
2割特例が終了する2026年以降も、賢い選択(簡易課税など)をすれば、消費税の負担を最小限におさえ、事業を安定させることが可能になります。
この記事では、適格請求書(インボイス)制度の基本から、制度開始後の事業者の実態、そして最も重要な「2割特例」終了後の具体的な対策までを網羅的に解説します。
税務の知識に自信がなくても大丈夫です。「簡易課税」と「原則課税」のどちらが有利になるか、あなたの業種にあわせた判断基準をわかりやすく示します。
目次
適格請求書(インボイス)制度の基本 仕入税額控除の仕組みを再確認する
適格請求書、いわゆるインボイス制度は、多くの事業者にとって対応が必須の仕組みとなりました。まずは制度の根本的な目的と、消費税納税の鍵となる「仕入税額控除」について、基本を再確認します。
インボイス制度はなぜ始まったのか
インボイス制度が導入された最大の理由は、消費税の「複数税率」への対応です。2019年10月から、日本国内の消費税率は標準税率10%と軽減税率8%の2種類が混在しています。
スーパーマーケットでの買い物(食料品は8%、酒類は10%)を思い浮かべるとわかりやすいです。事業者間の取引においても、この8%と10%が入り混じることになりました。
これにより、売手と買手の双方で、どの取引にどちらの税率が適用されたのかを正確に把握する必要が生まれました。インボイス制度は、この複雑になった消費税の計算を正しく行い、誤りや不正を防ぐための仕組みとして導入されたのです。
「仕入税額控除」が消費税納税の鍵
インボイス制度を理解するために、最も重要なキーワードが「仕入税額控除(しいれぜいがくこうじょ)」です。
これは、事業者が消費税を納める際に、売上げにかかった消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引くことができる仕組みです。
例えば、小売事業者が商品を7,000円(消費税700円)で消費者に販売したとします。この事業者がその商品を5,000円(消費税500円)で仕入れていた場合、納める消費税額は「売上げの消費税700円」から「仕入れの消費税500円」を差し引いた、200円となります。
この「500円を差し引く行為」が、仕入税額控除です。もしこの控除がなければ、700円をそのまま納めることになり、税負担が非常に重くなります。
インボイス制度の開始によって、この仕入税額控除という重要な権利を行使するための絶対条件が、「適格請求書の保存」となりました。
適格請求書(インボイス)とは 従来の請求書との違い
適格請求書(インボイス)とは、従来の「区分記載請求書」に、いくつかの厳格な記載要件を加えた書類やデータを指します。
法律で特定の様式(フォーマット)が定められているわけではありません。必要な事項が正しく記載されていれば、手書きの請求書や領収書であっても、適格請求書として認められます。
適格請求書に必要な6つの記載事項
従来の請求書と比べて、特に以下の項目が追加、または厳格化されました。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
従来の請求書では「消費税額」の合計が一つだけ記載されているケースも多かったですが、インボイスでは「10%対象の消費税額」と「8%対象の消費税額」を、明確に分けて記載する必要があります。
簡易インボイス(適格簡易請求書)が認められるケース
一方で、小売業、飲食店業、タクシー業など、不特定多数の消費者を相手にする事業(レシートの発行が主となる事業)においては、記載を簡易化した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の発行が認められています。
簡易インボイスは、通常の適格請求書と比べて、以下の2点が異なります。
- 「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」(例:「株式会社〇〇 御中」)の記載が不要です。
- 「税率ごとに区分した消費税額等」または「適用税率」の、どちらか一方の記載だけでかまいません。
あなたの立場はどれ?事業者が取るべき実務対応

インボイス制度への対応は、事業者の「売手」としての立場と、「買手」としての立場で、行うべき実務が異なります。ここでは、それぞれの立場で必要な義務と対応を解説します。
【売手】適格請求書発行事業者の義務
商品を販売したり、サービスを提供したりする「売手」側は、インボイスを発行する責任を負います。
(用語解説)適格請求書発行事業者とは
インボイス(適格請求書)を発行できるのは、税務署に申請し、登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけです。
