
「領収書を印刷して発行したいが、手書きと同じ効力があるのか不安」という声をよく聞きます。結論として、印刷した領収書も手書きの領収書と同様に法的に有効です。
この記事では、領収書を印刷で作成する方法、テンプレートの活用法、収入印紙の扱い、電子帳簿保存法との関係まで解説します。業務効率化と正確な経理処理の両立を実現しましょう。
目次
印刷した領収書の法的効力
印刷した領収書は法的に有効です。民法上、領収書の作成方法に制限はなく、手書き・印刷・電子発行のいずれも認められています。
重要なのは記載内容が正確であることです。以下の項目が記載されていれば、印刷した領収書として問題ありません。
- 発行日
- 宛名(受領者の名前または会社名)
- 金額
- 但し書き(取引内容)
- 発行者の名前・住所
- 収入印紙(5万円以上の場合)
領収書を印刷する方法
Excelやスプレッドシートで作成する
ExcelやGoogleスプレッドシートに領収書のフォーマットを作成し、印刷する方法が最も一般的です。
テンプレートを一度作成すれば、宛名や金額を変更するだけで繰り返し使えます。連番管理もセル関数で自動化できるため、発行管理が楽になります。
印刷サイズはA4またはA5が標準的です。1枚のA4用紙に2枚分の領収書を配置して印刷する方法もよく使われます。
会計ソフトやクラウドサービスを使う
freee、マネーフォワード、弥生などの会計ソフトには領収書発行機能が搭載されているものがあります。クラウド請求書サービスを使えば、領収書の作成から印刷、電子発行までをワンストップで処理できます。
取引データと連動して自動で領収書を作成できるため、入力ミスの防止にもつながります。
市販の領収書用紙に印刷する
文具店やオフィス用品店で販売されている領収書用紙にプリンターで直接印刷する方法もあります。複写式の用紙を使えば、控えを同時に作成できるメリットがあります。
ただし、プリンターの給紙トレイのサイズや用紙の厚みに対応しているか事前に確認が必要です。
領収書印刷時の収入印紙の扱い
領収書の記載金額が5万円以上の場合、収入印紙の貼付が必要です。これは印刷・手書きを問わず適用されるルールです。
印紙税額は金額によって異なります。
- 5万円以上100万円以下: 200円
- 100万円超200万円以下: 400円
- 200万円超300万円以下: 600円
- 300万円超500万円以下: 1,000円
収入印紙は領収書に貼り、消印(割印)を押します。消印は発行者の印鑑またはサインで行います。
なお、クレジットカード払いの領収書には収入印紙は不要です。領収書に「クレジットカード払い」と明記する必要があります。
電子帳簿保存法と領収書の印刷
2024年1月から電子帳簿保存法の電子取引データ保存が義務化されました。電子的に発行・受領した領収書は、電子データのまま保存する必要があります。
紙で印刷した領収書を発行した場合は、従来どおり紙の控えを保存するか、スキャナ保存制度を利用して電子化して保存します。
メールやクラウドサービスで受領した領収書を印刷して紙で保存する方法は認められていません。電子データとして受領したものは電子データのまま保存する必要があります。
領収書に記載すべき項目と記載例
領収書は、金銭の受け渡しがあったことを証明する書類である。法的に有効な領収書として機能するためには、必要な項目をもれなく記載する必要がある。
必須記載事項の詳細
領収書に記載すべき項目は、おもに5つある。ひとつめは書類の作成者の氏名または名称である。法人であれば会社名、個人事業主であれば屋号または氏名を記載する。インボイス制度に対応する場合は、適格請求書発行事業者の登録番号(T+13けたの数字)も必要になる。ふたつめは取引年月日である。金銭を受け取った日を記載する。みっつめは取引内容(但し書き)である。なにに対する支払いなのかを具体的に記載する。よっつめは金額である。改ざんを防ぐために、金額のまえに「¥」をつけるか、「金〇〇円也」のかたちで記載する。いつつめは書類の交付を受ける者の氏名または名称で、一般的に「宛名」とよばれる。
但し書きの書き方
