会計の基礎知識

減価償却費とは?意味や計算方法、仕訳方法をわかりやすく解説

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減価償却費とは、固定資産の取得にかかった費用を分割して計上していくために使用する勘定科目です。本記事では、減価償却費の意味や計算方法、実際の仕訳方法などについてわかりやすく解説します。

減価償却費とは?

減価償却費とは、固定資産の価値の減少に伴って分割して計上する費用です。

車両や建物、機械装置といった固定資産は、時間の経過に伴って徐々にその価値が減少するものと考えられています。そのため、取得にかかった費用を取得時に一度で計上するのではなく、減価償却費という勘定科目を使って少しずつ計上する必要があります。

例えば、業務で使用する自動車を180万円で購入したとしましょう。車両の耐用年数は6年なので、毎年30万円ずつ、6年間にわたって減価償却費として計上することになります。

参照:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

減価償却する必要性とは

使用する期間の短い安価な消耗品などは、購入時の全額を一度で費用として計上して構いません。しかし、固定資産は購入した会計年度だけではなく、その後の長期間にわたって利用されるものと考えられています。

製造業の企業が工場で使う機械を2,000万円で購入したとしましょう。2,000万円を一度で計上すると、その年度だけ利益が大幅に減少し、帳簿が実情とかけ離れたものになってしまいます。

また、利益が大幅に減少することで、経営状況に問題がなくても銀行からの融資に影響が出る可能性があります。このような状況を防ぐために減価償却を行い、経営状況を正確に把握する必要があります。

減価償却費に関連する用語

減価償却する際は、以下の用語を押さえておきましょう。

・減価償却資産:減価償却の対象となる資産
・耐用年数:減価償却資産が使用できる期間
・取得価額:減価償却資産の取得にかかった金額
・事業供用日:減価償却資産を本来の目的のために使い始めた日
・減価償却累計額:これまでに計上した減価償却費の合計
・未償却残高:減価償却後に残っている資産額

参照:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
参照:No.5400-2 事業の用に供した日|国税庁

減価償却できる資産・できない資産の種類

減価償却の対象となる資産と、そうでない資産の種類について具体的に解説します。

減価償却できる資産の種類

減価償却を行うためには「実際の業務で使用している資産であること」かつ「経年劣化する資産であること」という2つの条件に該当している必要があります。また、減価償却の対象となる資産は、大きく分けて以下の2つに分類することができます。

・有形固定資産:建物、車両、機械、パソコンなど
・無形固定資産:ソフトウェア、特許、商標、意匠など

減価償却は建物や車両といった有形のものだけではなく、無形のものも含まれることがポイントです。 例えば、ソフトウェアは時間の経過に伴って情報の鮮度が落ちることで、資産としての価値が減少していくものと考えられています。

減価償却できない資産の種類

減価償却ができない資産の例として、以下が挙げられます。

・時間が経過しても資産の価値が減少しないもの(土地、美術品・骨董品など)
・建設中の建物
・棚卸資産
・業務に使っていないもの

土地や美術品・骨董品は時間の経過で価値が減少しないと考えられるため、減価償却の対象とはなりません。

建設中の建物も固定資産になりません。完成前に支払った建設費などは一旦「建設仮勘定」として計上します。完成後に建物が引き渡された時に、建設仮勘定として計上していた費用を固定資産などに振り返る処理を行い、その後は建物として通常通り減価償却を行います。

棚卸資産は、製造業の原料や小売店の商品など、在庫として扱われるものです。棚卸資産は会計上における資産の一種ですが、固定資産とは処理方法が異なります。棚卸資産がある場合には、販売時に売上原価として費用計上するため、減価償却は不要です。

