
税理士事務所に書類を送る際には、ビジネスマナーとして送付状(送り状・添え状)を添えることが一般的です。
送付状とは、書類や資料を郵送・FAX送信する際に同封するあいさつ文書のことで、法人経営者や個人事業主にとって取引先や専門家との円滑なやり取りに欠かせない存在です。
本記事では、税理士事務所宛て送付状の正しい書き方を、目的や構成要素、注意点から文例テンプレート、さらにWord形式・PDF形式での作成ポイントや実務での活用シーンまで詳しく解説します。
ビジネスライクなトーンでまとめていますので、雛形だけ欲しい方も、送付状の意味や応用を深掘りしたい方もぜひ参考にしてください。
目次
送付状とは何か?税理士事務所への送付状が必要な理由
送付状とは、書類を郵送やFAXで送る際に添えるカバーレターのことです。
「送り状」や「添え状」とも呼ばれます。法的に必須の書類ではありませんが、ビジネスマナーとして添付することで相手への印象を良くし、内容物の確認にも役立ちます。
特に税理士事務所に経理書類や申告資料を送付する場合、送付状を付けることには次のような目的があります。
丁寧なあいさつと信頼感の醸成
送付状を添えることで、「平素お世話になっております」など日頃の感謝の気持ちを伝えられます。
いきなり本題の書類だけ送りつけるよりも、ひと手間かけた挨拶文がある方がていねいで、相手に好印象を与えます。税理士との信頼関係構築にもつながります。
送付物の内容確認・ミス防止
送付状には送付物の概要や点数を記載できます。同封した書類が何で何部あるのかを明記することで、相手は受け取った書類の不足や過剰を一目で確認できます。
例えば領収書や契約書など複数の資料を送る際、送付状に一覧で書いておけば「〇〇書類○部、〇〇資料○枚」といった形でミスを防止できます。
特に税理士事務所では多くの顧客書類を扱うため、送付状があれば書類の取り違えや漏れを未然に防ぐことができます。
補足説明や依頼事項の伝達
郵送物に関して補足説明が必要な場合や、受け取った後にお願いしたいことがある場合にも、送付状の本文中で触れることができます。
例えば「今月分の領収書です。内訳一覧を同封しておりますのでご確認ください」や「お手数ですが〇月〇日までにご確認のほどよろしくお願いいたします」等と記載し、相手へのアクションを促すことも可能です。
以上のように、送付状は単なる形式ではなく実務上のメリットがあります。特に税理士事務所への書類送付では、経理・税務に関わる重要書類を扱うため、送付状による丁寧な対応が信頼感アップとミス防止に直結します。
税理士宛送付状の文例テンプレート
送付状のイメージをつかんでいただくために、まずは税理士事務所宛て送付状の雛形(テンプレート)を示します。日付や宛先・差出人名、送付物の内容を適宜入れ替えて利用できる例文です。
令和〇年〇月〇日
〇〇税理士事務所 御中
〇〇株式会社
経理部 〇〇〇〇
〒123-4567 東京都〇〇区〇〇町1-2-3
TEL: 03-1234-XXXX / FAX: 03-1234-YYYY
E-mail: [email protected]
件名:書類送付のご案内
拝啓 平素より大変お世話になっております。
さて、令和〇年度の確定申告に必要な資料一式を取りまとめましたので、本状をもちまして送付申し上げます。ご多用のところ恐縮ですが、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
今後とも変わらぬご指導のほど何卒よろしくお願いいたします。
敬具
記
・令和〇年度 確定申告用資料 一式
以上
〈テンプレートの補足〉
上記は一般的なビジネス文書形式で作成した送付状の例です。日付(和暦・西暦どちらでも可)を右上に、宛先(税理士事務所名)を左上に記載し、自社名・担当者名や連絡先を宛先より下の位置に明記しています。
件名で送付内容を簡潔に示し、本文では頭語「拝啓」から始めて前文(挨拶)・主文(送付物の説明)・末文(結びの言葉)を構成し、結語「敬具」で結んでいます。
最後に「記」を中央に配置し、その下に送付書類の名称と部数を箇条書きで列挙、末尾に「以上」を右寄せで記載しています。社名や担当者名、送付する書類名などを差し替えれば、そのまま実務で使える汎用的なひな形となっています。
