会計の基礎知識

株式会社の定款変更とは?必要な場合や手続き、費用などを解説

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会社を設立する場合、必ず作成しなければならない文書として、「定款(ていかん)」がありますが、本社の所在地変更など、さまざまな理由からこの定款を変更する必要が生じることがあります。本記事では、定款の基本的な知識、定款変更が必要になるケース、そして定款変更の手続き方法や留意点について詳しく説明します。

定款変更とは?

定款とは、会社の組織体系や活動内容に関する基本的なルールを記載した文書であり、株式会社を設立する際に必ず作成する必要がある重要な書類です。
会社の基本的なルールである定款の内容が変更される場合、「定款変更」と呼ばれる手続きを行います。定款変更は、株主総会で特別決議を行う必要があり、事業目的、本店所在地、役員などの変更について、法務局での変更登記が必要です。

定款の記載事項

定款に記載する事項には、一定の基準が設けられており、以下の3種類に分けられます。

  1. 絶対的記載事項
  2. 相対的記載事項
  3. 任意的記載事項

各記載事項の具体的な項目を見ていきましょう。

①絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、会社法上、必ず明記しなければならない事項です。記載されていない場合、定款自体が無効になります。

絶対的記載事項とは、会社法上必ず記載しなければならない事項をいいます。
 (ア) 目的
 (イ) 商号
 (ウ) 本店の所在地
 (エ) 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
 (オ) 発起人の氏名又は名称及び住所
引用:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省

②相対的記載事項

相対的記載事項は、会社法の規定に従い、定款に定められなければ、効力を持たない事項のことです。会社法第28条で具体的に規定された事項を含め、細かく規定が定められています。記載がない事項は、将来的なトラブルにつながるリスクがあるので注意が必要です。

相対的記載事項とは、会社法の規定により定款に定めがなければその効力を生じない事項をいいます。
 (ア) 変態設立事項(会社法第28条により定款の定めが必要とされる事項のこと)
 (ⅰ) 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数
 (ⅱ) 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
 (ⅲ) 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
 (ⅳ) 株式会社の負担する設立に関する費用
 (イ) (ア)以外
 ・ 株式の譲渡制限(会社法第107条第2項第1号)
 ・ 取締役会、監査役等を置くことができる旨(会社法第326条第2項)
 ・ 存続期間又は解散の事由(会社法第471条第1号、第2号)
 ・ 公告方法(会社法第939条第1項) 等
引用:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省

③任意的記載事項

定款の記載事項のうち、上記の①と②の記載事項に該当せず、かつ会社法の規定に違反しない内容を記載する項目は、任意的記載事項に該当します。

任意的記載事項とは、定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で会社法の規定に違反しないものをいいます。
 ・ 定時株主総会の招集時期
 ・ 株主総会の議長
 ・ 取締役や監査役の員数
 ・ 事業年度 等
引用:株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省

定款変更が必要になるケース

ここでは、定款変更が必要になる代表的なケースを3つご紹介します。

ケース①本店所在地の移転

会社が本店を移転する際には、旧本店の住所で移転の手続きを行い、同時に新しい本店の住所で設立登記事項と同じ登記をする必要があります。本店所在地は非常に重要な情報であり、「絶対的記載事項」とされています。したがって、本店の住所を変更する際には、会社の定款を変更すると同時に、この変更を登記することが必要です。

ただし、定款には具体的な住所まで書く必要はなく、市区町村まで記載すればよいとされています。定款の変更が不要で、単に本店の住所を変更する場合には、株主総会の開催は必要ありません。取締役会の決定に基づいて、変更登記を行うことができます。

ケース②役員の変更

株式会社の役員変更には、通常の取締役の着任や退任の場合、会社の基本規則である定款を変更する必要はありません。しかし、役員数や任期の変更などがある場合には、定款の変更と変更登記が必要です。変更登記には、役員変更登記申請書と、株主総会や取締役会の議事録が必要です。役員の選任は株主総会で決まり、その後登記申請を行うことで変更が完了します。

ケース③事業目的の変更

事業目的も、会社の定款に書かれた絶対的な項目です。事業の範囲や目的に変更がある場合には、登記簿の変更手続きが必要です。

手続きには、以下の書類が必要です。

<目的変更登記申請書>
法務局のウェブサイトで「株式会社変更登記申請書」の書き方を確認できます。
<株主総会議事録(株主リストを添付)および取締役会議事録>
株主総会で決議が行われたことを示す議事録

定款変更における注意点

定款変更に際して注意すべき点を4つ挙げてみましたので、確認しておきましょう。

注意点①特別決議が必要

定款変更に際しては、株主総会における特別決議が不可欠です。特別決議は、通常の決議よりも厳格な条件を必要とするものであり、定款変更以外の場面でも適用されます。

具体的には、資本金の減少、事業譲渡の承認、会社の解散、吸収合併などが挙げられます。これらはごく一部に過ぎませんが、いずれも株式会社にとって極めて重要な事項です。したがって、定款の変更もこれらと同様に、企業にとって重要な変更事項となります。

【特別決議とは】
特別決議は、重要な事項を決定するための決議です。普通決議との違いは、定足数と表決数の2つの要件にあります。特に、定款の変更など特別決議が必要な場合、議決権を持つ株主の過半数(場合によっては1/3以上の割合)が出席し、そのうち2/3以上が賛成しなければ、変更は認められません。