また、使っていない固定資産は減価償却を行いません。未使用のものや稼働していない機械などは、減価償却の対象外です。

参照:No.6483 建設仮勘定の仕入税額控除の時期|国税庁

減価償却費の処理の方法

購入したものが減価償却の対象と判断できれば、会計上の処理を行います。本項では、実際の処理方法について解説します。

減価償却はいつから始めると良いのか

減価償却は、対象となる固定資産を事業で使い始めた時から行います。支払いを行った時や、固定資産が納品された時ではないことに注意しましょう。

減価償却の仕訳方法【直接法・間接法】

減価償却の仕訳方法である「直接法」と「間接法」について、順番に解説します。

直接法の仕訳方法

直接法とは、固定資産の価値から減価償却費を直接引いていく仕訳方法です。以下の条件で期首に固定資産を取得した場合の仕訳を紹介します。

・取得価額:300,000円
・耐用年数:5年
・減価償却費:60,000円

借方貸方
減価償却費 60,000固定資産 60,000

直接法は固定資産の価値が減少していく様子がわかりやすいため、経理が苦手な個人事業主の方や、零細企業などに好まれる傾向があります。

間接法の仕訳方法

間接法は、固定資産の価値から減価償却費を直接引くのではなく、減価償却累計額を計上していく方法です。以下の条件で期首に固定資産を取得した場合の仕訳例を紹介します。

・取得価額:300,000円
・耐用年数:5年
・減価償却費:60,000円

借方貸方
減価償却費 60,000減価償却累計額 60,000

間接法は固定資産の価値を残すように仕訳する点に特徴があり、一般的な企業の多くはこちらの方法を使います。

処分した場合の仕訳方法

固定資産が不要になり処分した場合は、直接法・間接法のいずれかに基づいて仕訳を行います。以下の条件で機械を処分した時の仕訳を紹介します。

・取得価額:300,000円
・未償却残高:50,000円

<直接法の場合>

借方貸方
機械装置 50,000固定資産除却損 50,000

<間接法の場合>

借方貸方
固定資産除却損 50,000
減価償却累計額 250,000
機械装置 300,000      

売却した場合の仕訳方法

固定資産を売却した際、利益または損失が発生します。以下の条件で自動車を売却した時の仕訳を紹介します。

・取得価額:1,800,000
・未償却残高:300,000
・売却時の値段:200,000

<直接法の場合>

借方貸方
預金 200,000
固定資産売却損 100,000
車両運搬具 300,000     

<間接法の場合>

借方貸方
預金 200,000
減価償却累計額 1,500,000
固定資産売却損 100,000
車両運搬具 1,800,000    

固定資産の売却によって帳簿上の損失が発生した場合には、上記のように「固定資産売却損」として仕訳します。反対に、利益が出た場合には「固定資産売却益」として仕訳を行う必要があります。

減価償却費の計算方法【定額法・定率法】

減価償却費の計算方法について、定額法・定率法の2つを紹介します。

定額法の計算方法

定額法とは、毎年同じ金額を減価償却する方法です。定率法よりもシンプルな方法であり、今後の経営状況の予測がしやすい点にメリットがあります。定額法における減価償却費は以下の計算式で表します。

1年間の減価償却額 = (購入価額)×(定額法の償却率)

取得価額が100万円、耐用年数が10年の減価償却資産の場合は、1年目から9年目までは毎年100,000円を減価償却額とします。資産がまだ残っていることを示すために1円を残す必要があり、最後の10年目には99,999円計上します。

定率法の計算方法

定率法とは、毎年一定の割合に基づいて減価償却を行う方法です。計算式で表すと、以下のようになります。

減価償却費 = (取得価額 – 前年までの償却費の合計額)× 償却率

なお、償却保証額を下回った時には、以下の通りに計算します。

なお、償却保証額を下回った時には、以下の通りに計算します。

取得価額が100万円、耐用年数が10年の減価償却資産の場合の処理方法を見てみましょう。

償却率0.200
改定償却率0.250
償却保証額取得額100万円 × 保証率0.06552
= 65,520円
1年目の償却額100万円×償却率0.200
2年目〜6年目の償却額   (取得額100万円 – 前年までの償却費の合計)× 償却率0.200
7年目〜9年目の償却額改定取得価額262,144円 × 改定償却率0.250
= 65,536円
10年目の償却額期首帳簿価額 – 1円 < 改定取得価額 × 改定償却率0.250
= 65,535円

7年目からは償却保証額を下回るため、改定償却率である0.250を使って計算した額が減価償却費となります。最後の10年目に関しては、資産が残っていることを示すための1円を残すように計算します。

定率法は1年目の減価償却費が大きいため、早めに費用を回収できる特徴があります。

参照:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

減価償却における注意点

減価償却を行う上で気をつけたいポイントを2つ紹介します。

減価償却資産によって耐用年数が異なる

資産の種類によって細かく耐用年数が決められているため、帳簿付けを行う前に忘れずに確認しましょう。国税庁のホームページから耐用年数表をチェックできます。また、新品・中古かといった点で耐用年数が異なるため注意が必要です。

参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

事業規模によって特例が利用できる

取得価額が30万円未満の固定資産については、本記事で紹介してきたような仕訳を行わず、一度で費用計上することを認める特例があります。なお、この特例を利用できるのは中小企業などに限定されており、合計額の上限が300万円であるなどの制限があることに注意しましょう。

参照:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
関連リンク:個人事業主の確定申告の経費はどこまで?判断基準や具体的な項目をご紹介!

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まとめ

減価償却が必要な固定資産を購入した際は、会計上のルールに従って減価償却を行う必要があります。手間のかかる作業ではありますが、経営状況を正しく帳簿に反映できたり、節税効果が得られたりなどのメリットが得られます。

また、減価償却に関する特例を利用することで、取得時の代金を一括して経費として計上することもできます。減価償却に関する制度やルールを確認し、適切に経理業務を行いましょう。

この記事の投稿者:

reg@olta.co.jp

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