会計の基礎知識

法定内残業とは?法定外残業との違い・割増賃金の計算方法を解説

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給与計算をしていて「この残業には割増賃金を払うべきなのか」と迷ったことはないでしょうか。法定内残業と法定外残業の区別があいまいなまま処理を進めると、未払い賃金が発生するリスクがあります。最悪の場合、従業員とのトラブルや労働基準監督署からの是正勧告につながることも考えられます。

この記事を読むと、法定内残業の定義や法定外残業との違い、割増賃金の要否と計算方法がひと通りわかります。具体的な計算例も交えて解説するため、自社の給与計算にすぐ反映できます。

労務の実務にはじめて携わる方でも理解できるよう、専門用語にはかみ砕いた説明を添えました。この記事を参考に、正確な残業代計算を実現してください。

法定内残業の定義

法定内残業とは、会社が定めた所定労働時間を超えているものの、法律で定められた法定労働時間の範囲内に収まっている残業のことです。

ここで2つの「労働時間」を整理しておきましょう。

所定労働時間とは

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約で会社が独自に定めた1日の労働時間です。たとえば「9時から17時、休憩1時間」の会社であれば、所定労働時間は7時間になります。

所定労働時間は会社ごとに異なります。7時間の会社もあれば、7時間30分の会社もあります。ただし、法定労働時間を超える所定労働時間を設定することはできません。

法定労働時間とは

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限です。原則として1日8時間、1週40時間と決まっています。

この上限を超えて従業員を働かせるには、36協定(サブロク協定)の締結と届け出が必要です。法定労働時間は法律で一律に決まっているため、会社の裁量で変えることはできません。

法定内残業が発生する仕組み

法定内残業は、所定労働時間と法定労働時間に差がある会社で発生します。

たとえば、所定労働時間が7時間の会社で8時間働いた場合を考えてみましょう。所定労働時間の7時間を1時間超えていますが、法定労働時間の8時間には達していません。この1時間が法定内残業です。

一方、所定労働時間が8時間の会社では、所定労働時間と法定労働時間が同じです。この場合、所定労働時間を超えた時点で法定労働時間も超えるため、法定内残業は発生しません。すべて法定外残業として扱います。

法定内残業と法定外残業の違い

法定内残業と法定外残業は、法定労働時間を基準にして区別します。この区別は割増賃金の計算に直結するため、正確に理解することが重要です。

違いの一覧

法定内残業と法定外残業の主な違いは以下のとおりです。

  • 法定内残業: 所定労働時間を超え、法定労働時間(8時間)以内の部分
  • 法定外残業: 法定労働時間(8時間)を超えた部分
  • 法定内残業の割増率: 割増不要(1倍の賃金を支払う)
  • 法定外残業の割増率: 25%以上の割増が必要(1.25倍以上)
  • 法定内残業と36協定: 不要
  • 法定外残業と36協定: 必要

大きな違いは割増賃金の要否です。法定内残業には法律上の割増義務がありません。ただし、賃金そのものの支払い義務はあります。ここを誤解して「割増不要=無給でよい」と判断すると、未払い賃金の問題が生じます。

「割増不要」と「無給」は違う

法定内残業に割増賃金の義務がないという話を聞いて、残業代を一切支払わなくてよいと誤解するケースがあります。これは大きな間違いです。

法定内残業であっても、実際に働いた時間に対する賃金は支払わなければなりません。「割増が不要」というのは、25%の上乗せ分が法律上は不要という意味です。基本の時給分(1倍)は必ず支払う必要があります。

たとえば時給1,500円の従業員が1時間の法定内残業をした場合、少なくとも1,500円は支払います。法定外残業であれば1,500円×1.25=1,875円になりますが、法定内残業では1,500円で足ります。

なお、就業規則で「所定労働時間を超えた残業には25%の割増を支払う」と定めている会社もあります。この場合は、法定内残業であっても就業規則に従って割増賃金を支払う必要があります。就業規則が法律を上回る条件を定めているときは、就業規則のルールが優先されます。

