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フランチャイズのロイヤリティ相場とは?業種別比較と契約の罠

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フランチャイズでの独立を考えたとき、初期の加盟金に加えて、毎月払い続ける「ロイヤリティ」がどれほどの負担になるか、不安を感じていませんか。

もし、あなたが検討している本部の提示するロイヤリティが「相場」より著しく高く、知らずに契約してしまえば、どれだけ売上を上げても利益が手元に残らない未来が待っているかもしれません。

この記事は、フランチャイズのロイヤリティ構造を徹底的に分析したレポートです。この記事を最後まで読めば、あなたは各業種(飲食、コンビニ、美容など)の具体的な「相場」を知ることができます。

さらに、複雑なコンビニ業界のロイヤリティ体系や、「ロイヤリティ0円」のからくりまで、そのすべてを明確に理解できるでしょう。

本レポートで解説する計算方式ごとのメリット・デメリット、そして業種別相場の比較データを活用すれば、もはや本部の提示する数字に惑わされることはありません。

あなたはデータに基づいた客観的な視点を持ち、自身の事業計画にとって最も有利なフランチャイズ契約を見抜く「目」を養うことができます。

目次

フランチャイズの「ロイヤリティ」とは何か?

フランチャイズ契約を検討する上で、「ロイヤリティ」は加盟金と並んで最も重要な財務的要素です。この費用が事業の収益性を大きく左右します。まず、ロイヤリティの正確な定義と、その支払いの対価として何を得られるのかを理解することが不可欠です。

ロイヤリティの定義 本部に支払う「事業の対価」

フランチャイズ(FC)におけるロイヤリティとは、加盟店(フランチャイジー)が本部(フランチャイザー)に対し、事業を継続する上で毎月支払う対価を指します。

これは、開業時に一度だけ支払う「加盟金」とは明確に区別される、継続的な費用です。加盟店が本部の確立されたビジネスシステムを利用し続けるための、いわば「権利使用料」や「サブスクリプション費用」と理解するのが最も適切です。この支払いは、加盟店が本部のシステムを利用して利益を上げている限り、契約期間中ずっと続きます。

なぜロイヤリティを支払う必要があるのか? その対価とは

ロイヤリティは単なる「場所代」や「看板料」ではありません。加盟店はロイヤリティを支払うことで、本部が長年かけて築き上げた無形の資産や蓄積されたノウハウを利用する「権利」を得ます。この対価は、主に以下の3つの要素で構成されます。

対価1 確立された「ブランド・商標」の使用権

加盟店が得る最大の対価の一つは、本部の商標や店名を使用する権利です。消費者がすでに認知し、信頼を寄せているブランド力を使うことで、個人がゼロから開業する場合に比べて、圧倒的に早いスピードで顧客の信頼を獲得できます。

例えば、見知らぬ土地で食事処を探すとき、多くの消費者は全く知らない個人店よりも、見慣れた飲食チェーンの看板を選ぶ傾向があります。この集客効果こそがブランド力です。ロイヤリティには、この強力な「看板」を使用するための権利金が明確に含まれています。

対価2 成功が実証された「経営ノウハウ」の提供

本部は、長年にわたる直営店運営や既存加盟店のデータ分析を通じて、成功が実証された経営ノウハウを蓄積しています。これには、効率的な店舗オペレーション、独自の調理法、標準化された接客マニュアル、在庫管理の手法などが含まれます。

フランチャイズに加盟することで、加盟店はこの完成されたノウハウの提供を受けられます。これにより、飲食業や小売業の未経験者であっても、短期間の研修で事業を軌道に乗せることが可能になります。ロイヤリティは、この「成功への近道」とも言えるノウハウの対価でもあります。

対価3 継続的な「経営サポート」と指導

ロイヤリティの対価は、開業時だけに留まりません。むしろ、事業が続く限り提供される継続的なサポートこそが、ロイヤリティの本質的な価値の一つです。

具体的には、以下のようなサポートが含まれます。

  • 新商品や新サービスの開発と提供
  • 全国規模で展開されるマーケティングや広告キャンペーン
  • 販売データ(POSデータ)を分析するためのITシステムの提供・保守
  • スーパーバイザー(SV)による定期的な店舗巡回と経営指導
  • スタッフ教育や研修プログラムの提供

これらすべての活動は、本部がロイヤリティ収入を原資として行っています。加盟店はロイヤリティを支払うことで、個々の店舗では到底実現不可能な規模のサポートを受けられるのです。

