会計の基礎知識

帳簿はエクセルで十分か?作成方法から会計ソフトとの比較、電子帳簿保存法まで解説

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帳簿 エクセル

事業の経理、できれば使い慣れたエクセルで、コストをかけずに済ませたい。多くの事業主がそう考えています。その願いは、正しい知識と手順があれば十分に実現可能です。

この記事を読めば、あなたもエクセルで正確な帳簿を作成し、日々の経理業務を効率化し、自信を持って確定申告に臨む未来が手に入ります。会計ソフトを導入するべきか、エクセルで続けるべきか、その判断基準も明確にわかるようになります。

会計の専門知識がなくても大丈夫です。無料テンプレートの活用法から、法律(電子帳簿保存法)に対応するための具体的な手順まで、一つひとつ丁寧に解説しますので、誰でも実践できます。

目次

なぜ今、帳簿作成にエクセルが選ばれるのか?事業主を惹きつける3つのメリット

事業を始めたばかりの個人事業主や小規模な法人にとって、経理業務は避けて通れない道です。その第一歩として、多くの人がエクセルを選びます。なぜなら、エクセルには事業の初期段階において非常に魅力的なメリットがあるからです。

圧倒的なコストパフォーマンス

事業を立ち上げたばかりの時期は、できる限り固定費を抑えたいと考えるのが自然です。会計ソフトの多くは月額や年額の利用料がかかりますが、エクセルは多くのパソコンに標準でインストールされているため、追加の初期費用やランニングコストがかかりません。

この「コストゼロ」で始められる点は、運転資金が限られるスタートアップ期の事業者にとって、何よりも大きな魅力です。経理にかける費用を事業の成長に必要な他の投資に回せるため、賢明な経営判断といえます。

慣れた操作感と高いカスタマイズ性

多くの人は、仕事やプライベートでエクセルを使った経験があります。そのため、新しい専門ソフトの操作をゼロから覚える必要がなく、心理的なハードルが低いのが特徴です。使い慣れたツールであれば、帳簿作成という新しい作業にもスムーズに取り組めます。

さらに、エクセルの強みはその自由度の高さにあります。テンプレートを元に自社の業務に合わせて項目を追加したり、不要な列を削除したりと、完全にオリジナルの帳簿を作成できます。自分の事業内容や管理したい項目にぴったり合った、世界に一つだけの帳簿を作れる柔軟性は、会計ソフトにはない大きな利点です。

豊富な無料テンプレートの活用

「エクセルが良いのはわかったけれど、ゼロから作るのは大変そう」と感じるかもしれません。しかし、その心配は不要です。現在、多くの企業が質の高い無料テンプレートを提供しています。

例えば、弥生やマネーフォワードといった大手会計ソフト会社は、税理士が監修した信頼性の高いテンプレートを無料で公開しています。これらのテンプレートには、現金出納帳や仕訳帳、総勘定元帳など、確定申告に必要な帳簿が一通り揃っています。

あらかじめ計算式が入力されているため、簿記の知識に自信がなくても、数字を入力するだけで正確な帳簿付けを始められます。まずはこうしたテンプレートを活用することで、時間と手間を大幅に削減し、安全に経理業務をスタートできるのです。

まずは基本から 確定申告に必須の主要な会計帳簿の種類

まずは基本から 確定申告に必須の主要な会計帳簿の種類

「帳簿」と一言でいっても、その種類はさまざまです。ここでは、特に重要な役割を持つ基本的な帳簿について、その目的と関係性をわかりやすく解説します。これらの帳簿の役割を理解することが、正確な経理の第一歩です。

すべての取引の出発点「仕訳帳(しわけちょう)」

仕訳帳は、事業で発生したすべての取引を、日付順に記録していく最も基本的な帳簿です。会社のお金の動きを記録する「日記」のようなものだと考えてください。

仕訳帳では、「複式簿記」というルールに基づいて取引を記録します。複式簿記では、一つの取引を「原因」と「結果」の2つの側面から捉え、「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」という左右の欄に分けて記入します。

例えば、「現金で備品を1万円分購入した」場合、「備品という資産が1万円増えた(借方)」ことと、「現金という資産が1万円減った(貸方)」ことを同時に記録します。この仕訳帳が、後述するすべての帳簿の元となる、まさに経理の心臓部です。

勘定科目ごとの集計表「総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)」

総勘定元帳は、仕訳帳に記録したすべての取引を「勘定科目(かんじょうかもく)」ごとに分類し、集計した帳簿です。勘定科目とは、「現金」「売上」「消耗品費」といった、お金の性質を示すラベルのことです。

