請求書のデザインは法的に定められているわけではないため、手書き・Excel・請求書作成ソフトといった好きな方法で作成できます。本記事では、手書きで請求書を作成する際の書き方や注意点などについて紹介します。
目次
請求書は手書きでも大丈夫
請求書にはさまざまな様式があり、好みのデザインで作成して構いません。パソコンでExcelなどを使用して作成することはもちろん、手書きで作成することも可能です。手書き用の請求書用紙は文房具店などで購入できます。
手書きの請求書のメリット・デメリット
請求書をこれから手書きで作成する方に向けて、手書きのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
手書きの請求書であれば、請求書用紙が手元にあれば思い立ったときにいつでも作成できます。パソコンや通信回線が用意できなかったり、それらの調子が悪かったりしても、請求書を作成できるメリットがあります。
また、手書きすることによって作成する人の筆跡が残り、比較的改ざんされにくい点もメリットと言えるでしょう。
デメリット
パソコンで請求書を作成する際は、過去に作成した分をコピーしたり、テンプレートを利用したりすることが可能です。手書きでは毎回すべての情報を初めから記載することになるため、パソコンで請求書を作成するよりも非効率であることが多いでしょう。金額は自分で計算する必要があり、計算ミスなどが起こりやすい点もデメリットと言えます。
また、経理書類を電子化して紙を削減していく会社が多い中で手書きの請求書を使用し続けると、保管する方法や場所を考える負担を相手に与える可能性があります。
手書きの請求書の必須項目と書き方のポイント
請求書を手書きする際は、パソコンで作成する際と同様に、法律で定められた規定の事項を記載する必要があります。
①書類作成者の氏名または名称および登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した税込対価(又は税抜対価)の額及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
請求書はお金に関わる大事な書類であり、受け取った取引先は請求書をもとに経理業務を行うことになります。必要な項目を正しく記入することで、相手との信頼関係を維持することを目指しましょう。
次項から6つの項目の内容について詳しく紹介します。なお、記載するべき内容はインボイス制度における適格請求書発行事業者であるかどうかなどによっても異なる点に注意が必要です。
請求書の書き方・作成例をわかりやすく解説!注意点や作成ツールもご紹介-INVOY
書類作成者の氏名または名称および登録番号
請求書の発行側の情報を記載します。会社の場合は会社名、個人事業主の場合は屋号や個人名を記載しましょう。登録番号はインボイス制度に登録している場合のみで構いません。
何らかの理由で連絡を取る必要が生じた際にわかりやすいよう、住所・電話番号・メールアドレスといった連絡先も記載することが一般的です。請求書に印鑑や角印を押すこともありますが、見栄えや改ざんの防止といった面から押印することがほとんどで、必須ではありません。
手書きの書類を何回も発行する場合には、会社名や住所などが含まれたスタンプがあると便利です。
取引年月日
取引年月日として請求書の発行日を記載します。しかし、取引先のルールや取引方法によっては発行日以外の日付を記載することもあります。経理業務を行うスケジュールの関係で締め日を設定しており、その締め日にあわせて請求書を発行してほしいという会社もあるためです。その会社と初めて取引を行う場合、記入する前に確認しておくことが望ましいでしょう。
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
商品やサービスの名前、単価、数量を記載します。軽減税率の対象である商品の場合はその旨も記載しましょう。
税率ごとに区分して合計した税込対価(又は税抜対価)の額及び適用税率
請求書には最終的に請求することとなる合計金額を記載しますが、そのほかにも税率ごとに分けた金額も記載する必要があります。消費税8%の商品と、10%の商品の合計を別々に計算して記入しましょう。この時の金額は税込・税抜どちらでも構いません。
税率ごとに区分した消費税額等
8%の商品に対する消費税額と、10%の商品に対する消費税額を別々に記載します。10%の商品のみの場合は税率とその消費税額を記載すればよく、あえて「8%:0円」などと書く必要はありません。
書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
宛名として請求先となる会社名や個人名などを記入します。わかりやすいように部署名や担当者名などを記載しても構いません。宛名の最後が会社名や部署名など団体の場合には「御中」、個人名の場合には「様」をつけます。
手書きの請求書を書く時の注意点
手書きの請求書を作成する際に覚えておきたい注意点を紹介します。
・必要に応じて項目を追加する
・金額の書き方を把握する
・時間に余裕を持って作成する
・計算ミスに気を付ける
・取引先がデータの請求書を望むことがある
・源泉徴収を行う取引を把握する
・書き間違えた時は再発行する
必要に応じて項目を追加する
本記事で紹介した内容の他にも、必要があればその他の項目を追記します。よく利用されている項目に、以下をはじめとするものがあります。
・請求書の通し番号
・振込期限
・振込手数料の扱い
・源泉所得税
請求書の通し番号は必須ではありませんが、記入することで取引の内容を管理しやすくなります。特に、同じ取引先に何回も請求書を送る場合は、通し番号があると「どの請求書について言及しているのかわからない」と混乱することを防げるでしょう。
確実に代金を振り込んでもらうために振込期限を記載することもあります。その際は、どちらが振込手数料を負担するのか明記することが一般的です。
源泉所得税の対象となる取引であれば、源泉所得税の金額を計算した上で記載します。
金額の書き方を把握する
金額には、数字の前に「¥」を、数字の後に「-」を記載します(¥11,000-など)。これは金額が書き足されていないことや、これ以降数字がないことを示すための役割があり、手書きで作成する書類では特に使われることの多い方法です。
また、手書きの字は人によって癖があり、印刷された字よりも読みにくいことがあります。特に金額に関してはミスを防ぐために読みやすく丁寧な字で記入することを心がけましょう。
