会計の基礎知識

複式簿記とは?単式簿記との違いや記帳方法などの基礎知識を解説!【初心者向け】

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複式簿記とは、事業におけるお金の動きを記録するための方法の1つです。一般的に簿記と言うと、この複式簿記を指します。本記事では、複式簿記と単式簿記の違い、具体的な記帳方法などについてわかりやすく解説します。

そもそも簿記とは

簿記とは「帳簿記入」の略であり、お金の取引を帳簿に記録するためのルール・仕組みを指します。

事業を運営する上では、業務に必要な物品を購入したり、お客様が自社の商品を購入してくれたりなど、さまざまな取引が日々行われます。経営状況を把握するためには、この1つ1つの取引を、簿記のルールに基づいて記録していくことが欠かせません。具体的には、仕訳帳や総勘定元帳をはじめとする各帳簿に取引を記録します。

1年間で発生した取引を記録した帳簿をもとに、貸借対照表や損益計算書といった決算書が作成されます。決算書は取引先や金融機関、投資家などに閲覧されるなど、企業の経営状況を外部に示す大切な書類として使われます。

簿記は経理業務の担当者はもちろん、多くのビジネスパーソンにとって役立つ要素と言えるでしょう。

関連リンク:帳簿とは?種類や付け方・書き方を徹底解説!

単式簿記とは?

単式簿記とは、1つの取引で1つの勘定科目を使う方法です。交通費を支払った場合には、以下のように記録します。

例)取引先の企業への移動のため、タクシー代1,500円を現金で支払った

日付勘定科目金額摘要
○月○日旅費交通費1,500○○タクシー

勘定科目とは、取引を分類するための項目です。「旅費交通費」「水道光熱費」「売上高」といったさまざまな種類があり、取引に応じた勘定科目を選択する必要があります。

単式簿記は簡単に記録が行えるため、事業規模の小さい個人事業主に使われる傾向があります。また、家計簿やお小遣い帳といった個人的な記録も単式簿記であると言えます。

複式簿記とは?

複式簿記とは、1つの取引で2つの勘定科目を使う方法です。先ほどと同じ取引の例を複式簿記で表すと、以下のようになります。

例)取引先の企業への移動のため、タクシー代1,500円を現金で支払った

日付借方貸方摘要
○月○日旅費交通費 1,500現金 1,500○○タクシー

このケースでは、タクシーの料金を支払ったことで現金1,500円が減り、代わりに費用として旅費交通費1,500円が計上されたことを示しています。

複式簿記は会計を記録するための正式な方法であり、一般的な企業や個人事業主の多くはこの方法を採用しています。なお、表に出てくる「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」とは、左右の位置を判別するために使われる簿記の用語です。

複式簿記が必要な理由

複式簿記を覚えたほうがいい理由として、2つのポイントを紹介します。

正確に会計記録を行うため

企業の会計についてまとめた企業会計原則では、会計業務を行う上で守るべき基準がまとめられています。企業会計原則の「正規の簿記の原則」の項目では、以下のように述べられています。

二 企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

引用:特定非営利活動促進法における会計原則の規定と企業会計原則との関係について|内閣府NPOホームページ

正規の簿記の原則を守るためには、以下の要件を満たしていることが求められます。

・網羅性:経済活動のすべてが記録されていること
・立証性:検証可能な証拠資料に基づいて記録されていること
・秩序性:継続的・組織的に記録されていること

複式簿記で記録するように指定されているわけではありませんが、複式簿記以外の方法で上記の要件を満たす方法はないと考えられています。したがって、複式簿記で仕訳や総勘定元帳といった帳簿を作成し、決算書を作成することが望ましいと解釈できます。

確定申告の控除を受けられるため

個人事業主が確定申告を行う上では、青色申告と白色申告の2つの方法があります。そのうち青色申告は、青色申告特別控除と呼ばれる仕組みによって高い節税効果が得られる特徴があります。

青色申告特別控除とは、課税対象となる金額から控除額を差し引くことで、支払うべき税金を減らせる制度です。制度を利用する際は、各々の状況によって以下の3つの控除額のいずれかが適用されます。

・65万円
・55万円
・10万円

このうち、控除額の多い65万円または55万円の控除を受けるためには、複式簿記によって帳簿を作成することが条件となっています。できるだけ節税を行いたいという方は、複式簿記を採用することが望ましいでしょう。

青色申告による確定申告は、家族に対する給与を経費にできる点や、赤字を繰り越せる点などにメリットがあります。本格的な個人事業を運営する際は、青色申告を選択することを検討しましょう。

参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁
   No.2070 青色申告制度|国税庁

複式簿記と貸借対照表の関係性

決算書の1つである貸借対照表とは、企業が持つ資産の状況を表す書類です。貸借対照表は、資産・負債・純資産(資本)の3つの項目に分けて記載します。

・資産:会社が保有する財産
・負債:返済義務のある借金
・純資産(資本):資産から負債を差し引いたもの

複式簿記は、借方・貸方に分けて取引の記録を行うものです。貸借対照表の3つの要素を借方と貸方に分けて記載すると、以下のようになります。

借方貸方
資産     負債
純資産(資本)

例えば、売上が入金されるなどの理由によって資産が増えた時は、左の借方に取引を記録します。反対に、資産が減った時は本来のポジションとは逆の位置である貸方に取引を記録します。

複式簿記によって取引を記録したのち、事業年度の終わりに貸借対照表を作成します。取引を記録する位置によってその意味が異なるため、適切な位置に記入することが大切です。

