
海外の取引先とのやり取りや、海外出張後の経費精算で、「英語の領収書」に戸惑った経験はありませんか。この一点の不安が、あなたのグローバルな活躍の足かせになっているとしたら、非常に惜しいことです。
もし、どんな場面でも自信を持って英語の領収書を扱えるようになり、スマートに業務をこなせる未来が手に入るとしたら、その方法を知りたいと思いませんか。
この記事を最後まで読めば、あなたは「receipt」「invoice」「bill」の明確な違いを理解し、状況に応じた正しい単語を選べるようになります。
本記事で紹介する知識やテンプレートは、専門家でなくても今日からすぐに実践できるものばかりです。コピー&ペーストで使えるメール文例や、項目を埋めるだけで完成する領収書フォーマットなど、あなたの業務を直接的にサポートするツールを用意しました。
目次
「Receipt」「Invoice」「Bill」の基本的な違い
英語で領収書関連の書類を扱う際、多くの人が最初に直面する壁が「receipt」「invoice」「bill」という3つの単語の使い分けです。これらは似ているようで、ビジネスの現場では全く異なる役割を持っています。この違いを理解することが、すべての基本となります。
なぜこの違いが重要なのか?ビジネスフローの理解
英語圏のビジネス、特に会計や法務の観点から見ると、「支払いのリクエスト(請求)」と「支払いの証明(受領)」は厳格に区別されます。単語の使い分けは、単なる「正しい英語表現」の問題ではなく、会計処理と法的な証拠能力に関わる、ビジネスプロセスの根幹に関わる問題です。
具体的には、invoice(請求書)は売り手にとって「売掛金」、買い手にとって「買掛金」という債権債務を発生させる会計上のイベントを意味します。一方でreceipt(領収書)は、その債権債務が支払いによって解消されたことを法的に証明する文書です。
この2つを混同することは、二重払いや経費計上の不備といった経理上の混乱を招くだけでなく、税務調査での指摘や、最悪の場合、取引先との金銭トラブルに直結するリスクをはらんでいます。
したがって、invoiceは取引を「開始」させる合図であり、receiptは取引を「完了」させる証明書であるという、ビジネスプロセスにおける役割の違いを理解することが極めて重要です。
「Receipt」- 支払いが完了した証拠
Receiptは、商品やサービスに対する支払いが完了した後に発行される「支払証明書」です。日本語の「領収書」や、日常的に使う「レシート」に最も近い概念がこの単語にあたります。
主な目的は、経費精算、確定申告などの税務処理、そして商品の返品や保証サービスを受ける際の購入証明として使用されることです。顧客による支払いが完了したと同時、またはその直後に発行されるのが一般的です。
具体的な例としては、小売店で商品を購入し代金を支払った後に受け取るレシートや、レストランで会計を済ませた後に渡される感熱紙のレシートが挙げられます。オンラインショッピングで決済が完了した後にメールで送られてくる電子的な支払確認書もreceiptに含まれます。
「Invoice」- 取引内容を明記した請求書
Invoiceは、提供した商品やサービスに対する支払いを依頼するために発行される「請求書」を指します。原則として、支払いがなされる前に発行されるのが大きな特徴です。
その目的は、買い手に対して、支払うべき金額、取引の詳細な明細、支払い条件(支払期限など)を正式に通知することです。売り手にとっては販売実績の追跡、買い手にとっては支払い義務の管理に不可欠な書類となります。
発行のタイミングは、商品の納品後や、プロジェクトなどのサービス提供が完了した後、しかし支払いの前に送付されます。企業間(BtoB)取引における商品代金の請求や、コンサルタントが業務委託の報酬をクライアントに請求する場合などが典型的な使用例です。
「Bill」- 日常的な支払いを求めるお勘定書
Billも「請求書」を意味しますが、invoiceと比較して、より日常的で口語的な場面で使われることが多い単語です。特に、即時の支払いを求める場合や、定期的に発生する支払いの請求に用いられます。
目的はinvoiceと同様に支払いを求めるものですが、よりBtoC(企業対消費者)のサービスで一般的に使用される傾向があります。invoiceがフォーマルな企業間取引で使われることが多いのに対し、billはより身近なサービスの支払いを指します。
例えば、レストランでの「お勘定」や、家庭の電気代、水道代、電話料金などの公共料金の請求書が典型例です。なお、アメリカのレストランでは「お会計」をcheckと呼ぶことも一般的です。
比較表で理解する3つの単語の使い分け
これら3つの単語の違いを、以下の表にまとめました。この表を参照することで、状況に応じた最適な単語を瞬時に判断できるようになります。
項目 | Receipt (領収書) | Invoice (請求書) | Bill (お勘定書) |
目的 | 支払証明 | 支払請求 | 支払請求(主にBtoC) |
発行タイミング | 支払後 | 支払前 | 支払前 |
