飲食業の基礎知識

小さい飲食店を開業するまでについて解説!資金調達から物件探しまで解説

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自分のこだわりが詰まった小さな城(店)を持ち、会社員時代では得られなかった「自己実現」と「安定した収益」を手に入れる未来が、すぐそこにあります。

本記事は、飲食店の現場経験者が、開業という「経営者」への第一歩を踏み出すために必要な、資金調達、行政手続き、物件選定、集客の全知識について解説

料理の腕はあっても「経営は不安」という方へ。開業の最大の壁である「資金」と「法律」の不安を解消し、失敗する7割ではなく、成功する3割に入るための具体的な手順(ロードマップ)を、ゼロから解説します。

目次

なぜ今「小さい飲食店」が開業に最適なのか? 成功者が語る4つの核心的メリット

「小さい飲食店」での開業は、単なる憧れではなく、現代の市場環境において最も合理的かつ戦略的な選択です。漠然とした「小ささ」の利点を、具体的な経営メリットとして解説します。

メリット1 圧倒的な低コスト(開業資金・ランニングコスト)

最大のメリットは、開業資金を抑えやすいことです。小規模な飲食店の開業資金は、一般的に1,000万円程度が目安とされます。これは、典型的なレストランと比較して、物件の規模や必要な設備にかかるコストを大幅に削減できるためです。

特に10坪以下のコンパクトな物件は、契約数全体の約半数を占めるほど人気があり、物件取得費や月々の賃料を安く抑えられる傾向にあります。

この「低コスト」という事実は、経営において非常に重要です。開業資金が低いということは、融資の借入額が少なくて済むことを意味します。万が一、事業が軌道に乗らなかった場合の撤退(廃業)リスクも最小限に抑えられます。

この精神的な余裕が、日々の冷静な経営判断につながり、結果として成功確率を高める要因となります。

メリット2 高い利益率とテイクアウトによる売上最大化

小さい飲食店は、席数が少ない(例:10坪で10〜15席程度)ため、少ない人員で運営が可能です。これにより、ランニングコスト(運営費)である人件費や水道光熱費を最小限に抑えやすく、高い利益率を目指せる経営構造を持っています。

かつては「客席数=売上の上限」と考えられてきました。小さい店は、満席になればそれ以上お客様を受け入れられないという弱点があったのです。

しかし、現代ではテイクアウトやデリバリーの需要が高まったことで、この前提が覆りました。テイクアウト専門店や、店内営業と並行してテイクアウトを行う業態が浸透し、席数の上限を気にする必要がなくなったのです。

つまり、「小さい店舗(低い固定費)」でありながら、「店内売上+テイクアウト売上(追加売上)」を両立できる、最も効率的なビジネスモデルへと進化したのです。

メリット3 顧客との強い絆(リピーターの構築)

小規模な店舗は、物理的に顧客との距離が近いという特徴があります。これにより、オーナーやスタッフがお客様と直接コミュニケーションを取りやすく、良好な関係性を築きやすい環境が生まれます。

顔なじみのお客様、いわゆる「常連客(リピーター)」は、リピート率が非常に高いだけでなく、信頼性の高い口コミによる広告効果も期待できます。彼らからの「あのお店、おいしいよ」という紹介こそが、最強の集客手段となります。

また、お客様から直接「こんなメニューが欲しい」といった意見やフィードバックをもらえる点も、大きなメリットです。これを素早く店づくりに反映することで、顧客満足度をさらに高め、安定した経営基盤を築くことができます。

メリット4 一人(ワンオペ)でも開業・運営が可能

小さい飲食店は、一人でも開業できるビジネスです。スタッフが一人でも営業できる広さ(一般的に10〜15坪程度)であれば、高額な人件費をゼロに抑えることが可能です。

ただし、一人での運営(ワンオペレーション)を成功させるには工夫が必要です。調理、接客、会計、清掃のすべてを一人で行うため、作業の効率化が鍵となります。

具体的には、以下のような工夫が挙げられます。

  • 注文・会計の省人化(例:券売機、キャッシュレス決済の導入)
  • メニュー数を限定し、調理工程を簡素化する
  • 営業時間を工夫する(例:ランチタイムのみ、週3〜4日営業)

