飲食業の基礎知識

キッチンカー開業に必要な資格は2つだけ?必要な資格や許可の取得について解説

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固定店舗に比べて初期費用を抑えられ、自由な営業スタイルで自分の「城」を持てるキッチンカービジネスは、多くの人にとって魅力的な選択肢です。その夢を実現するための「最初の一歩」が、必要な資格や許可の取得です。

しかし、法律や規制が複雑に感じられ、どこから手をつければよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事は、その「資格」という名の霧を晴らすために作成されました。

この記事を読み終える頃、あなたはキッチンカー開業に法律上定められている「たった2つの必須要件」と、多くの人が誤解している「不要な資格」を明確に区別できるようになります。

さらに、資格取得から最難関ともいえる「保健所の営業許可」を取得するまでの全プロセス、そして見落としがちな車両の基準まで、具体的な手順として理解している状態になります。

「法律は難しそう」「食中毒が怖い」といった不安は、正しい知識を得ることで解消できます。

この記事は、保健所との事前相談、車両の検査、2021年から義務化された衛生管理(HACCP)、そして盲点となりがちな運転免許の区分まで、専門家が手順通りに解説します。一つずつ着実に準備を進めれば、あなたのキッチンカー開業は現実のものとなります。

目次

キッチンカー開業の「資格」 必須2種と誤解されやすい1種を徹底解説

キッチンカー開業を志す方が最初に向き合う疑問は、「いったい何の資格が必要なのか」という点です。このセクションでは、開業における「資格」の全体像を明確にし、その疑問に明確に回答します。

結論 キッチンカー開業に「調理師免許」は不要です

まず、最も多くの方が誤解している点から解説します。キッチンカーで飲食店を開業するために、調理師免許は必須ではありません。

調理師免許は、その名の通り「調理師」として就業するために必要な国家資格です。しかし、飲食店の「開業」そのものに必要な資格ではありません。これは固定店舗の飲食店でも同様です。

この事実は、料理人としての専門的な経歴がない人でも、キッチンカービジネスという新しいキャリアに挑戦できる、大きなチャンスがあることを示しています。

必須資格 施設に1人必ず必要「食品衛生責任者」

キッチンカー開業において、法律上必ず必要となる資格の一つ目が「食品衛生責任者」です。

キッチンカー(移動販売車)を含むすべての飲食店は、食品衛生法に基づき、施設(車両)1台ごとに必ず1名の「食品衛生責任者」を設置しなければなりません。

この資格は、食中毒などの事故を未然に防ぐための衛生管理の責任者であることを証明するものです。そして、この資格を証明する書類(修了証など)は、後述する「営業許可」を保健所に申請する際の必須書類となります。

必須資格 車両と営業者を審査する「営業許可」

二つ目の必須要件が、保健所から取得する「営業許可」です。一般的に「飲食店営業許可」と呼ばれるものです。

キッチンカーで食品を「調理・販売」する場合、この営業許可を必ず取得しなければなりません。これは「人」の知識を証明する食品衛生責任者とは異なり、「車両(設備)」が衛生基準を満たしていること、そして「営業者本人」に対して発行される許可です。

たとえ車両をレンタルする場合でも、営業許可は車両を借りる営業者自身が、その車両で改めて取得する必要があります。この営業許可の取得こそが、キッチンカー開業における実務上の最難関となります。

なぜ調理師免許より食品衛生責任者の資格が重要なのか

なぜ、高度な「調理技術」を証明する調理師免許が不要で、基本的な「衛生知識」を証明する食品衛生責任者が必須なのでしょうか。

その理由は、行政(保健所)がキッチンカー事業者に第一に求めるものが、料理の美味しさや技術よりも、食中毒を未然に防ぐための「衛生管理の知識」だからです。

キッチンカーは「移動する飲食店」です。万が一、食中毒が発生した場合、固定店舗とは異なり、広範囲に健康被害を拡散させてしまうリスクを内包しています。そのため、公衆衛生上の安全を確保する「衛生管理の責任者」の設置が、法律で厳格に義務付けられているのです。

なお、調理師免許を持っている場合は、すでに衛生管理の知識を有しているとみなされるため、後述する食品衛生責任者になるための講習会が免除されます。調理師免許が役立つのはこの点です。持っていなくても講習会を受講すれば何ら問題なく開業が可能です。

「食品衛生責任者」資格の取得方法について

キッチンカー開業のプロセスは複雑で、車両の準備や保健所との相談など、多くのタスクが同時進行します。その中で、開業希望者が「まず最初に行動すべき」明確なステップが、この「食品衛生責任者」の資格取得です。