この登録は、消費税の「課税事業者」でなければ行えません。消費税の納税義務が免除されている「免税事業者」は、登録ができず、インボイスも発行できません。
登録申請の方法と登録番号の通知
登録申請は、e-Tax(電子申請)または書面(郵送)で行います。
税務署での審査を経て登録が完了すると、「登録番号」が通知されます。この登録番号は、法人であれば法人番号の頭に「T」をつけたもの、個人事業主には「T」+ 13桁の新しい番号が割り当てられます。
申請から登録番号が通知されるまでの期間の目安は、e-Taxで約1ヶ月半、書面で約2ヶ月とされています。ただし、申請書類に漏れや誤りがあると、内容の確認にさらに時間がかかるため、提出前のチェックが重要です。
請求書発行で間違いやすい点
インボイスとして発行した請求書に不備があると、それを受け取った買手側が仕入税額控除を行えないという重大な問題につながります。
よくある間違いとして、以下の点に注意が必要です。
- 登録番号の記載漏れ
- 消費税額の計算が「税率ごと」に区分されていない(例:8%と10%の消費税額が合算されている)
- 取引内容に「軽減税率の対象品目である旨」(例:「※」印や「8%対象」など)の記載がない
- 取引年月日や振込先情報など、インボイス以前の請求書としての基本的な不備]
発行したインボイス(写し)の保存義務
インボイスを発行した売手側にも、発行した請求書の控え(写し)を保存する義務があります。
この保存は、紙のコピーでも、PDFなどの電子データでもかまいません。保存期間は、法人税法や所得税法に基づき、原則として7年間と定められています。
【買手】仕入税額控除を受けるための義務
商品を購入したり、経費を支払ったりする「買手」側は、仕入税額控除を受けるために、インボイスを正しく受領し、管理する責任を負います。
制度対応の事務的な負担は、売手側よりも、むしろこの買手側(特に経理担当者)に重くのしかかっています。
取引先の登録番号を確認する方法
買手は、受け取った請求書に記載された登録番号が、本当に有効なものかを確認する必要があります。
この確認作業は、国税庁が運営する「適格請求書発行事業者公表サイト」で行うことができます。このサイトの検索窓に登録番号(Tを除く13桁の数字)を入力すると、その番号が有効であれば、事業者の氏名または名称と登録年月日が表示されます。
もし取引先がインボイス登録をしているかわからない場合、直接問い合わせて確認することも重要です。この確認を怠り、無効な請求書に基づいて仕入税額控除を行うと、後の税務調査で控除が否認され、追徴課税のリスクを負うことになります。
受領したインボイスの保存方法
仕入税額控除を受けるためには、原則として、取引先から受領した適格請求書の原本(または電子データ)を保存しなければなりません。
また、この特例の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存も必要です。保存期間は、売手側と同様に原則7年間です。
特に注意が必要なのは、電子データ(PDFなど)で受け取ったインボイス(電子インボイス)の扱いです。これは、後述する「電子帳簿保存法」の要件に従って、電子データのまま保存する必要があります。
免税事業者はどうなった?制度開始後の影響と選択肢
インボイス制度によって最も大きな影響を受けたのが、これまで消費税の納税義務がなかった「免税事業者」です。
(用語解説)免税事業者とは
免税事業者とは、基準期間(個人事業主の場合は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者を指します。
これまでは、消費者や取引先から消費税を受け取っても、それを国に納める義務が免除されていました。フリーランスや小規模な事業者の多くが、この免税事業者でした。
インボイス制度の開始により、これらの事業者は「課税事業者になる」か「免税事業者のままでいる」か、という重大な選択を迫られることになりました。
課税事業者になるメリットとデメリット
インボイスを発行するために、あえて課税事業者になる道を選んだ事業者も多くいます。
- メリット
- 適格請求書(インボイス)を発行できるようになります。
- 取引先(買手)が課税事業者である場合、相手が仕入税額控除を問題なく行えるため、取引の継続や新規受注の機会を維持しやすくなります。
- デメリット
- 年間の売上が1,000万円以下であっても、消費税の納税義務が発生します。
- 消費税の計算、申告、納税といった、これまで不要だった複雑な事務手続きが発生します。
- この事務負担を処理するために、税理士への依頼費用が新たに発生するケースもあります。