加盟検討者にとって、ロイヤリティは単なる「コスト」として否定的に捉えられがちです。しかし、分析的な視点で見れば、これは「事業失敗のリスク」を軽減するための費用です。

個人がゼロからブランドを構築し、システムを開発し、仕入れルートを開拓するコストと、それに伴う膨大な失敗のリスクを考慮すれば、ロイヤリティは妥当な「リスク軽減費用」と言えます。

ただし、支払うロイヤリティの「額」と、本部から提供される「サポートの質」が必ずしも比例するとは限りません。したがって、加盟検討者はロイヤリティの比率(%)の高さや低さだけを比較するのではなく、「その対価として本部がどれだけのリスクを肩代わりし、どれだけ強力なサポート(特にITシステム、物流、商品開発力)を提供しているか」を精査する必要があります。

ロイヤリティの3つの計算方式 メリット・デメリットを徹底解剖

ロイヤリティの計算方式は、主に3種類存在します。どの方式を採用しているかによって、加盟店の収益構造とリスクの所在が根本的に変わります。自身の事業計画や経営スタイルに合った方式を選ぶことが極めて重要です。

方式1 売上歩合方式(売上高比例方式)

売上歩合方式(売上高比例方式とも呼ばれます)は、最も一般的な方式の一つです。これは、毎月の「売上高」全体に対して、あらかじめ定められた一定の割合(例:売上の5%)をロイヤリティとして支払う方式です。

メリット

この方式の最大のメリットは、計算がシンプルで分かりやすい点です。オーナーは毎月の売上高さえ把握していれば、支払うべきロイヤリティの額を即座に計算できます。

また、本部側にとっても、加盟店の売上を伸ばすことが自社の収益(ロイヤリティ収入)増加に直結します。そのため、本部は加盟店の売上を向上させるためのサポート(例:効果的な販促活動の提案、広告宣伝)に力を入れる強いインセンティブが働きます。

デメリット

一方で、この方式の最大のデメリットは、加盟店が赤字経営であっても支払い義務が発生する点です。

例えば、月の売上が100万円、ロイヤリティが売上の10%だった場合、10万円を支払う必要があります。しかし、その月の原材料費や人件費、家賃が高騰し、結果として利益がゼロ、あるいは赤字だったとしても、この10万円は容赦なく徴収されます。コスト管理が苦手なオーナーや、原価や経費の変動が激しいビジネスモデルにとっては、リスクの高い方式と言えます。

主な採用業種

この方式は、飲食業(ファストフード、カフェ、居酒屋など)や、美容室・エステサロンなど、幅広い業種で採用されています。

方式2 粗利分配方式(利益分配方式)

粗利分配方式(利益分配方式とも呼ばれます)は、加盟店の「粗利益(売上総利益)」に対して一定の割合を支払う方式です。

ここでいう「粗利益」とは、一般的に「売上高から売上原価(商品の仕入れ費など)を差し引いたもの」を指します。この「売上原価」に何を含めるか(廃棄ロスなど)は、本部との契約によって定義が異なるため、詳細な確認が必要です。

メリット

この方式のメリットは、売上が低い時期や、原価が高騰した時期のロイヤリティ負担を軽減できる点です。売上歩合方式とは異なり、まず売上から原価を差し引いた「儲けの原資(粗利)」を確定させ、そこからロイヤリティを計算します。そのため、売上歩合方式よりも公平な負担となりやすいと考えられています。

デメリット

デメリットとしては、計算が複雑であることが挙げられます。また、本部が加盟店の「粗利」を正確に把握するために、本部の指定するPOSシステムや会計システムの導入が必須となることが一般的です。

さらに、利益が大きくなるとロイヤリティの金額も非常に高額になる傾向があります。後述しますが、コンビニ業界で採用されているロイヤリティ率は30%から70%、あるいはそれ以上と、売上歩合方式の率(例:5%)に比べて桁違いに高く設定されています。

主な採用業種

この方式は、主にコンビニエンスストア業界で採用されています。

方式3 定額方式

定額方式は、加盟店の売上や利益の額に関わらず、毎月一定の金額(例:月額10万円)をロイヤリティとして支払う方式です。

メリット

この方式の最大のメリットは、事業計画が立てやすいことです。ロイヤリティという大きな固定費が確定しているため、損益分岐点の計算が容易になります。

さらに重要なメリットとして、売上が伸びれば伸びるほど、その利益の多くが加盟店の手元に残る点が挙げられます。

売上が100万円でも500万円でも支払うロイヤリティが(例えば)10万円で変わらないため、オーナーの経営努力が直接、手取り利益に反映されやすい構造です。3つの方式の中で、最もオーナーのモチベーション(インセンティブ)を高める方式と言えます。