仕訳帳が時系列の日記であるのに対し、総勘定元帳は勘定科目ごとの集計レポートです。「現金」のページを見れば、いつ、何によって現金が増減し、現在の残高はいくらなのかが一目でわかります。確定申告で提出する貸借対照表や損益計算書は、この総勘定元帳の数字を元に作成されるため、非常に重要な帳簿です。

エクセルで手作業を行う場合、仕訳帳に取引を一つ記録したら、その内容を総勘定元帳の該当する2つの勘定科目のページに転記する必要があります。この「転記」という作業が、会計ソフトでは自動化されている部分であり、手作業で行う場合はミスが発生しやすいポイントでもあります。

現金の流れを管理する「現金出納帳(げんきんすいとうちょう)」

現金出納帳は、その名の通り、事業用の現金の出入りだけを記録する帳簿です。お小遣い帳や家計簿に近く、非常にシンプルでわかりやすいのが特徴です。いつ、誰からいくら入金があり、いつ、何にいくら支払ったか、そしてその結果、手元の現金がいくら残っているかを管理します。特に現金での取引が多い事業にとっては、日々の残高を正確に把握するために不可欠な帳簿です。

その他の重要な補助簿

上記の主要な帳簿の他に、特定の取引をより詳しく管理するための「補助簿」があります。

売掛帳(うりかけちょう)

商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない取引(売掛金)を、取引先ごとに管理する帳簿です。

買掛帳(かいかけちょう)

商品や材料を仕入れたものの、まだ代金を支払っていない取引(買掛金)を、仕入先ごとに管理する帳簿です。

経費帳(けいひちょう)

消耗品費や交通費など、仕入以外の経費を勘定科目ごとに記録する帳簿です。これらの補助簿を使うことで、より詳細な経営状況の分析が可能になります。

初心者向け 無料テンプレートで今日から始めるエクセル帳簿

エクセルで帳簿を始める最も簡単で確実な方法は、専門家が作成した無料テンプレートを活用することです。ここでは、信頼できるテンプレートの提供元と、その活用法を具体的に紹介します。

おすすめ無料テンプレート3選とその特徴

会計知識に自信がない方でも安心して使える、質の高いテンプレートを3つ厳選しました。

弥生(Yayoi)

会計ソフトの老舗である弥生が提供するテンプレートは、特に個人事業主向けに充実しています。青色申告・白色申告の両方に対応した帳簿が一式揃っており、税理士が監修しているため信頼性が高いのが特徴です。インボイス制度に対応したフォーマットも用意されており、法改正にも配慮されています。

マネーフォワード(Money Forward)

クラウド会計ソフトで人気のマネーフォワードも、実務ですぐに使える豊富な帳票テンプレート集を無料で提供しています。伝票や仕訳帳など、幅広いテンプレートが揃っているのが魅力です。将来的に事業が拡大し、同社の会計ソフトへ移行する際にも、データの考え方が似ているためスムーズに移行しやすいというメリットもあります。

Microsoft Office / bizocean

よりシンプルな現金出納帳などから始めたい場合は、Microsoft Officeの公式テンプレートサイトや、ビジネス書式サイトのbizoceanが便利です。これらは汎用的なデザインで、直感的に使いやすいのが特徴です。自動計算機能が組み込まれているものが多く、手軽に日々の現金管理を始められます。

これらのテンプレート提供元は、自社の会計ソフトへの導入を促す目的で高品質な無料テンプレートを公開しています。これは利用者にとって、質の高いツールを安心して利用できるというメリットにつながります。

テンプレートは、会計ソフト会社が設計した「お試し版」とも言え、その使いやすさや設計思想を体感する良い機会にもなります。

テンプレート活用の基本ステップと注意点

テンプレートをダウンロードしたら、以下のステップで活用しましょう。

マスターファイルを保存する

ダウンロードしたファイルは、まず「原本」としてコピーして別に保存しておきましょう。入力用のファイルと原本を分けることで、誤って数式を消してしまった場合でも安心です。

構造を理解する

いきなり入力を始める前に、どのシートに何の帳簿が入っているか、どのセルに入力すればよいかを確認します。多くの場合、入力すべきセルは色分けされています。

初期設定を行う

事業年度や期首残高(事業開始時点の現金や預金の残高)など、最初に設定が必要な項目を入力します。

日々の取引を入力する

領収書や請求書を見ながら、日付、勘定科目、金額、取引内容などを所定のセルに入力していきます。

注意点として、計算式が入力されているセルは絶対に直接編集しないようにしましょう。誤って数式を削除したり変更したりすると、正しい計算ができなくなります。入力するセルと数式が入っているセルを意識して使い分けることが重要です。