では次に、この送付状の各要素をどのように書けば良いのか、基本構成と書き方のポイントを詳しく見ていきましょう。
税理士宛送付状の基本構成と書き方
送付状には決まった公的な様式はありませんが、ビジネス文書として一般的に押さえておくべき必須項目があります。以下が送付状の基本的な構成要素です。
- 送付日(作成日)
- 宛先(送付先の会社名・部署名・担当者名)
- 差出人の情報(自社名・部署名・氏名・連絡先)
- 件名(タイトル)
- 挨拶文(前文・本文・末文)
- 同封書類の内容と数量(書類名・部数)
- 以上(締め括りの語)
それぞれの項目について、正しい書き方と注意点を順に解説します。
宛名(宛先)の書き方
宛先は送付状の左上に記載します。
税理士事務所に送る場合、まず事務所名や法人名を正式名称で書きます(例:「〇〇税理士法人」「〇〇税理士事務所」など)。
株式会社などの法人格は略さず「株式会社○○」のように正式に表記しましょう(※「(株)○○」といった略記はビジネス文書ではNGです)。
宛名の敬称は、送り先が組織(税理士事務所そのもの)の場合は「御中」を付けます。上記テンプレート例のように「〇〇税理士事務所 御中」とする形です。
特定の担当者や税理士個人宛てに送る場合は、その方の氏名をフルネームで記載し、敬称は「様」を用います(例:「〇〇税理士事務所 税理士 山田太郎 様」や「〇〇税理士法人 山田太郎 様」)。
「御中」と「様」は併用しない点に注意してください。
誰宛かわからない場合や一般的な問い合わせ用に送る場合は無理に個人名を書かず、「御中」で問題ありません。
宛先には通常、郵便番号や住所、電話番号等は書きません。事務所名+御中(または担当者名+様)のみで構いません(封筒の宛名書きとは異なります)。送付状自体には送り先の所在地は記載しないケースが一般的です。
日付の書き方
送付した日付(作成日)を送付状の右上に記載します。和暦でも西暦でも構いませんが、社内の文書様式に合わせましょう。例えば「令和〇年〇月〇日」あるいは「20XX年○月○日」のように年月日を明記します。
日付は書類を投函・送信する日を記入します(多少前後しても実務上大きな問題にはなりませんが、できるだけ正確な発送日を記載しましょう)。
日付の下に改行して差出人情報を書くため、日付は1行で完結させます。「吉日」などの表現は使わず具体的な日付を書きます。
なお、ビジネス文書では日付を漢数字で「令和〇年〇月〇日」とする例が多いですが、算用数字(アラビア数字)でも読みやすければ問題ありません。
差出人情報(自社情報)の書き方
宛先より少し下がった位置(一般的には宛名より2〜3行下)に、差出人側の情報を記載します。自社名や差出人の所属・氏名、そして連絡先まで書いておくのが親切です。
書式としては、右上の日付の下あたりから書き始め、宛先より右側に収まるよう配置すると見栄えが良くなります(宛名より上に差出人が来ないように注意します。受取人より自分の情報が上にあると失礼に当たるためです)。
差出人情報に含める内容は次の通りです。
会社名(屋号)
株式会社・合同会社等は正式名称で記載。個人事業主の場合は本人氏名の後に屋号も付記すると丁寧です。例:「山田太郎(屋号:ヤマダ工房)」。
部署名・役職名
差出人が所属する部署や肩書きを必要に応じて記載します(例:「経理部 課長」など)。
氏名
担当者個人の氏名をフルネームで書きます。氏名の後ろに必要であれば「印」などと付けて社判を押すスペースを作ることもあります。
住所
郵便番号、所在地を番地・ビル名まで正確に。会社の所在地を明記しておくことで、万一郵便事故があった場合にも返送先がわかります。ただし、社用のレターヘッド(社名や住所が入った便箋)を使う場合は省略可能です。
連絡先
電話番号、FAX番号、メールアドレスなど。特に書類に不備があった際にすぐ連絡が取れる連絡先を記載しておくと親切です。
差出人情報は箇条書きではなく1つの塊として書きます。上記テンプレートでは会社名と部署・氏名を1〜2行で書き、その下に住所やTEL等をまとめています。
自社名に続けて社判(会社の角印)を押印することもあります。押印は義務ではありませんが、会社実印や角印がある場合は送付状に捺印すると書類の正式性が高まり、より信頼度が増すでしょう(個人事業主の場合は屋号のゴム印や認印でも構いません)。