デメリット

もちろん、メリットはそのままデメリットにもなります。最大のデメリットは、売上が低い時期(例えば開業直後や不況時)でも、容赦なく定額の支払い義務が発生する点です。売上がゼロであっても、定められた10万円(例)を支払わなければなりません。3つの方式の中で、売上が低い時のリスクが最も高い方式です。

主な採用業種

美容室やエステサロン、学習塾など、オーナーの技術や才覚が売上に大きく影響する業種や、「看板貸し」に近いモデルのフランチャイズで見られることがあります。

【比較表】どの方式がオーナーに有利か 収益モデル別シミュレーション

「どの方式が最も有利か」は、その店の売上や経費の状況によって全く異なります。ここでは、仮のシミュレーション(方式別相場を参考)を用いて、各方式のリスクとリターンの特性を比較します。

シミュレーション1 経営が苦しいケース

条件:売上 100万円 / 原価 30万円 / 粗利益 70万円 / その他経費(家賃・人件費等) 65万円

項目売上歩合方式 (相場10%)粗利分配方式 (相場30%)定額方式 (相場10万円)
売上100万円100万円100万円
粗利益70万円70万円70万円
ロイヤリティ10万円 (売上100万 x 10%)21万円 (粗利70万 x 30%)10万円 (固定額)
その他経費65万円65万円65万円
オーナー利益-5万円 (赤字)-16万円 (大赤字)-5万円 (赤字)

このシミュレーションからわかるように、経営が厳しい状況(粗利益が経費をわずかに上回る程度)では、粗利分配方式が最も大きな赤字を生み出しています。これは、相場の「率」自体が30%と高いためです。売上歩合方式と定額方式は、このケースでは同額の赤字となりました。

では、次に経営が軌道に乗り、売上が倍増した場合を見てみましょう。

シミュレーション2 経営が好調なケース

条件:売上 200万円 / 原価 60万円 / 粗利益 140万円 / その他経費(家賃・人件費等) 65万円

項目売上歩合方式 (相場10%)粗利分配方式 (相場30%)定額方式 (相場10万円)
売上200万円200万円200万円
粗利益140万円140万円140万円
ロイヤリティ20万円 (売上200万 x 10%)42万円 (粗利140万 x 30%)10万円 (固定額)
その他経費65万円65万円65万円
オーナー利益55万円 (黒字)33万円 (黒字)65万円 (黒字)

この結果は劇的に変わります。売上が伸びた場合、定額方式が最も多くの利益をオーナーの手元に残します。次に売上歩合方式が続きます。一方、粗利分配方式は、売上(粗利)の増加に伴いロイヤリティ負担も重くなり、最も手取りが少なくなる結果となりました。

この分析から、以下の特性が導き出されます。

  • 定額方式: 開業初期のリスクは高いが、売上が伸びた時のリターンが最も大きい(ハイリスク・ハイリターン)。
  • 売上歩合方式: 売上に応じて負担が増えるが、定額方式ほどではない(ミドルリスク・ミドルリターン)。
  • 粗利分配方式: 粗利(儲けの原資)を本部と分け合うため、リスクもリターンも本部と分配するモデル(ローリスク・ローリターンとは限らない)。

加盟検討者は、自身の事業計画(売上予測)とリスク許容度に基づき、どの方式が自分に合っているかを判断する必要があります。

【業種別】フランチャイズ ロイヤリティ相場 徹底比較

ロイヤリティの相場は、業種やビジネスモデルによって大きく異なります。ここでは、主要な業種別の相場と、その背景にあるビジネスモデルの違いを分析します。

業種ロイヤリティ相場主な計算方式分析(なぜその方式か)
ファストフード売上の3%〜10%売上歩合方式ブランド力とレシピ提供が対価の主軸。原価・人件費の管理は加盟店の裁量(リスク)に委ねられる部分が大きいため。
カフェ・喫茶店売上の5%〜8%売上歩合方式ファストフードと同様の理由。相場は比較的安定している。
居酒屋売上の5%〜10%売上歩合方式同上。ブランド力や仕入れルートの提供が価値となる。
美容室・エステ売上の5%〜10% または 月額10万〜20万円売上歩合方式 or 定額方式独自の手技やブランド提供が中心。定額制の場合は、独立オーナーへの「看板貸し」やシステム提供に近いモデルも多い。
学習塾要問い合わせ不明(多くは定額か売上歩合)教材システムや指導ノウハウの提供が中心。相場が非公開の傾向あり(後述)。
コンビニ粗利の43%〜83%粗利分配方式桁違いに高いが、分母が「粗利」。強力な物流網と情報システム(POS)の提供が対価に含まれるため。