36協定が必要になる境界線

36協定とは、法定労働時間を超えて従業員を働かせるために、会社と労働者の代表が結ぶ協定です。正式には「時間外労働・休日労働に関する協定」といいます。労働基準法第36条に基づくため、36協定と呼ばれています。

法定内残業は法定労働時間の範囲内なので、36協定は不要です。法定外残業が発生する場合にのみ、36協定の締結と労働基準監督署への届け出が必要になります。

36協定を結ばずに法定外残業をさせると、労働基準法違反となります。6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意してください。

所定労働時間が法定労働時間より短い会社では、従業員が毎日少しだけ残業する程度なら36協定なしで運用できます。ただし、繁忙期に法定労働時間を超える可能性があるなら、あらかじめ36協定を締結しておくのが安全です。

法定内残業の割増賃金と計算方法

ここからは、法定内残業の賃金計算を具体的に解説します。計算のポイントは「1時間あたりの賃金単価」を正しく算出することです。

1時間あたりの賃金単価の求め方

月給制の場合、1時間あたりの賃金単価は以下の計算式で求めます。

1時間あたりの賃金単価 = 月給 ÷ 月の平均所定労働時間

月の平均所定労働時間は、年間の所定労働日数に1日の所定労働時間をかけて12で割った値です。

月の平均所定労働時間 = 年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12

月給に含める手当と除外する手当があります。基本給や職務手当などの固定的な手当は含めます。一方、以下の手当は除外します。

  • 家族手当(扶養人数に応じて支給されるもの)
  • 通勤手当(距離や実費に応じて支給されるもの)
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当(住宅費用に応じて支給されるもの)
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

これらは労働基準法施行規則で除外が認められている手当です。ただし、名称にかかわらず一律に支給されるものは除外できません。たとえば「住宅手当」という名称でも、全員に一律2万円を支給しているなら、計算に含める必要があります。

計算例1: 所定労働時間が7時間の会社

以下の条件で計算してみましょう。

  • 月給: 28万円(除外手当を差し引いた後の金額)
  • 所定労働時間: 1日7時間
  • 年間所定労働日数: 245日
  • ある日の実労働時間: 9時間

まず、月の平均所定労働時間を求めます。

245日 × 7時間 ÷ 12 = 約142.9時間

次に、1時間あたりの賃金単価を計算します。

28万円 ÷ 142.9時間 = 約1,960円

この日の残業は2時間(9時間 − 7時間)です。内訳を確認しましょう。

  • 法定内残業: 1時間(7時間から8時間までの部分)
  • 法定外残業: 1時間(8時間を超えた部分)

それぞれの残業代を計算します。

  • 法定内残業代: 1,960円 × 1.00 × 1時間 = 1,960円
  • 法定外残業代: 1,960円 × 1.25 × 1時間 = 2,450円
  • 合計の残業代: 4,410円

法定内残業の1時間は割増なしの1倍、法定外残業の1時間は1.25倍で計算しています。

計算例2: 所定労働時間が7時間30分の会社

次に、所定労働時間が7時間30分の会社の例を見てみましょう。

  • 月給: 30万円(除外手当を差し引いた後の金額)
  • 所定労働時間: 1日7時間30分
  • 年間所定労働日数: 240日
  • ある日の実労働時間: 10時間

月の平均所定労働時間を求めます。

240日 × 7.5時間 ÷ 12 = 150時間

1時間あたりの賃金単価を計算します。

30万円 ÷ 150時間 = 2,000円

この日の残業は2時間30分(10時間 − 7時間30分)です。

  • 法定内残業: 30分(7時間30分から8時間までの部分)
  • 法定外残業: 2時間(8時間を超えた部分)

残業代を計算します。

  • 法定内残業代: 2,000円 × 1.00 × 0.5時間 = 1,000円
  • 法定外残業代: 2,000円 × 1.25 × 2時間 = 5,000円
  • 合計の残業代: 6,000円

