会計の基礎知識

ガバナンス強化とは? 企業価値を最大化する「攻め」と「守り」の戦略

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ガバナンス 強化

企業の持続的な成長と競争力の源泉はどこにあるのでしょうか。それは、単なる法令遵守を超え、経営の質そのものを高める「ガバナンス強化」に他なりません。

強固なガバナンス体制は、不祥事を防ぐ「守り」の盾であると同時に、的確なリスクテイクを可能にし、企業価値を飛躍させる「攻め」の矛にもなります。

この変革を成功させた企業は、優秀な人材と潤沢な資金を引き寄せ、競合を圧倒するスピードで的確な意思決定を下し、市場からの揺るぎない信頼を勝ち取っています。

この理想は、決して絵に描いた餅ではありません。例えば、ポンプ業界の雄である荏原製作所は、ガバナンス改革を断行し、長期経営計画で掲げた時価総額1兆円という目標を数年前倒しで達成しました。これは、ガバナンス強化が具体的な企業価値向上に直結することを示す、実在の成功事例です。

「しかし、自社でそのような大掛かりな改革ができるだろうか」と不安に思うかもしれません。ご安心ください。ガバナンス強化への道筋は、決して複雑怪奇なものではありません。

それは、現状分析から始まり、体制構築、施策の導入、そして継続的な改善へと続く、明確なステップで構成されています。

本稿では、その具体的かつ実践的なロードマップを、専門家が徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの会社が明日から何をすべきか、その具体的な第一歩が見えているはずです。

目次

なぜ今、「ガバナンス強化」が経営の最重要課題なのか?

現代のビジネス環境において、「ガバナンス強化」はもはや一部上場企業だけの課題ではなく、あらゆる企業にとって避けて通れない経営の最重要テーマとなっています。グローバル化の進展、投資家や社会からの厳しい視線、そして相次ぐ企業不祥事を受けて、企業の透明性や公正性に対する要求はかつてないほど高まっています。

特に日本では、2015年に導入され、その後改訂が重ねられてきた「コーポレートガバナンス・コード」が、この潮流を決定的なものにしました。このコードは、企業が持続的に成長し、中長期的な企業価値を高めるための指針を示しており、多くの企業に変革を促しています。

攻めと守り ガバナンスが持つ二つの側面

ガバナンスの重要性を理解する上で鍵となるのが、「守りのガバナンス」と「攻めのガバナンス」という二つの側面です。

守りのガバナンス 企業の存続基盤を固める盾

「守りのガバナンス」とは、従来から重視されてきた側面であり、企業の不正や不祥事を未然に防ぎ、法令や社会規範を遵守(コンプライアンス)し、経営リスクを適切に管理するための体制を指します。これは、企業の信頼性を維持し、存続するための最低限の基盤です。

この「守り」が脆弱であれば、粉飾決算やデータ改ざん、大規模な情報漏洩といった不祥事が発生し、企業の社会的信用は失墜します。その結果、顧客離れや株価の暴落、資金調達の困難化を招き、最悪の場合、企業の倒産にまで至ることもあります。

守りのガバナンスは、企業という城を守るための堅牢な城壁であり、堀なのです。

攻めのガバナンス 企業価値を創造する矛

一方、「攻めのガバナンス」は、より現代的で戦略的な側面です。これは、健全なリスクテイクを後押しし、迅速かつ合理的な意思決定を促進することで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指す仕組みを意味します。

変化の激しい市場環境で勝ち抜くためには、時に大胆な投資や事業転換が必要です。攻めのガバナンスは、経営陣が安心してアクセルを踏み込める環境を整備する役割を果たします。

重要なのは、「守り」と「攻め」の関係性です。これらは二者択一ではなく、強固な「守り」があって初めて、効果的な「攻め」が可能になるという、明確な順序関係にあります。リスク管理体制や内部統制という「守り」の裏付けがなければ、経営陣は失敗を恐れて萎縮し、大きな成長機会を逃してしまいます。