主な使われ方 | 経費精算、購入証明 | BtoB取引、業務委託 | レストラン、公共料金 |
会計上の役割 | 支払完了の記録 | 売掛金・買掛金の発生 | 買掛金の発生 |
プロフェッショナルな英語領収書の作成方法
receiptとinvoiceの違いを理解したら、次は実際にプロフェッショナルな英語の領収書を作成する方法を学びましょう。ここでは、国際的に通用する領収書の必須項目と、それぞれの英語での書き方を具体的に解説します。
領収書の基本構造と必須項目
英語の領収書は、誰が、誰に、いつ、何を、いくらで提供し、どのように支払われたかを明確にするための書類です。これらの情報が不足していると、経費精算が認められなかったり、取引の証明として無効になったりする可能性があります。
標準的な領収書には、以下の項目が含まれます。
- タイトル (Title)
- 発行日 (Date)
- 領収書番号 (Receipt Number)
- 発行者情報 (Issuer)
- 宛名 (Received from / Sold to)
- 金額 (Amount)
- 明細 (Description / Itemization)
- 小計・税金・合計 (Subtotal, Tax, Total)
- 支払方法 (Payment Method)
- サイン (Signature)
これらの項目を正確に記載することは、単なる事務作業ではありません。これは、あなたのビジネスのプロフェッショナリズムを海外の取引先に示すコミュニケーションの一環です。日付の書式や会社名の正式表記といった細部への配慮が、相手に「この会社は国際標準を理解している」という安心感と信頼を与えます。
各項目の英語表記と書き方のポイント
タイトル (Title)
書類の上部中央に、大文字で「RECEIPT」と記載するのが最も一般的で分かりやすい方法です。Sales Receipt(売上領収書)やPayment Receipt(支払領収書)といった、より具体的なタイトルを使用することもあります。書類の種類が一目でわかるように、目立たせることが重要です。
発行日 (Date)
表記は「Date」または「Date of Issue」と記載します。日付の書式には注意が必要で、アメリカ式(月/日/年)とイギリス式(日/月/年)の違いを理解しておく必要があります。例えば「2024年5月1日」は、アメリカ式では「05/01/2024」、イギリス式では「01/05/2024」となります。このような混乱を避けるため、「May 1, 2024」のように月をアルファベットで表記する方法が最も確実で推奨されます。
領収書番号 (Receipt Number)
「Receipt No.」、「Receipt #」、または「Receipt Number」と記載します。領収書に連番を振ることは、社内での控えの管理や、後日取引先から問い合わせがあった際の特定を容易にします。法的な必須項目ではありませんが、プロフェッショナルな文書管理の一環として強く推奨されます。
発行者情報 (Issuer / Issued by)
あなたの会社名(Company Name)、住所(Address)、電話番号(Phone Number)、メールアドレス(E-mail Address)を記載します。住所の表記は、日本とは逆の順序(例:部屋番号、ビル名、番地、市区町村、都道府県、郵便番号、国名)で記載します。また、会社形態の英語表記(例:Co., Ltd., Inc., Corp.)は、自社の正式な英語名称を確認して正しく使用しましょう。
宛名 (Received from / Sold to / Bill to)
「Received from [Customer Name]」(~様より受領)や「Sold to [Customer Name]」(~様へ販売)のように記載します。相手の会社名や氏名を正確に記載することが重要です。もし宛名を特定しない、日本の「上様」のような形式にしたい場合は、「Customer」と記載するのが一般的です。より丁寧にしたい場合は、「Mr.」や「Ms.」といった敬称を付けることもできます。
金額 (Amount)
「Total Amount」(合計金額)や「Amount Received」(受領金額)として記載します。金額を記載する際は、通貨単位を明確にすることが非常に重要です。例えば、日本円であれば「JPY 10,000」や「¥10,000」のように、通貨コード(JPY)や通貨記号(¥)を必ず付けましょう。
明細 (Description / Itemization)
表形式で、「Description」(品目・内容)、「Quantity」(数量、Qtyと略されることも多い)、「Unit Price」(単価)、「Amount」または「Line Total」(金額)の列を作成して記載します。日本語の「但し書き」に相当する部分は、「For: [payment purpose]」(例: For: Consulting Fee)のように簡潔に書くこともできます。しかし、取引の透明性を高めるためには、提供した商品やサービスを一つずつ記載した詳細な明細(itemized receipt)が望ましいです。
