
製本した契約書に押す印は、正しくは「契印」です。袋とじでは、製本テープと表紙または裏表紙の境目に、契約書へ署名・押印する当事者全員が押印します。2通作成する場合は、製本して契印を押した後、2通を重ねて割印も押します。
契印は、契約書のページがつながっていることを示す印です。割印は、2通以上の契約書が同じ内容であることを示す印です。両者は混同されやすいものの、押す対象と目的が異なります。
この記事では、契約書を袋とじにする方法、製本テープの長さや幅の目安、ケース別の押印箇所、郵送で取り交わすときの手順、失敗した場合の対処法を解説します。割印の一般的な押し方や印鑑の種類は、契約書の割印の押し方・位置・他の押印との違いも参考にしてください。
目次
契約書の製本(袋とじ)とは?割印ではなく契印を押します
製本する目的はページの差し替え防止と押印回数の削減です
契約書の製本とは、複数ページの契約書をホチキスなどで綴じ、製本テープや紙帯で背を覆うことです。袋とじとも呼ばれます。
複数ページの契約書をホチキスだけで留めると、ページの追加や差し替えが比較的容易です。製本テープで綴じ目を覆えば、契約書をいったん分解しなければページを入れ替えにくくなります。
製本には、次の目的があります。
> * ページの抜き取りや差し替えを防ぎます。
> * 各ページの境目に押す契印の数を減らせます。
> * 契約書をひとまとまりの文書として管理しやすくします。
契印、割印、製本はいずれも法律上の一律の義務ではありません。契約書を証拠として扱いやすくし、改ざんや差し替えをめぐる争いを防ぐための実務上の慣行です。
民事訴訟法228条4項では、本人または代理人の署名または押印がある私文書は、真正に成立したものと推定されます。製本や契印がなくても契約書が無効になるわけではありませんが、文書の連続性を示す手段として活用できます。
製本・契印・割印の違い早見表
| 項目 | 対象 | 目的 | 押す位置 | 誰が押すか |
| 製本 | 複数ページの契約書 | ページを一体化し、差し替えを防ぐ | 契約書の背や綴じ目 | 押印ではなく、作成者が作業します |
| 契印 | 1通の複数ページの契約書 | ページの連続性を示す | ページの境目、または製本テープとの境目 | 署名・押印する各当事者 |
| 割印 | 2通以上の契約書 | 複数の文書が同一内容であることを示す | 重ねた契約書の境目 | 各契約当事者 |
「製本した契約書の割印」と検索される場合でも、袋とじのテープと本文の境目に押す印は、一般に契印を指します。2通の契約書を重ねて押す印が割印です。
製本が必要かどうかの判断
契約書が1枚だけの場合、通常は製本も契印も必要ありません。署名欄への署名・押印と、必要に応じた割印を確認します。
2枚程度であれば、ホチキスで留めてページの境目に契印を押す方法でも対応できます。製本しなくても契約が無効になるわけではありません。
3枚以上の契約書や、ページの差し替えを特に避けたい重要な契約書では、袋とじが扱いやすい方法です。契約書のページ数、相手方の社内ルール、契約書の重要度に応じて選びます。
製本した契約書の押印箇所早見表
袋とじの場合はテープと本文の境目に押します
袋とじをした契約書では、製本テープと契約書本文の境目に契印を押します。表紙側、裏表紙側、または両面に押す方法が実務上使われています。
1か所だけ押す場合は、裏表紙側のテープと本文の境目に押す方法がよく使われます。表紙側と裏表紙側の2か所に押す方法もあります。
印影は、製本テープと契約書の用紙にまたがるように押します。印鑑の一部だけがテープにかかる状態ではなく、両方に印影が残る位置を選びます。
ホチキス留めだけの場合は全見開きに契印を押します
ホチキス留めだけで製本しない場合は、ページを開いたときの境目に契印を押します。
たとえば4ページの契約書なら、1ページ目と2ページ目、2ページ目と3ページ目、3ページ目と4ページ目の境目が対象です。契印を押す境目の数は、ページ数から1を引いた数になります。
契印は、隣り合うページの両方に印影がかかるように押します。ページをめくったときに、印影の一部が左右のページに残る位置を選びます。
2通作成する場合は製本後に割印を押します
同じ契約書を2通作成し、甲と乙が1通ずつ保管する場合は、各契約書を製本して契印を押してから、2通を少しずらして重ねます。そのうえで、両方の契約書にまたがるように割印を押します。
割印は、2通を重ねたときに上の契約書の端と下の契約書の本文に印影が残る場所に押します。表紙や裏表紙など、2通を重ねて確認しやすい場所を選びます。
各当事者が自分の印鑑で割印を押す運用もあります。押印する人や回数は、契約書の取り決めや相手方の社内ルールを確認してください。割印の一般的な位置や、複数部作成時の考え方は、契約書の割印とは?押し方や位置、他の押印との違いで詳しく説明しています。
三者以上の契約では各当事者の押印を確認します
三者以上の契約では、契約書へ署名・押印する各当事者が契印を押します。