所定労働時間が7時間30分の場合、法定内残業にあたる時間は最大30分です。法定労働時間の8時間との差が小さいため、法定内残業の割合は少なくなります。

深夜帯と法定内残業が重なった場合

深夜労働(22時から翌5時まで)の時間帯に法定内残業が発生するケースもあります。やや特殊な状況ですが、シフト制の会社などでは起こりえます。

深夜割増の基本ルール

深夜労働には、法定内残業か法定外残業かを問わず、25%以上の割増賃金を支払う義務があります。深夜割増は残業の種類とは別の制度です。

つまり、深夜帯に法定内残業が発生した場合の賃金は以下のようになります。

  • 深夜の法定内残業: 基本の1倍 + 深夜割増0.25倍 = 1.25倍
  • 深夜の法定外残業: 基本の1倍 + 時間外割増0.25倍 + 深夜割増0.25倍 = 1.5倍

深夜の法定内残業は割増率が1.25倍、深夜の法定外残業は割増率が1.5倍です。深夜に働かせた場合は、法定内残業であっても割増賃金が発生する点に注意してください。

深夜帯の計算例

たとえば、所定労働時間が14時から21時(休憩1時間、実働6時間)の会社で、ある日23時まで働いた場合を考えます。時給換算で1,800円とします。

実労働時間は8時間(14時〜23時から休憩1時間を引く)で、残業は2時間です。

  • 法定内残業(21時〜22時の1時間): 深夜帯ではないので割増なし

1,800円 × 1.00 × 1時間 = 1,800円

  • 法定内残業(22時〜23時の1時間): 深夜帯なので深夜割増あり

1,800円 × 1.25 × 1時間 = 2,250円

  • 合計の残業代: 4,050円

この例では法定内残業のみですが、22時以降の分には深夜割増が加算されています。実労働時間が8時間以内なので法定外残業は発生していません。

パート・アルバイトの法定内残業

パートやアルバイトでも、法定内残業の考え方は正社員と同じです。雇用形態による違いはありません。

短時間勤務者に多い法定内残業

パートやアルバイトは、所定労働時間が短いケースが多いです。たとえば1日5時間や6時間の契約であれば、法定労働時間の8時間との差が大きくなります。その分、法定内残業が発生しやすくなります。

1日5時間契約のパート従業員が7時間働いた場合、2時間の残業はすべて法定内残業です。8時間を超えていないため、割増賃金の義務はありません。ただし、2時間分の賃金(時給の1倍)は支払う必要があります。

「パートだから残業代は出ない」という認識は誤りです。パートやアルバイトであっても、所定労働時間を超えた分の賃金は支払わなければなりません。

週の法定労働時間にも注意する

1日の労働時間が8時間以内でも、1週間の合計が40時間を超えると法定外残業になります。

たとえば、週5日で1日7時間のシフトを組んでいるパート従業員が、さらに土曜日に6時間働いたとします。週の合計は41時間になり、40時間を超えた1時間は法定外残業です。この1時間には25%以上の割増賃金が必要になります。

パートやアルバイトのシフト管理では、1日単位だけでなく週単位の労働時間も確認するようにしてください。

就業規則での法定内残業の取り扱い

法定内残業に関するルールは、就業規則で明確に定めておくことが望ましいです。規定があいまいだと、従業員との認識のずれやトラブルにつながります。

就業規則に定めるべき内容

法定内残業について、以下の項目を就業規則に記載することをおすすめします。

  • 所定労働時間の明記(1日あたり、1週あたり)
  • 法定内残業に対する賃金の計算方法
  • 割増賃金を支払うかどうかの方針
  • 残業命令の手続き(事前承認制など)

とくに3つ目のポイントが重要です。法律上は法定内残業に割増賃金の支払い義務はありませんが、就業規則で「所定外労働には割増賃金を支払う」と定めている場合は、法定内残業にも割増賃金が発生します。