つまり、守りのガバナンスへの投資は、単なるコストではなく、企業の成長ポテンシャルを最大限に引き出すための戦略的な布石なのです。

ガバナンス強化がもたらす具体的なメリット

ガバナンス強化がもたらす具体的なメリット

強固なガバナンス体制を構築することは、企業に計り知れないメリットをもたらします。

企業価値の向上

健全で透明性の高い経営は、株主や投資家からの信頼を高め、株価の安定や向上につながります。また、金融機関からの評価も高まり、有利な条件での資金調達が可能になるなど、財務基盤の安定に大きく貢献します。

競争力の強化

意思決定プロセスが明確化され、監督と執行が適切に分離されることで、経営のスピードが向上します。これにより、市場の変化に迅速に対応し、競合他社に先んじて新たな戦略を打ち出すことが可能になります。

労働環境の改善

ガバナンスの根幹をなす公平性と透明性の原則は、従業員にも適用されます。これにより、ハラスメントの防止や公正な評価制度の構築が進み、従業員のモチベーションが向上します。結果として、離職率の低下や優秀な人材の獲得につながり、組織全体の活力が生まれます。

ガバナンス強化の第一歩 基本概念を正しく理解する

ガバナンス強化に取り組む前に、その核となる概念と、しばしば混同されがちな関連用語との違いを正確に理解することが不可欠です。ここでの理解のズレが、後々の施策の方向性を誤らせる原因となりかねません。

コーポレートガバナンスの定義

コーポレートガバナンスとは、日本語で「企業統治」と訳され、「株主をはじめとする顧客、従業員、地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義できます。

かつては株主の利益を最大化することが主眼でしたが、現在では顧客、従業員、取引先、地域社会といったすべての利害関係者(ステークホルダー)の権利を守り、協働していくことが求められています。その最終的な目的は、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にあります。

関連用語との違いを明確にする

ガバナンスについて議論する際、「内部統制」「コンプライアンス」「リスクマネジメント」といった言葉が頻繁に登場します。これらは密接に関連していますが、それぞれ異なる概念です。

内部統制(Internal Control)との違い

内部統制とは、企業が自らの事業目的を有効かつ効率的に達成するために、社内に構築するルールや仕組みのことです。業務上のミスや不正を防ぎ、業務効率を高めるための社内体制であり、あくまで内部向けの仕組みです。

一方、ガバナンスは、株主や投資家といった外部のステークホルダーを意識した、より大きな経営の枠組みです。つまり、内部統制は、ガバナンスを実現するための重要な構成要素の一つと位置づけられます。

コンプライアンス(Compliance)との違い

コンプライアンスとは、法令や社会規範、企業倫理などを遵守することを指します。これは「ルールを守る」という行動そのものを意味します。

対してガバナンスは、コンプライアンスが遵守されるように企業を管理・監督する体制そのものを指します。コンプライアンスが「目的」であるとすれば、ガバナンスは「目的を達成するための仕組み」であり、両者には明確な違いがあります。

リスクマネジメント(Risk Management)との違い

リスクマネジメントとは、事業活動に伴う様々なリスクを組織的に管理し、損失を未然に回避または低減するための経営手法の一つです。

ガバナンスが経営の管理体制という「仕組み」そのものを指すのに対し、リスクマネジメントは具体的な「活動」や「プロセス」を指します。

ただし、企業の健全な経営にはリスク管理が不可欠であるため、リスクマネジメントはガバナンスを強化するための極めて重要な要素とされています。

これらの関係性を整理するため、以下の比較表を参照してください。この表は、各概念の目的、対象、そして相互の関係性を明確にし、全体像の理解を助けます。

概念 主な目的 主な対象・範囲 関係性

ガバナンス 公正・透明な経営による持続的成長と企業価値向上 株主、投資家、全ステークホルダー(外部視点) 経営管理の全体的な枠組み

内部統制 事業目的の有効・効率的な達成、社内の不正・誤謬防止 経営者、従業員(内部視点) ガバナンスを実現するための主要なメカニズム

コンプライアンス 法令、社会規範、倫理の遵守 組織の全構成員 ガバナンスが目指す基本的な原則であり目標

リスクマネジメント 事業上の潜在的リスクの識別、評価、低減 組織全体(戦略レベルから業務レベルまで) ガバナンスを支える重要なプロセス

実践!ガバナンス強化を成功に導く具体的ロードマップ

実践!ガバナンス強化を成功に導く具体的ロードマップ

ガバナンス強化は、単一の施策で完結するものではなく、組織全体を巻き込んだ体系的な取り組みです。ここでは、そのプロセスを4つのステップに分け、具体的なアクションを解説します。