袋とじの場合は、製本テープと本文の境目に各当事者の印鑑を並べて押します。印影が重なると確認しにくいため、押印位置を少しずつずらします。
契約書を複数通作成する場合は、各通を製本した後、必要に応じて当事者の印鑑で割印を押します。3通以上を作成する場合の押印方法は、契約書の部数と当事者間の合意を確認して決めます。
ケース別の押印箇所一覧
| ケース | 押すもの | 位置 | 人数 | か所数の目安 |
| 1枚の契約書 | 署名・押印 | 契約当事者欄 | 署名する各当事者 | 各当事者1か所 |
| 2枚以上をホチキス留め | 契印 | 各ページの見開きの境目 | 署名する各当事者 | ページの境目ごとに各1か所 |
| 袋とじ | 契印 | 製本テープと本文の境目 | 署名する各当事者 | 表紙側または裏表紙側の1か所、または両面 |
| 2通作成 | 割印 | 2通を重ねた境目 | 各契約当事者 | 各当事者1か所を目安 |
| 三者以上の契約 | 契印と割印 | 契印はテープの境目、割印は2通を重ねた境目 | 署名する各当事者 | 当事者ごとに契印、必要に応じて割印 |
表のか所数は一般的な目安です。契約書に押印方法の指定がある場合は、指定を優先します。
契約書の製本(袋とじ)のやり方
必要な道具と製本テープの選び方
袋とじに使う道具は次のとおりです。
> 1. 印刷済みの契約書を用意します。
> 2. 製本テープまたは紙帯を用意します。
> 3. 契約書の厚みに合うホチキスを用意します。
> 4. はさみまたはカッターを用意します。
> 5. ページをそろえるための平らな作業台を用意します。
製本テープは、契約書の背を覆える幅を選びます。薄い契約書なら25〜35mm程度、ページ数が多い契約書なら35〜50mm程度が目安です。
白色の製本テープは契約書になじみやすく、背の位置も確認しやすい種類です。あらかじめ中央に折り目がついたテープを使うと、背に合わせやすくなります。
テープの長さと幅の決め方
A4縦の契約書に使う製本テープの長さは、次の式を目安にします。
テープの長さ=297mm+契約書の厚み×2+上下の余裕
上下の余裕は、契約書の上下からはみ出して折り込む部分です。市販の製本テープを使う場合は、上下それぞれ10〜20mm程度の余裕を持たせると扱いやすくなります。
たとえば、契約書の厚みが4mmで上下に15mmずつ余裕を持たせる場合は、297mm+8mm+30mmで、約335mmが目安です。
| 契約書の厚み | テープの長さの目安 | テープ幅の目安 |
| 1〜3mm程度 | 319〜343mm程度 | 25〜35mm程度 |
| 4〜8mm程度 | 325〜353mm程度 | 35〜40mm程度 |
| 9〜15mm程度 | 335〜367mm程度 | 40〜50mm程度 |
| 16mm以上 | 厚みに応じて調整 | 市販品や専門業者に確認 |
表の数値は、A4縦の契約書で上下に10〜20mm程度の余裕を持たせる場合の目安です。紙の厚みや製本方法によって必要な長さは変わります。
製本テープを使う手順
製本テープは、次の順番で貼ります。
> 1. 契約書をページ順に並べて、上下左右の端をそろえます。
> 2. 左端から5〜10mm程度内側を目安にホチキスで2〜3か所留めます。
> 3. 契約書の背の長さを測り、上下の余裕を加えてテープを切ります。
> 4. 契約書を閉じた状態で、テープの中央をホチキス留めした背に合わせます。
> 5. テープの片側を背から表紙側へ少しずつ貼ります。
> 6. 契約書を裏返し、残りのテープを裏表紙側へ貼ります。
> 7. 上下にはみ出したテープを契約書の内側へ折り込みます。
> 8. テープと本文の境目に契印を押します。
テープを貼る前にページの端をそろえると、仕上がりが整います。一度に全面を貼らず、空気を押し出すように少しずつ貼ると、しわや浮きを防げます。
ホチキスの針は、製本テープで十分に覆える位置に置きます。針がテープからはみ出すと、テープが浮いたり、書類を扱うときに引っかかったりします。
製本テープがないときは紙帯で作ります
製本テープが手元にない場合は、丈夫な紙を帯状に切って代用できます。契約書と同じサイズの白紙や、少し厚みのある上質紙を使うと扱いやすくなります。
紙帯の長さは、契約書の背の長さに上下の折り込み分を加えて決めます。A4縦なら、297mmに上下それぞれ10〜20mm程度を加える方法が目安です。
紙帯の幅は、ホチキスの針を隠せる幅を基準にします。ホチキスの頭が隠れる幅の約3倍を目安にすると、背から表紙側と裏表紙側へ折り込めます。
> 1. 契約書の背の長さに上下の折り込み分を加えて紙を切ります。
> 2. ホチキスの針を覆える幅になるように紙帯を切ります。
> 3. 紙帯の中央を契約書の背に合わせます。
> 4. 紙帯の片側を表紙側へ折り込みます。
> 5. 契約書を裏返して反対側を裏表紙へ折り込みます。
> 6. 紙帯の上下を契約書の内側へ折り込みます。
> 7. 紙帯と本文の境目に契印を押します。
紙帯は製本テープより剥がれやすいため、のりや両面テープで固定する場合もあります。契約書本文にのりが付かないよう、紙帯の裏側だけに少量を使います。
