
納税通知書に記載された数十万円という金額。この高額な固定資産税の支払いを、ただの「支出」から「ポイント獲得の機会」に変えたいとお考えではありませんか。クレジットカード払いを活用すれば、数千、場合によっては数万ポイントを獲得し、実質的な節約につなげることが可能です。
本記事を読めば、あなたは「なんとなく」で決済方法を選ぶ納税者から、手数料と還元率の損益分岐点を理解し、自身の納税額と所有カードに合わせた「最も賢い納付方法」を自ら選択できる、合理的な家計管理者になります。
「でも、手続きが複雑そう」「手数料で損したら?」という不安があるかもしれません。ご安心ください。2025年現在、納税方法は「eL-QR(エルキューアール)」で劇的に簡素化されました。
結論から申し上げます。クレジットカード払いは、納税額に応じた「システム利用料(手数料)」が発生します。この手数料(約0.8%~1.0%)を、お持ちのカードのポイント還元率(例:1.0%)が上回る場合にのみ、「得」になります。
還元率1.0%未満のカードで支払うと、確実に損をします。まずは、ご自身のカードの「税金支払い時の還元率」を確認することが最初のステップです。
目次
なぜ今、固定資産税のクレジットカード払いが注目されるのか?
これまで、固定資産税の支払いは「口座振替」か「金融機関・コンビニでの現金払い」が主流でした。これらは手数料こそかかりませんが、ポイントはもちろん、何のメリットも生まない「義務的な支出」でした。
一部の自治体では、かつて「Yahoo!公金支払い」などの個別サービスを通じてクレジットカード納付が可能でしたが、これは2022年3月末(令和4年3月31日)でサービスを終了しています。このため、過去の情報をもとに手続きを進めようとしても、現在は利用できないことに注意が必要です。
現在、注目されている背景には、eL-Tax(エルタックス:地方税ポータルシステム)の普及があります。これにより、納税通知書に「eL-QR」(エルキューアール)という統一規格のQRコードが印刷されるようになりました。
このeL-QRを活用し、「地方税お支払サイト」という共通ポータルサイトが整備されました。このサイトを通じて、全国どの自治体の固定資産税でも、原則としてクレジットカード(や他の多様な決済方法)で納付できるようになったのです。これが、今改めてクレジットカード払いが全国的な選択肢として注目される理由です。
メリット・デメリット徹底検証:手数料を払う価値はあるか?
クレジットカード納付には、明確な利点と、見落とされがちな欠点が存在します。これらを正確に比較することが、賢い選択につながります。
クレジットカード納付の6大メリット
ポイントが貯まる(最大のメリット)
納税額が大きいため、ポイント還元は大きな魅力です。例えば、納税額が10万円、還元率1.0%のカードであれば、1,000円相当のポイントが貯まります。
24時間・自宅で納付可能
金融機関の窓口やコンビニエンスストアへ出向く必要がありません。時間を問わず、自宅のPCやスマートフォンから手続きを完了できます。
支払いを先延ばしできる(後払い)
クレジットカードの引き落とし日(通常1~2ヶ月後)まで、実際の支出を繰り延べることができます。手元に現金がない場合などに有効です。
家計管理の一元化
カードの利用明細に納税記録が残るため、「いつ、いくら支払ったか」が一目瞭然になります。他の生活費と合わせて家計管理が容易になります。
高額な現金を持ち歩くリスクの回避
固定資産税は高額になりがちです。納付のために現金を持ち歩く紛失・盗難のリスクを避けられ、安全性が高まります。
支払い方法の柔軟性
カード会社のサービスとして、「分割払い」や「リボ払い」を選択できる場合があります。ただし、これは納税の分割ではなく、カード会社に対する支払い方法の変更であり、別途、カード会社所定の金利手数料が発生する点に注意が必要です。
無視できない4つのデメリットと注意点
システム利用料(手数料)がかかる
クレジットカード納付では、納税額に応じたシステム利用料(手数料)が自己負担となります。これは自治体が得るものではなく、決済システムを運営する事業者に支払う手数料です。金融機関やコンビニでの現金払い、口座振替ではこの手数料はかかりません。この手数料と、得られるポイント還元を比較することが最大の焦点です。
領収証書が発行されない
金融機関やコンビニの窓口で現金納付すると、領収印が押された領収証書(納付書の半券)が受け取れます。しかし、クレジットカードで納付した場合、この領収証書は発行されません。支払い履歴は、カード会社の利用明細や、「地方税お支払サイト」の納付履歴で確認することになります。
納税証明書の発行に時間がかかる
クレジットカードで納付手続きを完了してから、自治体がその納付情報を確認できるまでに、数日から数週間のタイムラグが生じる場合があります。不動産売買や融資手続きなどで、すぐに「納税証明書」が必要な場合、クレジットカード納付は不向きです。
この場合、金融機関や都税事務所などの窓口で現金納付し、その場で領収証書を受け取る方法を強く推奨します。
口座振替を利用中の方は「停止」が必要
クレジットカード払いは、eL-QRが印刷された納付書(納税通知書)が手元に必要です。しかし、現在「口座振替(自動引落)」を契約している場合、自治体は納付書を郵送してきません。
もしクレジットカード払いに切り替えたい場合は、事前に自治体の担当窓口(税務課など)へ連絡し、口座振替の停止手続きを行う必要があります。この手続きは即日完了しないことが多いため、納税通知書が発送される数ヶ月前から余裕を持って準備する必要があります。
損益分岐点はどこ?手数料とポイント還元の徹底シミュレーション

