建設業の基礎知識

常用単価で損をしない方法を解説!適正相場と利益を最大化する計算・交渉術のすべて

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適切な常用単価を設定できれば、あなたの会社や個人事業の利益は劇的に改善します。現場で汗を流して働いた分がしっかりと手元に残り、将来への蓄えや設備投資に回せる余裕が生まれるでしょう。この記事を読めば、業界の最新相場と根拠のある計算方法がわかります。

建設業界で長年悩みの種だった「いくらで請けるべきか」という問題に、明確な答えを出せるようになります。相場を知らないことで安く買い叩かれる不安から解放されるはずです。専門的な知識がなくても、手順に沿って計算すれば誰でも適正な見積もりを作成できます。

目次

常用単価の基本概念と請負との決定的な違い

建設業界や製造業の現場で頻繁に使われる常用単価とは、作業員1人が1日働いた際にかかる費用のことです。これを「1人工(にんく)」という単位で数えます。常用契約は、いわば「労働力の提供」に対する対価を支払う形式です。これに対して「請負契約」は、特定の工事を完成させることに対して対価を支払います。

労働力の提供か、成果の完成か

常用契約の最大の特徴は、作業の進捗に関わらず働いた日数分だけ報酬が発生する点です。天候不良や資材の遅延で作業が止まった場合でも、現場に拘束されている以上は費用が発生します。一見すると受注側に有利に見えますが、常用単価には注意点も多いです。

請負契約であれば、道具代や消耗品費、車両費などがすべて含まれた金額で契約します。一方、常用契約ではこれらの経費をどこまで単価に含めるかが曖昧になりがちです。元請け会社から「常用でお願い」と言われた際、単に日給のつもりで引き受けると、保険料や事務経費で赤字になる恐れがあります。

責任の所在と指揮命令権

常用単価を考える際、もう一つの重要な視点は「指揮命令」です。常用(人工出し)の場合、基本的には元請けの指示に従って作業を行うことになります。これは実態として「労働者派遣」や「偽装請負」と紙一重の状況になりやすいため、法的なコンプライアンスにも注意を払わなければなりません。

これに対して請負は、自社の職長が作業員に指示を出し、自らの責任で品質を管理します。常用単価で請けるということは、管理責任の一部を元請けに委ねる代わりに、1日あたりの収益に上限が生まれるという意味です。請負であれば効率化によって利益を伸ばせますが、常用は「時間」を売っているため、単価そのものを上げない限り収益増は見込めないでしょう。

経営費としての視点

常用単価を考える際は、単なる給与の支払いではありません。事業を継続するための「経営費」が含まれていることを忘れてはいけません。常用単価の算出を誤ると、働けば働くほど会社が疲弊します。適切な利益を確保するためには、まずこの「労働力に対する対価」という定義を、経営的な視点で見直す必要があるのです。

現場での指示系統や責任の所在も、常用と請負では異なります。常用は元請けの指示に従って動く要素が強く、請負は自社の判断で完成を目指すという違いを正しく理解しましょう。

職種別・地域別の常用単価相場ガイド

常用単価は、職種の内容や地域によって大きく変動します。全国一律の金額は存在しません。一般的に、専門性の高い資格が必要な職種や、体力的負荷が大きい職種ほど単価は高くなる傾向にあります。

地域格差の現状

東京都内の電気工事士や配管工の場合、1人工あたりの常用単価は2万8000円から3万8000円程度が相場です。これに対し、地方都市の土工であれば1万8000円から2万3000円程度になるケースも見られます。この差は、地域の最低賃金や生活コスト、そして人手の需給バランスによって生じます。

特に首都圏や大阪、名古屋といった都市圏では、再開発プロジェクトが集中するため、人手不足が深刻化しています。その結果、常用単価も年々上昇傾向にあります。一方で、地方では仕事の確保が優先され、単価が据え置かれる傾向がありましたが、近年の物価高騰により全国的に底上げが始まっています。

職種による難易度と単価の関係

職種別に見ると、以下のような傾向があります。

  • 特殊技能職(溶接工、重量鳶など):2万5000円〜4万5000円
  • 設備・内装職(電工、配管、クロスなど):2万2000円〜3万5000円
  • 一般土工・解体:1万8000円〜2万5000円