これらの工夫により、体力的な負担を軽減しつつ、長期的な経営を可能にします。

開業資金の「リアル」 自己資金はいくら必要か? 10坪店舗の徹底解剖

開業を志す方が直面する最大の壁は「資金」です。ここでは、10坪の小さい飲食店をモデルケースとして、具体的にいくら必要なのかを徹底的に解剖します。

結論 小さい飲食店(10坪)でも開業資金は最低813万円

10坪の小さい飲食店を開業する場合、最低限必要な資金の目安は合計で813万円です。

この813万円は、大きく分けて以下の3つで構成されます。

  • 初期投資(450万円) 店舗の契約や工事、設備導入など、「店を開くため」に必要な費用。
  • 運転資金(313万円) 開業直後の赤字期間を耐え抜き、「店を軌道に乗せるため」に必要な費用。
  • 予備費用(50万円) 突発的なトラブル(例:設備の故障)に対応するための費用。

ここで最も注意すべき点があります。多くの開業失敗者は、「初期投資(450万円)」だけを「開業資金」と誤解し、(2) の「運転資金」を準備しないまま開店してしまいます。

しかし、開業直後から売上が安定することは稀です。成功する経営者は、「運転資金(313万円)」こそが、経営を続けるための「命綱」であることを知っています。失敗は店を開いた時ではなく、この運転資金が尽きた時に訪れます。

必須コスト(1) 「初期投資」の内訳

初期投資(モデルケース:450万円)の中身は、さらに以下のように分解されます。

物件取得費(90万〜150万円)

これは、店舗の「賃貸借契約」時に必要な費用です。10坪・家賃15万円の物件を借りる場合、保証金(家賃の6〜10ヶ月分)、礼金、仲介手数料などで、この程度の金額が必要になります。

店舗改装費(200万〜1,100万円)

初期投資の中で、最も金額が大きく変動する項目です。坪単価の相場は30万円〜80万円程度とされます。この費用は、選ぶ物件の「状態」によって決まります。

スケルトン物件

コンクリート打ちっぱなしのような、何もない状態の物件です。ゼロから内装を作るため、費用は700万〜1,100万円と高額になります。

居抜き物件

前のテナントが使っていた内装や設備(厨房機器など)が残っている物件です。これらを活用できるため、費用は200万〜700万円程度に抑えられます。

DIY(自分で内装を行う)や中古の厨房機器を活用することで、さらに費用を抑えることも可能です。例えば、カフェ(16席)で約350万円、居酒屋(20席)で約400万円といった事例もあります。

設備投資費(160万〜350万円)

厨房機器(コンロ、冷蔵庫、シンク)、空調設備、レジ(POSシステム)など、営業に必要な機器の購入費用です。

必須コスト(2) 「運転資金」の内訳(313万円/6ヶ月分)

運転資金は、店を開けた後に、たとえ赤字であっても経営を続けるための「体力」です。最低でも6ヶ月分は用意することが推奨されます。

原価(仕入れ)と人件費(FLコスト)

健全な飲食店経営の目安として、「FLコスト」という指標があります。これは、売上に対する原価(Food)と人件費(Labor)の合計比率を指し、一般的に50%〜60%に抑えるのが理想とされます。

仮に月の売上が150万円の場合、原価率30%(45万円)、人件費率30%(45万円)が目安となります。開業直後は、オーナー自身が現場に立つことで人件費を最小限に抑え、経営を安定させることが重要です。

その他経費

家賃(15万円)、水道光熱費、消耗品費など、毎月固定でかかる費用です。

自己資金はいくら用意すべきか?(融資審査の視点)

開業資金813万円の全額を、融資(借金)だけで賄うことは非常に困難です。金融機関から融資を受けるためには、一定の「自己資金」を準備していることが、審査を通過する上で重要な条件となります。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、必要な資金の「10分の1」の自己資金が一つの要件となっています。

しかし、これはあくまで最低ラインです。実際には、必要な資金額(813万円)の「30%程度」の自己資金を準備しなければ、融資の審査に通るのは難しいと一般的に言われています。

結論として、813万円が必要な場合、その30%である約244万円が、融資を申し込む前に、まず自分で用意すべき「最低限の自己資金」となります。

資金調達の全戦略 融資と補助金を徹底解説

813万円という大きな壁を越えるため、開業希望者が活用すべき「武器」が「融資」と「補助金」です。ここでは、最大の支援機関である「日本政策金融公庫」の活用法と、返済不要の「補助金」について、その違いと活用順序を明確にします。

最も重要な資金調達先 「日本政策金融公庫」の活用

飲食店の開業オーナーの多くが、民間の銀行よりも先に、まず「日本政策金融公庫(JFC)」に相談します。JFCは、中小企業や創業者を支援するための政府系金融機関です。

なぜ公庫が選ばれるのか?