ページ数が多い場合は専門の製本方法を検討します
ページ数が多い契約書では、製本テープだけでは背が浮いたり、ページがずれたりすることがあります。
20ページ以上を目安に、次の方法も検討します。
> * リングやひもで綴じてから背を覆います。
> * 製本機で熱溶着またはのり付けします。
> * コピー店や製本業者へ依頼します。
ページ数が多い場合は、相手方と製本方法をそろえることも重要です。片方だけ異なる形式で保管すると、後から契約書の状態を確認しにくくなります。
郵送で取り交わすときの段取り
自社で製本・押印して2通発送します
紙の契約書を郵送で取り交わす場合は、次の流れで進めます。
> 1. 契約書を必要な部数印刷します。
> 2. ページ順と契約条件を確認します。
> 3. 各通をホチキスと製本テープで綴じます。
> 4. 自社の署名・押印と契印を行います。
> 5. 必要に応じて収入印紙を貼り、消印を押します。
> 6. 相手方が保管する分を含めて契約書を発送します。
> 7. 送付状に署名・押印・返送方法を記載します。
2通とも自社で製本して発送すると、相手方の製本作業の負担を減らせます。自社だけが先に押印する場合は、相手方の署名・押印欄や契印を押す位置を付箋などで示すと確認しやすくなります。
相手方には署名・契印・割印と返送を依頼します
相手方には、送付状で作業内容を具体的に伝えます。次の一文を記載すると、押印漏れを防ぎやすくなります。
「契約書2通にご署名・押印のうえ、製本テープと本文の境目に契印を押し、2通を重ねた状態で割印を押してください。押印後、1通を同封の返信用封筒でご返送ください。」
相手方が2通とも保管する場合は、返送部数を変更します。返信用封筒を同封する場合は、契約書が折れないサイズを選び、必要な郵送費も確認します。
返送された契約書は、次の点を確認します。
> * 署名・押印がそろっているか確認します。
> * 契印がテープと本文にまたがっているか確認します。
> * 2通を重ねた割印が確認できるか確認します。
> * 契約書のページ数と内容が発送前と同じか確認します。
契約書を保管する期間は、契約の種類や税法上の要件によって異なります。保管方法まで確認したい場合は、契約書の保管期間に関する解説を確認してください。
製本・押印でよくある失敗と直し方
とじ忘れた・製本せずに署名した場合
署名・押印後に製本していないことに気づいた場合は、契約内容を変更せずに製本できるか確認します。
まだ相手方へ発送していない場合は、ページ順を確認してホチキス留めし、製本テープを貼ってから契印を押します。すでに相手方が押印している場合は、独断で作り直さず、相手方へ相談します。
署名・押印済みのページを入れ替えたり、契約内容を追加したりすることは避けます。必要であれば、双方の合意を確認したうえで契約書を再作成します。
テープが曲がった・しわになった場合
製本テープが少し曲がっただけで、契約書のページが固定され、契印の位置も確認できる場合は、そのまま保管できることがあります。
テープが大きく浮いている、ホチキスが露出している、契印を押せないほどしわがある場合は、相手方と相談して作り直します。
作り直すときは、テープを無理に剥がしてページを傷めないようにします。未押印の契約書であれば新しい用紙で作り直し、押印済みであれば再作成と再押印の手順を双方で確認します。
契印が薄い・位置を間違えた場合
契印が少し薄い場合でも、印影が確認でき、テープと本文の両方にかかっていれば、状態を確認して実務上の対応を決めます。
印影がほとんど読めない、契約書の片側にしかかかっていない、別の場所へ押してしまった場合は、相手方へ連絡します。自己判断で近くに押し直さず、相手方と方法を確認します。
再押印する場合は、相手方と方法を確認し、必要に応じて「再押印」などの経緯を記録します。契約書そのものを作り直すほうが適切なケースもあります。
電子契約なら製本も契印も不要です
電子契約では、紙の契約書を印刷して製本する必要がありません。電子署名や締結履歴によって、誰がいつ契約したかを電子データ上で確認します。
電子署名法3条では、本人による一定の電子署名が行われた電磁的記録について、真正に成立したものと推定する規定があります。紙の契約書における押印と同じ仕組みではありませんが、電子署名によって本人性や契約成立の経緯を確認しやすくなります。
電子契約では、紙の課税文書を作成しないため、印紙税の対象となる契約書に収入印紙を貼る必要はありません。国税庁も、電磁的記録は印紙税の課税文書の「作成」には当たらないという見解を示しています。
ただし、契約の種類によっては公正証書など別の方式が必要です。2022年5月18日施行の改正により、一般定期借地権の特約や定期建物賃貸借は、電磁的記録でも締結できるようになりました。一方、事業用定期借地権は公正証書による契約が必要です。
紙の契約書をPDF化して保管する場合は、契約書をPDF化する方法と印紙の考え方も確認してください。
よくある質問
割印は製本の前と後のどちらですか?