この資格は、保健所の営業許可を申請するための「鍵」となる必須書類です。車両の製作や選定には時間がかかりますが、この資格は短期間で取得できます。そのため、車両の製作中や準備中など、できるだけ早い段階で取得しておくことが推奨されます。

食品衛生責任者の資格取得、2つのルート

資格を取得するためのルートは、大きく分けて2つ存在します。自身の状況に合わせて選択します。

ルート1 講習会(養成講習会)を受講する

調理師や栄養士などの特定の資格を持っていない場合、このルートが基本となります。

講習会は、各都道府県の「食品衛生協会」が主催する「食品衛生責任者養成講習会」を受講します。講習では、食中毒の予防や公衆衛生に関する知識を学びます。主な科目は「公衆衛生学」「食品衛生学」「食品衛生法」です。

講習時間は合計で約6時間、通常は1日で完了します。受講費用は主催する都道府県によって異なり、おおむね9,000円から12,000円程度です(例:東京都12,000円、大阪府10,500円)。

講習会を修了すると、その日のうちに「修了証」が交付されます。この修了証が、あなたが食品衛生責任者であることを証明する書類となります。

eラーニング(オンライン講習)での取得は可能か

近年、多忙な方や現職を続けながら準備を進める方のために、eラーニング(オンライン講習)形式で受講できる自治体も増えています。

eラーニングの場合、合計約6時間のビデオ動画講義を、定められた受講期間内であれば24時間、自分の都合に合わせて複数回に分けて受講することが可能です。お住まいの地域の食品衛生協会がeラーニングに対応しているか、確認してみるとよいでしょう。

ルート2 特定の資格保有で講習が免除されるケース

すでに特定の国家資格などを持っている場合、養成講習会を受講しなくても食品衛生責任者になることができます。主な対象資格は以下の通りです。

  • 栄養士
  • 調理師
  • 製菓衛生師
  • 食鳥処理衛生管理者
  • 船舶料理士
  • その他、医学、薬学、獣医学などの課程を修めて卒業した者

これらの資格保有者は、営業許可申請の際に、講習会の修了証の代わりに自身の免許状や資格証を提示します。

資格の有効期限と全国共通のルール

食品衛生責任者の資格に関して、非常に重要な2つの特徴があります。

有効期限はなし(更新不要)

養成講習会の「修了証」自体には、有効期限はありません。一度取得すれば、生涯有効な資格となります。(注意点:営業許可のほうは5年程度の有効期間があり、更新が必要です)

ただし、地域によっては、資格取得者に対して数年に一度の「実務講習会」(知識をアップデートするための講習)の受講を義務付けている場合があります。

資格は全国共通

この資格は全国共通で通用します。

例えば、東京都在住時に東京都食品衛生協会の講習会で資格を取得した人が、数年後に大阪府でキッチンカーを開業する場合でも、その修了証は有効です。新たに大阪府の講習会を受け直す必要はありません。

最難関「営業許可」の取得プロセスと保健所が検査する車両基準

「食品衛生責任者」の資格が「人」に対するものであるのに対し、「営業許可」は「車両(設備)」と「営業行為」に対する許可です。この許可取得がキッチンカー開業における最大のハードルであり、最も専門的な知識が要求されるプロセスです。

この許可なく食品を調理・販売することは食品衛生法違反となり、厳しく罰せられます。

営業許可取得の全体像 5つのステップ

営業許可の取得は、車両が完成してから申請するものではありません。車両の設計段階から保健所と連携して進める、計画的なプロセスです。

ステップ1 管轄の保健所への「事前相談」

このプロセスが最も重要です。事前相談を怠った場合、多額の費用をかけて製作した車両が保健所の基準を満たせず、許可が下りない(営業できず、車両の作り直しが必要になる)という最悪の事態を招きかねません。

出店を予定している地域を管轄する保健所(複数地域で営業する場合は、主となる基地施設や保管場所の地域の保健所)に連絡します。車両の設計図や仕様書、提供予定のメニューをできるだけ具体的に持参します。

自分が計画しているメニュー(例:麺類、カレー、クレープ)と調理工程で営業するには、どの設備基準(特に後述するタンク容量など)を満たす必要があるか、詳細に確認します。

ステップ2 申請書類の準備と提出

事前相談で車両の仕様が固まり、製作が完了する目処が立ったら、営業許可の申請書類を提出します。主な必要書類は以下の通りです。

  • 営業許可申請書
  • キッチンカーの設備図面、仕様書
  • 食品衛生責任者の資格証明書(修了証など)
  • 車検証の写し
  • (仕込み場所を別途借りる場合)その施設の営業許可証の写しや契約書

