クレジットカードの基礎知識

請求書カード払いの活用方法とは?資金繰りを即時改善し、支払いを最大60日延長する仕組みを解説

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「今月の支払いが、売上の入金に間に合わない」

「仕入れ先への支払いを遅らせたいが、信用を失うわけにはいかない」

「銀行融資は審査に時間がかかり、今すぐ必要な資金に対応できない」

もしあなたが中小企業の経営者や個人事業主として、このような資金繰りの悩みを抱えているなら、「請求書カード払い」サービスが即効性のある解決策になるかもしれません。

このサービスは、あなたが受け取った銀行振込の請求書を、あなたのクレジットカードで支払えるようにするものです。これにより、手元の現金を一切減らすことなく、実際の支払いをカードの引き落とし日まで、最大60日程度も先延ばしにできるのです。

本記事では、この「請求書カード払い」が、なぜ今多くの事業者に選ばれているのか、その具体的な仕組みから、他の資金調達手段との厳密な比較、さらには導入後の会計処理やインボイス制度への対応まで徹底的に解説します。

「審査が厳しいのでは?」「手数料が高いのでは?」「取引先に知られてしまうのでは?」といった不安も解消します。この記事を読めば、あなたの会社のキャッシュフローを劇的に改善するための、現実的かつ強力な手段を理解できるはずです。

目次

請求書カード払いとは?「黒字倒産」の危機を救うFinTechサービス

「請求書カード払い」は、その名の通り、通常は銀行振込で支払う必要がある企業間の請求書(BtoB決済)を、クレジットカードで決済できるようにするサービスです。これは、近年急速に普及しているFinTech(フィンテック 金融と技術を組み合わせたサービス)の一分野です。

請求書カード払いの基本的な仕組み

このサービスの核心的な価値は、キャッシュフロー(現金の流れ)の改善にあります。仕組みは非常にシンプルです。

まず、サービスの概要は「銀行振込を指定された請求書(買掛金)の支払いを、クレジットカード決済で『立て替える』サービス」です。

そして、その核心的価値は「手元の現金を減らさず、カードの引き落とし日まで実質的な支払いを最大60日程度先延ばしにする」ことにあります。

具体的な利害関係者の流れは、以下の4ステップで構成されます。

  • 利用者の登録
    利用者(買い手であるあなたの会社)が、請求書カード払いサービスに、支払いたい請求書の情報(PDFなど)と、支払い先の振込口座情報を登録します。
  • サービス会社による振込
    サービス会社が、利用者(あなた)の代わりに、取引先(売り手)の銀行口座へ、期日通りに振込を実行します。
  • 利用者によるカード決済
    利用者(あなた)は、サービス会社に対し、振込金額とサービス手数料の合計額を、自身のクレジットカードで決済します。
  • カード会社からの引き落とし
    後日(例 翌月や翌々月)、クレジットカード会社から、決済した分の金額があなたの口座から引き落とされます。

この仕組みがもたらす最大の利点、それは「取引先(売り手)にサービスの利用が一切知られない」ことです。取引先から見れば、期日通りに、指定された口座へ、しかも(サービスによっては)あなたの会社名義で入金があるだけです。支払い遅延の交渉をしたり、資金繰りに困っていることを悟られたりするリスクを完全に回避できます。

なぜ今、中小企業や個人事業主に選ばれるのか

従来、中小企業が資金繰りに悩んだ際の選択肢は、銀行融資、ビジネスローン、あるいはファクタリング(売掛債権の売却)が主でした。しかし、これらには「審査に時間がかかる」「担保や保証人が必要」「負債が増える」「手数料が非常に高い」「取引先の承認が必要」といった、高いハードルが存在しました。

BtoB(企業間)決済のキャッシュレス化とFinTechの浸透を背景に、「請求書カード払い」は、これらの従来手法の「時間」「手間」「審査」「信用」の問題点をクリアする、新しい選択肢として急速に普及しています。

株式会社インフキュリオンが実施した【2025年版 中小企業のBtoB決済トレンド調査】によると、「請求書のカード払い」サービスの認知率はすでに6割に達し、利用意向も4割にのぼっています。これは、多くの経営者が、このサービスの有効性に気づき始めていることを示しています。

請求書カード払いの5大メリットと2つの注意点

請求書カード払いの5大メリットと2つの注意点

このサービスがなぜこれほど注目されるのか、そのメリットと、利用前に必ず理解しておくべき注意点(デメリット)を詳細に分析します。

事業者が享受する5つの絶対的メリット

請求書カード払いを利用することで、事業者は主に5つの強力なメリットを享受できます。

メリット1 即時的な資金繰り改善(支払いサイトの延長)