公庫が選ばれる最大の理由は、創業者にとって非常に有利な融資制度があるためです。

新創業融資制度

最大の魅力は、無担保・無保証人で融資を申請できる点です(融資限度額3,000万円)。

対象者は、新たに事業を始める人、または飲食業で通算6年以上働いている方などが対象となります。条件は、前述の通り、開業資金の10分の1以上の自己資金を持っていることです。

融資審査を通過する「事業計画書」の書き方

融資は「情熱」だけでは通りません。「借りたお金を、事業で得た利益から、確実に返済できる」という論理的な証明、すなわち「事業計画書(創業計画書)」の提出が必須です。

審査を通過する計画書には、以下の要素を具体的に盛り込む必要があります。

まず「代表者経歴」です。飲食店の店長経験(3年)など、これから始める事業に関する具体的な経験を記載し、事業遂行能力をアピールします。

次に「取得資格」です。「食品衛生責任者」など、開業に必要な資格を記載します。

「ターゲット」も重要です。「30〜40代の会社員」や「○○駅周辺に住む子育て中の母親」など、顧客層を具体的に設定します。

「セールスポイント(差別化)」では、「アットホーム」のような抽象的な表現は評価されません。「旬の食材を使った月替わりの創作料理を提供する」「プレミアムな焼酎を安価で提供する」など、競合他店との違いを具体的に記載します。

最後に「収支計画」です。売上の予測と、その根拠(客単価、席数、回転率)、および、仕入れ(原価)、人件費、家賃などの経費を具体的に数字で示します。

融資の担当者は、「他店ではなく、なぜあなたのお店がお客様に選ばれるのか?」を厳しく見ています。

事業計画書を作成するプロセスは、融資担当者を説得すると同時に、自分自身が「なぜ失敗しないか」を論理的に確認するための、最も重要な自己分析の機会となります。

返済不要の「補助金・助成金」も必ず確認

融資(借金)とは別に、国や自治体から返済不要のお金をもらえる「補助金」や「助成金」があります。

ただし、これらは「開業資金そのもの」には使えないケースが多いため、注意が必要です。補助金の多くは、事業のために使った経費(例:広告宣伝費)の領収書を提出し、審査を経て「後払い」で支給される仕組みです。

つまり、開業までの資金(813万円)は「自己資金+公庫融資」で100%賄う必要があり、補助金は「開業後」に、さらなる成長(集客強化や設備投資)のために活用するもの、と区別して考えるべきです。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者(飲食業の場合は従業員5名以下)が対象となる補助金です。新しいテイクアウトメニューの開発、チラシの作成、ウェブサイトの構築といった「販路開拓」の費用や、業務効率化のための投資に活用できます。補助金額は枠によりますが最大50万円〜250万円程度で、補助率は原則2/3です。

中小企業省力化投資補助金

開業後に、人手不足を解消するために、券売機やセルフオーダーシステムなどを導入する際に活用できる可能性があります。

開業までの完全ロードマップ 5つの必須ステップ

「自分の店を持ちたい」という夢を実現するために、「いつ」「何を」やるべきか、具体的な行動計画(ロードマップ)を示します。特に、法的な手続きは順番を間違えると、開業が大幅に遅れる致命的な手戻りが発生するため、注意深く進める必要があります。

ステップ1 コンセプトと事業計画書の策定

物件を探し始める前に、まず店舗のコンセプトを固めます。具体的には「5W1H」(When:営業時間、Where:出店エリア、Who:ターゲット顧客、What:メニュー、Why:店の理念、How:運営方法)を明確にします。

成功する飲食店は、開業前に徹底した市場調査や競合分析を行い、自店の「差別化ポイント」を確立しています。このコンセプトを、前述した「事業計画書」という客観的な「数字」と「言葉」に落とし込みます。

