請求書は、売上につながる重要な書類のため、取引先とトラブルが起きないよう書き方や作り方には十分注意をしなければなりません。
今回は、請求書の書き方や作成時の注意点についてまとめました。
目次
請求書とは
請求書とは、取引先に対して商品やサービスの代金を請求する際に発行する文書です。報酬を受け取るために必要な書類であるのはもちろんのこと、相手との間に取引があったことを証明する役割も持っています。
請求書は、書き方について法的に定められた決まりはありません。また、手書きも可能ですが、Excelや請求書発行用ソフトを使った電子作成が一般的となります。
請求書を書く・送るときに必要なもの
請求書を送付する際には、主に下記が必要になります。
・テンプレート
・送付状(挨拶状、添え状、カバーレター)
・封筒
テンプレートの必要項目を埋めることで、適切な請求書を作成することができます。自分好みに一からフォーマットを作成することもできますが、手間が掛かるので、既存テンプレートを使用すると効率的です。
ExcelテンプレートやWordテンプレートなど、Webで簡単にダウンロードすることができ、豊富なデザインの中から、使いやすいテンプレートを選びましょう。
請求書を郵送する場合は、封筒と送付状を用意しておきましょう。
封筒は、「長形3号(120mm × 235mm)」又は「角形2号(240㎜×332㎜)」を使用し、請求書が封入されている旨が記載されていると良いでしょう。
また、送付状は「挨拶状、添え状、カバーレター」などと呼ばれることもあり、必ずしも必要な書類ではありませんが、書類の内容をお知らせするために添えるのが一般的です。請求書に同封する送付状には、宛名、送付日、発行者名などを記載します。併せて、挨拶や感謝の言葉を添えて送付するとより丁寧でしょう。
関連コラム:請求書の送り方・郵送のマナー(封筒の書き方・選び方を解説)
請求書に含めるべき7つの項目
一般的な請求書では、以下の項目を記載します。
- 請求書作成者の氏名、名称
- 取引先(請求書を受け取る業者)の氏名、名称
- 日付
- 取引内容
- 取引金額
また、振り込みを行うために以下の項目も記載した方がいいでしょう。
- 支払期限
- 振込先
請求書の記載事項を書き方例付きで紹介
請求書作成の際は、記載すべき項目がはっきりと定められているわけではありません。しかし、軽減税率制度に対応した請求書でないと仕入税額控除の適用が受けられません。
軽減税率制度には2019年10月から2023年9月まで対象の『区分記載請求書等保存方式』と2023年10月から対象の『適格請求書等保存方式(インボイス制度)』の2種類がありますが、ここでは2023年9月まで対象の『区分記載請求書等保存方式』の請求書に記載すべき5つの必須項目についてまとめました。
①交付を受ける者の氏名又は名称
請求書を交付する先の事業者名(会社名や屋号など)、部署名、担当者名などを記載します。法人や部署を宛名にする場合には「御中」、個人を宛名にする場合には「様」とします。なお、依頼者と異なる宛名を指定される場合もあるため、事前に確認しておく必要があります。
②発行者の氏名又は名称
請求書を発行した人の氏名又は法人の名称名を記載する必要があります。また、発行者名に社判や上長の印鑑を押す場合もあります。印鑑は必須ではないためシャチハタなどを用いても問題ありませんが、押印する場合には氏名や名称にややかぶるようにすると偽造が難しくなるため良いとされています。
③取引年月日
取引年月日には、本来は請求書を発行した日ではなく、資産の引渡しや役務の提供が完了した日等を書く必要があるとされています。しかし、慣習的に「請求書発行日」「請求日」等という項目に請求を行った日を記載することをもって、取引年月日とされていることも多いです。。また、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った取引につき、まとめて請求書を作成する場合には、当該一定の期間の記載で代えることができます。
④取引内容
取引内容として、品目(商品名・サービス名)、単価、数量、合計の4項目を記載します。このとき、取引先から取引内容の書き方について指定がある場合があります。税務処理に影響する場合があるので、誤認されたり偽りの記載にならない範囲で、必ず指定通りに記載しましょう。
なお、軽減対象資産の譲渡等である場合には、その旨を記載する必要があります。実務上は、軽減税率対象の欄をもうけ、対象品目に「※」や「☆」等の記号を記載することが多いです。
⑤請求金額
請求金額を記載する際は、税率(10%、8%)ごとの税込金額を記載する必要があります。それぞれの税率ごとの税込金額と消費税の金額、それらの合計金額とを記載すると分かりやすいでしょう。また、前月請求金額、入金額、当月請求金額、合計請求金額を分けて記載すると、入金の流れを一目で把握することができます。
