請求書にはんこを押すことが法的に義務付けられているわけではありませんが、業務上のさまざまな理由から押印する企業は多く存在しています。今回は、請求書にはんこを押す場合の方法や押し方などについて解説します。請求書の電子化についてもあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
請求書とは?
請求書とは「商品やサービスを提供した際、その対価となる代金を請求するために発行する書類」を指します。請求に関しては必ずしも書類を発行する必要はなく、双方の合意がある場合は口頭で請求を行うことも可能です。 しかし、取引内容を正確に把握したり、税務調査の際に取引を証明したりするために、請求書を発行しておいた方が何かと安心です。
請求書には、税込での請求金額をはじめ、その内訳や振込先などについて記載することが一般的です。
請求書の書き方については以下の記事で詳しく解説しています。
関連リンク:請求書の書き方・作成例をわかりやすく解説!注意点や作成ツールもご紹介
請求書にはんこは必要?なくても問題ない?
請求書への押印は義務ではないため、はんこがないからといって法的に問題視されることはありません。社会的な風潮としても、新型コロナウイルス対策におけるテレワークの普及などに伴い、押印文化は見直されつつあります。
しかし、はんこが与える信頼性や暗黙のルールといった観点から、押印が求められる場面もいまだに存在します。
請求書に印鑑があった方が良い理由
取引をスムーズにするため
請求書にはんこを押して印鑑を残すことで書類の信頼度が高まり、相手に丁寧な印象を与えます。一般的なイメージから、請求書などの重要な書類にははんこが押されているものだと考える人もいます。
また、中には印鑑のない請求書は受理しないというルールを設ける企業等も存在します。こうした理由から、押印がないよりはあった方が取引がスムーズに進む可能性が高いため、 押印した方がよいと考えるケースもあります。
改ざんを防止するため
書類に角印などの印鑑が付されていると、書類を偽造するハードルが高くなります。また、印鑑が付された書類を改ざんすることは、印鑑なしの書類に比べ、改ざんした際の罪が重くなるケースがあります。これらの理由から、請求書に押印することは書類の悪用を防ぐことにつながります。
請求書に押す印鑑の種類
①実印
実印とは、法務局で印鑑登録を行った印鑑であり、丸印、代表者印とも呼ばれます。重要な取引で使う契約書などの文書に対してよく使われます。
実印を作成する際は、偽造しにくいよう、複雑で細かなデザインにします。また、会社設立時の験担ぎとして、その会社ならではのデザインを作成する場合も多くあります。
実印を請求書に使っても構いませんが、特に重要な印鑑であることから、悪用や消耗を防ぐためにも使用を控えることが一般的です。
②銀行印
銀行印とは、銀行で口座を開設する際に届け出をした印鑑です。実印と銀行印を兼ねることもありますが、紛失したり摩耗したりするリスクを防ぐために、別々の印鑑を用意する会社もたくさんあります。
印鑑は「重要な印鑑ほど大きい」という考え方があることから、実印よりも一回り小さめに作ることが一般的です。
銀行印を請求書に使うことも可能ですが、実印と同様、悪用を防ぐためにできるだけ使用を控えた方がいいでしょう。
③角印
角印とは、印鑑登録をしない四角い印鑑であり、社印とも呼ばれます。会社設立時に、実印や銀行印と一緒に作成することが一般的ですが、各印は役所や金融機関などに届出をする必要がありません。
角印はビジネスシーンで発行する書類に頻繁に使われるものであり、請求書に対してもよく使われます。
請求書にはどんなはんこを押すのが適切?
法人
法人が使用するはんこには丸印(実印・代表者印)や銀行印、角印などがありますが、請求書には角印を使うことが一般的です。
個人事業主・フリーランス
個人事業主の場合、普段使っている自分の苗字の認印を使用すればいいでしょう。または事業のブランディングなどの観点から屋号のはんこを作成し、書類に使うケースもあります。
個人事業主・フリーランスは認印を使用してもいい?
個人事業主やフリーランスは、印鑑登録を行った実印を請求書に使用する必要はありません。日常生活で使う認印を使用すれば構わないでしょう。
請求書のはんこの押し方
企業名や住所の右側に押す
はんこの位置に決まりはありませんが、多くの請求書は企業名の右側にはんこを押します。請求書に押印欄がある場合にはそちらに押しましょう。
かすれないように押す
印影がかすれたり欠けたりしないよう、丁寧に押印しましょう。特に角印の場合、はんこの角までしっかり書類に押し当てることが大切です。
訂正印は使わない
請求書の内容に誤りがあった場合、訂正印は使わず再発行することが望ましいと考えられています。仕方なく訂正印を使うのであれば、一般的なルール通り、二重線を引いた後に押印します。
電子印鑑は有効?