ステップ3 キッチンカー車両の「実地検査」

申請が受理されると、保健所の担当者と検査の日程を調整します。検査当日、申請者立ち合いのもと、実際の車両が申請図面通りに製作されているか、また衛生基準をすべて満たしているかを担当者が厳しくチェックします。

この検査に合格しなければ、許可は下りません。不備があった場合は、改善した上で再検査を受けることになります。

ステップ4 許可証の交付と営業開始

実地検査に無事合格すると、保健所から許可証の交付予定日が伝えられます。通常、検査合格から数日から1週間程度で「営業許可証」が交付されます。

この許可証を車両の見やすい場所に掲示することで、初めて正式にキッチンカーでの営業を開始できます。

ステップ5 更新手続き(有効期間は5年)

食品衛生責任者の資格(無期限)とは異なり、保健所の営業許可には有効期間があります。

この期間は自治体によって異なりますが、一般的に5年間です。有効期限が切れる1か月前までには、保健所で更新手続きを行う必要があります。更新時も、新規申請時と同様に、車両(設備)が基準を維持しているかの検査が行われる場合があります。

保健所が厳しく見る「車両設備」の必須要件

実地検査で保健所がチェックする項目は多岐にわたりますが、特に重要な車両設備の要件を解説します。これらの基準は、2021年6月の改正食品衛生法施行により、全国で統一的な基準が示されました。

運転席と調理場の仕切り

食中毒防止と公衆衛生の観点から、車両の運転席と、食品を取り扱う調理場(キッチンスペース)は、壁などによって完全に仕切られている必要があります。

バンタイプの車両を改造する場合、運転席と荷室が一体になっているため、この仕切りの設置は必須の改造項目となります。

メニューを左右する「給排水タンク」の容量

キッチンカーの設計において、最も戦略的な決定となるのが「給排水タンク」の容量です。搭載するタンクの容量によって、保健所から許可される調理工程や品目が厳しく制限されます。

つまり、どの容量のタンクを積むかが、あなたが提供できるメニュー(ビジネスモデル)を決定します。

タンク容量許可される調理工程・品目の目安品目例特徴
40L・簡易な調理のみ
・単一品目の提供
・使い捨て食器の使用
コーヒー、クレープ、かき氷1工程のシンプル営業。タンクが軽量で安価。できることが非常に限られる。
80L・2工程程度の調理
・複数品目の提供
・使い捨て食器の使用
複数メニュー現役オーナーに最も多く選ばれている。標準的な営業形態。
200L・大量の水を使う調理
・複数品目の提供
・通常の食器の使用も可
麺類、シチューなど車内での仕込みが許可される場合がある。

40Lと80Lで迷う場合は、将来的なメニュー拡大の可能性も考慮し、80Lを選択することが推奨されます。タンクの増設は大規模な改造となるため、設計段階での判断が極めて重要です。

シンクの数、冷蔵設備、換気扇、電源

シンクは、衛生的な手洗いと、食材や器具の洗浄を分離するため、複数(通常は2槽以上)のシンクと、手洗い専用の石鹸・消毒設備の設置が求められます。

生鮮食品や冷凍品を扱う場合、それらの食材を適切に温度管理できる冷蔵庫や冷凍庫が必須です。

車内で加熱調理(焼く、煮る、揚げる)を行う場合、窓を開けるだけでは換気として認められません。車内の熱気や蒸気を適切に排出する能力を持つ換気扇の設置が義務付けられています。

冷蔵庫、照明、換気扇、調理機器などを動かすための電源設備が必要です。出店場所で借りられる場合もありますが、多くの場合、大容量の発電機やポータブル電源、サブバッテリーなどを搭載する必要があります。

営業許可の「壁」 「仕込み場所」ルールと「HACCP」衛生管理

保健所の営業許可取得はゴールではありません。日々の営業において、法律上守らなければならない2つの大きな(そして見落としがちな)ルールが存在します。「仕込み場所」の確保と、「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理です。

キッチンカー営業の原則 仕込み場所の確保

キッチンカーの営業許可は、あくまで「最終工程」を行うための許可です。

保健所の許可を得たキッチンカーであっても、車内で許可されているのは、原則として「簡単な加熱調理や盛り付け」、すなわち「仕上げ」の作業のみです。

食材のカット(野菜を刻む、肉を切り分ける)、下ごしらえ(タネをこねる、串打ちする)、一次加工(スープやソースを煮込む)といった「仕込み」作業は、別途「営業許可を得た施設」で行う必要があります。