ステップ2 必須資格「食品衛生責任者」の取得

「食品衛生責任者」は、飲食店の営業許可を申請する際に必ず必要となる資格です。この資格がないと、店を開くことはできません。取得方法は主に2つあります。

養成講習会

各都道府県の食品衛生協会が実施する、約6時間の講習会に参加します。1日で取得が可能です。

eラーニング

パソコンやスマートフォンを使い、オンラインで合計6時間程度の講義動画を視聴し、テストを受けます。

この記事を読んだ方が、今すぐやるべきことは、この「食品衛生責任者」の受講申込みです。

なぜなら、東京都や大阪などの人口が多い地域では、講習会の予約が1〜3ヶ月先まで埋まっている場合があるからです。また、eラーニングであっても、受講修了証が自宅に郵送されるまでには10営業日程度かかる場合があります。

物件の契約や内装工事がすべて終わったのに、「資格がないから営業許可が申請できない」という事態になれば、その間も家賃だけが発生し続けます。これが、開業プロセスにおける最大のリスクの一つです。

eラーニング受講の注意点

eラーニングは場所を選ばず便利ですが、注意点があります。受講期間(例:申込から30日以内)に、すべての動画視聴とテストを完了する必要があります。

また、ログイン時や講義中、顔認証が随時行われます。受講にはカメラ付きのパソコン、タブレット、スマートフォンが必須です。なりすまし等の不正はできません。

ステップ3 物件探しと契約

ステップ1で策定したコンセプトに基づき、物件を探します。立地や家賃、居抜きかスケルトンか、といった条件を検討します。詳細は次章で解説します。

ステップ4 行政手続き「飲食店営業許可」の取得

物件の契約・工事と「同時並行」で進める、最も重要な行政手続きが「飲食店営業許可」の申請です。

営業許可取得の「流れ」と「最重要ポイント」

この手続きの成否は、開業資金を無駄にしないためにも、決定的に重要です。

事前相談(保健所へ)

これが最大の失敗回避ポイントです。店舗の内装工事に着工する前に、必ず「店舗の図面」を持って、管轄の保健所に「事前相談」に行きます。

飲食店の営業許可には、「手洗い器が2つ必要」「シンクのサイズはこれ以上」といった、法律で定められた厳格な「施設基準」があります。保健所の担当者は、この基準をクリアしているか、図面を見て事前にチェックしてくれます。

もし、この相談を怠り、基準を満たさない内装工事を進めてしまうと、後の「確認検査」で不合格となります。その場合、高額な費用をかけて「やり直し工事」を行わなければならず、これは致命的な資金ショートに直結します。

営業許可の申請

保健所の事前相談で図面のOKが出たら、内装工事を進めると同時に、正式な申請書類を提出します。申請書、店舗の図面、そして「食品衛生責任者」の資格証明書などが必要です。

施設の確認検査

工事が完了したら、保健所の担当者が店舗に来て、申請図面の通りに設備が配置され、施設基準を満たしているかを、立ち会いのもとで検査します。

営業許可証の交付

検査で問題がなければ、後日(通常、数日〜1週間程度)、「営業許可証」が交付されます。この許可証を受け取った時点で、初めて飲食店として営業を開始できます。

ステップ5 その他の手続き

上記の保健所の手続きと並行し、以下の手続きも進めます。

  • 消防署 「防火対象物使用開始届」など。
  • 税務署 「開業届」など。
  • (従業員を雇用する場合)労働基準監督署 「労災保険」の手続きなど。

失敗しない物件選び 成功の7割は「場所」で決まる

飲食店の売り上げは「立地と物件が7割関係している」と言われるほど、物件選びは重要です。

料理の味や価格は後から変更できますが、「立地」だけは一度決めたら簡単には変更できません。だからこそ、選択肢と、そこに潜む「罠」を理解しておく必要があります。

物件探しの最重要ポイント 「コンセプト」との一致

物件探しの絶対的な基準は、店舗のコンセプトに合っているかです。

  • 「30代の会社員」がターゲットなら、オフィス街の路地裏が良いかもしれません。
  • 「子育て中の母親」がターゲットなら、住宅街の1階で、ベビーカーが入りやすい店が良いでしょう。

やみくもに探すのではなく、コンセプトという「軸」を持って判断することが重要です。また、飲食店の物件探しに強い不動産業者を選び、複数の業者に相談して比較検討することも成功の鍵です。