免税事業者のままでいる場合の取引への影響
一方で、免税事業者のままでいることを選んだ事業者もいます。
- メリット
- 従来通り、消費税の納税義務はありません。
- 消費税申告などの複雑な事務手続きを回避できます。
- デメリット
- 適格請求書(インボイス)を発行できません。
- その結果、取引先(買手)が仕入税額控除を行えなくなります。
- 買手側にとっては、免税事業者との取引は「仕入税額控除ができない=その分コストが増える」ことを意味するため、取引が打ち切られたり、消費税額分の値下げ交渉をされたりする可能性があります。
独占禁止法と公正取引委員会の見解
制度の導入に際しては、発注側(買手)がその優越的な地位を利用し、免税事業者に対して一方的に取引を打ち切ったり、著しい値下げを要求したりすることが懸念されました。
公正取引委員会は、こうした行為が独占禁止法などに抵触する恐れがあるとの見解を示しています。
ただし、これは主に「既存の取引」に関するものであり、免税事業者が「新規に仕事を探す」場合には、インボイスを発行できないことが理由で受注が難しくなる可能性は否定できません。
2024年以降の実態調査では、免税事業者に留まった事業者も、課税事業者にならざるを得なかった事業者も、それぞれの立場で制度による重い負担を訴えており、「インボイス廃業」を選ぶケースも報告されています。
激変緩和措置(経過措置)の完全ガイド いつまで何が使えるか
インボイス制度の導入による急激な変化を和らげるため、いくつかの時限的な「経過措置(特例)」が設けられています。
これらの特例は非常に重要ですが、いつまで適用されるのかを正確に把握しておく必要があります。
買手向け 免税事業者からの仕入(8割・5割控除)
取引先が免税事業者のままである場合、買手はインボイスを受け取れません。しかし、経過措置として、一定期間は仕入税額の一定割合を控除することが認められています。
- 2023年10月1日 〜 2026年9月30日
- 仕入税額相当額の80%が控除可能です。
- 2026年10月1日 〜 2029年9月30日
- 仕入税額相当額の50%が控除可能です。
2029年10月1日以降は、この控除は一切できなくなり、控除割合は0%となります。この特例を受けるには、免税事業者から受領する請求書の保存と、帳簿への「8割控除」などの旨の記載が必要です。
買手向け 少額特例(1万円未満の取引)
概要
事務負担を軽減するため、特定の事業者に対しては「少額特例」が設けられています。
税込1万円未満の課税仕入れ(経費など)であれば、インボイスの保存がなくても、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
対象者
基準期間(前々年など)の課税売上高が1億円以下の事業者です。
適用期間
2023年10月1日 〜 2029年9月30日までです。
注意点
これは買手側の事務負担を軽減する特例です。売手側は、たとえ1万円未満の取引であっても、インボイスの交付を求められれば発行する義務があります。
売手向け(最重要) 2割特例
概要
免税事業者から課税事業者になった個人事業主やフリーランスの多くが、現在この特例によって守られています。
インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった事業者を対象に、納税額を売上税額の2割に軽減する、非常に強力な負担軽減策です。
計算方法
納税額 = 売上にかかる消費税額 × 20%
例えば、売上にかかる消費税額が年間10万円だった場合、納税額は2万円で済みます。仕入れや経費の計算を一切行う必要がありません。
メリット
- 納税額を大幅に抑えられます。
- 消費税の申告にかかる計算が極めて簡単になります。
最重要 適用期間
この特例は永続しません。適用期間は 2023年10月1日 〜 2026年9月30日 の属する課税期間までです。
個人事業主の場合、2026年分の申告(2027年3月提出)が、この特例を使える最後の機会となります。
インボイス制度の経過措置(特例)比較
| 特例の名称 | 対象者 | 内容(メリット) | 適用期間(いつまで) |
| 2割特例 | 売手(元・免税事業者) | 納税額を売上税額の2割に軽減 | 2026年9月30日 まで |
| 免税事業者からの仕入控除 | 買手(全事業者) | 免税事業者からの仕入も80%控除 | 2026年9月30日 まで |
| (同上) | 買手(全事業者) | 免税事業者からの仕入も50%控除 | 2026年10月1日〜2029年9月30日 |
| 少額特例 | 買手(売上1億円以下) | 1万円未満の仕入はインボイス保存不要 | 2029年9月30日 まで |