(株主総会の決議)
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会
二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
四 第百八十条第二項の株主総会
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会
六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
八 第四百二十五条第一項の株主総会
九 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
十 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
引用:会社法 | e-Gov法令検索

注意点②株主総会の議事録の保存・提出が必要

株主総会では、「1株1議決権」の原則が適用され、株主が所有する株式の数に応じて支配権が決まります。したがって、株式を多く所有する人ほど、企業の意思決定において大きな影響力を持ちます。通常、最大の株主は企業のトップである社長や創業者です。

企業の規約を変更する場合、変更内容が株主総会で承認された後、法務局への登記申請が必要です。この際、株主総会の決議内容を証明するために議事録を提出する必要があります。登記が受理されると、定款と株主総会の議事録は保管されます。

ただし、特定の変更事項(例: 決算月の変更)については、特別な登記手続きは不要です。こうした変更に関しては、株主総会の議事録を添付した「異動届出書」を税務署に提出する必要があります。議事録のフォーマットは特に指定されていませんが、株主総会の日時、決議内容、決議事項の数、賛成票の数などが記録されている必要があります。そして、議事録は定款と一緒に保存されるべきです。

注意点③費用と手間がかかる

登記の変更には費用がかかります。一般的には3万円です。この費用は、法務局への登録免許税です。また、郵送料などの追加費用もかかる場合があります。さらに定款変更に際し、臨時株主総会を開く場合にその開催費用もかかってきます。

なお、本店の所在地を管轄登記所外に移転する場合は、移転先を管轄する別の登記所にも申請書を提出する必要があります。このとき、費用が倍額以上になる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。ただし、定款が電子形式の場合は印紙税が不要になることもあります。

変更手続きを司法書士などに依頼する場合は、専門家報酬も加算されます。司法書士への報酬を考慮すると、定款変更は可能な限りまとめて行うほうがよいでしょう。専門家に依頼することで安心感が得られますが、費用が増える可能性もあるため、慎重に考える必要があります。自分で手続きを行うか、クラウドサービスなどを利用して費用を節約するかは、検討が必要です。

注意点④ 公証人の認証は不要

株式会社では定款を作成した後、公証人による認証手続きが必要です。会社設立前の定款は、単に作成しただけでは効力が発生しません。公証人からの認証を受けることによって、はじめて法的な効力を持ちます。

ただし、すでに認証された定款の変更に際しては、公証人の認証は不要ですので覚えておきましょう。会社が組織再編によって合併や分割を行った場合においても、新たに作成した定款に関して公証人の認証は必要ありません。

注意点⑤登記には期限がある

定款変更の場合、通常、株主総会の翌日から2週間以内に、登記申請をする必要があります。本店の移転の場合、定款変更の決議日ではなく、実際に本店を移転した日から2週間以内に登記が必要です。期限を過ぎても登記申請は受け付けられますが、登記懈怠(けたい)と見なされ、登記義務を怠ったことに対して、代表者は100万円以下の過料が科せられることがあります。

定款変更で登記申請が必要なケース

定款の変更には、登記申請が必要な場合と不要な場合の2パターンがあります。通常、法人登記に関する定款の記載内容を変更する際には、必ず登記申請が必要になります。

登記は社会的信用を得るためや権利主張の手段として行われるものです。取引先が必要な情報を得るためにも登記簿に正確な情報を記載することが重要です。

以下に、定款変更で登記申請が必要な場合の具体的な事例を挙げました。ただし、これは一般的な例であり、変更登記の手続きが必要かどうかは事前に確認しましょう。

記載事項登記申請が必要
絶対的記載事項商号の変更(社名変更)
新規事業の展開、事業からの撤退
発行可能株式総数の変更
本店、支店の所在地の変更
相対的記載事項株券の発行
取締役会の設置監査役の設置
任意的記載事項資本金の額

変更登記の手続き・申請方法

変更登記の申請方法は以下の2通りがあります。

・書面申請
・オンライン申請

書面申請

管轄する法務局に関連書類を直接、持参するか、郵送で提出します。管轄の法務局についての詳細な情報は、法務局の公式ホームページで確認できます。

オンライン申請

オンライン申請は、法務局が提供する申請用ソフトを使用して、インターネット上で申請が可能です。申請手続きは、申請用ソフトの指示に従って行いますが、電子申請を行うには電子証明書が必要です。電子証明書は、マイナンバーカードなどと関連付けて作成される証明書です。持っている方はオンライン申請を検討しましょう。

参照:商業・法人登記の申請書様式|法務局

登記申請にかかる費用

定款変更に伴う法務局への登記申請には、登録免許税がかかります。通常の場合、登録免許税は3万円で、変更事項が複数あっても、基本的には3万円です。
ただし、本店移転と他の変更事項を同時に行う場合には、追加で3万円がかかり、合計で6万円が必要です。また、新しい本店の所在地が別の法務局の管轄地域の場合、元の本店所在地と新しい本店所在地の両方で登記申請を行う必要があるため、それぞれ3万円ずつの登録免許税がかかり、合計で6万円が必要となります。

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まとめ

定款変更は、会社の基本的な要素を記載した定款に変更を加えることを指します。この変更には、株主総会での特別決議が必要であり、2/3以上の賛成がなければ変更は承認されません。また、定款変更に伴う登記申請が必要な場合、登録免許税などの費用が発生します。会社を設立する際には、将来的に定款変更が必要になる可能性を考慮し、定款の内容を慎重に検討しておくことが非常に重要です。

この記事の投稿者:

reg@olta.co.jp

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