中級者向け 自社に合わせてカスタマイズ エクセルで帳簿を自作する全手順

無料テンプレートでは物足りない、あるいは自社の特殊な業務に合わせて帳簿を最適化したいという方のために、エクセルで帳簿を自作する手順を解説します。ゼロから帳簿を作成する過程は、複式簿記の仕組みを直感的に理解するための最良の学習機会にもなります。

ステップ1 シートの設計と項目の設定

まずは、すべての取引の基本となる「仕訳帳」シートを作成します。新しいエクセルファイルを開き、1行目に以下の項目名を入力しましょう。これらは仕訳帳に必須の要素です。

日付、借方勘定科目、借方金額、貸方勘定科目、貸方金額、摘要(取引の具体的な内容)の各項目です。各列の幅は、入力する内容に合わせて調整します。「摘要」は詳しい内容を記入するため、広めにとっておくと見やすくなります。

ステップ2 計算を自動化する必須関数の入力

次に、エクセルの強みである計算機能を活用します。複式簿記の絶対的なルールは、「借方金額の合計と貸方金額の合計は必ず一致する」ことです。このチェックを自動化するために、SUM関数を使いましょう。

借方金額の列と貸方金額の列の下に、それぞれ合計額を算出するセルを設けます。例えば、借方金額がC列にある場合、=SUM(C2:C1000)のように入力すれば、C列の2行目から1000行目までの合計が自動で計算されます。貸方金額の列も同様に設定し、常に両者の合計が一致しているかを確認できるようにします。

また、現金出納帳や総勘定元帳で残高を自動計算させる際にはIF関数が役立ちます。例えば、前の行の残高(G3セル)、当日の入金(D4セル)、当日の出金(E4セル)を使って残高を計算する場合、=IF(AND(D4=0,E4=0),””,G3+D4-E4)という数式を入力します。これは、「もし入金と出金が両方ゼロなら空白を表示し、そうでなければ残高を計算する」という意味で、未入力の行に不要な数字が表示されるのを防ぎます。

ステップ3 入力規則と書式設定でミスを防ぐ工夫

手入力にはミスがつきものです。エクセルの機能を活用して、ミスを未然に防ぐ仕組みを作りましょう。

ドロップダウンリストの活用

「勘定科目」の入力ミスや表記のゆれを防ぐために、「データの入力規則」機能を使ってドロップダウンリストを作成するのが非常に効果的です。別のシートにあらかじめ使用する勘定科目の一覧を作成しておき、入力セルでその一覧から選択できるように設定します。これにより、入力が高速化するだけでなく、後の集計作業もスムーズになります。

セルの書式設定

金額を入力する列は、セルの書式設定で「数値」または「通貨」を選び、「桁区切り(,)を使用する」にチェックを入れておきましょう。これにより、3桁ごとにカンマが自動で挿入され、金額が格段に見やすくなります。

シートの保護

数式を入力したセルや、変更されたくない項目名のセルを誤って編集しないように、「シートの保護」機能を使うのも有効です。入力が必要なセルだけロックを解除しておけば、重要な数式を壊してしまうリスクを減らせます。

ステップ4 日々の取引の具体的な記帳方法

帳簿の準備が整ったら、実際に取引を記帳してみましょう。例えば、「10月1日に、商品を現金10万円で売り上げた」という取引を仕訳帳に記録する場合は、以下のようになります。

日付: 10/1

借方勘定科目: 現金

借方金額: 100,000

貸方勘定科目: 売上

貸方金額: 100,000

摘要: A社 商品売上

このように、一つの取引を借方と貸方の両面から記録していきます。この地道な作業を通じて、お金の流れがどのように事業の資産や収益に影響を与えるのか、その構造的な理解が深まっていきます。

重大な判断基準 エクセルと会計ソフト、どちらを選ぶべきか?

エクセルでの帳簿作成は手軽でコストがかからない一方、事業が成長するにつれて限界も見えてきます。ここでは、エクセルと会計ソフトを客観的に比較し、あなたの事業にとってどちらが最適かを見極めるための判断基準を提示します。

機能、コスト、リスクを徹底比較

エクセルと会計ソフトの選択は、単なるコストの問題ではありません。時間、正確性、将来性といった多角的な視点での比較が必要です。以下の比較表で、それぞれの長所と短所を確認してみましょう。