「居抜き物件」と「スケルトン物件」の徹底比較

物件には大きく2種類あり、この選択が初期費用と開業までのスピードを大きく左右します。

項目居抜き物件 (Inuki)スケルトン物件 (Skeleton)
状態前テナントの設備・内装が残るコンクリート打ちっぱなしの状態
初期費用(内装費)安い(10坪例:200万〜700万円)高い(10坪例:700万〜1,100万円)
開業までの期間短い(数週間〜1ヶ月程度)長い(数ヶ月)
デザイン自由度低い(既存の制約あり)高い(理想を実現可能)
主なリスク設備の老朽化、不要な設備の撤去費用高額な内装費、設計ミス

居抜き物件は、初期費用と開業期間を大幅に抑えられるため、小さい飲食店の開業では有力な選択肢です。しかし、この「居抜き」には、大きな「罠」が潜んでいます。

居抜き物件の「罠」 「造作譲渡契約」とは

居抜き物件はメリットが大きい反面、重大なリスクも抱えています。

リスク1 設備の老朽化

一見「お得」に見える、残された厨房機器(冷蔵庫、エアコン、製氷機など)が、開業直後に故障するケースです。

この場合、予期せぬ修理費用や買い替え費用が発生し、苦しい開業直後の運転資金を圧迫します。これが、資金ショートの引き金になることも少なくありません。

リスク2 造作譲渡契約

「造作(ぞうさく)」とは、前テナントが残していった内装や設備、什器(じゅうき)のことです。

この「造作」を、新しいテナントが「買い取る」契約が、「造作譲渡契約」です。

ここで注意すべきは、この契約は、物件の大家さんとの「賃貸借契約」とは別に行われる、あくまで「前のテナント(売主)」と「新しいテナント(買主)」との間の売買契約である点です。

契約を結ぶ前に、以下の点を詳細に確認する必要があります。

  • どの設備が譲渡対象に含まれているか?
  • すべての設備は正常に動作するか?(必ず動作確認を行う)
  • 不要な設備やゴミが残っていないか?(撤去費用はどちらが持つか)

これらの確認を怠ると、引き渡し後に「動かない」「不要なものの撤去に高額な費用がかかる」といったトラブルに見舞われる可能性があります。

小さい店だからこそ勝てる「集客戦略」 地域密着とSNS活用法

無事に開業した後、お客様に来てもらうための「集客」は、経営そのものです。小さい飲食店は、大手ができない「地域密着」と「オーナーの顔が見えるSNS発信」こそが最強の武器となります。

オフライン集客 地域に愛される店づくり

デジタル時代とはいえ、飲食店の集客において、看板やチラシといったオフライン施策の重要性は変わりません。特に、ターゲットが近隣住民や高齢者層の場合、オフライン施策は非常に効果的です。

小さい飲食店の経営を長期的に安定させる最大の要素は、リピーター・常連客の存在です。

そのためには、「地元客が行きたくなる理由」を作ることが重要です。

  • 地域のイベントやお祭りに積極的に出店する
  • 近隣の学校や企業と連携した特別メニューを提供する
  • 「地元○○農家の野菜を使っています」など、地域性を打ち出す

こうした地道な活動が、「地域に愛される店」としての認知を築きます。

オンライン集客 SNSと口コミ(クチコミ)の活用

小さい飲食店にとって、クチコミは最強の広告です。お客様の「あそこ、美味しかったよ」という一言が、次のお客様を呼びます。

現代では、このクチコミを「待つ」だけでなく、SNSを活用して「生み出す」戦略が不可欠です。特にInstagram(インスタグラム)は、飲食業と非常に相性が良いツールです。

SNSで発信すべき内容

発信する内容は、単なる料理の写真だけではありません。

顧客視点の情報

「立地が分かりにくい場合は、最寄り駅からの経路案内を動画で投稿する」といった、お客様の来店を助ける情報発信は非常に有効です。

店の「価値」の発信

「今日は新商品がありません」と悩む必要はありません。「契約農家さんから届いた珍しい野菜の紹介」や「SDGs達成のためのフードロス削減の取り組み」なども、店の姿勢や「価値」を伝える重要な情報となります。

小さい店(ワンオペ)の集客効率化

ワンオペ(一人)で経営する場合、調理や接客で手一杯になり、SNS発信や集客活動が疎かになりがちです。

ここで、小さい店の「強み」と「効率化」を両立させる視点が重要になります。

ワンオペの効率化のためには、注文や会計を「自動化」(例:券売機、キャッシュレス決済)することが推奨されます。一方で、小さい店の強みは「顧客とのコミュニケーション」です。