クレジットカード払いを選ぶかどうかの判断は、最終的に「手数料」と「ポイント」の比較にかかっています。
「地方税お支払サイト」のシステム利用料(手数料)の仕組み
かつては自治体ごとに手数料が異なるケースもありましたが、現在は「地方税お支払サイト」の料率に準拠するケースが一般的です。
手数料は納税額によって変動しますが、目安として納税額のおよそ0.8%~1.0%(税込)程度とされています。正確な手数料は、納付手続きの途中で必ず画面に表示されますので、その金額を必ず確認してください。
納税額別・損益シミュレーション早見表
ここでは、システム利用料を0.85%(税込)と仮定して、還元率の異なるカードで支払った場合の損益をシミュレーションします。
(注:ポイントは1ポイント=1円として計算。実際の手数料は納付時にサイトで必ず確認してください)
表1:納税額別・手数料とポイント還元の損益分岐
| 納税額 | システム利用料 (A) (0.85%と仮定) | 還元率0.5%カード (B) | 実質損益 (B-A) | 還元率1.0%カード (C) | 実質損益 (C-A) | 還元率1.2%カード (D) | 実質損益 (D-A) |
| 50,000円 | 425円 | 250ポイント | -175円 (損) | 500ポイント | +75円 (得) | 600ポイント | +175円 (得) |
| 100,000円 | 850円 | 500ポイント | -350円 (損) | 1,000ポイント | +150円 (得) | 1,200ポイント | +350円 (得) |
| 200,000円 | 1,700円 | 1,000ポイント | -700円 (損) | 2,000ポイント | +300円 (得) | 2,400ポイント | +700円 (得) |
| 300,000円 | 2,550円 | 1,500ポイント | -1,050円 (損) | 3,000ポイント | +450円 (得) | 3,600ポイント | +1,050円 (得) |
シミュレーションから導く「2つの鉄則」
このシミュレーション結果から、2つの重要な鉄則が導き出されます。
鉄則1:還元率1.0%以上のカードが必須
上記の表が示す通り、還元率0.5%の一般的なクレジットカードでは、納税額がいくらであっても手数料がポイントを上回り、必ず損をします。手数料率(この例では0.85%)を上回るポイント還元、つまり最低でも1.0%の還元率を持つカードが「得」をするための必須条件です。
鉄則2:「税金払い」で還元率が下がらないか確認せよ
「還元率1.0%のカードを持っているから大丈夫」と考えるのは早計です。多くのクレジットカード会社は、「税金」「公共料金」「電子マネーチャージ」といった特定の支払いについて、ポイント還元率の引き下げ(例:通常1.0% → 税金0.5%)またはポイント付与対象外としているケースがあります。
ご自身のカードの公式サイトや会員規約を確認し、固定資産税の支払い(「地方税お支払サイト」経由の支払い)がポイント付与の対象か、料率はいくらかを必ず確認してください。
eL-QRで簡単!固定資産税のクレジットカード納付 全手順
「地方税お支払サイト」を利用した納付手順は、非常にシンプルです。
準備するもの
納付手続きにあたり、eL-QR(エルキューアール)が印刷された納税通知書と、納付に利用するクレジットカード(Visa, Mastercard, JCB, American Express, Diners Clubなど)をご準備ください。
また、手続きはインターネットに接続されたスマートフォンまたはPCで行います。納付手続き完了の通知を受け取るために、メールアドレスも用意しておくと良いでしょう。
ステップ1:「地方税お支払サイト」にアクセス
スマートフォンのカメラで納税通知書のeL-QRを直接読み取るか、PCなどで「地方税お支払サイト」と検索して公式サイトにアクセスします。
ステップ2:eL-QRの読み取り、またはeL番号の入力
サイトのトップページにある「eL-QRでお支払い」ボタンを押し、カメラを起動して納税通知書のQRコードを読み取ります。PCの場合は、納税通知書に記載されている「eL番号(納付番号)」を直接手入力することも可能です。
第1期~第4期分など、複数の納付書を支払う場合は「続けて読み取る」ことで、まとめて決済手続きに進むことができます。
ステップ3:納付額の確認と支払い方法の選択
画面に納付先の自治体名、納付額が表示されるので、間違いがないかを確認します。「お支払いへ進む」を選択し、次画面で「お支払い方法」として「クレジットカード」を選択します。
(この画面で、インターネットバンキングやペイジー(Pay-easy)なども選択肢として表示されます)
ステップ4:システム利用料の確認とカード情報入力
支払い方法でクレジットカードを選択すると、決済手続きのための外部サイト(例:株式会社エフレジなど)に画面が遷移します。
この外部サイトの画面で、納税額に応じた「システム利用料」の見積額が明示されます。この金額を必ず確認し、ご自身のカードで得られるポイント還元額と比較してください。
内容に納得した上で、クレジットカード番号、有効期限、セキュリティコードなどの情報を入力します。
ステップ5:納付手続きの実行と完了
最終確認画面で「納付手続きを実行する」を選択します。「お手続き完了」の画面が表示されたら、その画面をスクリーンショットや印刷などで保存することを推奨します。
その後、手続きの際に入力したメールアドレスに「納付手続き完了のお知らせ」が届けば、全ての手続きは完了です。
クレジットカード払いが「損」になる場合の最適解は?