件名(タイトル)の書き方
件名は送付状の冒頭、本文の上部にタイトル(表題)として記載します。件名を書く位置は厳密には決まっていませんが、宛名・差出人の後、本文の前あたりに中央寄せや左寄せで書くのが一般的です。他の文よりも少し文字を大きくしたり、太字にすると目立ちます。
件名には、この送付状で何を伝えるかをひと目でわかるように簡潔に書きます。例えば以下のような表現が用いられます。
- 「書類送付のご案内」
- 「○○書類送付の件」
- 「○○資料送付のお知らせ」
- 「請求書送付のご連絡」 など
税理士事務所に経理関連書類を送るケースでは、「確定申告書類送付の件」「領収書送付のご案内」のように、具体的な書類名を入れると親切です。
件名末尾に「について」や「につきまして」は付けなくても伝わりますので、「○○の件」「○○のご送付」とシンプルにまとめましょう。
件名を書くことで、この文書が「何のための送付状なのか」を相手がすぐ理解でき、後から書類を整理するときにも表題が役立ちます。
挨拶文・本文の書き方(前文・主文・末文)
送付状の本文は、ビジネスレターの形式に則って書きます。一般的には頭語と前文→主文→末文→結語の順で構成します。それぞれのパートの書き方と例を見てみましょう。
頭語と前文(挨拶の書き出し)
ビジネス文書では「拝啓」などの頭語で書き始めるのが正式です。頭語の後に続けて、日頃の感謝や相手の繁栄を喜ぶ挨拶(前文)を書きます。
例えば「拝啓 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。」や「拝啓 貴所ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。」などが定型です。
ただし、送付状の場合はあまり季節の時候の挨拶などは入れずに簡潔なビジネス挨拶で問題ありません。
「いつもお世話になっております。」だけでも前文の挨拶として十分です(頭語を省略する場合はこの一文から始めても構いません)。
税理士との関係性によっては「平素より大変お世話になっております。」など少し丁寧な表現にするとよいでしょう。
主文(用件の本題)
送付状の主文では、「何を送ったか」「送付物の内容」を端的に伝えます。
例えば、「この度、○月分の領収書の原本を取りまとめましたので、同封いたしました。」や「〇〇の契約書をお送りしますので、ご確認くださいますようお願いいたします。」といった具合です。
ポイントは、「〇〇を送付いたします」「〇〇を同封しました」といった送付の事実を明記し、それに対する相手のアクション(確認してください、受領お願いします 等)を添えることです。
税理士事務所向けであれば、「令和〇年度決算書類一式を送付申し上げますので、ご査収くださいますようお願い致します。」などと書けば、送った書類の概要が伝わります。
末文(結びの挨拶)
最後に、今後のお付き合いを願う一文や締めの挨拶を書きます。定型的には「何卒よろしくお願い申し上げます。」や「引き続きご指導ご鞭撻のほどお願い致します。」「まずは書中をもってご連絡申し上げます。」などが使われます。
税理士とのやり取りであれば、「今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」や「引き続きよろしくご指導のほどお願い申し上げます。」といった表現が適切でしょう。あまり長々とは書かず、簡潔に締めくくるのがポイントです。
結語
本文を終えたら、頭語「拝啓」に対応する結語「敬具」を文末に入れます。頭語を使わず簡易な挨拶ではじめた場合は結語も省略します。
送付状では頭語・結語を省略するケースも多いですが、正式には「拝啓 … 敬具」のセットで用いるとよりビジネス文書らしい体裁となります。
以上が本文(挨拶文)の構成です。なお、時候の挨拶(季節に触れる表現)は、送付状のような事務的文書では基本的に不要です。
請求書送付状などでも季節の話題は省きます。同様に税理士宛ての送付状でもビジネスライクに簡潔な挨拶で問題ありません。
文章全体は敬語(丁寧語・謙譲語)を用い、主語を書きすぎないことも大切です(「当方は〜」「弊社が〜」など主語を省略しても明確な場合は省略し、簡潔な文章にします)。
また、一文が長くなりすぎないよう適度に句点で切り、読みやすくしましょう。