金額表記についての決まりはありませんが、3桁ごとにカンマ区切りを入れると読みやすくなり、請求額が大きい場合のミスを減らすことができます。単位は「円」と「¥」の両方が用いられ、円の場合には金額の後ろに「也」と書き添えるのが一般的です。
なお、上記の他にも、振込先情報(銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義)、支払期限、請求日、請求書番号、振込手数料の負担等を記載するのが一般的であるため抜け漏れがないよう注意しましょう。
請求書を書く前に確認する必要があること
初めて取引を行う相手に請求書を発行する際は、次の事項について確認しておきましょう。
①請求日・支払期日
請求書の日付は、ただ単に書類を発行した日を記載することもありますが、基本的には取引先の支払いサイトに合わせて記載します。支払いサイトとは「月末締め、翌月末払い」といった経理上のスケジュールのことです。支払いサイトは会社によって異なるため、取引先に請求日・支払期日を確認した上で書類を作成しましょう。
取引先に確認しないまま請求書の日付を設定すると、取引先の経理業務に混乱が生じたり、振り込み時期がズレたりする可能性があります。初回の取引の際は忘れずに確認を行いましょう。
②請求金額
取引先によっては、商品の数え方や金額の計算方法などにルールを設けていることもあります。何か指定があればそちらに従いましょう。
③送付方法
メール・郵送・FAXなど、請求書の送付方法について確認しておきます。
④消費税
適格請求書発行事業者でなければ、インボイス制度で定められているような細かいルールに従って請求書を発行する必要はありません。しかし、消費税について記載されていないと、取引先の担当者が振り込む際に迷いが生じる可能性があります。消費税の扱い(内税・外税など)について確認し、それに基づいて請求書を発行することが望ましいでしょう。
請求書を書く時の注意点
①請求書のサイズ
請求書のサイズはA4サイズが一般的です。ビジネスにおける正式な書類はA4サイズがほとんどなので、A4サイズの請求書は取引先にとって扱いやすいと言えます。
②請求書の記載内容
前述の記載事項を正しく、かつ分かりやすいように請求書に記入します。近年、請求書を手書きよりもパソコンで作成することが増えていますが、印刷して送付する場合には押印を忘れないようにしましょう。
関連リンク:請求書にはんこは必要?適切な印鑑の種類や詳しい押し方も解説!
③請求書の管理
請求書に通し番号を付けておくことで、請求書が扱いやすくなり、紛失防止の効果があります。
関連リンク:請求書の管理方法を解説!整理のポイントやエクセル管理のデメリット、クラウドツールもご紹介
④消費税の書き方
請求書を作成する際には、消費税の書き方に気をつけましょう。
はじめに、金額が内税(消費税込)と外税(消費税別)のどちらで記載されているのかを明確に記載するようにしましょう。一般的には税抜きで単価を記載することが多く、消費税は小計の後に記します。
また、軽減税率の記載には十分に注意が必要です。消費増税によってほとんどの商品の税率が10%になりましたが、飲食料品や新聞をはじめとした一部の商品は8%に据え置かれています。それぞれの商品に対する税率が明確に分かるように記載すると、トラブルが起こりにくくなるといえます。
また、一部の取引については消費税が課されません。このような取引は不課税取引、免税取引、非課税取引などと呼ばれます。具体例として、会社への出資や寄付は不課税取引、商品の輸出や外国企業へのサービス提供は免税取引、有価証券、金券、社会保険医療等の取引は非課税取引とされます。請求書を作成する際には、これらの取引が含まれているかどうかを必ず確認しましょう。
⑤源泉徴収が必要かどうか
源泉徴収とは、所得を支払うときに支払う側が所得税を回収する制度のことです。個人事業主が請求書を発行する際には、請求する報酬や料金によっては源泉所得税を記載しなければいけません。所得税法第204条では「源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲」が定められており、以下が対象となります。
(1)原稿料や講演料など
(2)弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
(3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
(4)プロスポーツ選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
(5)映画やテレビ等の出演料、芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
