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預り証の印紙はいくら?金額・非課税の条件から貼り方まで解説

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預り証 印紙

事業を運営する上で、「預り証」を発行する場面は少なくありません。しかし、その際に収入印紙を貼るべきか、金額はいくらか、といった疑問に直面し、不安に感じたことはないでしょうか。

印紙税のルールを正しく理解することは、予期せぬ追徴課税のリスクを回避するだけでなく、賢いコスト削減にも繋がります。

印紙税の知識は、ビジネスをより堅実に、効率的に運営するための重要な要素です。この記事を最後まで読めば、どのような預り証に印紙が必要で、いくらの印紙を貼るべきか、そしてどのような場合に印紙が不要になるのかを、自信を持って判断できるようになります。

複雑に思える税法のルールも、不動産の敷金や商品の手付金といった具体的な事例を通じて、誰でも実践できる明確なフレームワークに落とし込んで解説します。もう、預り証を発行するたびに迷うことはありません。

預り証と印紙税の基本原則

「表題」ではなく「内容」が判断基準

印紙税を理解する上で最も重要な原則は、文書の課税・非課税は、その「表題」や「名称」ではなく、記載された「実質的な内容」によって判断されるという点です。たとえ書類のタイトルが「預り証」であっても、その内容が金銭または有価証券の受領事実を証明する目的で作成されたものであれば、印紙税の対象となります。

具体的には、「領収書」や「レシート」、あるいは請求書や納品書に「代済」「了」といった文言が追記されたものも、同様に「受取書」と見なされます。印紙税とは、印紙税法で定められた特定の経済取引に関する文書(課税文書)を作成した際に課される税金であり、収入印紙を文書に貼付し、消印をすることで納税したことになります。

金銭や有価証券の受け取りを証明するために発行される「預り証」は、この印紙税法における第17号文書「金銭又は有価証券の受取書」に該当します。これが、すべての判断の出発点となります。

「預り証」と「領収書」の印紙税法上の違い

実務上、「預り証」と「領収書」は区別して使われることがあります。一般的に「預り証」は、預かった金銭の所有権がまだ発行者に移転していない状態、例えば一時的な預かり金を示します。一方、「領収書」は代金の支払いによって所有権が完全に移転したことを証明する書類とされます。

しかし、印紙税法上では、この所有権の移転の有無は二義的な問題です。税務当局が重視するのは、「金銭を受け取った事実を証明する」という文書の機能そのものです。そのため、預り証と領収書は同じ第17号文書として扱われます。

したがって、私たちがまず考えるべきは「この書類は何と呼ばれているか?」ではなく、「この書類は何を証明しているのか?」という視点の転換です。この本質的な理解が、印紙税のルールを正しく適用するための第一歩となります。

最も重要な分岐点:その金銭は「売上代金」か?

預り証が第17号文書に該当すると理解した上で、次に最も重要な判断が求められます。それは、受け取った金銭が「売上代金」にあたるかどうかです。第17号文書は、この点によって2つの種類に分類され、それぞれ印紙税額の計算方法が大きく異なります。

第17号の1文書:売上代金に係る受取書

「売上代金に係る受取書」とは、「売上代金」として受け取った金銭に関する受取書を指します。「売上代金」とは、資産の譲渡や使用、サービスの提供といった事業活動の対価として受け取る金銭であり、会計上の収益として計上されるものがこれに該当します。

例えば、商品の購入時に受け取る内金や手付金、サービスの提供前に受け取る前受金などが典型例です。この場合の印紙税額は、受取金額に応じて段階的に増加する階級定額税率が適用されます。

第17号の2文書:売上代金以外の受取書

「売上代金以外の受取書」とは、「売上代金」に該当しない、それ以外のすべての金銭または有価証券の受取書を指します。

具体例としては、不動産賃貸借契約における敷金や保証金、借入金、保険金、損害賠償金などが挙げられます。これらの金銭は、サービスの対価ではなく、将来返還される可能性があったり、担保として預かったりする性質のものです。この場合の印紙税額は、受取金額が5万円以上であれば、金額の多寡にかかわらず一律の金額となります。