同封書類の書き方(「記」と箇条書き、以上の配置)
本文で送付物の送付を伝えたら、その下に実際の同封書類の一覧を示します。
これには「記(き)」という漢字一文字を用いた様式を使います。本文を結語(または末文)で締めくくった後、1行空けて中央に「記」と書き、その下の行から送付書類の内容を箇条書きで列挙します。
箇条書きの書き方は、行頭に「・」や「○」などの記号を付け、送付する書類名と部数を明記します。例えば
記
・領収書(〇年〇月〜〇月分) 〇〇枚
・契約書コピー 一部
・決算報告書 一式
以上
上記のように、送付するものをひとつひとつ列挙します。「一式」という表現は、複数の書類をまとめて送る場合によく使われます(例えば「経費証憑類 一式」のように、細かい内訳は割愛して一括りにできる)。
特定の枚数がある場合は「○枚」「○部」と記載しましょう。部数の単位は、紙1枚なら「1枚」、書類一揃いなら「1部」や「一式」とします。
箇条書きで全ての送付物を列挙したら、最後に「以上」とだけ書いて左寄せまたは右寄せで配置します(一般的には用紙の右下に置くことが多いです)。
「以上」は「これで列挙は終わりです」という意味で、文書全体の締め括りを示します。
注意:送付物の書き漏れがないようにしましょう。送ったつもりの書類名を書き忘れると、相手が混乱したり紛失と勘違いする恐れがあります。逆に、送付状に書いたのに同封し忘れた…というミスも避けねばなりません。
送付状の「記」の欄と実際の封入物を必ず突き合わせて確認する習慣をつけましょう。
頭語・結語や押印などその他のマナー
前述の通り、正式なビジネス文書としては頭語・結語(拝啓・敬具など)を用いるのが基本です。ただし、実務では送付状においては簡略化し、「拝啓」「敬具」を省いて書くケースも少なくありません。
特にメール送付の場合はメール本文がそのまま送付状代わりになるため頭語・結語は不要です。郵送やFAXで改まった送付状を作成する際には、できれば頭語と結語を入れて丁寧な文面にするとよいでしょう。
押印に関しては、送付状には必ずしも印鑑を押す必要はありません。しかし、会社の角印や担当者の認印等を押せるスペースがあれば押印するとベターです。
例えば社名の横に「㈱〇〇 代表印」のような角印を押すと、公的な書類である印象が強まり、改ざん防止や信頼性の向上につながります。
ただし電子メールでPDF送付する場合は物理的な押印はできませんので、無理に電子印影を入れる必要はありません(先方とのやり取りで特に押印書類を求められていなければ問題ありません)。
フォントやレイアウトのマナーとしては、一般的に横書きA4用紙で作成するのが標準です。日本語フォントは明朝体(MS明朝など)やゴシック体(MSゴシックなど)を使用します。
あまり装飾的なフォントやカラー文字は用いず、黒の本文でシンプルにまとめましょう。用紙の余白も左右上下2〜3cm程度取り、全体がバランスよく配置されるようにします。
以上が送付状の基本的な書き方です。次章では、実際に送付状を作成・送付するときに気をつけたいポイントや、よくあるNG例について説明します。
送付状作成時の注意点(マナーとNG例)
送付状を書く際に押さえておきたいマナーと、やってはいけないNG表現をまとめます。ビジネス文書として失礼のないよう、以下の点に注意しましょう。
丁寧すぎない簡潔な文章
送付状はあくまで添え状ですので、長文や不要な情報は避けます。ダラダラとした説明を書くより、挨拶→要件→結びを簡潔にまとめる方が読み手に親切です。敬語は丁寧に使いつつも、回りくどい表現にならないよう注意します。
社名や団体名の正式表記
繰り返しになりますが、宛先・差出人ともに組織名は正式名称で書きます。特に相手の会社名や税理士事務所名を省略せず正確に書くことは最低限の礼儀です。「〇〇税理士法人」を「〇〇会計」など略称で書かないようにしましょう。
また、自社名の「株式会社」「有限会社」等も正式に。(株)や(有)といった略記はNGです。
敬称の使い分けミス
宛名で「御中」と「様」を混同しないようにします。「〇〇税理士事務所 御中 ○○様」のように二重敬称になるのは誤りです。
また、税理士個人名に「先生」という敬称を付けることがありますが、ビジネス文書上は避けた方が無難です(先生は主に口頭や社内での呼称にとどめ、正式文書では「様」を使う方がフォーマルです)。