2026年・2割特例終了後の対策 「簡易課税」と「原則課税」のどちらを選ぶべきか
この記事で最も重要なセクションです。2割特例という強力な「守り」がなくなる2026年10月1日以降、私たちはどうすべきでしょうか。
2026年10月1日に何が起こるのか
現在「2割特例」の適用を受けている事業者は、2026年10月1日以降、自動的に消費税の計算方法が「原則課税」に移行します。
「原則課税」とは、この記事の冒頭で説明した、仕入税額控除の基本ルールです。つまり、すべての売上にかかる消費税額から、すべての仕入れや経費について適格請求書を収集・保存・集計し、実際に支払った消費税額を差し引いて納税額を計算する方法です。
2割特例の簡単な計算に慣れた事業者にとって、これは事務負担の激増を意味します。
フリーランスなど経費が少ない業種の場合、事務負担が増えるだけでなく、納税額自体も2割特例時に比べて数倍に跳ね上がる可能性があり、「手取りが消える」という不安の正体はここにあります。
この「原則課税」への強制移行を回避し、事務負担と納税額をコントロールするための選択肢が「簡易課税制度」です。
選択肢1 簡易課税制度とは
簡易課税制度とは、仕入れや経費のインボイスを一切集計せず、売上にかかる消費税額のみを把握し、そこに「みなし仕入率」という業種ごとの決まった割合を掛けて、納税額を計算する制度です。
簡易課税の適用要件
この制度を利用するには、2つの要件があります。
- 基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下であること。
- 適用を受けたい課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出すること。
2026年10月1日から(または2027年1月1日から)適用を受けたい事業者は、2026年中にこの届出書を提出する必要があります。
「みなし仕入率」とは?事業区分を解説
「みなし仕入率」は、その事業の売上原価や経費の平均的な割合を、国が定めたものです。事業区分は6種類あります。
- 第1種事業(卸売業) 90%
- 第2種事業(小売業) 80%
- 第3種事業(製造業、建設業など) 70%
- 第4種事業(その他) 60% (飲食店業など)
- 第5種事業(サービス業など) 50% (運輸通信業、金融保険業、デザイナー、ライター、コンサルタント、プログラマーなど)
- 第6種事業(不動産業) 40%
例えば、第5種(みなし仕入率50%)のフリーランスデザイナーの場合、納税額は「売上税額 – (売上税額 × 50%)」となり、実質的に売上税額の半分(50%)を納めることになります。
簡易課税のメリットとデメリット
- メリット
- 事務負担の大幅な軽減。売上の消費税さえ管理すればよく、仕入先のインボイスを収集・保存する必要がなくなります。
- 節税の可能性。実際の経費率が「みなし仕入率」よりも低い業種(例:経費率20%のライター)は、原則課税よりも納税額が安くなります。
- デメリット
- 一度選択すると、原則として2年間は原則課税に変更できません。
- 実際の経費が売上を上回っても(例:高額なPCや機材を購入した年)、消費税の還付(かんぷ)は絶対に受けられません。
- 複数の事業(例:小売とサービス)を営む場合、事業ごとに売上を区分経理していないと、一番低いみなし仕入率が適用され、不利になることがあります。
選択肢2 原則課税とは
「簡易課税制度選択届出書」を提出しない場合に適用される、基本の計算方法です。
概要
「売上にかかる消費税額」から、「仕入・経費にかかる消費税額(実際に支払った額)」を厳密に差し引いて計算します。
メリット
- 仕入や外注費が「みなし仕入率」よりも多い業種は、納税額が安くなります。
- 赤字や大規模な設備投資で仕入が売上を上回った場合、消費税の還付が受けられます。
デメリット
- すべての仕入・経費について、適格請求書(インボイス)を収集・保存する義務があり、事務負担が最大になります。
フリーランス・個人事業主の判断基準
2026年以降、あなたはどちらを選ぶべきでしょうか。判断基準は「あなたの業種の『みなし仕入率』と、『実際の経費率』のどちらが高いか」です。
ケース1 経費が少ない業種
例:ライター、デザイナー、コンサルタント、プログラマーなど
これらは第5種事業(みなし仕入率50%)に該当します。
もしあなたの実際の経費率(売上に対する経費の割合)が50%未満(例:経費はサーバー代と資料代くらいで、経費率20%)であれば、簡易課税が圧倒的に有利です。
- 原則課税 納税額 = 売上税額の80%
- 簡易課税 納税額 = 売上税額の50%
ケース2 仕入や外注が多い業種