預り証はどちらに該当する?ケーススタディで理解する

ケース1:不動産賃貸の敷金

賃貸物件を借りる際に大家に預ける敷金の預り証は、典型的な第17号の2文書(売上代金以外の受取書)です。敷金は、退去時に原状回復費用などを差し引いて返還される性質のものであり、売上にはあたらないためです。したがって、敷金の額が5万円以上の場合、貼付する収入印紙は一律200円となります。

ケース2:商品購入の内金・手付金

高額な商品を注文する際に支払う内金や手付金の預り証は、商品代金の一部を前払いするものであるため、第17号の1文書(売上代金に係る受取書)に該当します。この場合、印紙税額は後述する一覧表の通り、受取金額に応じた階級税率で決まります。

ケース3:寄託契約としての預り証

極めて稀なケースですが、文書に「寄託契約(きたくけいやく)」であることが明確に記載されている場合、第17号文書ではなく第14号文書「金銭の寄託に関する契約書」として扱われることがあります。

しかし、国税庁は、寄託契約であることが文言上明らかでない限り、原則として第17号文書として取り扱う方針を示しています。したがって、ほとんどのビジネスシーンで発行される預り証は、第17号文書と考えて差し支えありません。

印紙税額一覧表

以下に、第17号文書の印紙税額を一覧表にまとめました。この表を見れば、あなたの発行する預り証に必要な印紙税額が一目でわかります。

記載された受取金額税額(売上代金に係る受取書 – 第17号の1文書)税額(売上代金以外の受取書 – 第17号の2文書)
5万円未満非課税非課税
5万円以上 100万円以下200円200円
100万円を超え 200万円以下400円200円
200万円を超え 300万円以下600円200円
300万円を超え 500万円以下1,000円200円
500万円を超え 1,000万円以下2,000円200円
1,000万円を超え 2,000万円以下4,000円200円
2,000万円を超え 3,000万円以下6,000円200円
3,000万円を超え 5,000万円以下10,000円200円
5,000万円を超え 1億円以下20,000円200円
1億円を超え 2億円以下40,000円200円
2億円を超え 3億円以下60,000円200円
3億円を超え 5億円以下100,000円200円
5億円を超え 10億円以下150,000円200円
10億円を超えるもの200,000円200円
受取金額の記載のないもの200円200円
(出典: 国税庁の情報を基に作成)

知らないと損をする!収入印紙が不要になる3つの重要ケース

課税のルールを理解することと同じくらい、非課税となる例外(特例)を知ることは重要です。これらのルールを使いこなすことで、無駄なコストを削減し、事務作業の負担を軽減できます。

ケース1:5万円未満の受取書は非課税

最も一般的で重要な非課税ルールは、受取金額が5万円未満の場合です。預り証や領収書に記載された受取金額が5万円未満であれば、それが売上代金であるか否かにかかわらず、収入印紙を貼る必要はありません。

ここで注意すべきは、「5万円未満」とは49,999円までを指すという点です。受取金額がちょうど5万円の場合は「5万円以上」に該当するため、収入印紙が必要になります。

また、消費税の扱いも重要です。受取書に消費税額が明確に区分して記載されている場合、印紙税の要否は税抜きの本体価格で判断します。

例えば、合計金額が54,000円であっても、「(内消費税4,910円)」のように記載があれば、税抜価格は49,090円となり5万円未満であるため、非課税となります。これは日々の取引でコストを管理する上で非常に実用的な知識です。

ケース2:「営業に関しない受取書」の特例

印紙税法では、「営業に関しない」取引で発行される受取書は非課税と定められています。ここでいう「営業」とは、一般的に営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことと定義されています。この特例が誰に適用されるかは、発行者の立場によって異なります。

株式会社などの営利法人の行為は、たとえそれが本業以外の活動(例:社用車の売却)であっても、すべて「営業」に関するものと見なされます。そのため、営利法人が発行する受取書は、原則としてすべて課税対象となります。

個人が事業者としてではなく、私的な立場で取引を行う場合(例:自宅の不用品を売却する)は、「営業」にあたりません。しかし、個人事業主として事業範囲内の取引を行う場合は「営業」となり、課税対象です。

医師、歯科医師、弁護士、税理士、司法書士、行政書士といった特定の専門家がその業務上作成する受取書は、「営業に関しない受取書」として扱われ、金額にかかわらず非課税となります。これは、これらの専門家の業務が歴史的に、営利を追求する「商業」とは区別される専門的サービスと位置づけられてきたためです。