ステップ1 現状把握と組織課題の可視化

改革の第一歩は、自社の現状を正確に把握することから始まります。まずは、既存の社内規程や業務フロー、承認ルートなどを棚卸しし、どこに曖昧さや非効率、リスクが潜んでいるかを洗い出します。

このプロセスでは、客観的な視点を取り入れることが重要です。従業員へのアンケートやヒアリングを実施し、現場の実態を把握します。

特に、ハラスメントやコンプライアンスに関する潜在的な問題は、表面化しにくいものです。従業員が安心して声を上げられるよう、外部の専門機関が運営する通報窓口を設置したり、匿名性を担保した調査を行ったりすることも有効な手段です。

この段階で課題を徹底的に可視化することが、後の施策の効果を最大化する鍵となります。

ステップ2 体制構築の骨子を固める

現状分析で見えてきた課題をもとに、ガバナンス体制の骨格を設計します。その中心となるのが、経営の最高意思決定機関である取締役会の改革です。企業の意思決定の質と透明性を左右する取締役会の機能強化は、ガバナンス改革の核心と言えます。

独立社外取締役の設置と活用

経営陣から独立した客観的な視点を持つ社外取締役の存在は、経営の暴走を防ぎ、ステークホルダーの利益を守る上で不可欠です。彼らは社内のしがらみにとらわれず、専門的な知見に基づいた助言や監督を行います。

コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場企業に対して取締役の3分の1以上を独立社外取締役とすることを求めており、その重要性が示されています。

成功事例として知られる富士通では、取締役の過半数を社外取締役とし、議長も社外取締役が務めることで、監督機能の実効性を高めています。

指名委員会・報酬委員会の設置

社長や役員の選任・解任、報酬の決定といったプロセスは、経営の根幹に関わる重要な事項です。これらの決定に客観性と透明性を持たせるため、社外取締役が過半数を占める任意の「指名委員会」や「報酬委員会」を設置することが推奨されます。

これにより、経営トップによる恣意的な人事を防ぎ、業績や企業価値向上への貢献度に基づいた公正な報酬体系を構築できます。

監督と執行の分離

取締役会が経営の大きな方向性を示す「監督」に集中し、日々の業務執行は「執行役員」に権限を委譲することで、意思決定の迅速化と責任の明確化を図ります。

取締役会は個別の業務執行から一歩引いた立場で、中長期的な戦略や重要なリスク管理に注力できるようになり、経営の質が向上します。

ステップ3 具体的な施策の導入と定着

骨格となる体制が固まったら、それを実効性のあるものにするための具体的な施策を導入し、組織に根付かせていきます。

内部統制システムの強化

内部統制は、以下のプロセスを経て体系的に構築されます。

まず、組織として何を目指すのか、どのようなルールで動くのかという基本方針を明確にします。

次に、事業活動に潜むリスクを全社的に洗い出し、その影響度と発生可能性を評価し、優先順位をつけて対応策を講じます。

そして、権限の明確化、職務の分掌(一人の担当者に権限を集中させない)、承認プロセスの整備といった具体的な管理活動を業務フローに組み込みます。

最後に、業務に必要な情報が、組織内の関係者に正確かつ迅速に伝達・共有される仕組みを確保します。

リスク管理体制の整備

効果的なリスク管理体制は、しばしば「3つの防衛線(Three Lines of Defense)」モデルで説明されます。

第1線は、実際にリスクを負う事業部門です。日々の業務の中でリスクを管理する責任を負います。

第2線は、リスク管理部門やコンプライアンス部門であり、全社的な方針策定や各部門の支援、モニタリングを行います。

第3線は、内部監査部門です。独立した立場から、第1線および第2線の活動が有効に機能しているかを監査します。

このモデルを導入することで、組織内の役割と責任が明確になり、網羅的かつ実効性の高いリスク管理が可能になります。

また、取締役会は、会社全体として許容できるリスクの範囲(リスクアペタイト)を明確に定め、その範囲内で事業活動が行われるよう監督する重要な役割を担います。

コンプライアンスプログラムの導入

全従業員のコンプライアンス意識を向上させるためには、体系的なプログラムが必要です。

まず、企業の価値観やあるべき行動を明文化し、全従業員の判断基準とする「行動規範・倫理憲章」を策定します。

次に、ハラスメント、情報セキュリティ、インサイダー取引といった重要テーマについて、全従業員を対象とした研修を定期的に行い、知識のアップデートと意識の徹底を図ります。