シミュレーションの結果、還元率1.0%以上のカードを持っていない方や、手数料を1円も払いたくない方にとって、クレジットカード払いは「損」になることが分かりました。
その場合の最適解は、手数料無料で、かつ間接的にポイントが貯まる「スマホ決済」または「電子マネー」です。
なぜ「代替案」が必要なのか?
手数料が無料であれば、たとえ得られるポイントが少なくても、確実に「得」をすることができます。特に固定資産税は金額が大きいため、0.5%の還元でも価値があります。
代替案1:スマホ決済(PayPay, 楽天ペイ)
納付書のeL-QRまたはバーコードを、スマートフォンの決済アプリで読み取って支払う方法です。
メリットとしては、手数料が原則無料であること、自宅で24時間いつでも納付可能な点が挙げられます。デメリットは、支払い上限額があること(例:1回30万円までなど)、領収証書が発行されない点です。
PayPay(ペイペイ)
2023年以降、PayPayの「請求書払い」は、ポイント付与(PayPayステップ)の対象外となりました。
結論として、自治体が独自に実施するキャンペーン(例:「〇〇市限定!請求書払いで10%還元」など)が開催されていない限り、PayPayで税金を支払う積極的なメリットは現在ありません。
楽天ペイ
楽天ペイの請求書払いも、支払いそのもの(楽天キャッシュやポイントでの支払い)ではポイントは付きません。しかし、楽天ペイは「楽天カード」と組み合わせることで価値が生まれます。
手順としては、まず「楽天カード」から「楽天キャッシュ」へチャージします(ここで0.5%の楽天ポイントを獲得)。次に、楽天ペイの請求書払いで、支払い元に「楽天キャッシュ」を指定して固定資産税を支払います(手数料無料)。
この手順を踏むことで、手数料無料で実質0.5%のポイント還元を確実に得られます。楽天カード保有者にとっては非常に強力な方法です。また、期間限定ポイントを税金の支払いに充当できるメリットもあります。
代替案2:電子マネー(nanaco, WAON)
対応するコンビニエンスストアのレジで、電子マネーを提示して支払う方法です。
メリットは、手数料が無料であること、そしてその場で領収証書(受領印が押された半券)が受け取れる点です。これは他のキャッシュレス決済にはない最大のメリットです。
デメリットは、対応するコンビニへ行く手間がかかること、事前にチャージが必要なこと、支払い上限額があること(例:nanacoは1回5万円まで。ただし超過分は現金との併用が可能)です。
nanaco(ナナコ)
nanacoでの税金支払い自体にポイントは付きません。しかし、特定のクレジットカードからチャージすることで、チャージ時にポイントが貯まります。
「セブンカード・プラス」からnanacoへチャージすると、200円につき1nanacoポイント(還元率0.5%)が貯まります。手数料無料で0.5%の還元を得つつ、「領収証書」も必須という場合に最適な選択肢です。
WAON(ワオン)
WAONでの税金支払い自体にポイントは付きません。「イオンカードセレクト」でWAONにオートチャージ設定をした場合に限り、200円につき1WAON POINT(還元率0.5%)が貯まります。イオンカードセレクトを保有し、ミニストップが近くにある方向けの選択肢です。
あなたに最適な固定資産税の支払い方法は?