NPO法人や公益社団・財団法人など、定款で利益の配当が禁止されている非営利法人が発行する受取書も、「営業に関しない」ものとして非課税となります。

ケース3:クレジットカード払いの受取書

受取書に「クレジットカード利用」などと明記されていれば、たとえ受取金額が5万円以上であっても収入印紙は不要です。

これは、クレジットカード払いの取引が、印紙税法が課税対象とする「金銭又は有価証券の受取書」に該当しないためです。

クレジットカード払いの受取書は、現金を直接受け取った証明ではなく、後日クレジットカード会社から入金される「信用取引」の事実を証明するに過ぎないと解釈されます。このため、印紙税の課税原因となる「金銭の受領」が発生していないと見なされるのです。

この法的解釈を理解することは、キャッシュレス決済を導入している事業者にとって大きな節税に繋がります。

最大のコスト削減策:電子文書の活用

印紙税が不要になる理由

印紙税を節約するための最も効果的な方法は、電子文書を活用することです。PDF形式で作成してメールで送信した預り証や、クラウド型の電子契約サービスで締結した契約書など、電子的にやり取りされる文書は、印紙税が完全に不要となります。

この理由は、印紙税法が「課税文書の作成」に対して課税する法律である点にあります。「作成」とは、物理的な紙媒体に課税事項を記載し、相手方に交付する行為と定義されています。電子ファイルの送信は、この物理的な文書の作成・交付にはあたらないため、課税対象外となるのです。この解釈は国税庁の見解や国会答弁でも確認されています。

電子文書を印刷した場合の扱い

電子データが「原本」である場合、それを印刷したものは「写し(コピー)」として扱われます。写しは課税文書ではないため、収入印紙は不要です。

ただし、注意点があります。電子データで作成した後、それを印刷したものに双方が署名・押印し、その印刷物を「契約の原本」として取り扱うことに合意した場合は、その印刷物が課税文書となり、印紙が必要になります。

電子化に伴う必須の対応:「電子帳簿保存法」の遵守

電子化に伴う必須の対応:「電子帳簿保存法」の遵守

電子帳簿保存法の概要

電子化によって印紙税を節約できる一方で、新たな法的な義務が生じます。2024年1月1日から、電子取引で授受したデータ(PDFの預り証や請求書など)は、電子データのまま保存することがすべての事業者に義務付けられました。これは「電子帳簿保存法」という法律で定められており、単に印刷して紙で保管する方法は認められません。

遵守すべき2つの要件

この法律を遵守するためには、主に2つの要件を満たす必要があります。一つは「真実性の確保」です。保存したデータが後から改ざんされていないことを証明する仕組みが求められます。大企業のように専用システムを導入する方法もありますが、中小企業にとっては、電子データの取扱いに関する事務処理規程を社内で定めて運用する方法が最も現実的です。

もう一つは「可視性の確保」です。保存したデータを、税務調査などの際にすぐに見つけ出し、ディスプレイに明瞭に表示できる状態にしておく必要があります。

具体的には、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できるようにしておくことが求められます。この検索要件は、例えばファイル名を「2024-10-26_株式会社〇〇商事_55000.pdf」のように統一ルールで命名し、一覧表で管理するといった簡易な方法でも対応可能です。

検索要件の緩和措置

なお、この検索要件には緩和措置があります。基準期間(2事業年度前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられれば、この検索要件のすべてが不要となります。

電子化のメリットとデメリット

電子化は印紙税という直接的なコストを削減する強力な手段ですが、それは電子帳簿保存法という新たな手続きコストとのトレードオフです。単に「ペーパーレスにすれば得」と考えるのではなく、「法律に準拠した形でペーパーレス化を進める」という戦略的な視点が不可欠です。

預り証の作成から消印まで

預り証に記載すべき項目

後々のトラブルを防ぎ、証拠書類としての効力を持たせるため、預り証には以下の項目を漏れなく記載することが推奨されます。

  • 表題(「預り証」など)
  • 発行年月日
  • 宛名(金銭を支払った人の氏名・会社名)
  • 発行者(金銭を預かった人の住所、氏名・会社名、押印)
  • 預かった金額
    (改ざん防止のため、「¥50,000-」「金五萬円也」のように明確に記載)
  • 但し書き(「〇〇の敷金として」など、預かった目的)
  • 返還条件(返還する場合)