これが最大のメリットです。「売掛金の入金(回収サイト)」は2ヶ月後なのに、「買掛金の支払い(支払いサイト)」が今月末、という「サイトのズレ」は、黒字経営であっても資金ショート(黒字倒産)を引き起こす原因となります。

請求書カード払いは、この支払いサイトを、審査なしで即座に最大60日程度(カードの引き落とし日による)延長します。これにより、売掛金の入金を待ってから支払うことが可能になり、キャッシュフローは劇的に安定します。

メリット2 手続きの圧倒的なスピードと簡便性

銀行融資を申し込む場合、事業計画書や決算書の提出、面談など、多くの時間と手間がかかります。請求書カード払いサービスは、その多くが厳格な審査や面倒な書類提出を原則不要としています。

必要なのは、オンラインでの会員登録と請求書のアップロードだけです。サービスによっては、申し込みから振込実行まで最短60分や、最短即日で完了します。これは、緊急の支払いニーズに対して、他のどの手段よりも迅速に対応できることを意味します。

メリット3 取引先への信用維持

メリット1と表裏一体ですが、非常に重要な点です。資金繰りが厳しいときに、取引先へ「支払いを待ってほしい」と交渉することは、自社の信用を著しく毀損する行為です。

前述の通り、請求書カード払いは、取引先にサービス利用の事実を知られることなく、期日どおりの支払いを実現します。これは、事業の継続性において、金銭的なメリット以上に価値がある「信用の維持」につながります。

メリット4 経費管理の一元化とポイント獲得

従来は、仕入れ先A、外注先B、コンサルタントC…と、個別に銀行振込を行っていた支払いを、すべてクレジットカード決済にまとめることができます。

これにより、支払いがカードの利用明細に一元化され、経費管理が大幅に簡素化されます。さらに、決済額(経費)に応じて、クレジットカードのポイントやマイルが貯まるという副次的なメリットもあります。高額なBtoB決済をポイント対象にできることは、大きな魅力です。

メリット5 負債を増やさない

銀行融資やビジネスローンは、当然ながら「借入金」であり、決算書(貸借対照表)の「負債」として計上されます。負債が増えれば自己資本比率が下がり、金融機関からの格付けが悪化する可能性があります。

請求書カード払いは、融資やローンとは異なり、新たな借り入れではありません。あくまで「支払い方法の変更」と「未払金の計上」であり、負債として決算書に計上されないため、財務体質を悪化させることなくキャッシュフローを改善できます。

注意すべき2つのデメリット(コストとリスクの正しい認識)

多くのメリットがある一方で、利用前に必ず理解し、許容する必要がある注意点が2つあります。

デメリット1 手数料の発生

サービスを利用する際、請求金額(振込額)に対して2.5%~4%程度の手数料が発生します。例えば、100万円の支払いに手数料3%のサービスを利用した場合、103万円をカードで決済する必要があります。

ここで、「手数料が高い」と短絡的に判断すべきではありません。このコストの妥当性を、正しく評価する必要があります。

よくある説明として、「クレジットカードのポイント還元(例 1%)を考慮すれば、実質負担は2%に軽減される」というものがあります。これは事実ですが、本質的な比較対象はポイント(手数料負けのリスク)ではありません。

比較すべきは、「資金ショートを回避する価値」または「他の資金調達手段のコスト」です。

例えば、緊急の資金調達として利用される「2社間ファクタリング」の手数料は、売掛金額の10%~30%にもなることがあります。また、ビジネスローンは審査に時間がかかり、そもそも借りられない可能性もあります。

これらと比較した場合、請求書カード払いの手数料(2.5%~4%)は、「審査不要」「即日対応」「信用維持」という価値を即座に手に入れるための「合理的な保険料」であると評価できます。

デメリット2 クレジットカードの利用限度額への依存

請求書カード払いサービスの利用可能額は、サービス会社が設定する枠ではなく、あなたが保有するクレジットカードの与信枠(ショッピング枠)に完全に依存します。

例えば、500万円の支払いを先延ばしにしたい場合、500万円以上の決済が可能なカードの利用枠が必要です。高額な設備投資や大口の仕入れなど、決済額が大きくなる場合は、カードの限度額がボトルネックになる可能性があります。

他の資金調達手段との徹底比較(ファクタリング・ビジネスローン)

資金繰りに悩んだとき、請求書カード払いは唯一の選択肢ではありません。ファクタリングやビジネスローンといった他の手段と何が違い、どの状況でどれを選ぶべきかを明確に比較します。

請求書カード払い vs. ファクタリング

この2つは、資金繰りを改善するという目的は同じですが、アプローチが正反対です。

  • 請求書カード払い
    あなたの「支払い(買掛金)」の期日を先延ばしにするサービスです。
  • ファクタリング
    あなたの「売上(売掛金)」をファクタリング会社に売却し、入金日より前倒しで現金化するサービスです。