これらは一見、矛盾するように見えます。しかし、戦略は明確です。

「会計」のような機械的な作業はIT(自動化)に任せ、それによって捻出できた「時間」を、オーナーにしかできない「お客様との温かい会話」や「心のこもったSNS発信」といった「人間味」のある作業に集中投下するのです。

ITの活用は、人間味を削るためではなく、オーナーの「人間味」という最大の強みを発揮するために行うのです。

「開業1年」の壁を越える 失敗する飲食店(7割)の共通点

開業はゴールではありません。本当のゴールは、経営を「続ける」ことです。あるデータによれば、利益を出している飲食店は全体のわずか3割程度であり、残りの7割は赤字経営であるとも言われます。

この「失敗する7割」の共通点をあらかじめ学び、それを徹底的に避けることが、成功への最短距離となります。

失敗事例1 経営ノウハウの不足(どんぶり勘定)

料理の腕が優れていても、経営知識がなければ飲食店は成功しません。

失敗する人の多くは、「過去の成功者や失敗者の方法を学ばない」という共通点があります。自分の腕を過信し、先輩経営者のアドバイスに耳を貸しません。

ここでいう経営知識とは、日々の売上管理、正確な原価計算(FLコスト管理)、人件費の調整、マーケティング、財務といった、料理以外のすべての数字の管理を指します。

失敗事例2 マーケティング不足(「美味しいから売れる」という誤解)

「良い料理さえ出せば、お客様は自然に来るはずだ」という思い込みは、失敗の大きな原因です。

どんなに素晴らしい料理でも、ターゲットとなるお客様がいない場所で開業してしまえば、集客はできません。これは、開業前のコンセプト策定や市場調査(マーケティング)が不十分だったことが原因です。

SNSやクーポン戦略も場当たり的で、顧客のニーズを正確に把握できていないため、効果的な集客ができず、悪循環に陥ります。

失敗事例3 甘い資金計画(運転資金の枯渇)

これが、最も多く、最も致命的な失敗原因です。

開業時の資金計画が甘く、店を開くための「初期投資」しか用意せず、開業後の赤字に耐えるための「運転資金」(前述した313万円など)を十分に確保しないまま開店してしまうケースです。

日々の仕入れコストの管理も甘く、突発的な設備故障(例:居抜き物件のエアコン故障)や、予期せぬ客数の減少に対応できる資金的余裕がありません。

その結果、開業後1年以内に資金がショート(枯渇)し、廃業に追い込まれてしまうのです。

この事実が示す教訓は明確です。「開業後、最低でも6ヶ月は赤字が続く」ことを前提とし、それに耐え抜くための「運転資金」を、開業前に「自己資金+融資」で100%確保しておくこと。これが、開業1年の壁を越えるための絶対条件です。

まとめ 小さい飲食店開業の成功は「準備」が全て

最後に、本記事の要点を再確認します。

小さい飲食店のメリットの再確認

小さい飲食店は、低コストでの開業、高い利益率(テイクアウト含む)、顧客との密な関係性、そして一人でも運営可能という、現代の市場環境に最適なビジネスモデルです。

資金調達と計画の重要性

成功の鍵は「資金」と「知識」です。10坪で約813万円というリアルな資金目安を持ち、そのうち3割(約244万円)の自己資金を準備してください。そして、熱意と論理に基づいた事業計画書を作成し、日本政策金融公庫の融資制度を最大限に活用します。

失敗を避けるための必須行動

失敗する7割に入らないため、本記事で解説した以下の行動を徹底してください。

  • 開業後の赤字に耐える「運転資金」を必ず確保する。
  • 内装工事の「着工前」に、必ず「保健所へ事前相談」に行く。
  • 居抜き物件を選ぶ際は、設備の動作確認と「造作譲渡契約」の内容を徹底的に確認する。
  • 料理の腕に頼らず、「経営」の知識を学び続ける。

結論

あなたのキャリアは「料理人」から「経営者」へと変わります。本記事というロードマップを手に、あなたの夢である「自分の店」の実現に向け、今日から具体的な第一歩を踏み出しましょう。

その第一歩とは、今すぐ「食品衛生責任者」の講習会またはeラーニングに申し込むことです。

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