これまでの分析を基に、ご自身の状況に合わせた最適な戦略を3つに分類します。
結論は「3つの戦略」に分かれる
戦略A(ハイリターン)手数料を払って、それ以上の高ポイントを狙う
対象者は、納税額が大きく、「税金払いでも還元率が1.0%以上」のクレジットカード(例:リクルートカード 1.2%)を保有している方です。選択肢は「地方税お支払サイト」でのクレジットカード払いとなります。
戦略B(ミドルリターン・手軽)手数料ゼロで、確実に0.5%の利益を得る
対象者は、楽天カードを持っており、手数料を払いたくない方、または手軽に自宅で済ませたい方です。選択肢は楽天ペイ(楽天カードから楽天キャッシュへのチャージ利用)です。
戦略C(ローリターン・安全)手数料ゼロで、領収証書を確保する
対象者は、手数料を払いたくない、かつ「領収証書」が必須の方、または「セブンカード・プラス」など対象カードを持っている方です。選択肢は電子マネー(nanaco, WAON)でのコンビニ払いとなります。
支払い方法別・メリット・デメリット比較一覧表
表2:固定資産税 決済方法 徹底比較
| 決済方法 | 手数料 | ポイント還元(実質) | 手軽さ(自宅) | 領収証書発行 |
| クレジットカード | あり (約0.85%) | 1.0%以上 (カード次第) | ◎ (自宅可) | × (発行不可) |
| 楽天ペイ(楽天キャッシュ) | 無料 | 0.5% (チャージ時) | ◎ (自宅可) | × (発行不可) |
| nanaco(コンビニ) | 無料 | 0.5% (チャージ時) | △ (コンビニ) | ◎ (その場で発行) |
| PayPay | 無料 | 0% (※キャンペーン除く) | ◎ (自宅可) | × (発行不可) |
| 口座振替 | 無料 | 0% | ○ (自動) | × (発行不可) |
| 現金(窓口) | 無料 | 0% | × (窓口へ) | ◎ (その場で発行) |
固定資産税のクレジットカード払い よくある質問

どのクレジットカードがおすすめですか?
どの戦略を選ぶかによって異なります。
戦略A(直接払い)向けとしては、リクルートカード(基本還元率1.2%)、Orico Card THE POINT(基本還元率1.0%)など、基本還元率が高く、税金払いで還元率が下がらない(または引き下げ後も1.0%以上を維持する)カードです。
戦略B(楽天ペイ)向けとしては、楽天カード一択です(楽天キャッシュへのチャージで0.5%還元を得るため)。
戦略C(nanaco)向けとしては、セブンカード・プラスです(nanacoへのチャージで0.5%還元を得るため)。
固定資産税は1年分を一括で払うべきか、4期に分けて払うべきか?
クレジットカード払いの観点からは、「1年分を一括」で支払うことをお勧めします。
システム利用料は、納付書1枚ごと(決済1回ごと)に計算されます。4期に分けて4回決済すると、手数料の計算上、総額が割高になる可能性があります(例:手数料に「最初の1万円まで〇〇円」といった固定費が含まれる場合)。また、ポイントも一度にまとめて獲得できるため、管理が容易です。
納付書がeL-QRに対応していませんか?
自治体によっては、eL-QRの導入が遅れている場合があります。その場合、「地方税お支払サイト」は利用できません。
納付書に記載されている納付方法(金融機関、コンビニ、または自治体独自の決済サイトなど)を確認し、その方法に従ってください。
クレジットカードで納付した場合、二重払いになるリスクは?
「地方税お支払サイト」で一度納付手続きが完了したeL-QRを再度読み込むと、「納付手続きが完了しています」と表示される仕組みになっています。そのため、eL-QR経由での二重払いのリスクは低いです。
ただし、最も注意すべきは「口座振替」との二重払いです。口座振替の停止手続きを忘れたままクレジットカードで納付してしまうと、二重払いが発生する可能性があります。口座振替の停止は確実に行ってください。
まとめ:ご自身の納税額とカード還元率で最適な方法を選択しましょう
固定資産税の支払いは、「地方税お支払サイト」とeL-QRの登場により、クレジットカード納付が全国的に可能な、身近な選択肢となりました。
最大のメリットはポイント還元ですが、システム利用料(手数料)という見逃せないデメリットが存在します。
還元率1.0%未満のカードで支払うと、手数料負けして「損」をします。ご自身のカードが「税金払い」で何%の還元率になるか、必ず確認してください。
もし手数料を払いたくない、または高還元率カードを持っていない場合でも、楽天ペイ(楽天キャッシュ利用で0.5%還元)や nanaco(特定カードチャージで0.5%還元)といった、手数料無料で実質的な利益を得られる優れた代替案が存在します。
ご自身の納税通知書を手に取り、本記事のシミュレーションと戦略を参考に、ご自身のカード還元率と照らし合わせ、最も賢い納付方法をご選択ください。



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