さらに、不正行為を早期に発見・是正するため、従業員が報復を恐れることなく通報できる内部通報制度の整備も重要です。制度の実効性を担保するためには、通報者の匿名性の確保と保護が不可欠です。

IT・システムの活用

現代のガバナンス強化において、ITの活用は欠かせません。

例えば、「ワークフローシステム」の導入が挙げられます。稟議や経費精算などの申請・承認プロセスを電子化することで、社内規程に基づいた承認ルートが強制され、不正や規程違反をシステム的に防止できます。また、「いつ、誰が、何を承認したか」という証跡がすべて記録されるため、業務プロセスの透明性が飛躍的に向上します。

「ERP(統合基幹業務システム)」も有効です。販売、購買、会計といった企業の基幹業務データを一元管理することで、経営状況をリアルタイムかつ正確に把握できます。これにより、データに基づいた迅速で的確な意思決定が可能となり、攻めのガバナンスを支えます。

ステップ4 継続的なモニタリングと改善

ガバナンス体制は、一度構築して終わりではありません。事業環境の変化に対応し、その実効性を維持・向上させるためには、継続的な監視と改善のサイクルを回すことが不可欠です。

その一つが「内部監査の実施」です。経営陣から独立した内部監査部門が、定期的に各部門の業務プロセスや内部統制の運用状況を評価し、課題や改善点を経営陣および取締役会(または監査役会)に直接報告します。

「取締役会実効性評価」も重要です。取締役会自身が、その構成や運営方法、議論の質などについて毎年自己評価を行います。客観性を高めるため、第三者の専門家による評価を交えることも一般的です。この評価を通じて課題を特定し、翌年度の改善計画に繋げます。

そして、「フィードバックループの確立」が必要です。監査や評価で得られた指摘事項、あるいは発生したインシデントから得られた教訓を、規程の見直しや研修内容の改善に確実に反映させる仕組みを構築します。これにより、ガバナンス体制は形骸化することなく、自己進化を続ける「生きたシステム」となります。

これらのステップを通じて忘れてはならないのは、ガバナンス強化が単なる「制度の導入」ではなく、「企業文化の変革」であるという視点です。

どれほど精緻なルールやシステムを構築しても、経営トップの強いコミットメントや、従業員一人ひとりの理解と協力がなければ、それは「絵に描いた餅」に終わってしまいます。透明性と公正性を重んじる文化を組織の隅々にまで浸透させることが、真のガバナンス強化のゴールなのです。

成功と失敗から学ぶ ガバナンス強化のリアルな事例研究

理論やフレームワークだけでなく、実際の企業の取り組みから学ぶことは、ガバナンス強化を成功させる上で極めて有益です。ここでは、企業価値向上を実現した成功事例を具体的に見ていきます。

成功事例 企業価値向上を実現した「Governance to Value」の実践

荏原製作所 ガバナンス改革を価値創造に直結

荏原製作所は、「Governance to Value (G to V)」を掲げ、ガバナンス改革を企業価値向上に直結させた代表例です。同社は、取締役の過半数を社外取締役とし、指名委員会等設置会社へ移行するなど、監督機能の独立性と客観性を徹底的に高めました。

同時に、経営指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、事業部門のパフォーマンスを厳しく評価する仕組みを構築しました。この強固な「守り」(監督機能)と明確な「攻め」(業績評価)の組み合わせが功を奏し、資本効率は劇的に改善しました。

その結果、長期目標であった時価総額1兆円を計画より数年早く達成するという目覚ましい成果を上げています。

キリンホールディングス CSV経営を支えるガバナンス

キリンホールディングスは、ガバナンスをCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)経営の基盤と位置づけています。同社は、多様なバックグラウンドを持つ社外取締役を積極的に登用し、経営の意思決定に幅広い視点を取り入れています。