なぜ自宅のキッチンはNGなのか

開業コストを抑えるために「仕込みは自宅のキッチンでやればよい」と考える方がいますが、これは明確な食品衛生法違反となります。

自宅のキッチンは、食品衛生法に基づく営業許可の基準(業務用のシンクや換気設備など)を満たしておらず、営業許可を取得していないため、仕込み場所として使用することはできません。

このルールを知らずに自宅で仕込みを行うと、食中毒のリスクを高めるだけでなく、発覚した場合には営業停止などの重い処分を受ける可能性があります。

仕込み場所の確保、3つの選択肢

では、仕込みはどこで行えばよいのでしょうか。選択肢は主に3つあります。

営業許可のある施設を借りる

最も一般的な方法です。営業許可を持つシェアキッチンや、知り合いの飲食店の空き時間を間借りするなどして、仕込み場所を確保します。

この場合、シェアキッチンの利用料や飲食店の賃料が、車両の維持費とは別に「固定費」として継続的に発生します。資金計画において、この「仕込み場所コスト」を見込んでおく必要があります。

車内での仕込み(例外)

前述の通り、200Lの大容量給排水タンクを搭載し、十分な作業スペースを確保するなど、特定の基準を満たせば、キッチンカー車内での仕込みが許可される場合があります。

ただし、どこまでの仕込み(例:野菜のカット)を車内で許可するかは、地域や保健所の見解によって異なります。必ず「事前相談」の段階で、自身のメニューで必要な仕込み工程を提示し、車内で可能かを確認する必要があります。

仕込みが不要なメニューにする

仕込み場所の確保が難しい場合、仕込み作業そのものを無くすという選択肢もあります。

例えば、認可された工場で作られた加工済みの食材(カット野菜、冷凍のタネなど)を仕入れ、車内では加熱・盛り付けのみを行う業態です。

2021年6月から完全義務化「HACCP(ハサップ)」とは

HACCP(ハサップ)とは、Hazard Analysis and Critical Control Point の略で、食品の安全性を確保するための国際的な衛生管理の手法です。

2021年6月1日より、食品衛生法の改正に伴い、キッチンカーを含む全ての食品事業者に、HACCPに沿った衛生管理が完全義務化されました。

これは「今まで以上にしっかり掃除する」といった漠然としたものではなく、「衛生管理を計画し、実行し、記録する」という具体的なプロセスを導入することです。キッチンカーのような小規模事業者は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の導入が求められます。

キッチンカー事業者が行うべきHACCPの具体的な手順

HACCPの導入は、難しく考える必要はありません。厚生労働省などが提供する手引書を参考に、以下の3ステップを実践し、それを「記録」として残すことです。

衛生管理計画の作成

まず「いつ、何を、どのように管理するか」というマニュアル(計画書)を自分で作成します。例:「手洗いはこの手順で、作業開始前に必ず行う」「冷蔵庫の温度は朝と夕方の2回確認する」「体調不良のスタッフは休ませる」。

計画の実施

作成した計画書(マニュアル)通りに、日々の衛生管理を実行します。

実施状況の記録と保存

これがHACCPの核となります。実行した結果(例:今日の冷蔵庫の温度は5℃で異常なし)を、シンプルなチェックシートや記録簿に毎日記入し、それを保存します。この「記録」があることで、万が一問題が発生した際に原因を追究でき、また日頃から衛生管理を徹底している証明となります。

HACCPを怠った場合のリスクと罰則

HACCPに沿った衛生管理(特に計画の作成と記録)を怠った場合、食品衛生法違反と見なされます。

罰則は、保健所による指導や営業停止処分だけでなく、悪質な場合には最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下)が科される可能性もあります。これはビジネスの存続に直結する、非常に重大なリスクです。

資格と許可「以外」の必須知識 運転免許とその他の許可申請

保健所の許可(食品衛生)に関する準備が整っても、まだ安心はできません。キッチンカーは「車両」であり、「場所」で営業するビジネスです。そこには「交通」と「場所」に関する、保健所とは別の法律が関わってきます。

あなたの「運転免許」でそのキッチンカーを運転できますか?