小計・税金・合計 (Subtotal, Tax, Total)
明細の下に、「Subtotal」(小計)、「Tax」(税金)、そして「Total」(合計金額)を分けて記載します。日本の消費税を記載する場合は、「Consumption Tax (10%)」のように税率を明記すると、海外の取引先にも分かりやすく親切です。また、日本のインボイス制度に対応する場合は、適格請求書発行事業者の登録番号(Registration Number)を記載する欄を設ける必要があります。
支払方法 (Payment Method)
「Paid by: [Method]」や「Payment Method」として、具体的な支払い手段を記載します。具体例としては、Cash(現金)、Credit Card(クレジットカード)、Bank Transfer(銀行振込)、Check(小切手)など、実際に使用された方法を明記します。
サイン (Signature)
「Received by:」または「Signature:」という項目を設け、その横に署名欄(下線)を引きます。日本では押印が一般的ですが、海外では手書きのサインが法的な効力を持つことが多く、受領の証明となります。必須ではありませんが、特に高額な取引や正式な証明を求められる場合には、発行者のサインがあることで領収書の信頼性が格段に高まります。
実践で役立つ英語領収書テンプレートとメール文例
理論を学んだ後は、すぐに実践で使えるツールが役立ちます。ここでは、コピー&ペーストやダウンロードしてすぐに使える領収書のテンプレートと、それを送付する際のメール文例を紹介します。
シンプルな領収書テンプレート
明細項目が少ない、または単一のサービス提供に対する領収書として最適な、基本的なテンプレートの構成です。
RECEIPT
Date: [発行日]
Receipt No.: [領収書番号]
Received from:
[宛名: 会社名/氏名]
Amount:
[金額: 通貨記号と数字、例: JPY 10,000]
For:
[但し書き: 例: Consulting services for May 2024]
Paid by: [支払方法]
Issued by:
[あなたの会社名/氏名]
[あなたの住所]
[あなたの電話番号/メールアドレス]
Signature: _________________________
詳細な明細付き領収書テンプレート
複数の商品やサービスを提供したBtoB取引などで推奨される、信頼性の高い明細付きのテンプレート構成です。
RECEIPT
Date: [発行日]
Receipt No.: [領収書番号]
Sold to:
[宛名: 会社名/氏名]
[宛先の住所]
[宛先の連絡先]
Issued by:
[あなたの会社名/氏名]
[あなたの住所]
[あなたの電話番号/メールアドレス]
Registration Number: [登録番号]
Description | Quantity | Unit Price | Line Total |
[品目1] | [数量] | [単価] | [金額] |
[品目2] | [数量] | [単価] | [金額] |
Subtotal: [小計]
Tax (10%): [税額]
Total: [合計金額]
Payment Method: [支払方法]
領収書を送付するEメールテンプレート
作成した領収書(PDF形式が望ましい)をメールで送付する際の、丁寧でプロフェッショナルな文面です。件名で内容が分かるようにし、本文は簡潔にまとめるのがポイントです。
件名: Receipt for [サービス名/商品名] または Receipt [領収書番号]
本文:
Dear [クライアント名],
Thank you for your recent payment.
Please find the attached receipt for your records.
Please do not hesitate to contact us if you have any questions.
Best regards,
[あなたの名前/会社名]
場面別・英語領収書コミュニケーションフレーズ
領収書は、作成するだけでなく、依頼したり、不備を指摘したりと、様々なコミュニケーションを伴います。ここでは、具体的な場面で使える丁寧かつ明確な英語フレーズを紹介します。
領収書を依頼するフレーズ
海外の店舗やホテル、レストランなどで領収書が必要になった際に使えるフレーズです。
基本的な依頼
- Could I have a receipt, please?
(領収書をいただけますか?) - May I have a receipt, please?
(Couldよりもさらに丁寧なニュアンスになります)
宛名を指定する
- Could you address the receipt to [会社名/氏名]?
(宛名を~にしていただけますか?)
但し書きを指定する
- Could you put “[内容]” in the payment description?