これらはあくまで目安ですが、保有する資格(1級技能士など)や、現場でのリーダー経験があれば、さらに5000円程度の加算が妥当とされる場合もあります。

公共工事設計労務単価の活用

公共事業の設計で見られる「公共工事設計労務単価」は、一つの大きな指標になります。農林水産省や国土交通省が毎年発表するこの数値は、福利厚生費の本人負担分や手当を含んだ金額です。しかし、これはあくまで「直接労務費」であり、会社の利益や共通仮設費は含まれていません。

実際の民間取引では、この設計労務単価に「諸経費」を上乗せした金額が常用単価として適正です。諸経費には、社会保険料の会社負担分、交通費、道具の維持費、事務所の維持管理費などが含まれます。これらを考慮すると、設計労務単価の1.3倍から1.5倍程度が、健全な会社経営を維持できる単価の目安と言えます。

2024年問題と単価の上昇

最近では、若手入職者の減少や高齢化により、熟練工の単価が急騰しています。また、2024年4月から適用された残業時間の上限規制により、現場の稼働時間が制限されるようになりました。これに伴い、短時間で効率よく作業をこなす職人の価値が高まり、常用単価の底上げが全国的に進んでいます。自分の職種の相場を知ることは、交渉の第一歩です。周辺の同業者と情報交換を行い、市場価格から大きく乖離していないか常にチェックする姿勢が求められます。

利益を残すための正確な常用単価計算シミュレーション

常用単価を計算する際、多くの人が「自分がいくら欲しいか」だけで決めてしまいます。しかし、ビジネスとして継続するには、目に見えないコストをすべて洗い出す必要があります。以下の手順で計算を行うと、本来請求すべき真の常用単価が見えてきます。

1. 直接労務費(職人の手取りと税金)

まず、職人に支払う日当を決めます。仮に2万円としましょう。これはあくまで「給与」のベースです。

2. 法定福利費(社会保険の壁)

次に、法定福利費を計算します。健康保険や厚生年金などの会社負担分は、給与の約15%程度かかります。2万円の日当に対しては、約3000円が加算されます。さらに、労働保険料や退職金共済(建退共)の掛け金も無視できません。これを含めると、人件費だけで2万4000円近くになります。

3. 直接現場経費(動くためのコスト)

次に、現場への移動にかかる車両費や燃料費、有料道路代を算出します。1日あたり2000円程度と見積もるのが一般的です。さらに、道具の消耗や買い替え費用として1000円程度を積み立てる必要があります。これらを合計すると、すでに2万7000円を超えます。

4. 一般管理費と営業利益

忘れてはならないのが「一般管理費」です。見積書作成や請求業務を行う事務員の給与、事務所の家賃、通信費、建設業許可の維持費などがこれに当たります。これらを売上の10%から20%程度で見込むのが健全な経営です。最終的に、会社としての利益(5%から10%)を乗せます。

計算式のまとめ

これらを総合すると、日当2万円の職人を出すための常用単価は、以下のようになります。

常用単価 = (直接労務費 + 法定福利費 + 現場経費)  ÷(1 – 一般管理費率 – 利益率)

例えば、経費率を20%、利益率を10%(合計30%を控除)と設定し、原価が2万7000円の場合:

27,000÷ 0.7 = 38,571円

つまり、約3万8000円で請求しなければ、会社として適切な利益は残らないということです。もし、日当とほぼ同額の2万円や、少し色をつけた2万5000円で常用を受けていたとしたら、社会保険料やガソリン代を支払った時点で赤字です。社長自身が現場に出ている場合は、自分の役員報酬が削られていることになります。

この計算式を元に、一度自社の数字を当てはめてみてください。いかに「サービス精神」で単価を下げていたかに気づくはずです。根拠のある数字を持つことで、元請けに対しても「これ以下の金額では赤字になる」と自信を持って説明できます。

単価交渉を成功させるための具体的な戦略

「単価を上げてください」と伝えるだけでは、交渉はうまくいきません。元請け会社も予算の中で動いているため、納得感のある材料を提供する必要があります。

戦略1:コストの可視化とエビデンス

上述した計算シミュレーションを資料にまとめ、提示します。特に社会保険の加入状況や、最近のガソリン代の高騰、副資材の値上がりを具体的に数値で示します。

「世の中の流れだから」という曖昧な理由ではなく、「昨年比で燃料代が15%上昇し、社会保険の料率も変わったため、1日あたり1500円のコスト増になっている」と訴えるのが効果的です。また、公共工事設計労務単価が上昇している新聞記事や資料を添えるのも有効な手段です。