学習塾のロイヤリティが「要問い合わせ」であることの意味

上記の比較表で特徴的なのは、学習塾業界です。調査した資料では、複数の学習塾フランチャイズのロイヤリティが「要問い合わせ」となっており、具体的な相場が公開されていません。

これは「データがない」という事実自体が、加盟検討者にとって重要な情報(=情報の非対称性が存在する)を示しています。

なぜ学習塾業界はロイヤリティを公開しない傾向があるのでしょうか。第一に、コンビニや飲食業と異なり、提供する「ノウハウ」や「教材システム」、講師のサポート体制が本部によって大きく異なるため、標準化された相場が形成されにくい可能性があります。

第二に、本部が加盟希望者の状況(立地、経験、教室規模)に応じて、ロイヤリティの条件を「交渉」によって個別に決定している可能性も考えられます。

加盟検討者にとって、これは不利な状況を生み出す可能性があります。情報が非公開であるため、本部に提示された条件が「相場」に対して妥当なのか、あるいは割高なのかを客観的に判断する材料が乏しくなります。

このような業界のフランチャイズを検討する場合には、単一のブランドだけでなく、必ず複数の本部から資料を取り寄せることが不可欠です。そして、ロイヤリティの「計算方式」と「具体的な金額」、さらに「その対価として提供されるサポートの範囲(特に教材開発費やシステム利用料が別途必要か)」を詳細に比較検討する必要があります。情報の透明性が低い本部との契約には、慎重な判断が求められます。

【最重要】コンビニ業界のロイヤリティ相場が「高い」本当の理由

フランチャイズのロイヤリティを比較する際、多くの独立検討者が最大の誤解を犯すのがコンビニ業界です。そのロイヤリティ率は43%から83%にも達し、飲食業の「売上の5%」などと比べると、一見して法外に高く見えます。しかし、この数字だけを見て「コンビニは儲からない」と判断するのは早計です。

「売上の5%」と「粗利の50%」は全くの別物

最大のポイントは、前述の通り「分母」の違いです。飲食業の多くは「売上」を分母にし、コンビニは「粗利(売上総利益)」を分母にしています。この違いが、オーナーの手残りに決定的な差をもたらします。

具体的に比較してみましょう。

仮に、あるコンビニの月間売上が1,500万円、商品の仕入れ原価(売上原価)が1,050万円だったとします。この場合の「粗利益」は、1,500万円 – 1,050万円 = 450万円です。

もし、このコンビニが飲食業と同じ「売上歩合方式(売上の5%)」を採用していたらどうなるでしょうか。ロイヤリティ支払額 = 1,500万円(売上) × 5% = 75万円

しかし、コンビニが採用している「粗利分配方式(仮に粗利の60%)」だった場合、支払額は全く異なります。ロイヤリティ支払額 = 450万円(粗利) × 60% = 270万円

このように、ロイヤリティの「率(%)」の数字だけを比較しても全く意味がありません。「何を基準(分母)に計算しているか」こそが本質です。コンビニのロイヤリティは、売上から原価を引いた「儲けの原資」を本部と分け合う契約なのです。

なぜコンビニは「粗利分配方式」を採用するのか

では、なぜコンビニ業界は、このように複雑で高率な「粗利分配方式」を標準として採用しているのでしょうか。それは、コンビニのビジネスモデルが、他のフランチャイズ(例えば飲食業)と根本的に異なるからです。

飲食業(売上歩合方式)の場合、本部の主な提供価値は「ブランド」と「レシピ」です。原材料の廃棄ロスや人件費の管理、日々のオペレーション効率化は、主に加盟店の「経営努力」に委ねられます。

一方、コンビニ(粗利分配方式)の場合、本部の提供価値は「ブランド」だけではありません。それ以上に、高度な情報システム、卓越した商品開発力、高密度な物流網といった要素が経営の根幹を成しています。

高度な情報システムとは、全国の店舗のPOSレジから販売データをリアルタイムで収集・分析し、「何が」「いつ」「どれだけ」売れるかを予測するシステムです。

卓越した商品開発力とは、この販売データに基づき、毎週のように消費者を飽きさせない新商品を開発・投入する力です。高密度な物流網とは、これらの新商品や弁当、おにぎりなどを1日に複数回、各店舗に正確に配送する(ジャストインタイムの)物流システムを指します。