取締役会では、経済的価値だけでなく、健康や環境といった社会的価値の創造に関するコミットメントの進捗が厳しく監督されます。このようなガバナンス体制が、社会課題の解決を事業の成長に繋げるという長期的な戦略を支え、企業のブランド価値と持続可能性を高めています。

富士通 取締役会の監督機能を徹底追求

富士通は、取締役会改革の好例です。独立社外取締役を取締役会議長に据え、取締役の過半数を社外取締役とすることで、取締役会が本来の役割である「経営の監督」に専念できる体制を構築しました。

さらに、社外取締役が事業内容を深く理解できるよう、事業部門長による定期的な説明会(事業概況説明会)を開催するなど、実質的な議論を可能にするための工夫を凝らしています。

これにより、社外取締役が付け焼き刃の意見ではなく、深い理解に基づいた質の高い監督機能を発揮できる環境が整えられています。

未来を拓くガバナンス ESG経営と持続的成長

近年、企業の持続可能性を評価する上で、「ESG」という考え方が世界の投資家や金融機関のスタンダードとなっています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、そしてガバナンス(Governance)の3つの頭文字を取ったものです。

ESGの基盤としての「G(ガバナンス)」

ESGの3要素の中で、特に基盤となるのが「G(ガバナンス)」です。なぜなら、企業が掲げる環境保護への取り組み(E)や、人権・労働環境への配慮(S)が、単なるイメージ戦略(グリーンウォッシュ)ではなく、本物であるかを担保するのが、強固なガバナンス体制だからです。

ガバナンスがEとSをどう駆動するか

例えば、気候変動対策という複雑な課題(E)に取り組むには、科学的知見やグローバルな動向を理解できる多様な専門性を持った取締役会が必要です。

また、従業員の多様性確保やサプライチェーンにおける人権尊重(S)といった課題を推進するには、経営陣が明確な方針を定め、その実行状況を透明性をもって監督・開示する仕組みが不可欠です。これらはすべて、優れたガバナンスの機能そのものです。

長期的価値創造の前提条件

投資家がESGを重視するのは、それが企業の将来的なリスク耐性と成長可能性を示す重要な指標だと考えているからです。環境規制の強化や社会からの要請の変化といった非財務リスクに適切に対応できない企業は、長期的に見て企業価値を損なう可能性が高いと判断されます。

そして、これらの非財務リスクに的確に対応できるかどうかは、その企業のガバナンスの質に大きく左右されます。つまり、現代において強固なガバナンスは、もはや企業の任意選択ではなく、長期的な資金調達と持続的成長を実現するための必須条件となっているのです。

まとめ 明日から始めるガバナンス強化へのアクションプラン

本稿では、ガバナンス強化の重要性から具体的な実践方法、そして未来に向けたその役割までを多角的に解説してきました。最後に、その要点を再確認し、明日から踏み出すべき一歩を提示します。

ガバナンス強化は戦略的必須事項である

現代のビジネス環境において、ガバナンス強化は単なるコンプライアンス対応ではなく、企業の存続と成長を左右する最重要の経営戦略です。

「守り」から「攻め」への転換

不祥事を防ぐ「守り」のガバナンスを盤石にした上で、迅速な意思決定と健全なリスクテイクを可能にする「攻め」のガバナンスへと進化させることが、企業価値創造の鍵となります。

成功への道筋は明確なロードマップにある

ガバナンス強化は、取締役会改革を核とし、内部統制、リスク管理、コンプライアンスといった各要素を体系的に整備し、継続的に改善していくという明確なプロセスに沿って進めることができます。

ガバナンスはESGと持続的成長の礎である

強固なガバナンスは、企業の環境・社会への取り組みの信頼性を担保し、長期的な企業価値を評価する投資家からの信頼を得るための不可欠な基盤です。

ガバナンス強化の道のりは、時に困難を伴うかもしれません。しかし、それは自社の未来に対する最も確実で価値ある投資です。本稿で示したロードマップを参考に、まずは自社の現状を客観的に見つめ直すことから始めてみてください。その一歩が、貴社をより強靭で、信頼され、そして持続的に成長する組織へと導く、確かな始まりとなるでしょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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