パソコンを使って書類を作成した際に、電子的に押印できる印鑑のデータを「電子印鑑」と言います。データに直接押印できるため、一度紙に印刷して押印し、それをスキャンしてPDFにするといった手間がかかりません。
請求書に電子印鑑を使用することも可能です。しかし、電子印鑑は簡単に複製できることから、押印したのが本人であると証明しにくいデメリットもあります。心配な場合は、自社や取引先に電子印鑑に関するルールがあるかどうか、利用する前に一度確認することをおすすめします。
請求書に使用する電子印鑑の作り方
請求書に使える電子印鑑の作り方を3つ紹介します。
印鑑を紙に押して作成する
白い紙に押印して、スマートフォンのカメラなどで撮影し、印影を取り込む方法です。撮影する際は印影が綺麗に映るよう、汚れのない紙を用意して、影などが入らないようにして撮影しましょう。
取り込んだ画像はExcelに挿入し、白い紙の部分を削除します。画像を透過させたら、使いやすい大きさに画像のサイズを変更して保存しましょう。
Excelで作成する
新規のExcelファイルを作り「挿入」「図」の順番で選択します。円や四角など、作りたい印鑑の形の図形を選択して「枠線あり」「塗りつぶしなし」をクリックしましょう。
図形の真ん中に会社名や担当者名を入力します。図形とのバランスを見ながら、文字の大きさやフォントなどを調整して保存しましょう。
無料のツールを使って作成する
インターネット上で自由に使えるソフトなどを使って電子変換を作成する方法です。
有料で電子印鑑を作成できるツールもありますが、無料で使えるツールもあります。有料のものに比べるとセキュリティや機能の面で劣ることもありますが、一般的に使用するのであれば問題ないこともあります。使い勝手の良いものがないか探してみましょう。
請求書を電子化するメリット
コスト削減につながる
請求書をデータで発行するメリットとして、用紙やインク、郵送などにかかるコストを削減できる点が挙げられます。また、収納に必要なファイルやダンボール・倉庫代なども不要です。
効率化できる
請求書をPDFなどで電子的に発行すれば、作成や修正・管理などにかかる時間を節約できる可能性があります。請求書の作成や承認などのために出社する必要がなく、テレワークとも相性がいいと言えるでしょう。
管理がしやすくなる
電子化された請求書であれば、パソコンやクラウド上での整理が容易になります。紙による保管に煩わされることなく、過去のデータを見返す際もスピーディーです。
電子化した請求書にはんこは必要?
テレワークが普及したことに伴い、紙を使った業務が見直されつつあります。新型コロナウイルスの感染拡大時は、テレワークが普及したのはいいものの、郵便物のチェックや作成、押印のためにオフィスに出勤しなくてはならないという会社もありました。
その後は、書類に押印は不要という認識を改めたり、書類を電子的に発行したりすることを認める会社も増えています。請求書を電子的に発行することも、ごく普通のこととなりました。紙の請求書と同様に、電子化した請求書も、必ずしも押印が必要なわけではありません。
なお、請求書に角印が押されたとしても、請求書が偽造されていないということを証明することはできません。請求書を電子的に作成する時は、後から改ざんされることを防ぐために、修正が比較的難しいPDFで発行することが望ましいでしょう。
電子帳簿保存法とは?請求書との関係は?
電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類をパソコンなどで作成する場合の保存方法について定めた法律です。ここで言う帳簿や書類とは、総勘定元帳や現金出納帳などの帳簿、請求書や領収書といった証憑書類を指します。この法律により、帳簿や書類を一定の条件のもと、電子データとして作成・保存することが認められます。
電子帳簿保存法について詳しく知りたいという方は、以下の記事もご覧ください。
関連リンク:電子帳簿保存法とは?改正後の対象書類や適用要件を解説!
経理業務を簡単にするならINVOY
これまで解説してきた通り、請求書にはんこは必ずしも必要というわけではありません。また、請求書などの書類を電子的に発行したり、押印を省略したりして、より効率的に業務を進めるという会社も増えています。
経理業務を効率化する上で使えるのが、弊社のサービスである「INVOY」です。INVOYは、画面の指示に従って入力することで、請求書などの書類をクラウド上で簡単に発行できます。また、印影をアップロードして使用することもできますので、会社のルールなどで押印が必要という方も安心です。
まとめ
請求書にはんこを押すことは必須ではありませんが、書類の信頼度といった観点からはんこを押すケースもあります。また、近年は電子印鑑や請求書発行などのサービスを利用し、電子的に請求書を発行する企業も増えてきました。今回ご紹介した方法や、自社や取引先のルールなどに応じて、請求書を柔軟に発行しましょう。
- 監修:丸本哲也
- 経理・財務企画室 室長
- ナイル株式会社のコーポレート本部にて、経理/財務/経営企画/営業管理等を中心に従事。単体決算、連結決算、各種開示資料や監査法人/証券会社対応など幅広く担当。2023年9月よりOLTAにジョイン。
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