カジュアルすぎる表現
いくら親しい税理士相手でも、送付状ではビジネスライクな丁寧語を使います。
例えば「よろしくお願いします」をさらに砕けた「よろしくです」などにしない、「〜してください」を「〜して下さい」としない等、正しい敬語・漢字を使いましょう。
結びの挨拶も「では、よろしくお願いします。」のように砕けた口語調は避け、「何卒よろしくお願い申し上げます。」など改まった表現にします。
誤字脱字・数字の間違い
日付や数字、送り先名に間違いがないか必ず確認しましょう。特に西暦・和暦の年号、日付の変換ミス、送り先の宛名の漢字ミスなどは信頼を損ないます。送付書類の枚数も箇条書きと実物で相違がないよう注意が必要です。
不要な情報は書かない:まれに送り手が自分の業務状況などを書きすぎてしまうケースがありますが、「忙しくてギリギリになりましたが送ります」などの言い訳や内情は書かないのが鉄則です。
ビジネス文書では相手に関係のない情報は不要です。用件に直接関係ないことは記載しないようにします。
社外秘情報や個人情報の扱い:送付状自体には機微な情報を書くことは少ないですが、同封資料に社外秘や個人情報が含まれる場合には、送付状に「※本書類は機密性の高い情報を含みますので取扱いにご留意ください」など一言添えても良いでしょう。
また、封筒やメール送信時には宛先を間違えないよう最新の注意を払ってください(特にメールの場合、誤送信防止に送付状PDFにパスワードをかけるといった配慮も考えられます)。
以上が注意点です。では、実際によくあるNGパターンを具体的に示してみます。
やってはいけない送付状の例(NG例)
以下に、ビジネスマナー的に不適切な送付状の文例を示します。この例がなぜNGなのかも解説します。
【NG例】
いつもお世話になっています。
領収書送ります。よろしくお願いします。
○○会社 (株)
山田
〈NG例の問題点〉
まず冒頭の「あいさつ」がカジュアルすぎます。「いつもお世話になっています。」は口語表現であり、正しくは「いつもお世話になっております。」とします。頭語(拝啓)もなく簡単すぎる書き出しです。
次に本文もわずか一行で、「領収書送ります。よろしくお願いします。」では用件の説明不足でぶっきらぼうな印象を与えます。本来なら「この度、〇〇のため領収書原本を送付いたしますのでご査収ください。」など丁寧に書くべきです。
また結びの言葉もなく、いきなり終わってしまっています。
さらに差出人情報を見ると、会社名を「○○会社 (株)」と略記しています。これは正式名称ではなくNGですし、社名の前後の表記ゆれもあります(「会社」「(株)」の重複もおかしい点です)。
担当者名も名字だけ「山田」と書かれており、フルネーム・所属部署も不明です。これでは受け取った税理士事務所側が戸惑ってしまいます。
総じてこのNG例は、「形式無視・情報不足・語弊あり」の悪いお手本です。送付状では形式を整え、必要な情報を過不足なく記載し、丁寧な言葉遣いを心がけることが大切だとわかりますね。
送付状をWordで作成するポイント
送付状はパソコンの文書作成ソフト(多くはMicrosoft Word)で作るのが一般的です。Wordを使えば社内テンプレートを用意したり、過去の送付状を流用して効率よく作成できます。ここではWordで送付状を作成する際のポイントを紹介します。
テンプレートやひな形の活用
Wordにはビジネス文書用のテンプレートが存在しますし、社内で統一書式を作っている会社もあるでしょう。最初に送付状の基本レイアウト(前述の宛名・日付・件名・本文・記の配置など)を作成し、ひな形として保存しておくと便利です。
宛先や件名、送付物の部分だけ差し替えれば毎回ゼロから書かずに済みます。
Microsoft社や各種ビジネス情報サイトで「送付状テンプレート(Word形式)」が無料公開されているので、それらをダウンロードして自社向けにカスタマイズするのも良いでしょう(※ダウンロードには会員登録等が必要な場合もありますが、リンク先を記載せずここでは説明のみとしておきます)。
書式設定とレイアウト
Wordで文書を作る際には、ページ設定で用紙サイズや余白を整えます。通常はA4縦置き、上下左右に約20〜25mm程度の余白を設定するとバランスが良くなります。