就業規則を確認し、自社のルールを正確に把握しておきましょう。

就業規則の定め方による賃金の違い

就業規則の書き方によって、法定内残業の賃金に差が出ます。2つのパターンを比較します。

パターンA: 法定外残業のみ割増を支払う場合

「法定労働時間を超える労働に対して、25%の割増賃金を支払う」と定めている場合です。法定内残業は1倍、法定外残業は1.25倍で計算します。

パターンB: 所定外労働すべてに割増を支払う場合

「所定労働時間を超える労働に対して、25%の割増賃金を支払う」と定めている場合です。法定内残業も法定外残業も1.25倍で計算します。

パターンBは従業員にとって有利な条件です。法律の基準を上回る待遇を就業規則で定めることは問題ありません。ただし、一度定めたルールを従業員に不利な方向に変更するには、合理的な理由と適切な手続きが必要です。

自社の就業規則がどちらのパターンに該当するかを確認し、給与計算に正しく反映してください。

法定内残業を正しく管理するためのポイント

最後に、法定内残業の管理で押さえておきたい実務上のポイントを整理します。

勤怠管理で法定内残業と法定外残業を区別する

給与計算を正確に行うためには、勤怠データの段階で法定内残業と法定外残業を分けて記録する必要があります。

手作業で管理している場合は、タイムカードの集計時に所定労働時間と法定労働時間のどちらを超えているかを確認します。勤怠管理システムを導入している場合は、所定労働時間の設定が正しいかどうかを定期的にチェックしましょう。

設定が誤っていると、法定内残業と法定外残業の区分が自動的にずれてしまい、給与の過不足が生じます。とくに所定労働時間が部署や雇用形態によって異なる会社では、設定ミスが起きやすいため注意してください。

変形労働時間制の場合の注意点

1か月単位や1年単位の変形労働時間制を導入している会社では、法定内残業の判定がやや複雑になります。

変形労働時間制とは、一定の期間内で労働時間を平均して週40時間以内に収めれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせてもよい制度です。

この制度のもとでは、日ごと・週ごと・対象期間全体の3つの段階で時間外労働を判定します。所定労働時間が日によって異なるため、法定内残業にあたる時間も日ごとに変わります。

変形労働時間制を採用している場合は、各日の所定労働時間と法定労働時間の差をもとに、法定内残業を正しく集計する仕組みを整えておく必要があります。

未払い賃金のリスクを防ぐために

法定内残業に関する未払い賃金が発生する主なパターンは以下のとおりです。

  • 法定内残業を「残業ではない」と誤認し、賃金を支払っていない
  • 就業規則で割増を定めているのに、法定内残業分の割増を計算していない
  • パート・アルバイトの所定外労働に賃金を支払っていない

未払い賃金の時効は現在3年です。従業員から過去にさかのぼって請求される可能性もあるため、日頃から正確な計算を心がけてください。

不安がある場合は、社会保険労務士や弁護士に相談して、自社の給与計算が適切かどうかを確認してもらうことをおすすめします。

まとめ

法定内残業について、記事の要点を振り返ります。

  • 法定内残業は、所定労働時間を超え法定労働時間(1日8時間)以内の残業を指す
  • 法定外残業との違いは、割増賃金の要否と36協定の要否にある
  • 法定内残業には法律上の割増義務はないが、働いた分の賃金(1倍)は必ず支払う
  • 就業規則で割増を定めている場合は、法定内残業にも割増賃金が発生する
  • 深夜帯(22時〜翌5時)に法定内残業が発生した場合は、深夜割増25%が必要
  • パート・アルバイトも正社員と同じルールが適用される
  • 勤怠管理の段階で法定内残業と法定外残業を正しく区別することが重要

法定内残業と法定外残業の区別は、給与計算の正確性に直結します。自社の所定労働時間と就業規則の内容を改めて確認し、適正な残業代支払いにつなげてください。

この記事の投稿者:

hasegawa

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