時間に余裕を持って作成する
手書きで請求書を作成する場合、消費税率を自分で計算したり、必要な情報を一通り書き込んだりするため、時間がかかるケースがあります。急いで記入して後から誤りに気づいたといったことがないよう、時間に余裕を持って作成することをおすすめします。
計算ミスに気を付ける
請求書に誤りがあっても、請求書を受け取った側が修正したり追記したりすることは基本的にできません。取引先から再発行を依頼されたりしないよう、気をつけながら作成する必要があります。特に消費税や源泉所得税の計算は間違いやすいポイントなので、注意して計算しましょう。
取引先がデータの請求書を望むことがある
現在はオンラインで業務を行う流れが進み、紙の書類ではなく電子化された書類で業務を行いたいと考える会社も増えています。
また、大量の書類を取り扱う会社では紙の書類の保管方法が問題となることもあります。書類を保管するためにファイルや段ボールをいくつも用意したり、外部の倉庫を借りたりと、保管に多くのコストがかかっている会社も少なくありません。
今後はできるだけ電子的にやり取りを行うことで、自社・取引先ともにコストの削減に期待できます。もしもPDFなどの形式で請求書を受け取りたいといった取引先の希望があれば、そちらに従うことが望ましいでしょう。
源泉徴収を行う取引を把握する
個人に対して以下をはじめとする報酬を支払う場合は、源泉徴収の対象となります。
・原稿料、講演料など
・弁護士、公認会計士、司法書士などに支払う報酬・料金
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
・プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手などに支払う報酬・料金
・モデルや外交員などに支払う報酬・料金
源泉徴収は、給与や報酬を支払う側があらかじめ所得税を差し引いた状態で支払う制度です。差し引かれた所得税は定められた期限までに納付されます。請求書を作成する側が直接納付する必要はありませんが、あらかじめ所得税の金額を記載しておくと親切です。
所得税を源泉徴収するかどうかは、相手の属性や取引の種類などによっても異なります。国税庁のホームページなど確認した上で、必要に応じて対応しましょう。
参照:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
書き間違えた時は再発行する
一般的な書類を書き間違えた際は、二重線で消した上で訂正印を押すことで対応します。しかし、請求書の内容にミスがあった場合には、請求書自体を再発行して対応することになります。
例えば、適格請求書に誤った金額を記載してしまった際は「請求書(修正)」などと記載した上で正しい内容の書類を発行します。
もしくは、修正事項を明示するための書類を発行しても構いません。この場合は「◯年◯月◯日に発行した請求書について、下記の通り誤りがありましたので、修正いたします」などと記入し、正誤を記載した書類を発行しましょう。
請求書を手書きで書く方法
請求書を手書きで発行する方法を2つ紹介します。
市販されている請求書を使用する
紙の請求書は文房具店や100円ショップ、オフィス向けの通販サイトなどで購入できます。現在はインボイス制度に対応できるよう登録番号や税率・消費税額の欄が設けられたものや、シンプルなものなどさまざまな様式のものが販売されているので、自身が記入しやすいものを選んで購入しましょう。
パソコンで作成した請求書を印刷して書き込む
市販の請求書を購入する方法の他にも、Excelで自作した様式を印刷し、そこに手書きで書き込む方法もあります。デザインを決められるため、自分が使いやすいような請求書を作成できるでしょう。
適格請求書を発行する場合にはインボイス制度で定められている事項を記入する必要があるので、必要な情報を記入できる欄を設けましょう。社名や屋号、振込先など、取引の内容にかかわらず毎回同じ情報に関しては、あらかじめ印字しておくと便利です。
手書き以外で請求書を作成する方法
手書き以外の方法で請求書を作成する方法を2つ紹介します。
請求書の作成ソフトを利用する
民間の会社が提供する請求書作成ソフトを利用する方法です。金額や商品名といった情報を入力することで、自動的に請求書を作成します。
請求書の作成ソフトは消費税や所得税を自動で計算してくれるため、計算ミスなどが起きにくいメリットがあります。また、自社の情報や取引することの多い会社の情報を登録しておくことで、請求書の情報を毎回入力する手間が省けます。
作成ソフトによっては見積書や領収書といった他の書類も作成できるため、何度も同じような内容の情報を入力することなく、業務の効率化につながるでしょう。
Excelを利用する
Excelを使って請求書を作成する方法です。請求書を好みの様式で作成することはもちろん、インターネットからダウンロードしたテンプレートを利用してもいいでしょう。作成する請求書に自社のロゴを入れておくことで、より本格的な書類を作成することも可能です。
Excelで請求書を作成する際は、改ざんされにくいようにPDFにして取引先に送付します。誤ってExcelのまま送付しないように注意しましょう。
経理業務の効率化なら「INVOY」
「INVOY」は、請求書をはじめとする書類をクラウドで発行・保管するためのプラットフォームです。以下をはじめとする機能によって経理業務の効率化をサポートします。
・請求書、見積書、発注書、領収書の発行
・受領した請求書のデータ化、カード払い
・受領した書類のクラウド管理
・会計ソフトとの連携
インボイス制度に対応した適格請求書や、従来の区分記載請求書も発行できます。消費税や所得税の計算は設定に従って自動的に行うため、計算ミスなどの手戻りも防ぐ際にも役立ちます。
まとめ
請求書のデザインは自由に定めることができるため、手書き・Excel・請求書作成ソフトといった好きな方法で作成できます。ただし、取引先が仕入税額控除を行うためには、インボイス制度などの法律に従って規定の事項を記載する必要があります。
また、必要に応じて源泉徴収の金額を記載する、作成した請求書にミスがあった場合には再発行するといった決まりがあります。これらのポイントを把握し、スムーズな取引を目指しましょう。
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