収入印紙の正しい貼り方と消印のルール

収入印紙を貼るだけでは納税したことにはなりません。正しく「消印」をすることで、初めて納税義務が完了します。法律で定められた貼付位置はありませんが、一般的には文書の左上の余白に貼付します。

消印は、その収入印紙が使用済みであることを示し、再利用を防ぐために不可欠な手続きです。印鑑または署名が、収入印紙の彩紋(模様)と台紙である文書にまたがるように、はっきりと押すか記入する必要があります。

消印は、文書の作成者、またはその代理人や従業員が行えます。契約書のように複数の当事者がいる場合でも、いずれか一方が消印すれば有効です。

消印には、会社の角印や担当者の認印、日付印、社名や氏名が入ったゴム印、消せないボールペンでの署名が有効です。実印である必要はありません。一方で、鉛筆や消せるボールペンでの記入、単なる斜線や×印、記号としての「印」という文字は無効となります。

万が一、消印がかすれたりずれたりした場合は、上から重ねて押さず、少しずらして再度、はっきりと消印してください。

もしもの時の対処法:罰則と還付

もしもの時の対処法:罰則と還付

どれだけ注意していても、ミスは起こり得ます。印紙の貼り忘れや貼り間違いに気づいた場合の正しい対処法を知っておくことは、リスク管理の観点から非常に重要です。

印紙を貼り忘れた場合の罰則「過怠税」

課税文書に収入印紙を貼らなかった場合、「過怠税(かたいぜい)」という罰則が科せられます。税務調査で印紙の不納付が発覚した場合、本来納めるべきだった印紙税額の3倍に相当する金額が過怠税として徴収されます。これは、本来の税額1倍に加え、ペナルティとして2倍が課されるためです。

しかし、税務調査の通知を受ける前に、自ら誤りに気づき、所轄の税務署に申し出た場合は、ペナルティが大幅に軽減されます。この場合、過怠税は本来の印紙税額の1.1倍で済みます。

この自主的な申し出は、「印紙税不納付事実申出書」という書類を税務署に提出することで行います。3倍と1.1倍の差は非常に大きいため、ミスに気づいた際は速やかに自主申告することが賢明な判断です。

間違えて多く貼ってしまった場合の「還付」手続き

誤って印紙を貼る必要のない文書に貼ってしまったり、必要な金額より高い額面の印紙を貼ってしまったりした場合は、納め過ぎた印紙税の「還付」を請求することができます。還付請求には時効があり、文書を作成した日から5年以内に行う必要があります。

手続きを行う際は、絶対に印紙を文書から剥がさないでください。剥がしてしまうと還付が受けられなくなります。税務署の窓口または国税庁のウェブサイトから「印紙税過誤納確認申請書」を入手し、必要事項を記入します。

記入した申請書と、印紙を誤って貼付した文書の原本を所轄の税務署に提出してください。税務署での審査後、過誤納が認められれば、指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。

まとめ

預り証と収入印紙に関する複雑なルールも、要点を押さえれば恐れるに足りません。最後に、あなたが実務で迷わないための5つの鉄則をまとめます。

  1. 本質を見抜く
    書類の表題に惑わされず、金銭の受領を証明する内容かどうかで判断する。
  2. 分岐点を意識する
    その金銭が「売上代金」か「それ以外」か、この一点が税額を決定する最も重要なポイントである。
  3. 非課税ルールを使いこなす
    「5万円未満」「営業に関しない」「クレジットカード払い」の3大非課税ケースを確実に理解し、コストを最適化する。
  4. 電子化で未来へ
    電子文書は印紙税不要という最大のメリットを享受する。ただし、電子帳簿保存法のルール遵守はセットで考える。
  5. 手続きを正しく行う
    正しい貼り方・消印を徹底し、万が一のミスは速やかな自主申告や還付請求で対応する。これによりリスクを最小限に抑える。

これらの原則を心に留めておけば、あなたは今後、事業をより円滑に進めることができるでしょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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