つまり、請求書カード払いは「キャッシュ・アウト(支出)」を遅らせるのに対し、ファクタリングは「キャッシュ・イン(収入)」を早めるものです。あなたの会社に「売掛金(未回収の売上)」がなければ、ファクタリングは利用できません。

請求書カード払い vs. 銀行融資・ビジネスローン

これは「支払い方法の変更」と「新たな借金」の違いです。

  • 請求書カード払い
    審査が原則不要(カード枠に依存)であり、負債になりません。
  • 融資・ローン
    厳格な審査(事業計画書、決算書、信用情報)が必要で、実行まで時間がかかり、負債として計上されます。

銀行融資やビジネスローンは、金利こそ年利1%~15%と低い場合がありますが、それはあくまで「審査に通れば」の話です。緊急の支払いや、赤字決算・税金滞納などの状況では利用が困難です。請求書カード払いは、そのような状況でも使える数少ない手段です。

資金調達比較表 あなたの状況に最適な手段は?

以下の比較表は、あなたの会社が今置かれている状況(緊急性、コスト許容度、信用の状況)に応じて、どの手段が最適かを見つけるための羅針盤となります。

比較項目請求書カード払いファクタリング(2社間)ビジネスローン・銀行融資
目的支払いの先延ばし(買掛金)売掛金の早期現金化(売掛金)事業資金の調達
資金調達スピード最短即日〜2営業日最短即日遅い(数日〜数週間)
審査の有無原則不要あり(売掛先の信用)厳格な審査あり
コスト(手数料)2.5%〜4%程度10%〜30%年利1%〜15%
取引先への通知なし原則なしなし
負債計上なしなしあり
利用シーン資金ショートの緊急回避、支払いサイト調整売上はあるが入金が遅い時設備投資、長期の運転資金

主要「請求書カード払い」サービスの選び方と徹底比較

市場には多くの請求書カード払いサービスが登場しており、どれを選べばよいか迷うかもしれません。サービス選定で失敗しないための重要な比較ポイントと、主要なサービスの特徴を解説します。

サービス選定で失敗しないための4つの比較ポイント

自社の状況に最適なサービスを選ぶためには、以下の4つのポイントを比較検討する必要があります。

ポイント1 手数料率(実質負担の計算)

サービスのコストに直結する最も重要な要素です。表面的な手数料率だけでなく、自身のカードのポイント還元率(1%など)を差し引いた「実質負担率」で比較することが重要です。0.1%の違いでも、決済額が大きくなれば負担額は大きく変わります。

ポイント2 振込スピード(緊急性への対応)

「今日中に振り込まないとまずい」という緊急の支払いもあれば、「今月中の支払いを来月に回したい」という計画的な利用もあります。自社の緊急性に合わせて、「最短60分」、「最短即日」、「最短2営業日」など、必要なスピードに対応できるサービスを選びます。

ポイント3 対応可能なクレジットカードブランド

あなたが保有しているカード、特に与信枠の大きいメインカードが、そのサービスに対応しているかを確認する必要があります。多くのサービスはVISA、Mastercardに対応していますが、JCBやAmerican Express、Diners Clubに対応しているかは、サービスによって異なります。

ポイント4 運営企業の信頼性と機能

高額な企業間決済を任せるため、運営企業の信頼性は非常に重要です。上場企業(例 マネーフォワード、クレディセゾン)が運営している安心感は大きな判断材料になります。

また、会計ソフトとの連携機能を重視するのか、社会保険料の支払いに対応しているといった専門性を選ぶのか、自社のニーズを明確にすることも大切です。

主要サービス比較表

リサーチに基づき、現在市場で主要なサービスを比較します。市場は、会計ソフトと連携して利便性を高める「会計ソフト連携型」と、スピードと簡便性を追求する「独立・スピード重視型」に大別されます。

サービス名手数料(最低)振込スピード(最短)特徴・運営企業
INVOYカード払い3%最短即日審査不要、請求書管理でかんたん申込、ファクタリング事業で培った金融ノウハウ
マネーフォワード 請求書カード払い2.7%2営業日会計ソフト連携、上場企業
支払い.com4%1営業日審査不要、クレディセゾン・UPSIDER運営
弥生 請求書カード払い3.5%当日弥生会計ユーザー向け
ゆとりペイ2.9%最短即日
ラボル カード払い3~3.5%60分スピード重視

導入から活用までの実践ガイド(経理・税務)

導入から活用までの実践ガイド(経理・税務)

サービスを導入する際の具体的な流れと、導入後に経理担当者が直面する「会計処理」と「インボイス制度」への対応について、実践的に解説します。

請求書カード払いの利用開始ステップ(一般的な流れ)