戦略2:付加価値とリスク低減の提案

単なる労働力の提供ではなく、自社にしかできない強みをアピールします。元請けにとって、安いけれど管理が大変な職人よりも、高くても安心して任せられる職人の方が、トータルコストは低くなります。

具体的なアピールポイントは、以下のような点です。

  • 多能工化:一人の職人が電気も内装もこなせるため、現場の調整コストが減る。
  • 資格とコンプライアンス:インボイス対応済み、社会保険完備、安全衛生教育の徹底。
  • 現場の清掃・マナー:クレームを未然に防ぎ、元請けの看板を汚さない。

「私たちの単価は少し高いですが、その分現場監督の手間を減らし、工期短縮に貢献します」という伝え方が理想的です。

戦略3:段階的な引き上げと条件交渉

いきなり大幅なアップを要求するのではなく、まずは小幅な改定から始めます。あるいは、「新規の現場からはこの単価でお願いします」と、区切りをつけるのも手です。

また、単価そのものを上げるのが難しい場合は、他の条件で実質的なプラスを狙います。

  • 交通費や駐車場代を別途請求にする。
  • 消耗品(ビスやテープなど)を元請け支給にする。
  • 支払いサイトを短縮してもらう。

これらはキャッシュフローの改善に直結し、実質的な利益増につながります。

戦略4:タイミングの見極め

交渉のタイミングも重要です。人手が足りなくて困っている時期や、大きなプロジェクトが始まる直前は、元請けも工期を優先するため単価アップに応じやすい傾向にあります。逆に、工事量が少ない時期に強気な交渉をすると、仕事を切られるリスクがあります。

交渉は相手を負かすことではなく、共に持続可能なビジネスパートナーとして歩むための対話です。「この単価でなければ、質の高い職人を維持できず、御社の現場の品質を保証できない」という、相手のメリットを考えた伝え方を意識してください。

常用単価を巡るトラブルを防ぐためのリスク管理

常用契約において最も多いトラブルは、作業範囲の認識相違です。常用で入っているはずなのに、現場で「ついでにこれもやっておいて」と言われ、追加の道具や材料を持ち出すケースです。これが常態化すると、単価以上のコストが受注側に重くのしかかります。

契約条件の書面化(見積書の工夫)

トラブルを防ぐためには、事前の契約条件の書面化が不可欠です。見積書の備考欄に、常用単価に含まれるもの・含まれないものを明記しましょう。

  • 時間外対応:定時(8時〜17時)以外の作業は25%増、深夜は50%増などの規定。
  • 出戻り・待機補償:元請け都合で作業ができない場合の拘束料。
  • 雨天中止時のルール:朝の時点で中止なら0.5人工、現場到着後なら1人工など。
  • 特殊道具の使用料:高所作業車や特殊工具を使用する場合の別途費用。

特に雨天中止時の対応は、職人の生活を守る上で重要です。無給の状態が続けば職人は離れていきます。会社として「雨でも日給の半分は保証する」という体制を作るには、元請けからその分の補填を得るか、常用単価に「空振りリスク分」をあらかじめ上乗せしておく必要があります。

インボイス制度への対応

一人親方として常用で働く場合、インボイス制度への対応も単価に影響します。免税事業者のままであれば、元請け側が消費税の仕入税額控除を受けられないため、その分を単価から差し引かれる可能性があります。

逆にいえば、課税事業者となり適格請求書を発行できることは、単価交渉の強い武器になります。「消費税分を正当に請求できる」というだけでなく、元請けの税負担を増やさないという信頼につながるからです。制度開始に伴い、単価の見直しが行われていない場合は、今すぐ再交渉のテーブルに着くべきです。

偽装請負のリスク回避

常用契約が長期間にわたる場合、実態が「労働者派遣」とみなされるリスクがあります。派遣業の許可を持たずに、元請けの指示の下で自社の職人を働かせ続けることは、法律で禁止されています。

これを避けるためには、形式上は請負契約としつつ、単価計算の根拠として常用単価を用いるという形を取るのが一般的です。ただし、現場での指揮命令系統は自社に置くように注意しなければなりません。