差出人情報や日付を右寄せにしたい場合、タブやスペースで調整せず、適切に右揃え(右インデント)の機能を使いましょう。件名は中央揃え、本文は均等割付または左揃えで書き始めるなど、見栄えを意識して配置します。
フォント・文字サイズ
日本語フォントは明朝体かゴシック体が無難です。
内容が多くない場合、全体を通じて10.5pt〜12pt程度の文字サイズが読みやすいでしょう(宛名や件名を少し大きめのフォントにすることもありますが、極端に大きくすると浮いてしまうため注意)。
また、件名部分を太字(ボールド)にしたり下線を引いたりしても構いませんが、過度な装飾はかえって見づらくなるのでシンプルさを心がけます。
差出人情報の配置
Wordで差出人情報を用紙の適切な位置に配置するには、表やテキストボックスを使う手もあります。
例えば会社名・住所・連絡先をひとかたまりにして右寄せしたい場合、その部分だけテキストボックスを挿入して右上に配置すれば思い通りの位置に収まります。
もしくは段落設定で右インデントを大きく取って右端に寄せる方法もあります。いずれにせよ、宛先より上に差出人が来ないよう細心の注意を払いましょう(Wordではレイアウトずれが起きることもあるので、印刷プレビューで全体の位置関係を確認します)。
印刷と社判
完成した送付状はプリンターで印刷して使用します。印刷後、差出人欄に社判(会社の角印)や担当者の認印を押す場合は、Word文書上で名前の横などに(印)と入れておくと押印位置の目安になります。
押印は朱肉の滲みなどもあるので、文字にかぶらないよう少しスペースを空けてレイアウトしておくと良いでしょう。
ファイル名の工夫
Wordファイルを保存する際、あとで探しやすいように「送付状_〇〇宛_2025年05月20日.docx」のようなファイル名にしておくことをおすすめします。送付先や日付をファイル名に含めることで、後日の記録管理に役立ちます。
また、税理士事務所ごとにフォルダを分けて保存するなど、ドキュメント管理の工夫も検討してください。
Wordで作成すれば誤字の赤い波線表示や文章校正機能も使えるため、手書きよりミスを防ぎやすくなります。初めて送付状を書く方は、最初に少し時間をかけてテンプレートを整備しておくと、次回以降の効率が格段に上がるでしょう。
送付状をPDFで作成・送信するポイント
近年は紙の郵送だけでなく、PDF形式で送付状ごとメール送信するケースも増えてきました。PDFは「Portable Document Format」の略で、電子化された文書ファイル形式です。
Wordで作成した送付状を相手に送る際、編集可能なWordファイル(.docx)ではなくPDFに変換して送付するといった方法があります。その理由やメリット、注意点を解説します。
PDFで送るメリット
PDFはレイアウトが固定されるため、相手の環境で崩れたり意図せず編集される心配がありません。誰でも無料のAdobe Reader等で開ける汎用フォーマットなので、先方がWordソフトを持っていなくても閲覧できます。
また、ファイルサイズも適度に圧縮され、メール添付に向いています。税理士事務所側でも電子保存したい場合、PDFの方が扱いやすいでしょう。
PDFへの変換方法
Microsoft WordからPDFに変換するのは簡単です。Wordの「名前を付けて保存」メニューからファイルの種類をPDFに選択するだけで変換できます(他の文書ソフトでも印刷時にPDF出力する機能があります)。
変換時は、ファイル名を分かりやすく設定し(例:「送付状_〇〇税理士事務所宛_2025-05-20.pdf」)、PDFのプロパティにタイトルや作成者情報を入れておくと丁寧です。
電子署名やパスワード
紙に印鑑を押す代わりに、PDFに電子署名を付与したり印影を画像で貼り付ける方法もあります。ただし、相手がそれを正式な押印と認めてくれるかはケースバイケースです。
税理士事務所とのやり取りでは、通常はPDF送付状に押印なしでも問題ありませんが、心配であればパスワード付きZIPで送る、メール本文で送付内容を再度確認してもらう、といった対策を講じると良いでしょう。
メール本文との役割分担
PDFで送付状を添付する場合でも、メール本文がまったく空欄では不親切です。メールの本文にも簡単に挨拶と要件を書き、詳細は添付の送付状PDFをご覧ください、という形にすると丁寧です。