複式簿記と損益計算書の関係性

貸借対照表と同じく、損益計算表も企業が作成すべき決算書の1つです。損益計算書は、収益・費用を記載することで、企業がどの程度のお金を稼いだのかを表します。

・収益:会社の収入
・費用:収入を得るために使った支出

この2つの要素を借方・貸方の位置に表すと、以下のようになります。

借方貸方
費用収益

例えば、お客様に商品を購入してもらい収益が発生した時は、右の貸方に取引を記録します。商品の返品があり収益を減らしたい時には、本来のポジションとは逆である借方に記載します。

事業年度が終わると、それまでに記録した内容をもとに損益計算書を作成します。貸借対照表と同じく、取引によって借方・貸方のどちらを選択するべきなのか考えながら取引を記録することが大切です。

関連リンク:損益計算書(PL)とは?見方と利益5つのチェックポイントを解説

簿記の要素

前項で解説した資産・負債・純資産・収益・費用の5つの要素について、該当する勘定科目とともに詳しく解説します。

①資産

現金や預金、建物など、企業の財産となるものを資産と呼びます。売掛金など、将来お金をもらえる権利もここに含まれます。資産の項目に含まれる具体的な勘定科目は、以下の通りです。

・現金:手元にあるお金
・預金:銀行に預けているお金
・売掛金:将来的にお金を受け取れる権利
・建物:保有するオフィスや店舗、倉庫など
・車両運搬具:保有する車など

資産が増える時は左の借方に、減る時は右の貸方に記載します。

②負債

資産とは逆に、企業の財産にとってマイナスとなるものを負債と呼びます。融資による借金をはじめ、将来お金を支払わなくてはいけない義務もここに含まれます。

・借入金:金融機関や他社などから借りたお金
・買掛金:将来的にお金を支払う義務

負債が増える時は貸方に、減る時は借方に記載します。

③純資産

資産から負債を差し引いた額を純資産と呼びます。返済したり支払ったりする必要がない、純粋な財産が含まれます。

・資本金:出資したお金
・利益剰余金:会社の利益を積み立てたお金
・資本剰余金:出資金のうち資本金に含めなかったお金

純資産が増える時は貸方に、減る時は借方に記載します。

④収益

商品やサービスを提供したことによる売上は、収益に含まれます。また、その他の理由によって受け取ったお金も、このグループに計上されます。

・売上:商品やサービスの提供によって生まれた収入
・受取利息:銀行預金に対して発生する利息など
・雑収入:企業の本業以外から発生する雑多な収入

収益が増える時は貸方に、減る時は借方に記載します。

⑤費用

費用とは、収益を得るために使ったお金を指します。

・仕入高:仕入にかかった費用
・消耗品費:文房具などの消耗品にかかった費用
・給与手当:従業員に支払う給与や手当
・水道光熱費:水道代、電気代、ガス代

費用が増えた時には借方に、減った時には貸方に記載します。

複式簿記の記帳の具体例

複式簿記で取引を記録する際の方法について、よくあるパターンを例に見ていきましょう。

例)10万円の商品が売れ、売上として現金を受け取った

借方貸方
現金 100,000売上高 100,000

借方は、現金という資産が10万円増えたことを示しています。貸方は、売上高という収益が10万円増えたことを表します。

例)普通預金口座からインターネット回線の契約料5,000円が引き落とされた

借方貸方
通信費 5,000普通預金 5,000

借方は、通信費という費用が5,000円計上されたことを示しています。貸方は、預金という資産が5,000円減ったことを表します。

資産に該当する勘定科目を記載するのは借方ですが、このケースでは資産が減少しているため、本来のポジションとは逆である貸方に記載します。

単式簿記のメリット・デメリット

1つの取引につき1つの勘定科目を使用する単式簿記は、経理業務に関する知識がなくても、家計簿やお小遣い帳のような感覚で対応できるメリットがあります。

個人事業主が白色申告で確定申告をする場合や、青色申告でも控除額が10万円で構わないという場合には、この単式簿記を選択します。経理業務に慣れていない方でも、気楽に取り組むことができるでしょう。

その一方で、単式簿記では1つの取引から読み取れる情報が少なくなるデメリットがあります。例えば、単式簿記で「消耗品費 5,000円」と記録した場合、現金で支払ったのか、銀行引き落としやクレジットカードといった方法で支払ったのか、仕訳からは読み取ることができません。

そのため、単式簿記では収益と費用について記録することはできても、現金や預金といった財産の状況を記録することはできません。貸借対照表が作成できず、事業におけるお金の流れが掴みにくい点に注意が必要です。

参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

複式簿記のメリット・デメリット

複式簿記は正規の簿記と考えられているため、ほとんどの事業者がこの方法を採用しています。もちろん、決算書の1つである貸借対照表も問題なく作成できます。本格的な事業を運営したいと考える場合は、複式簿記による記録が必要と言えるでしょう。

その一方で、複式簿記になじみがない人からすると、仕組みが理解しにくいというデメリットがあります。日々発生する会計ソフトへの入力や、決算・確定申告前の作業について、慣れるまで苦労したというケースも珍しくありません。

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まとめ

複式簿記は2つの勘定科目を使って取引を記録する方法です。借方・貸方に分けて記載するため、はじめは複雑に感じられますが、単式簿記による記録よりも多くの情報を読み取ることが可能です。

複式簿記を理解することで、日頃の経理業務はもちろん、他社の経営状況の分析などに役立てられます。個人事業主の場合は複式簿記による記録を行うことで節税することも可能です。この機会に、複式簿記について学んでみてはいかがでしょうか。

この記事の投稿者:

reg@olta.co.jp

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