比較項目エクセル会計ソフト
初期費用ほぼ0円0円~数万円
月額費用0円数千円~
会計知識複式簿記の基本知識が必要知識が少なくてもガイド機能で対応可能
自動化機能基本的になし(手動入力)銀行口座・カード連携、自動仕訳など豊富
法改正対応すべて手動で対応が必要アップデートで自動対応
データ共有・同時編集困難または機能制限ありクラウド型なら容易
ミスの発生リスク高い(入力ミス、計算式のエラーなど)低い(自動計算、転記ミスがない)
電子帳簿保存法対応手動での煩雑な作業が必要機能として標準搭載されていることが多い
サポート体制なし電話、メール、チャットなどでサポートあり

この表からわかるように、エクセルの最大のメリットはコストですが、その代わりに多くの作業を手動で行う必要があり、それに伴うリスクも利用者がすべて負うことになります。一方、会計ソフトは月額費用がかかりますが、経理業務の大幅な自動化、ミスの削減、法改正への自動対応といったメリットを提供します。

この選択は、「お金を節約するか、時間を節約するか」という問いに置き換えられます。エクセルにかかる本当のコストは、月額料金ではなく、あなたが手作業に費やす「時間」と、ミスが発生する「リスク」、そして法改正への対応に頭を悩ませる「精神的な負担」です。

その時間を事業の成長に使う方が、結果的に大きな利益を生む可能性もあります。会計ソフトへの投資は、単なる経費ではなく、時間と安心を確保するための戦略的な投資と捉えることができるのです。

エクセルが向いている事業者の特徴

上記を踏まえた上で、以下のような特徴を持つ事業者は、現時点ではエクセルでの帳簿管理が適していると考えられます。

  • 開業したばかりの個人事業主
  • 月の取引件数が非常に少ない(例:20~30件以下)
  • とにかく初期費用を抑えたい
  • 複式簿記の基礎知識がある、または学ぶ意欲がある
  • 電子取引(PDFでの請求書受領など)がほとんどない

会計ソフトへの移行を検討すべきタイミング

事業が成長する中で、次のようなサインが見られたら、会計ソフトへの移行を真剣に検討すべきタイミングです。

  • 取引件数が増え、手入力の時間が負担になってきた
  • 従業員を雇用し、給与計算などが必要になった
  • 消費税の課税事業者になった
  • PDFで請求書や領収書を受け取る機会が増えた(電子帳簿保存法への対応)
  • 複数の担当者で経理情報を共有する必要が出てきた
  • リアルタイムで経営状況を把握し、迅速な意思決定を行いたい

エクセルでの管理に限界を感じ始めたときが、事業が順調に成長している証拠でもあります。そのタイミングでスムーズに会計ソフトへ移行できるよう、日頃からデータを整理しておくことが重要です。

最重要 エクセルで電子帳簿保存法に対応するための具体的要件と手順

2024年1月から、メールで受け取った請求書や領収書のPDFなど、「電子取引」で授受したデータは、電子データのまま保存することがすべての事業者に義務化されました。エクセルで帳簿を管理している場合でも、この法律に正しく対応する必要があります。これは任意ではなく、必須の要件です。

電子帳簿保存法の「真実性」と「可視性」の要件とは

電子帳簿保存法では、電子データを保存する際に主に2つの要件を満たすことが求められています。

「真実性の確保」は、保存されたデータが改ざんされていないことを証明するための措置です。例えば、訂正や削除の履歴が残るシステムを使う、あるいは改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用する、といった方法があります。

「可視性の確保」は、保存したデータを、税務調査などの際にすぐに見つけ出し、明瞭な状態で確認できるようにしておくことです。この中で特に重要なのが「検索機能の確保」です。

検索要件を満たすための「索引簿(さくいんぼ)」の作成方法

エクセルで「検索機能の確保」という要件を満たすためには、受け取った電子データ(請求書PDFなど)とは別に、それらの情報を一覧にした「索引簿」という管理台帳をエクセルで作成する必要があります。

国税庁もサンプルを公開していますが、索引簿には最低でも以下の項目を含める必要があります。

  • 取引年月日
  • 取引金額
  • 取引先
  • ファイル名(または連番)

この索引簿を作成し、エクセルのフィルター機能を使えば、「特定の取引先」や「特定の日付範囲」といった条件で検索できるようになり、法律の要件を満たすことができます。

ファイル名の規則性とデータ管理の注意点

索引簿を効果的に機能させるためには、保存する電子データ自体のファイル名にも一貫したルールを設けることが不可欠です。例えば、以下のような規則でファイル名を統一します。

取引年月日_取引先名_金額.pdf (例: 20241001_株式会社A商事_55000.pdf)

このようにファイル名を付けておけば、フォルダの検索機能だけでも特定の取引を見つけやすくなります。

また、索引簿への入力時には、「株式会社」と「(株)」、「A商事」と「Aしょうじ」のような表記のゆれが起きないよう、社内でのルールを徹底することが極めて重要です。表記が統一されていないと、検索しても正しくヒットせず、検索要件を満たせないと判断されるリスクがあります。