例:小売業(第2種 80%)、卸売業(第1種 90%)
これらの業種は、みなし仕入率が非常に高く設定されています。
実際の仕入率がみなし仕入率を超えることは稀なため、「簡易課税」が有利になるケースが多いです。
ただし、外注費や仕入が多い業種(例:建設業)で、実際の経費率が70%(第3種のみなし仕入率)を超える場合は、「原則課税」の方が有利になる可能性があります。
「原則課税」と「簡易課税」の比較(2026年10月以降)
| 比較項目 | 原則課税 | 簡易課税制度 |
| 適用要件 | 届出不要(デフォルト) | 売上5,000万円以下 + 事前の届出が必要 |
| 消費税の計算方法 | (売上税額) – (実額の仕入税額) | (売上税額) – (売上税額 × みなし仕入率) |
| インボイスの保存 | 必須(仕入税額控除の要件) | 原則不要(売上管理のみ) |
| 還付(かんぷ) | あり | 絶対にない |
| 有利なケース | 仕入や経費がみなし仕入率より多い | 経費がみなし仕入率より少ない |
| デメリット | 事務負担が最大 | 2年間の継続適用しばり |
インボイスと電子帳簿保存法の関係 デジタル化への対応

インボイス制度への対応に追われる中、もう一つの大きな法律「電子帳簿保存法」への対応も同時に進んでいます。この二つは密接に関連しています。
電子インボイスとは
電子インボイスとは、紙で発行する適格請求書に対し、PDFや専用のシステム(EDI取引など)を通じて、電子データで授受される適格請求書のデータを指します。
インボイス制度は、紙でも電子データでも、記載要件さえ満たしていればどちらも有効な適格請求書として扱われます。
電子帳簿保存法が求めるデータ保存の要件
問題は、この「電子インボイス」を受け取った(受領した)場合です。
電子帳簿保存法(でんしちょうぼほぞんほう)は、税務関係の帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。
この法律の「電子取引」区分により、電子データで受け取った取引情報(例:メールに添付されたPDFの請求書)は、電子データのまま保存することが義務付けられています。
最も重要な注意点は、受け取ったPDFの請求書を紙に印刷して保存する方法は、原則として認められないことです。
電子データのまま保存する際は、単にフォルダに保存するだけでなく、「真実性の確保」(改ざんされていないことの証明)と「検索機能の確保」(日付・金額・取引先で検索できること)といった要件を満たす必要があります。
経理システム・会計ソフト活用のメリット
インボイス制度(適格請求書の要件)と、電子帳簿保存法(データ保存の要件)の両方に手作業で対応し続けるのは、非現実的です。
インボイス制度に対応したクラウド会計ソフトなどを活用することで、これらの複雑な業務を一元的に解決できます。
- 適格請求書の要件を満たした請求書を簡単に作成できる
- 受領したインボイス(紙・電子)を、電子帳簿保存法の要件を満たした形でスキャン・保存できる
- 仕入税額控除(原則課税)の計算を自動化できる
- 消費税申告書を自動で作成できる
インボイス制度への対応は、単に請求書の書式を変えることではなく、国が推進する「業務のデジタル化(DX)」の流れに乗り、会計プロセス全体を見直すことを求められているのです。
まとめ 適格請求書への対応で今すぐ確認すべきこと
適格請求書(インボイス)制度への対応は、複雑で負担の大きいものです。最後に、重要なポイントを再確認します。
適格請求書は、買手が「仕入税額控除」を受けるために必須の書類です。売手は登録番号を記載したインボイスを発行し、買手はそれを受領・保存し、番号の有効性を確認する義務があります。
現在、多くの個人事業主やフリーランスが利用している納税負担の軽減措置「2割特例」は、2026年9月30日で終了します。
2割特例の終了後、「原則課税」に移行するか、「簡易課税」を選択するか、2026年中に意思決定と届出(簡易課税の場合)が必要です。
判断基準は「経費率」です。フリーランスなど経費の少ないサービス業(第5種)は「簡易課税」、仕入の多い業種は「原則課税」が有利になる傾向があります。
インボイス対応と「電子帳簿保存法」への対応はセットです。電子データで受け取った請求書は、データ保存が義務付けられています。
2割特例の終了まで、時間はまだ残されています。まずはご自身の事業が「簡易課税」のどの事業区分にあたるかを確認し、原則課税と簡易課税のどちらが有利になるか、シミュレーションを始めてみましょう。



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