ほとんどのサービスで、利用開始までの流れは共通しており、非常に簡潔です。

  • ステップ1
    サービス提供会社のウェブサイトからオンラインで無料会員登録を行います(審査不要が多数)。
  • ステップ2
    支払いを希望する取引先の請求書(PDFなど)と、振込先の口座情報をアップロードします。
  • ステップ3
    決済(振込金額+手数料)に利用するクレジットカード情報を登録し、決済を実行します。
  • ステップ4
    決済が完了すると、サービス会社が指定日に取引先へ代理振込を実行します。

会計処理と勘定科目

サービス利用時に発生する「手数料」は、当然ながら経費として計上する必要があります。経理担当者が迷わないよう、一般的な仕訳例を示します。

概要

サービス手数料は、一般的に「支払手数料」または「雑費」の勘定科目で処理します。

仕訳例(手数料1,000円、消費税10%(91円)の場合)

重要なのは、このサービス手数料は「振込サービス(役務の提供)に対する対価」と考えられるため、消費税の課税対象となる点です。

(借方)支払手数料 909円 / (貸方)未払金(カード) 1,000円

(借方)仮払消費税 91円 /

このように、消費税額を「仮払消費税」として区分し、本体価格を「支払手数料」として計上するのが、税務上正確な処理となります。

インボイス制度への対応

2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関して、経営者や経理担当者が最も懸念すべき点、それは「サービス会社に支払う手数料は、仕入税額控除の対象になるか?」です。

回答 対象となります(ただし条件あり)

結論から言えば、そのサービス提供会社が「適格請求書発行事業者」(インボイス発行事業者)として登録しており、あなたが「適格請求書(インボイス)」を入手・保存すれば、手数料にかかる消費税額(上記の例では91円)は、仕入税額控除の対象となります。

確認方法

主要な事業者は、当然このインボイス制度に対応しています。

例えば、「支払い.com」は、利用明細に適格請求書発行事業者番号を記載しており、その利用明細をインボイスとして利用できると公式に明記しています。

「マネーフォワード」や「弥生」といった会計ソフトを基盤とするベンダーは、インボイス制度への対応をサービスの中核機能としています。

この対応により、手数料として支払った消費税額分は、将来的に納める消費税額から差し引くことができます。これは、課税事業者にとって実質的なコスト削減につながるため、サービスがインボイスに対応しているかは、選定時の必須確認項目です。

高度な活用事例 社会保険料の支払いで資金繰りを安定させる方法

毎月末、多くの企業にとって資金繰りを圧迫する大きな固定費が「社会保険料(厚生年金、健康保険)」の支払いです。これらは通常、銀行振込や納付書払いが基本です。

しかし、一部の請求書カード払いサービスは、この社会保険料の納付書払いに対応しています。

例えば、「ゆとりペイ」、「SA請求書カード払い」、「支払い.com」などのサービスは、社会保険料の支払いに利用できることを明示しています。

(個人事業主向けの)国民年金保険料も、日本年金機構がクレジットカード納付を受け付けています。

この活用法により、最も資金繰りがタイトになる月末の社会保険料の支払いですら、実質的にクレジットカードの引き落とし日まで延長することが可能になります。これは、キャッシュフローを安定させる上で、非常に強力なテクニックと言えます。

まとめ 請求書カード払いは「賢い経営者」の資金繰り改善術

本レポートで詳細に解説した通り、「請求書カード払い」は、資金繰りに悩む中小企業や個人事業主にとって、強力かつ即効性のある解決策です。

最大のメリットは、銀行融資のような厳格な審査や、決算書への負債計上なしに、取引先の信用を維持したまま、目前の支払いを最大60日延長できる点にあります。

手数料というコストは確かに発生します。しかし、資金ショートによる倒産リスクの回避や、ファクタリング(10%~30%)、ビジネスローン(審査時間)と比較した場合、そのスピードと簡便性を考慮すれば、合理的かつ安価な「保険料」と言えます。

さらに、主要なサービスはインボイス制度(仕入税額控除)にも対応しており、手数料にかかる消費税分の負担を実質的に軽減できます。

今、あなたの会社に必要なのは、長期的な運転資金ですか?それとも、今月の支払いを乗り切るための緊急の「つなぎ資金」ですか?

もし後者であれば、請求書カード払いは最も有効な選択肢の一つです。「マネーフォワード」のような会計連携型か、「支払い.com」や「ラボル」のようなスピード重視型か。自社の状況(緊急性、コスト、利用中のソフト)に合わせて最適なサービスを選び、安定したキャッシュフローの基盤を構築してください。

この記事の投稿者:

hasegawa

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