コンビニ経営において「粗利」を生み出す源泉は、加盟店の努力もさることながら、この本部が提供する高度な「システム」そのものにあると言えます。したがって、本部と加盟店は「生み出した粗利を分け合う」という、より強固なパートナーシップ(あるいは運命共同体)の形をとります。このビジネスモデルの根幹的な違いが、計算方式の違い(売上歩合 vs 粗利分配)となって表れているのです。

大手3社のロイヤリティ体系(スライド制)を比較

さらに、コンビニのロイヤリティ(「チャージ」とも呼ばれます)は、単純な固定率ではありません。多くのチェーンが、その月の粗利益の額に応じてロイヤリティ率が変動する「スライド制」を採用しています。

また、ロイヤリティ率は、契約タイプ(加盟店が土地建物を自分で用意するか、本部が土地建物を用意=借上げるか)によっても大きく異なります。初期投資を抑えたい加盟店にとって一般的な「本部が土地建物を用意するタイプ」で、大手3社のロイヤリティ体系を比較します。

大手コンビニ3社 ロイヤリティ(チャージ)比較(本部が土地建物を用意する契約例)

粗利益(売上総利益)セブン-イレブン (Cタイプ)ファミリーマート (2FC-N)ローソン (FC-Cn)
250万円以下56%59% (~300万)45% (~300万)
250万~400万円66% (~400万)63% (300万~550万)70% (300万~450万)
400万~550万円71% (~550万)63% (300万~550万)60% (450万~)
550万円以上76%69%60%

注:上記は一例であり、契約時期や詳細な条件により異なります。セブン-イレブンは別途1%の減額措置が講じられている場合があります。

この比較表からは、各社の経営哲学の違いが明確に読み取れます。

まず、ローソン(FC-Cn)は、粗利が低い(300万円以下)オーナーには45%と、3社の中で最も低い率を適用し、経営基盤の弱い層を優遇しています。しかし、粗利が300万〜450万円の「中間層」に達すると、チャージ率が70%に跳ね上がり、3社の中で最も高い率を課しています。

次に、セブン-イレブンとファミリーマートは、基本的に粗利が上がれば上がるほど、本部の取り分(チャージ率)も上がっていく累進型の仕組みです。特にセブン-イレブンは、粗利が550万円を超えると76%という非常に高い率になります。

これは、本部のシステム(ブランド、物流、商品開発)こそが利益の源泉であるという哲学が強いため、加盟店の「努力」によって得られる利益増の上限を事実上設定している、と分析できます。「儲かれば儲かるほど本部が持っていく」構造は、加盟店のモチベーションを削ぐ可能性も指摘されます。

一方で、ローソンは「加盟店が自分で土地建物を用意するタイプ(FC-Bn)」の場合、粗利が600万円を超えるとロイヤリティ率が21%にまで急激に下がるという、特徴的なインセンティブ設計をしています。

これは、ローソンが「加盟店が土地のリスクを取るならば、青天井の利益を追求するインセンティブを与える」という、セブン-イレブンとは異なる哲学を持っていることを強く示唆しています。

加盟検討者は、単に「どのチェーンが有名か」ではなく、「自分がどの程度のリスク(土地の手当てなど)を取り、どれだけのリターンを望むか」という自身の事業戦略に基づき、各社のロイヤリティ哲学(インセンティブ構造)を深く見抜く必要があります。

「ロイヤリティ0円」のフランチャイズに潜む罠

フランチャイズの加盟店募集の中には、「ロイヤリティ0円」や「ロイヤリティなし」を魅力的なキャッチコピーとして謳う本部も存在します。継続的な費用負担がないことは、一見すると加盟店にとって非常に有利な条件に思えます。

しかし、冷静に分析する必要があります。本部は営利企業であり、加盟店から何らかの形で利益を得なければ、事業の継続も加盟店へのサポートも不可能になります。ロイヤリティが0円である場合、その利益は「別の名目」で徴収されている可能性が極めて高いと考えるべきです。

