確定申告の義務がある人が申告や納税を行わないと、本来納める税金のほかに、「無申告加算税」や「延滞税」という税金が生じることがあります。本記事では、確定申告をしないとどうなるのか、どのくらいの金額を納めることになるのかといった疑問にわかりやすくお答えします。
目次
確定申告をしない場合や期限に遅れた場合
確定申告をしないと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税が生じるケースがあります。
税務署から指摘されて申告を行った場合と、自主的に申告した場合では、生じるペナルティに違いがあります。各ケースで発生するペナルティの金額などについて、次項から見ていきましょう。
確定申告を間違えてしまった場合の対応方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連リンク:確定申告の内容が間違っていたらどうしたらいい?修正申告の提出方法を解説
税務署の調査により発覚した場合
確定申告をしていないことを税務署に指摘されると、本来納める税金に加えて、無申告加算税を納める必要が生じます。
無申告加算税の税率は、本来納付する税額が50万円未満の場合は15%です。例えば、20万円の申告漏れにかかる無申告加算税額は、以下のように計算できます。
200,000円 × 15% = 30,000円 |
本来納付する税額が50万円を超えると、超えた部分に関しては20%の税率が適用されます。120万円の申告漏れがあった場合は、無申告加算税の金額を以下のように計算します。
(500,000円 × 15%)+(700,000円 × 20%)= 215,000円 |
参照:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
税務署の調査前に確定申告した場合
税務署に指摘される前に自主的に確定申告を行なうことを「期限後申告」と言います。期限後申告でも無申告加算税は発生しますが、税率が5%に軽減されます。
70万円の申告漏れであれば、以下のように無申告加算税を計算できます。
700,000円 × 5% = 35,000円 |
参照:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
延滞税の計算方法
出典:延滞税の計算方法|国税庁
申告や納税が遅れてしまうと、税務署からの指摘の有無にかかわらず「延滞税」と呼ばれる税金も追加で発生します。
延滞税とは、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて金額が決定される税金です。納期限の翌日から2ヶ月以内は7.3%、納期限の翌日から2ヶ月を超えると14.6%の税率が適用されます。
例えば、本来の納税額が100万円で、期限から30日を経過して納税すると、以下の延滞税が課されます。
1,000,000円 × 7.3% × 30日 ÷ 365日 = 6,000円 |
70日経過して納税してしまった場合には、以下のように計算します。
1,000,000円 × 7.3% × 61日 ÷ 364日 = 12,200円 1,000,000円 × 14.6% × 9日 ÷ 364日 = 3,600円 12,200円 + 3,600円 = 15,800円 |
このように、延滞税は申告や納税が遅れるほど高額になります。申告は期限内に行えても、口座振替を選択した際に銀行口座の残高が足りなかったなどの場合にも延滞税の対象となるため、注意しましょう。
期限を過ぎても無申告加算税の対象にならない人
国税庁のホームページでは、期限後申告であっても以下の要件全てを満たせば無申告加算税が課されないと述べられています。
1.その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること 2.期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること |
なお、一定の場合とは、次の(1)および(2)のいずれにも該当する場合をいいます。
(1) その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること (2) その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと |
青色申告者の場合
青色申告者は、条件を満たすと最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。しかし、期限までに確定申告書を提出できなければ、青色申告者であっても控除額が10万円と減額されます。支払うべき税額が増える可能性があることに注意しましょう。
青色申告について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連リンク:【初心者必見】青色申告のやり方を解説!必要書類や提出方法をわかりやすく紹介
個人事業主やフリーランスの場合
個人事業主が確定申告をしないと、自らの収入を証明できません。
賃貸を契約する時や、住宅ローンを組む時、子供を保育園に入れたい時には、収入証明書の提出を求められる可能性があります。個人事業主は確定申告書の控えを収入証明書として使用できますが、確定申告をしていないと自らの収入を証明できない点に注意しましょう。
また、国民健康保険料は所得によって減額してもらえる場合があります。しかし、確定申告をしていないと所得が証明できないことから、条件に該当しても減額を受けられません。
関連リンク:
個人事業主とは?フリーランスや自営業との違いやメリット・デメリットも解説!