働き方改革が常用単価に与える影響

建設業界では「建設業の2024年問題」が大きな転換点となりました。これまで当たり前だった長時間労働が制限され、週休2日の確保が強く求められています。これは常用単価の設定に直結する大問題です。

稼働日数の減少と固定費

週休2日が定着すると、月間の稼働日数はこれまでの25日から21日程度に減少します。しかし、会社の固定費(車両代、保険料、事務所費)は減りません。1日あたりの常用単価を据え置いたまま稼働日数だけが減れば、会社の月間利益は大幅に減少します。

つまり、「休みを増やすなら、1日あたりの単価を上げなければならない」のです。これはわがままではなく、持続可能な業界を作るための必然的な流れです。元請けに対しても、工期の長期化と単価の上昇はセットで説明する必要があります。

労務費の後払い構造からの脱却

常用単価の交渉が難しい一因に、建設業界特有の「重層下請構造」があります。末端まで適切な労務費を届けるためには、発注者(施主)の理解も欠かせません。最近では、国が「標準的な労務費」を告示し、それを著しく下回る契約を禁止する動きもあります。

このような背景を追い風にして、自社の単価を「業界標準」に合わせていく努力が必要です。単に「人がいないから高くする」という需給関係だけでなく、「法を遵守し、職人の未来を守るために適正価格にする」という大義名分を持ってください。

具体的な常用単価の見直しステップ

では、今日から何をすべきか。具体的なステップを整理します。

ステップ1:過去1年間の収支分析

直近の現場ごとに、常用で入った際の「人工数」と「かかった経費」を算出します。ガソリン代、材料代、保険料を引いた後、1人工あたりいくら利益が残っていたかを正確に把握してください。

ステップ2:損益分岐単価の設定

会社を維持するために「最低限必要な単価」を算出します。これ以下で受ければ受けるほど、内部留保が削られていくというラインを明確にします。

ステップ3:見積書のフォーマット刷新

「常用 1.0 25,000円」とだけ書くのをやめます。

「直接労務費 20,000円」「諸経費・法定福利費 5,000円」のように、中身を分けるだけで、元請けの納得感は変わります。

ステップ4:主要取引先への事前相談

いきなり見積書を送りつけるのではなく、「来期から社会保険の負担増に伴い、単価の見直しをお願いしたいと考えています」と、早めにジャブを打ちます。

常用単価を「誇り」に変えるために

常用単価は、あなたの技術と時間の価値そのものです。それを安く見積もることは、自分自身や仲間の職人の価値を低く見積もることと同じです。

適正な単価で仕事を請けることができれば、新しい道具を買うことや若い職人に良い給料を払うことができます。そして何より、現場で余裕を持って安全に作業することが可能です。余裕のない単価設定は、焦りを生み、事故の原因となります。

日本のインフラを支えているのは、現場で働く一人ひとりの職人です。その職人が適正な対価を得られない業界に未来はありません。まずはあなたが、自分の単価に責任と誇りを持ち、根拠のある価格提示を行うことから始めてください。

まとめ

本記事では、常用単価の相場、計算方法、そして交渉術について、多角的な視点から詳細に解説しました。最後に、特に重要なポイントを再確認します。

  • 常用単価の本質を理解する
    常用単価は単なる日給ではなく、会社の維持費、社会保険料、将来への投資、そして利益を含んだ「経営数字」です。
  • 「1.3倍の法則」を意識する
    職人に支払いたい日当の1.3倍〜1.5倍程度が、会社としての適正な常用単価の目安となります。これ以下での受注は、中長期的に見て経営を圧迫します。
  • 徹底的なコストの可視化
    燃料費、材料費、社会保険料の変動を常に把握し、データに基づいて元請けと交渉する姿勢が、信頼される経営者への道です。
  • 2024年問題への適応
    稼働日数が減る中で利益を維持するためには、単価アップは避けられません。業界全体の流れを味方につけ、正当な権利として交渉を進めましょう。
  • 契約内容の明確化
    作業範囲や中止時の補償を曖昧にせず、見積書や契約書で定義することで、予期せぬ損失を防ぎます。

常用単価は一度決めると変更しにくい性質がありますが、社会情勢が大きく変わっている今こそ、見直しの絶好の機会です。あなたの技術を守り、従業員や家族の生活を豊かにするために、今日から適正単価への一歩を踏み出しましょう。

この記事の投稿者:

武上

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