なぜロイヤリティ「なし」が可能なのか

ロイヤリティ0円が成り立つ「からくり」は、加盟店が本部に支払うコストが「透明」なロイヤリティから、「不透明」な別の費用に付け替えられているケースがほとんどです。

注意すべき「からくり」

加盟検討者が「ロイヤリティ0円」の言葉に惑わされず、契約前に必ず確認すべき「隠れたコスト」の代表例を挙げます。

仕入れ価格や卸値が割高に設定されている

最も一般的で、かつ加盟店が見抜きにくい「からくり」です。本部が加盟店に販売(卸す)する商品や原材料、あるいは必須の備品などの「仕入れ価格」に、本部利益(実質的なロイヤリティ)があらかじめ上乗せされているケースです。

例えば、ある商品を市場価格100円で仕入れられるところを、本部が「ロイヤリティ0円」の代わりに120円で加盟店に卸す契約になっている場合、差額の20円が実質的なロイヤリティとなります。

別途「管理費」や「システム利用料」が発生する

ロイヤリティという名目を使わず、「会員費用」「管理手数料」「月額システム利用料」といった別の名目で、実質的なロイヤリティ(多くの場合、定額方式に近い)を徴収しているケースです。

名目が異なるだけで、実態は毎月支払う継続的な費用であることに変わりはありません。

「ロイヤリティ0円」の契約には、透明性の欠如という最大のリスクが潜んでいます。

例えば、「ロイヤリティ 売上の5%」という契約は、透明性が高いです。オーナーは本部にいくら支払っているかを正確に把握できます。売上を伸ばし、原価や経費を削減すれば、手取りが増えるという経営の原則が機能します。

しかし、「ロイヤリティ0円(ただし仕入れ価格に上乗せ)」という契約は、透明性がゼロに等しいです。オーナーは、自分が支払っている「見えないロイヤリティ」が適正価格なのか、市場価格よりどれだけ高いのかを判断する術がありません。もし本部が仕入れ価格を不当に高く設定していた場合、加盟店がどれだけ売上を伸ばす努力をしても、その利益は(高い原価として)本部に吸い上げられ、オーナーの手元には利益が残らないという事態に陥ります。

ロイヤリティ0円のフランチャイズを検討する場合は、契約前に以下の点を徹底的に確認し、ロイヤリティが明示されている他社と総コストを比較することが賢明です。

  • 本部からの仕入れは必須か、それとも任意か。
  • 必須の場合、その仕入れ価格は市場価格と比較して妥当か(相見積もりは可能か)。
  • ロイヤリティ以外の月額費用(管理費、システム費、広告分担金など)が総額でいくらかかるか。

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まとめ ロイヤリティ相場を知り、賢明な事業計画を立てる

本レポートでは、フランチャイズのロイヤリティ相場について、その定義から計算方式、業界ごとの違い、そして契約上の注意点までを詳細に分析しました。

最後に、賢明な意思決定のために、本レポートの要点を再確認します。

ロイヤリティの対価の理解

ロイヤリティは、本部の「ブランド」「ノウハウ」「継続サポート」に対する正当な対価です。単なるコストではなく、事業失敗のリスクを軽減するための費用という側面も持ちます。

3つの計算方式の特性

計算方式には「売上歩合方式」「粗利分配方式」「定額方式」の3つがあります。それぞれリスクとリターンの特性が根本的に異なります。定額方式はハイリスク・ハイリターン、売上歩合方式はミドルリスク・ミドルリターン、粗利分配方式は本部とリスク・リターンを分け合うモデルです。

業種別相場の「分母」の違い

業種別相場では、飲食業が「売上の5%〜10%」が中心であるのに対し、コンビニは「粗利の43%〜83%」となっています。これは計算の「分母」が(売上か粗利か)根本的に異なるためであり、率の数字だけでの単純比較は無意味です。

コンビニ業界の「スライド制」

特にコンビニ大手3社は、粗利の額に応じてロイヤリティ率が変動する「スライド制」を採用しています。そのインセンティブ設計(儲かった時にどうなるか)には各社の経営哲学が色濃く表れており、自身の戦略に合うかを見極める必要があります。

「ロイヤリティ0円」の透明性

「ロイヤリティ0円」は、仕入れ価格への上乗せや別手数料といった「隠れたコスト」のサインである可能性が高いです。ロイヤリティが明示されている契約よりも、実質的なコストが高くなるリスクや、コスト構造が不透明になるリスクに注意が必要です。

フランチャイズでの独立成功は、ロイヤリティの「率」の低さだけで決まるものではありません。支払う対価(ロイヤリティ)と、それによって得られる価値(サポート、ブランド力、物流・情報システム)が、ご自身の事業計画において見合っているかを冷静に分析すること。それこそが、持続可能な事業を築くための最も重要な鍵となります。

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