(但し書きを「~」にしていただけますか?)
明細付きを依頼する
- Could I get an itemized receipt?
(明細付きの領収書をいただけますか?)
領収書を発行するフレーズ
あなたがサービス提供者として、顧客に領収書を発行する際に使えるフレーズです。
発行の申し出
- Would you like a receipt?
(領収書はご入用ですか?)
領収書を手渡すとき
- Here is your receipt.
(領収書です、どうぞ)
メールで送付を伝えるとき
- Please find the receipt attached.
(領収書を添付いたしましたので、ご確認ください)
トラブル対応:不備を指摘・修正依頼するフレーズ
受け取った領収書に間違いがあったり、メールに添付されていなかったりすることは稀にあります。その際に、相手に失礼なく、的確に修正を依頼するためのフレーズです。金銭が絡む書類の不備を指摘する際は、直接的な非難と受け取られかねない表現は避け、「恐れ入りますが」「~のようですが」といったクッション言葉を使うことが、プロフェッショナルな対応の鍵となります。
添付ファイルがなかった場合
- It seems the receipt was not attached. Could you please resend it?
(領収書が添付されていなかったようです。再送していただけますか?)
内容に誤りがあった場合
- Thank you for the receipt. I noticed there seems to be a small error in the [amount/name/date]. Could you please check and send a revised version?
(領収書ありがとうございます。恐れ入りますが、[金額/名前/日付]に誤りがあるようです。ご確認の上、修正版をお送りいただけますでしょうか?)
応用編:海外出張の経費精算で使う英語
領収書を受け取った後の最終ステップが、社内での経費精算です。海外出張や海外赴任の際には、このプロセスも英語で行われることがあります。ここでは、経費精算に関連する英語表現と、日本の勘定科目の英語訳を紹介します。
経費精算の基本ボキャブラリー
経費精算(Expense Reimbursement)のプロセスで頻繁に使われる必須単語です。
- Reimbursement: 立替金の精算、払い戻し
- Expense Report / Expense Claim: 経費精算書
- Submit receipts: 領収書を提出する
- Advance payment: 仮払い、前渡金
- Daily allowance / Per diem: 日当
ここで注意したいのが「reimburse」と「refund」の違いです。「reimburse」は、従業員が業務のために立て替えた費用を会社が後から支払う「精算」を指します。一方、「refund」は、購入した商品を店に返品した際に代金が返ってくるような「返金」を意味します。会社の経費精算の文脈では「reimburse」が正解です。
日本の勘定科目の英語表現一覧
日本の経費精算書や会計システムで使われる勘定科目を、標準的な英語表現に翻訳した一覧表です。海外の会計システムに入力する際や、外資系企業で経費精算を行う際に非常に役立ちます。
日本語 | 英語 |
旅費交通費 | Travel and transportation expenses |
通信費 | Communication expenses |
交際費 | Entertainment expenses |
会議費 | Conference expenses |
消耗品費 | Supplies expenses |
福利厚生費 | Welfare expenses |
地代家賃 | Rent expenses |
水道光熱費 | Utilities expenses |
支払手数料 | Commission fee / Bank charges |
雑費 | Miscellaneous expenses |
まとめ
本記事では、英語の領収書に関するあらゆる側面を網羅的に解説しました。最後に、自信を持って英語の領収書を使いこなすための重要なポイントを再確認します。
Point 1: 目的とタイミングを意識する
支払いを求めるなら Invoice、支払いを証明するなら Receipt。この大原則を絶対に忘れないでください。
Point 2: 必須項目を漏らさず記載する
プロフェッショナルな領収書は、日付、宛名、金額、明細、発行者情報が明確です。特に通貨単位と日付形式には細心の注意を払いましょう。
Point 3: テンプレートとフレーズ集を最大限に活用する
ゼロから考える必要はありません。本記事のツールをブックマークし、必要な時にすぐに取り出して使うことで、時間と労力を大幅に削減できます。
Point 4: コミュニケーションは丁寧に
特に不備を指摘する際は、相手への配慮を忘れない表現を心がけることで、スムーズな問題解決と良好なビジネス関係の維持につながります。
Point 5: 経費精算までがワンセット
受け取った領収書は、正しい勘定科目に仕分けるまでが業務です。英語の勘定科目もマスターし、社内プロセスまで完璧にこなすことで、あなたのビジネススキルはさらに向上するでしょう。
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