製本する契約書では、通常、製本と契印を先に行い、その後に2通を重ねて割印を押します。
製本前に2通を重ねて割印を押すと、製本作業で契約書の位置がずれたり、割印の確認が難しくなったりするためです。契印と割印の順序に法定の決まりがあるわけではありませんが、製本後に割印を押すと作業を整理しやすくなります。
ホチキス留めだけでも有効ですか?
ホチキス留めだけでも、契約書として直ちに無効になるわけではありません。
ただし、ページの抜き取りや差し替えを防ぐ目的では、袋とじのほうが管理しやすい方法です。ホチキス留めだけの場合は、すべてのページの境目に契印を押します。
表紙・裏表紙は必要ですか?
契約書の製本に、法律上、表紙や裏表紙を付けなければならないという決まりはありません。
本文の最初のページと最後のページを表紙・裏表紙として扱い、製本テープで背を覆う方法もあります。契約書の見た目を整えたい場合や、ページを保護したい場合は、表紙と裏表紙を追加します。
表紙を追加する場合は、契約書本文と別の用紙を使うのか、本文の1ページ目を表紙として扱うのかを相手方とそろえておきます。
契印は契約当事者全員が押す必要がありますか?
法律上、契印を全員が押さなければならないという決まりはありません。
ただし、契約書へ署名・押印する当事者が、それぞれ自分の印鑑で契印を押す運用が一般的です。複数の担当者や会社が関わる契約では、誰がどの位置に押すかを事前に決めておくと、押印漏れを防げます。
契約書の収入印紙はどこに貼りますか?
収入印紙は、契約書の表紙や1ページ目など、契約書の余白に貼ります。貼付後は、印紙と契約書の用紙にまたがるように消印を押します。
消印を忘れた場合の過怠税は、消していない印紙の額面と同額です(過怠税の合計額が1,000円に満たない場合は1,000円)。印紙を貼らなかった場合は3倍となり、自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減されます。詳しい位置や消印方法は、収入印紙の割印・消印の押し方を確認してください。
契約書に印紙が必要かどうかは、契約の種類や記載内容で変わります。契約書の印紙が必要なケースと税額の考え方で確認できます。
まとめ
契約書を製本するときは、次の点を確認します。
> * 袋とじのテープと本文の境目に契印を押します。
> * ホチキス留めだけなら各ページの境目に契印を押します。
> * 2通作成する場合は、製本と契印の後に2通を重ねて割印を押します。
> * 契印は署名・押印する各当事者が押す運用が一般的です。
> * A4縦のテープ長さは、297mmに厚みと上下の余裕を加えて決めます。
> * 製本テープがないときは、紙帯でホチキス部分を覆います。
> * 電子契約では、紙の製本・契印・割印・収入印紙が不要です。
契約書の原紙と原本の扱いを確認したい場合は、原紙と原本の違いも参考にしてください。
契約を結んだ後は、請求内容に応じて請求書を作成します。契約書と請求書の関係を確認し、請求書の作成・送付には、FINUX株式会社(OLTA株式会社の100%子会社)が運営するクラウド請求書サービスINVOYも活用できます。



カードローンの債務整理とは?3つの手続きの違いと相談先を整理
返済日が近づくたびに残高を確認し、別のカードで工面する。その繰り返しに入ると、元本はほとんど減らない…