(6)バーやキャバレーなどに勤めるホステス等に支払う報酬・料金
(7)プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
(8)広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
これらの支払を行う際に、支払対象と支払金額に応じて定められる源泉徴収税率を、支払金額に乗じた金額が、源泉徴収額となります。なお、割合を乗じる支払金額は、請求書に税込金額しか記載されていない場合は税込金額、報酬額と消費税額とが区別して記載されているときは税抜金額とされています。
源泉徴収の対象であるにもかかわらず記載漏れがあると、後々修正作業を行うことになります。また、源泉徴収がなされず税務調査などで指摘を受けた場合には、取引先が責任を負うことになります。大事な取引先に迷惑をかけないためにも、源泉徴収の記載に関しては十分に注意しましょう。
関連リンク:請求書に源泉徴収税額の記載は必要?メリットや注意点を解説
⑥振込手数料の負担に関して
振込手数料は、支払者による負担が一般的ではありますが、振込手数料をどちらが支払うかについては、明確な決まりはありません。しかし、民法484条、485条における「持参債務の原則」に基づき、合意がない場合には支払者側が手数料を負担するのが原則となっております。
とはいえ、実際には振込手数料を差し引いた金額が振り込まれるということもあり、慣習となっている業界もあります。
小さなことでトラブルを避けるためにも、振込手数料の負担について漏れなく記載しましょう。請求書を受け取る側に負担してもらう場合には、「手数料はご負担願います」のような一言を心掛けることが重要です。また、必要があれば事前に取引先と話し合い、振込手数料の負担について確認しておくと良いでしょう。
⑦印紙は原則不要
原則として印紙を貼る必要はありません。ただし、契約書や領収書を同封する場合や請求書が領収書を兼ねるという場合には、金額等によっては印紙を貼る必要があります。
これは、印紙税法で定められている「課税文書」にあたるとみなされるためです。
たとえ名称が請求書でも、内容が課税事実を証明するものであれば課税文書となるので注意しましょう。
なお、額面が大きいと1枚の印紙では足りない場合がありますので、2枚以上の印紙を貼って調整しましょう。
例えば、印紙税の金額が15万円の場合は、10万円の印紙1枚と5万円の印紙1枚を貼りましょう。割印はそれぞれの印紙に押しても複数にまたがるように押しても問題ありません。
⑧立替金や返金、相殺への対応
取引先が支払うべき費用を代わりに支払った場合は、立替金として請求書に記載し、本来の金額と一緒に請求します。一般的な請求書と大きく変更する必要はありませんが、わかりやすいように金額や内訳、立て替えた日付などを記載しましょう。
取引先に返金する必要が生じた場合は、金額の項目に「−」や「△」を記載することで、マイナスの金額であることを示します。税抜の金額でマイナスの金額を含んだ合計額を計算し、最後に消費税を求めると計算しやすくなります。
掛け取引などがあり金額を相殺する場合には、支払う金額と受け取る金額を相殺して請求書を発行できます。本来の請求金額や相殺する金額、相殺後の金額を明記しましょう。
請求書の作成方法
請求書は様々な方法で作成することができますが、ここでは3つの作成方法についてご紹介します。
①請求書発行サービス
請求書発行サービスとは、取引先情報や金額などをシステムに入力するだけで簡単に請求書を作成・発行・送付できるサービスのことです。各サービスによって機能が異なりますが、中には郵送代行まで含まれているサービスもあります。
手書きで請求書を作成する場合やセキュリティ上オフィスのPCで作成をする必要がある場合など、場所や形式に囚われず請求書を発行・送付できることがメリットの一つです。また、発行の履歴が残るため、請求書発行と別に発送一覧リストなどを作成する必要はありません。
②Excel・Word
請求書をはじめとした書類の作成に、ExcelやWordを利用する企業は非常に多いといえます。特にExcelは1つのファイル内に複数のシートを作成できるため、様々な書類や資料で利用されています。ただし、ExcelやWordは環境が異なるとレイアウトが崩れてしまうことや、担当者にスキルが求められる点も問題になり得るといえるでしょう。
関連リンク:請求書エクセルテンプレート(フォーマットひな形)集|見積書、領収書なども対応
③手書き
市販の請求書を購入して手書きで作成するという方法もあります。ノーカーボンタイプであれば手が汚れる心配もなく、きれいな請求書を発行できます。しかし、手書きで作成に時間がかかり、大量に請求書を発行する必要がある場合には、市販の請求書は不向きだといえます。
インボイス制度導入後の請求書作成は?