会社員(サラリーマン)で確定申告が必要な人は?判断方法ややり方を解説
確定申告で不正をした場合
嘘の内容で確定申告を行うなどの不正を行なった場合にも、ペナルティが課せられます。
納税の義務のある人が帳簿の改ざんなどの行為によって支払いを逃れることを「ほ脱」と呼びます。ほ脱を行うと、無申告加算税や延滞税に加えて「重加算税」と呼ばれる税金が課されます。重加算税の税率は、本来支払うべき税額の35%〜40%と高く、払えない場合には住宅などを差し押さえられてしまうこともあります。
また、売上を隠したり、所得をわざと少なく申告したりといった悪質なほ脱行為は、これまで紹介したペナルティだけではなく、刑事罰も科せられます。重いものであれば、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科せられるケースも存在します。
無申告や所得隠しによる税務署の調査
確定申告をしなかったり所得を隠したりすると、税務署の調査を受ける可能性があります。調査官は銀行口座の入出金の履歴や、請求書や領収書などの書類、取引先の帳簿などをチェックし、不正を探します。
故意に不正をしていなくても、税務署から見て怪しい点がある場合や、売上規模が大きい場合などには調査が入ることもあるでしょう。きちんと帳簿をつけているつもりでも、調査の結果、新たに納税する必要が生じるかもしれません。日頃から正しく帳簿付けを行う事を意識し、期間内に確定申告を行うよう心がけましょう。
やむをえない場合の期限延長申請
災害やその他のやむを得ない理由があり、確定申告や納税が期限内に行えない場合には、税務署に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し、期限の延長を行います。
以前は、新型コロナウイルスの影響で期限内の申告・納税が難しい方向けの対応が行われたこともありました。こちらは確定申告書の右上に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載するといった簡単な方法で期限を延長することが可能でした。
この場合は「災害による申告、納付等の期限延長申請書」が不要で、医師の診断書なども提出する必要がありません。
しかし、今後もこのような方法で簡単に期限を延長できるとは限りません。余裕を持って確定申告書の作成を行い、申告・納税するよう心がけましょう。
参照:
C1-15、H1-16 災害による申告、納付等の期限延長申請|国税庁
新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方へ|国税庁
その他確定申告をする際の4つの注意点
確定申告で気をつけたい注意点について、ケース別に4つ紹介します。
副業からの副収入がある場合
勤務先からの給与所得のある給与所得者が副業をしている場合、その収入が20万円以上の人は確定申告を行う必要があります。副業の収入とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。
副業による収入には、休日に行うアルバイトや、株式取引・FX取引、土地の売買などによる収入が含まれます。合計して20万円以上の副収入がある方は確定申告を行いましょう。
副業による確定申告については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連リンク:社員の副業はいくらまで?確定申告の判断基準や注意点を初心者向けに解説
個人事業が赤字の場合
個人事業が赤字の場合は、必ずしも確定申告を行う必要はありません。しかし、確定申告を行わないと以下のデメリットが生じることがあります。
・非課税証明書が発行されない
・収入証明書が発行されない
「非課税証明書」とは、収入が少ないために非課税であることを証明する書類です。子どもの奨学金を申し込んだり、銀行でローンを組んだりする時に提出を求められます。しかし、確定申告をしないと非課税証明書は発行されません。
また、確定申告書の控えがないと、個人事業主が自身の収入を証明できません。以下のケースで収入を証明することを求められた時に、確定申告書の控えを提出できず、困ることがあるでしょう。
・賃貸を借りる時
・ローンを組む時
・保育園の入園手続きをする時
・児童手当を申請する時
・国民健康保険の減税措置を受ける時
上記に関する予定を控えている人はできるだけ確定申告を行い、自身の収入を証明できるように準備すると安心です。
参照:課税(非課税)・納税証明書交付申請手続き | 世田谷区ホームページ
無職・無収入の場合
勤務先に勤めている時は、1年間の給与が確定した後に勤務先の年末調整を受けることで、所得税の精算をします。
退職した年に再就職をしないと、年末調整を行う勤務先がないため、自ら確定申告を行うことになります。所得税は年間の所得に対する概算で給与から天引きされますが、退職した後に再就職しないと、基本的には所得税を支払い過ぎの状態になっています。そのようなケースでは、確定申告をすることで払いすぎた所得税が還付される可能性があるでしょう。
なお、年内に新しい会社に就職する時は新しい会社が年末調整を行うため、自分で確定申告を行う必要はありません。
結婚して年度の途中で会社を辞めた場合
結婚して専業主婦(夫)になった時も、以前勤めていた勤務先での年末調整を受けられません。所得税を納めすぎている可能性が高いため、確定申告をして還付を受けましょう。
なお、この場合は配偶者名義で医療費控除や配偶者控除の申請を行うことに注意が必要です。
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個人事業主が確定申告を行う際は、1年間で生じた収入や経費について記録する必要があります。日頃から請求書などの書類を保管しておき、会計ソフトなどに反映することが求められるでしょう。
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まとめ
確定申告の義務がある人が確定申告を行わないと、本来納付すべき税金に加え、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられる可能性があります。悪質な場合には刑事罰に科せられることがある点にも注意しましょう。
確定申告の義務がなければ、確定申告を行わなくても構いません。ただし、確定申告しないと本来受けられる還付が受けられなかったり、収入を証明できなかったりするケースがあるため、自身のケースに応じて確定申告を検討しましょう。
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