債権を担保にした融資(貸付)」とみなされます。
安全な大手の場合
安全なファクタリングは、必ず「償還請求権なし(ノンリコース)」です。売掛先が倒産しても、利用者がその穴埋め(返済)をする義務は一切ありません。
契約書が「金銭消費貸借契約」になっている
解説
ファクタリングの契約書は、必ず「債権譲渡契約書」でなければなりません。
法的意味
もし契約書名が「金銭消費貸借契約(きんせんしょうひたいしゃくけいやく)」や「融資契約」となっていれば、それは単なる貸付です。
手数料が異常に高い
解説
2社間ファクタリングの相場は10~20%です。これを著しく超える(例 30%超)手数料は、実質的に貸金業法の利息制限法に違反する「高金利の貸付」である可能性が極めて高いです。
担保や保証人を要求してくる
解説
ファクタリングは融資ではなく、売掛債権という「資産の売却」です。そのため、融資の際に必要な担保や保証人は原則として不要です。これらを要求された場合、貸付(融資)を疑うべきです。
分割での支払いを提案してくる
解説
ファクタリングの支払いは、売掛先から入金された売掛金を、そのままファクタリング会社に送金する「一括払い」が原則です。もし業者が「分割で(返済しても)いいですよ」と提案してきたら、それは「返済」を前提とした貸付行為です。
契約書を渡さない・説明が曖昧
解説
契約書を交付しない、または契約内容について明確に説明しない業者は、言うまでもなく危険です。
まとめ 自社の状況に合わせて賢く「大手」ファクタリングを選ぶ
安全な資金調達を成功させるために、本記事の要点を再確認します。
- ファクタリングの「大手」には3つの分類(銀行系、ノンバンク系、独立系)があります。
- 「銀行系=大手」が最適とは限りません。
- 中小企業や個人事業主のニーズには、「独立系」の信頼できる大手が合致する可能性が高いです。
- 会社を選ぶ際は、手数料、スピード、個人事業主の可否、債権譲渡登記の有無などを比較します。
- 最も重要なのは「安全性」です。
- 契約時には「償還請求権なし(ノンリコース)」であること、契約書が「債権譲譲渡契約」であることを確認します。
- 違法業者を徹底的に回避してください。
「大手」という言葉の表面的なイメージに惑わされてはいけません。自社のニーズ(スピード、コスト、秘密厳守)を明確にし、本記事のチェックリストを参考に、実態の伴った信頼できるパートナーを選ぶことが、安全な資金調達の鍵となります。



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