会計の基礎知識

還付申告の期限は?申告可能なケースや必要書類、更正請求について解説

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還付申告 期限

所得税の還付申告とは、源泉徴収や予定納税によってすでに支払った所得税が、本来の所得税額よりも多い場合に行う手続きです。払いすぎた分の税金の還付を、過去5年間にさかのぼって受けられます。今回は還付申告の期限や申告が行えるケース、必要書類などについてわかりやすく解説します。

還付申告の期限は?

還付申告とは、すでに確定申告を行ったものの、納付した税金が多すぎたり、還付金が少なかったりした際に行う手続きです。また、勤務先の年末調整では行えない控除を適用するために還付申告を行うこともあります。

還付申告は、所得が発生した年の翌年1月1日から5年間行えます。例えば、2024年に生じた所得であれば、2025年1月1日~2029年12月31日の間に申告を行います。

還付申告を行う例として、予定納税によって税金を払いすぎたケースなどがあります。予定納税は、その年の5月15日時点で確定している予定納税基準額(前年度の所得金額や税額などをもとに計算した金額)が15万円以上になる方が支払う税金です。年に1回まとめてではなく、複数回に分けて納税を行うことで、納税者の負担を軽減するなどの狙いがあります。

これはあくまで前年度の所得を参考に計算した金額であるため、当年度で所得が下がれば、税金を多く支払っていることになります。その場合、期限までに還付申告を行うことで払い過ぎた分の還付を受けられます。

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参照:No.2040予定納税|国税庁

還付申告で税金が返ってくる場合

還付申告で税金が返ってくる場合

還付申告によって税金が返ってくる具体的なケースについて紹介します。

医療費控除と住宅ローン控除に注意

医療費控除は、1年間で支払った医療費が一定の金額を超えた場合に、課税対象となる所得から控除額を差し引くことで、税金の金額を抑える制度です。

本来であれば、勤務先が年末調整を行うことで1年間の所得を計算し、税金を精算します。しかし、医療費控除は勤務先の年末調整では申請できないため、医療費控除による還付を受けたい場合には、個人的に確定申告を行います。

また、住宅ローン控除は住宅ローンを利用してホームの新築や取得をするなどの条件に該当した場合に利用できる制度です。住宅ローン控除は多くの書類を提出する手続きであることから、1年目は確定申告によって控除を申請します。2年目以降は勤務先で年末調整を受けることが可能です。

所得控除にはさまざまな種類がありますが、医療費控除や住宅ローン控除のように、年末調整では申請できない控除があります。このような控除を申請したい場合には、勤務先の年末調整を受ける方であっても、個人的に還付申告を行う必要がある点を押さえておきましょう。

参照:医療費を支払ったとき|国税庁

参照:マイホームを持ったとき|国税庁

その他の場合

医療費控除や住宅ローン控除を適用したい場合以外にも、以下をはじめとするケースで還付申告を行うことがあります。

・年の途中で退職して、年内は再就職せず、年末調整を受けられない時
・マイホームに特定の改修工事をした時(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
・認定住宅等の新築等をした時(認定住宅等新築等特別税額控除)
・災害や盗難などで資産に損害を受けた時(雑損控除)
・特定支出控除の適用を受ける時
・特定の寄附をしたとき
・上場株式等に係る譲渡損失の金額を、申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき

他の所得とは関係なく、所得を受け取るときに税額が源泉徴収され、それによって納税が完了する制度もあります。この方法によって課税することを「源泉分離課税」と言います。

源泉分離課税とされる以下の所得については、還付申告をしても所得税の還付は受けられません。

・預貯金の利子
・抵当証券などの金融類似商品の収益
・一定の割引債の償還差益
・一時払養老保険の差益(保険期間等が5年以下のものおよび保険期間等が5年超で5年以内に解約されたもの)

参照:No.2030 還付申告|国税庁

還付申告の更正請求の期限

還付申告を行ったものの、還付金を本来の金額よりも少なく申告してしまった場合には、更正の請求を行うことで、再度払いすぎた税金の還付を受けることが可能です。

更生の請求は「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」を作成した上、管轄の税務署の税務署長宛に提出します。更生の請求の期限は、原則として還付申告書を提出した日から5年以内です。

管轄の税務署については国税庁のホームページで調べられます。

参照:国税局・税務署を調べる|国税庁

参照:No.2030 還付申告|国税庁

還付申告の計算方法

還付申告の計算方法

すでに納めた所得税の予定納税額・源泉徴収税額が、本来の年間の所得税額を超えると、その分の金額の還付が受けられます。

すでに納めた所得税 – 年間の所得税 = 所得税の還付金

還付金額の具体的な計算方法は以下の通りです。

1.収入金額を把握する
2,合計所得金額を計算する
3.課税所得金額を計算する
4.所得税額を計算する
5.還付金を計算する

「収入金額」とは、個人事業主にとっての売上や、会社員にとっての給与額(社会保険料や所得税が差し引かれる前の金額)を指します。

収入金額から給与所得控除額や経費を差し引いた金額が「合計所得金額」です。さらに、合計所得金額から各種所得控除を差し引いて「課税所得金額」を求めます。

課税所得金額に対して税率を乗じて、控除額を差し引くと、所得税額を求められます。

なお、計算で使う「すでに納めた所得税」は、給与所得者は勤務先からもらう源泉徴収票で、個人事業主は取引先から受け取る支払調書などで確認できます。

還付申告に必要な書類は?

還付申告に必要な書類は?

還付申告は確定申告書を税務署に提出することで行います。確定申告書には第一表〜第四表があり、以下のように役割が異なります。

・第一表、第二表:全員提出する
・第三表:譲渡所得、山林所得、退職所得など、分離課税によって計算する所得がある
・第四表:損失がある

以前の確定申告書は、主に一般的な給与所得者が還付を受ける場合に使う「申告書A」と、事業所得や不動産所得などがある人が使う「申告書B」に分かれていました。しかし、2023年に「申告書A」が廃止され、現在は1つの様式に統一されています。

確定申告書の他は、申告する内容について準備する書類が異なります。例えば、医療費控除を受けるなら「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付して提出する必要があります。

また、給与所得者は源泉徴収票を見ながら確定申告書を作成するため、勤務先から受け取った際には大切に保管しておきます。ただし、確定申告で源泉徴収票の提出は必要ありません。提出する書類・手元に保管しておく書類について、自分の申告内容に適したものを事前に確認しておきましょう。

参照:No.2030 還付申告|国税庁

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まとめ

還付申告は、これまでに支払った税金が多すぎた時や、勤務先の年末調整で受けられない控除を適用したい時に行う手続きです。所得が発生した年の翌年1月1日から5年間行えます。

還付申告が認められると、指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。自分がこれまでに支払った税金の金額を計算したり、適用できる控除がないかどうか確認したりした上、対象となる方は還付申告を行いましょう。

この記事の投稿者:

nakashima

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