2023年10月以降、インボイス制度を導入した事業者は適格請求書と呼ばれる請求書を発行します。適格請求書には、税率ごとに区分して合計した適用税率・税率ごとに区分した消費税額・登録番号の3つを記載します。
関連リンク:適格請求書保存方式(インボイス制度)の書類の記載事項や消費税額の計算方法を解説!
10.請求書の送り方
請求書は郵便・メール・FAX・電子契約システムといった方法によって送付します。それぞれの方法や注意点などについて紹介します。
郵送の場合
書類を送付する上では、信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示、もしくは事実を通知する文書)は宅急便やゆうパック・ゆうメールなどで送ってはいけないという決まりがあります。
請求書は信書に該当するため、これらの方法ではなく、普通郵便もしくは速達で送ります。信書を宅急便などで送付した場合は罪に問われてしまうケースもあるので注意しましょう。
なお、商品を宅急便で送る際は、請求書を入れた封筒を閉じない形で商品と同梱することも可能です。
メールの場合
請求書をメールで送る際は、Excelなどで書類を作成した後、改ざんされにくいようにPDFに変換して送付します。ただし、PDFで送ることが法的に定められているわけではないため、双方がそれでいいという場合にはExcelのままで送付しても問題はありません。
請求書には口座番号といった重要な情報も含まれているため、送信先を間違えないように慎重に指定しましょう。セキュリティを考慮し、ファイルにパスワードをかけたり、データ転送サービスを利用したりするケースもあります。
FAXの場合
FAXで書類をやり取りする機会は減っていますが、今でもFAXを使っている会社は存在します。本来であれば請求書は原本を取引先に送りますが、FAXでは原本が手元に残ります。そのため、取引先に原本を保管してもらうために、FAXで送付した後に原本を郵送します。
したがって、請求書の郵送が遅れてしまい、取引先に内容だけ早めに知らせる必要があるといった特殊な場合にFAXが利用されていることが多いと言えるでしょう。
電子契約システムの場合
電子契約システムは、インターネットのサービス上にPDFの書類をアップロードして、押印や署名を行うサービスです。遠隔で契約を締結したり、書類のやり取りをする際に用いられます。
事業の規模などに応じた料金がかかりますが、システム上にこれまでのやり取りの履歴が残るため、請求内容を管理しやすい特徴があります。また、セキュリティを考慮してシステムが構築されている点もメリットと言えるでしょう。
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事業を行う上では、請求書の発行や管理といった作業が欠かせません。しかし、そのような事務作業を行う余裕がなかったり、法改正への適切な対応が難しかったりして、億劫に感じている方も多いのではないでしょうか。
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まとめ
ビジネスにおける取引では請求書の作成・発行は慣習となっています。請求書を発行することで、支払いに関するトラブルを回避できる他、トラブルになってしまった際にも問題を解決しやすくなります。
請求書は売上を回収し、管理するための重要な書類です。請求書を作成する際はミスなく作成することはもちろんのこと、支払いについて不明点がある場合は請求書を作成する段階で先方に確認するようにしましょう。
請求書が2枚にわたる場合の正しい書き方を徹底解説
「請求書が2枚にわたる場合、どうやって書けばいいのだろう…」「ページが分かれると見栄えが悪くなるので…