もしくは、メール本文そのものを送付状の本文として使う形でも構いません。この場合、わざわざPDFを添付せずメール本文中に「〇〇書類を送付いたします。ご査収ください。」と書けば実質同じ役割を果たします。
送付状PDFを添付するのは、紙の書式そのままをデータで送りたい場合や、社内記録用に押印済みのものを残しておきたい場合などに限定しても良いでしょう。
FAX送付との違い
FAXで書類を送る際にも「FAX送付状(カバーページ)」を付けるのが一般的です。FAX送付状も内容的には今回説明している送付状とほぼ同じです。
ただしフォーマットはFAX専用に簡素化されており、宛先FAX番号、送信者名、枚数、件名、コメント欄程度にまとめられています。
FAX送付状テンプレートはExcel等で提供されていることが多いです。
税理士事務所へFAXで資料を送る際は、そのテンプレートに従って作成してください(FAXの場合は頭語や結語は省略し、箇条書きの「記」も不要な場合が多いです)。
PDF送付後のフォロー
PDFで書類を送った場合、きちんと届いたか相手に確認する習慣も持ちましょう。特に大事な書類の場合、「送付状および資料をメール添付いたしましたがご査収いただけましたでしょうか?」と電話やメールでフォローすると親切です。
紙郵送に比べてメールは届いていないリスク(迷惑メールに入る、容量オーバーで届かない等)もゼロではないので注意します。
まとめると、送付状は紙でもPDFでも基本的な役割は同じですが、送信手段に応じて適切な形式を選択すると良いということです。
メール主体のやり取りが多い昨今、PDF送付状やメール本文での送付案内もマスターしておくと実務に役立ちます。
実務での場面別:送付状の活用方法
最後に、税理士事務所とのやり取りにおいて送付状をどのような場面で活用できるか、具体例を挙げて解説します。送付状は単なる形式ではなく、状況に応じた活用で仕事をスムーズにしてくれます。
領収書など経費書類を定期的に郵送する場合
〈場面〉 個人事業主や小規模法人が、毎月または毎期ごとに経費の領収書や帳簿書類を顧問税理士へ郵送するケースです。
〈活用方法〉 ルーティンで送る書類こそ、送付状を付ける価値があります。ただの領収書束でも、「〇月分経費書類在中」と書いた送付状があれば、税理士事務所側で内容を把握しやすく整理もスムーズです。
例えば送付状の件名を「〇年〇月分経費書類送付の件」とし、本文で「今月分の領収書類をまとめましたので送付いたします。」と伝えます。
記の欄には「領収書(〇年〇月分) 一式」と記載しておけば、どの期間の経費資料か一目瞭然です。
顧問税理士との定期やり取りでは形式ばらず簡易的でも良いかもしれませんが、毎回きちんと送付状を付けることで信頼感や安心感を与え続けることができます。
確定申告や決算用の資料を送付する場合
〈場面〉 年度末の確定申告資料や決算関連書類を税理士事務所にまとめて送るケースです。源泉徴収票、通帳コピー、決算書ドラフトなど大量の資料が発生します。
〈活用方法〉 重要書類を複数送る場合、送付状はチェックリスト兼送付通知として機能します。
送付状に「確定申告必要書類一式送付の件」として、記の欄に具体的な書類名をずらっと並べます(例:「・売上台帳(Excel印刷)1部」「・領収書コピー 綴り2冊」「・医療費控除明細書 1部」など)。
受け取った税理士事務所は送付状を見ながら漏れを確認でき、安心して作業に取り掛かれます。
また、このような大量書類を送る際は送付状本文で「資料が多いためご不明点はお問い合わせください」等と一言添えておく配慮もできます。書類の数が多いほど送付状が役立つ場面と言えるでしょう。
新規契約時に重要書類を送る場合
〈場面〉 新しく税理士と顧問契約を結んだ際、過去の会計データや契約書など重要資料を一括で送付するケースです。または税理士変更に伴い前任から書類を引き継ぐ場合など。
〈活用方法〉 初めての相手に書類を送る際は、送付状が挨拶状代わりにもなります。本文の前文で「拝啓 この度は顧問契約を締結いただき誠にありがとうございます。」等の丁寧な挨拶から書き始めると良いでしょう。
その上で「早速ですが、御社にてご確認いただきたい書類をお送りいたします。」と主文に繋げます。契約関連書類や会社の定款写し、前期申告書の控えなどを送る場合、それぞれを送付状の記載に漏れなく書き込みます。