エクセル対応の限界とリスク

ここまで説明した通り、エクセルでも電子帳簿保存法への対応は可能です。しかし、それは会計ソフトが自動で行う索引付けやデータ連携を、すべて手作業で、ミスなく、継続的に行うことを意味します。

この方法は、取引件数が少ないうちは機能しますが、事業が拡大するにつれて管理が煩雑になり、入力ミスや更新漏れのリスクが飛躍的に高まります。また、税制上の優遇措置が受けられる「優良な電子帳簿」の要件をエクセルで満たすことは、一般的に困難とされています。

電子帳簿保存法への対応は、エクセルを使い続けるか、会計ソフトに移行するかの大きな分水嶺となります。この法律の存在が、多くの事業者にとって会計ソフト導入の強力な後押しとなっているのが現状です。

エクセル帳簿から確定申告へ スムーズに申告を終えるためのポイント

エクセル帳簿から確定申告へ スムーズに申告を終えるためのポイント

日々の帳簿付けの最終的なゴールは、年に一度の確定申告を正確かつスムーズに終えることです。ここでは、エクセルで作成した帳簿データを、確定申告書類の作成に活かすためのポイントを解説します。

収支内訳書の作成に向けたデータの集計方法

白色申告の場合、確定申告では「収支内訳書」を作成して提出します。この書類の各項目は、一年間記録し続けた帳簿の集計結果そのものです。

例えば、収支内訳書には「消耗品費」「旅費交通費」「地代家賃」といった経費の項目があります。総勘定元帳や経費帳で、それぞれの勘定科目ごとに一年間の合計金額をSUM関数で集計します。

その合計額を、収支内訳書の対応する欄に転記していくだけで、経費の計算は完了します。売上についても同様です。日々の記帳をこまめに行っていれば、確定申告の時期に慌てて一年分の領収書をかき集める必要はありません。帳簿の合計額を転記するという、シンプルでストレスの少ない作業で申告準備が整います。まさに、日々の努力が報われる瞬間です。

経費計上のよくある質問と注意点

経費をエクセルで管理する際には、いくつか注意点があります。

経費の分類を統一する

レシートを入力する際、同じ種類の経費は常に同じ勘定科目に分類するルールを徹底しましょう。例えば、文房具は常に「消耗品費」、電車代は常に「旅費交通費」と決めておくことで、集計が楽になり、正確な経費計算が可能になります。

証拠書類は必ず保管する

エクセルに記録した後も、元になった領収書やレシート、請求書などの証拠書類は、法律で定められた期間(通常7年間)保管する義務があります。エクセルのデータはあくまで帳簿であり、その取引が実際にあったことを証明するのは元の書類です。これらは整理してファイリングし、いつでも確認できるようにしておきましょう。

まとめ エクセルでの帳簿作成を成功させるために

本記事では、エクセルを使った帳簿作成のメリットから具体的な作成方法、会計ソフトとの比較、そして避けては通れない電子帳簿保存法への対応まで、幅広く解説しました。最後に、成功のための重要なポイントを再確認します。

エクセルは優れたスタート地点である

特に事業開始直後のコストを抑えたい時期において、エクセルは非常に有効なツールです。ただし、その手軽さの裏には、自己責任と継続的な規律が求められます。

テンプレートから始めるのが賢明

ゼロからの作成は学習になりますが、まずは税理士監修などの信頼できる無料テンプレートを活用し、ミスなくスタートを切ることをお勧めします。

ツール選びは事業の成長戦略

エクセルか会計ソフトかの選択は、事業の規模、取引量、将来の展望を考慮した戦略的な判断です。自社の「今」と「未来」に最適なツールを選びましょう。

電子帳簿保存法への対応は必須

PDFなどで請求書を受け取る事業者は、エクセルで対応する場合、索引簿の作成とファイル名の統一という厳格なルール運用が不可欠です。この手間とリスクを理解することが重要です。

成功の鍵は「こまめな記帳」

どのツールを使うにしても、日々の取引を溜め込まずに記録することが、ストレスのない経理業務とスムーズな確定申告を実現する唯一の方法です。

あなたの事業が今どの段階にあるのかを見極め、本記事で得た知識を元に、最適な一歩を踏み出してください。まずは推奨テンプレートをダウンロードして今日から始めてみるのも良いでしょう。あるいは、事業の成長を見据えて会計ソフトの情報を集め始めるのも賢明な判断です。

この記事の投稿者:

hasegawa

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