キッチンカーの運転に、特別な「資格」は必要ありません。多くの場合、「普通免許」で運転が可能です。

しかし、注意しなければならないのは、「いつ」普通免許を取得したかによって、運転できる車両のサイズ(車両総重量)が全く異なるという点です。

2017年3月12日の道路交通法改正により、運転免許の区分が変更されました。

免許の取得時期免許の区分(当時の普通免許)運転可能な車両総重量注意点
平成19年6月1日 以前普通免許8t 未満ほとんどのキッチンカーが運転可能。
平成19年6月2日 ~
平成29年3月11日
普通免許
(現在の中型8t限定)
5t 未満多くのキッチンカーが運転可能。
平成29年3月12日 以降普通免許3.5t 未満最も注意が必要。車両総重量が3.5tを超えるキッチンカーを運転すると無免許運転となる。

特に危険なのが、平成29年(2017年)3月12日以降に普通免許を取得した方です。運転できるのは車両総重量3.5t未満に限られます。

キッチンカーは、車両本体の重量に加え、冷蔵庫、フライヤー、発電機といった厨房設備、そして給排水タンク(200Lなら水だけで200kg)の重量が加わります。そのため、車両総重量が3.5tを容易に超過する可能性があります。

2017年以降に免許を取得した方が、知らずに3.5tを超える車両を運転した場合、「無免許運転」として厳しく罰せられます。この層の方が3.5tを超えるキッチンカーを運転するには、別途「準中型免許」の取得が必要になる場合があります。車両を選ぶ際は、必ず車検証で「車両総重量」を確認してください。

トレーラー型で必要な「牽引免許」

車両とキッチン部分が分離しているトレーラー(牽引)タイプのキッチンカーを運転する場合、そのトレーラーの総重量が750kgを超えると、運転免許とは別に「牽引免許」が必要になります。

公道で営業するための「道路使用許可」

保健所の「営業許可」は、あくまで「食品を調理・販売してもよい」という許可です。「どこで営業してもよい」という許可ではありません。

キッチンカーの営業場所は、原則として「私有地」(イベント会場、商業施設の駐車場、オフィスビルの敷地内など)です。

もし公道(道路脇や歩道)で一時的に停車して営業する場合は、保健所の「営業許可」とは別に、その道路を管轄する「警察署」から「道路使用許可」を取得する必要があります。

これは「食品衛生法」ではなく、「道路交通法」に基づく許可です。保健所の許可があっても、警察の道路使用許可なく公道で営業すれば、道路交通法違反となります。

許可が不要なケース 既製品の販売

例外として、キッチンカーの内部で「調理」を一切行わない場合は、「飲食店営業」の許可が不要なケースがあります。

例えば、固定店舗のパン屋や菓子工房で製造・包装されたパンやお菓子、あるいは工場で作られた弁当などを仕入れ、キッチンカーでは販売するだけ(温めなども行わない)の場合です。

ただし、この場合も「食品販売業」など別の許可が必要な場合や、自治体によってルールが異なる場合があります。調理を行わない場合であっても、必ず保健所に事前相談を行い、必要な許可の有無を確認してください。

まとめ キッチンカーの「資格」取得で夢を実現する

この記事で解説した、キッチンカー開業の「資格」と「許可」に関する要点を再確認します。

キッチンカー開業に必要な資格と許可の再確認

  • キッチンカー開業に「調理師免許」は不要です。
  • 必須なのは、「人」に対する資格である「食品衛生責任者」(車両1台に1名)の設置です。
  • 必須なのは、「車両と営業者」に対する許可である「飲食店営業許可」の取得です。
  • 「営業許可」の取得には、保健所の基準を満たした車両(設備)が不可欠です。
  • 特に「給排水タンクの容量」(40L, 80L, 200L)が、あなたのメニュー(ビジネスモデル)を決定します。
  • 2021年6月から、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理(計画と記録)が完全義務化されています。
  • 原則として、自宅のキッチンで「仕込み」はできず、別途「営業許可を得た仕込み場所」の確保が必要です。
  • 2017年3月12日以降に取得した「普通免許」では、車両総重量3.5t未満の車しか運転できません。
  • 公道で営業する場合は、保健所(食品)とは別に、警察署(交通)の「道路使用許可」が必要です。

成功への第一歩は「食品衛生責任者」の取得から

キッチンカー開業のプロセスは複雑に見えますが、最初に行うべきことは明確です。

まずは、1日の講習やeラーニングで取得可能であり、有効期限がなく、全国共通で使える「食品衛生責任者」の資格を取得することから始めましょう。

それが、保健所との「事前相談」に進むための必須アイテムであり、あなたの夢を現実にするための、最も確実な第一歩となります。

この記事の投稿者:

垣内

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