新規の関係構築時にしっかりした送付状を付けることで、「この会社(担当者)はビジネスマナーがしっかりしている」という好印象を与えるチャンスにもなります。
メールやクラウド共有で資料を送る場合
〈場面〉 紙ではなく、メール添付やクラウドストレージを使って税理士にデータを送る場合です。PDFやスプレッドシートなどデータでのやり取りが中心のケース。
〈活用方法〉 この場合でも基本は同じで、メール本文が送付状の役割を果たします。
例えばメールの件名を「〇〇書類送付の件(〇〇株式会社)」とし、本文冒頭で「いつもお世話になっております。〇〇株式会社の△△です。」と名乗りましょう。
そして「本メールにて〇〇の資料を送付いたします。添付ファイル(または共有リンク)をご確認ください。」と記載します。
箇条書きで添付ファイル名やファイル数を箇条書きして列挙すれば、紙の送付状と同様に相手に内容を明確に伝えられます。
例えば「・○○年度決算報告書(PDF) 1ファイル」「・領収書画像データ(ZIP圧縮) 1ファイル」のように書くと親切です。
クラウド共有の場合もリンクを送るだけでなく、そのリンク先に何のファイルがあるのかメール文中で説明するようにしましょう。
デジタル送付でも「一言添える」気遣いが重要です。
FAXで書類を送る場合
〈場面〉 急ぎの書類をFAX送信するとき、FAXの1枚目にカバーページ(送付状)を付けるケースです。
〈活用方法〉 FAX送付状は専用のフォーマットを使うことが多く、宛先名、件名、送付枚数、発信者連絡先、簡単なコメントを記入する形になります。
例えば税理士事務所宛てFAX送付状に「件名:〇〇書類送付の件」「枚数:5枚(表紙含む)」などと明記します。
コメント欄に「至急ご確認願います。」や「原本は追って郵送いたします。」等、必要事項を書き添えるとよいでしょう。
FAXでは手書きでササッと送付状を書く場合もありますが、その際も基本的な情報(誰から誰に何を何枚送ったか)を漏れなく書くように心がけます。
以上、いくつかの場面別に送付状の活用法を紹介しました。実務では「これは送付状いるかな?」と迷う場合もあるかもしれません。
判断基準として、「相手が受け取ったときに、送付状があった方が内容を理解しやすいか」「送付状がないと失礼に当たらないか」を考えてみてください。
迷ったときは付けておく方が無難です。送付状はビジネスマナーのお守りのような存在で、丁寧な対応は必ず相手に伝わります。
まとめ
税理士事務所への送付状の書き方について、目的や構成、文例から作成上の注意点まで詳しく解説してきました。
送付状は単なる形式的な手紙と思われがちですが、ビジネスの円滑化や信頼関係の醸成に大きな役割を果たします。目的を押さえた上で正しい書式・マナーで作成すれば、相手に失礼なく確実に用件を伝えることができます。
ポイントをおさらいすると、
送付状の目的は丁寧な挨拶、送付物の確認、補足説明など。税理士事務所には必ず添えて、ミス防止と良好な関係維持に役立てる。
基本構成は宛名、日付、差出人、件名、本文(前文・主文・末文)、同封書類一覧、以上。形式に沿って書けば漏れなく伝えられる。
文例テンプレートを用意しておけば、必要項目を差し替えるだけで素早く作成可能。Wordでテンプレート化し、PDFで送る方法も活用する。
注意点・マナーとして、敬称の使い分けや言葉遣いに気を付け、正式名称で記載し、簡潔かつ丁寧な文章を心がける。NG例のような失礼や情報不足は避ける。
実務では場面に応じて送付状を使い分ける。定期的な書類送付でも必ず添える、新規取引では挨拶状も兼ねて活用、メール送付時もカバーコメントを忘れない…など、「ひと手間の気配り」が大切。
送付状ひとつでビジネスの印象やコミュニケーション品質は大きく変わります。忙しい中でも送付状を省略せず、今回ご紹介した書き方・文例を参考に、ぜひ実務で活用できる送付状を作成してみてください。
雛形が欲しい時にも本記事のテンプレートをお役立ていただければ幸いです。丁寧な送付状とともに大事な書類を送り、税理士事務所とのやり取りをスムーズにしていきましょう。
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