但し書きは、領収書のなかでもとくに注意が必要な項目である。「品代」や「お品代として」のように曖昧な記載は、税務調査のさいに経費としてみとめられないリスクがある。よい但し書きの例としては、「会議用飲料代として」「出張旅費(東京〜大阪間 新幹線代)として」「事務用品(ボールペン50本)代として」のように、支払いの内容が具体的にわかる記載が望ましい。
但し書きには、軽減税率の対象品目であるかどうかの情報もふくめるとよい。たとえば、「お茶代として(軽減8%対象)」のように記載すれば、経理担当者が税率の判断に迷うことがなくなる。飲食店のレシートでは「飲食代として」と記載されることが多いが、テイクアウトの場合は「テイクアウト飲食料品代として」のように区分がわかる記載にしてもらうと、あとの処理がスムーズになる。
宛名の書き方
宛名は、支払いをおこなった法人名または個人名をただしく記載する。法人名のあとには「御中」をつけるのがビジネスマナーである。「上様」という記載は、正式な宛名としては不十分である。税務上、宛名が不明確な領収書は経費としてみとめられないリスクがある。インボイス制度のもとでは、書類の交付をうける者の氏名または名称の記載がもとめられているため、「上様」は避けるべきである。ただし、小売業や飲食業など不特定多数の者にたいして発行する簡易インボイスでは、宛名の記載は不要とされている。
領収書の印刷テンプレートの作り方
ExcelテンプレートのPDF化手順
Excelで領収書テンプレートを作成したら、PDFに変換して保存することをおすすめする。PDFにする理由は3つある。ひとつめは改ざん防止である。Excelファイルはだれでも編集できるが、PDFにすれば内容の変更がむずかしくなる。ふたつめはレイアウトの固定である。異なるパソコンやプリンターで開いても、おなじレイアウトで表示される。みっつめは電子帳簿保存法への対応である。電子データとして保存するさい、PDF形式であれば検索要件をみたしやすい。
ExcelからPDFへの変換は、「ファイル」メニューから「名前を付けて保存」を選び、ファイル形式で「PDF」を選択するだけで完了する。テンプレートには、宛名、日付、金額、但し書き、発行者情報の入力欄をあらかじめ設けておく。セルの書式設定で金額欄に「¥#,##0」のような形式を指定すれば、数字を入力するだけで正しいかたちで表示される。
A4用紙に複数枚印刷する方法
領収書は一般的にA6やB7サイズで発行されることが多い。A4用紙1枚に複数の領収書を配置して印刷すれば、用紙の節約になる。Excelで作成する場合、A4サイズのワークシート上に2枚分または4枚分の領収書レイアウトを配置する。罫線と文字を使って領収書のわくを描き、それぞれに宛名、日付、金額、但し書きなどの項目を配置する。切り取り線を点線で入れておくと、印刷後にきれいに切り分けられる。
領収書の再発行・訂正の手順
再発行の可否と手順
領収書の再発行は、法律上は義務づけられていない。しかし、取引先や顧客からの依頼があった場合は、対応するのが一般的なビジネス慣行である。再発行にあたっては、二重発行のリスクに注意する必要がある。元の領収書が残っている場合は、必ず回収してから再発行する。元の領収書が紛失されている場合は、再発行した領収書に「再発行」と明記し、発行日も新たに記載する。
たとえば、元の領収書の番号が「R-2026-0512」であった場合、再発行した領収書の番号は「R-2026-0512-1」のようにする。社内の発行台帳にも、再発行した旨と理由を記録しておく。
訂正方法
領収書の訂正は、原則として発行者がおこなう。受け取った側が勝手に修正することはみとめられていない。訂正の方法は、まちがった箇所に二重線を引き、その上に訂正印を押す。そのうえで、正しい内容を近くに記入する。修正ペンや修正テープの使用は、改ざんと区別がつかなくなるため、みとめられていない。ただし、金額の訂正については、二重線と訂正印による訂正ではなく、再発行するのが望ましい。金額は領収書のなかでもっとも重要な項目であり、訂正すると信頼性がさがるためである。

領収書印刷に関するよくある質問
Q. レシートは領収書のかわりになるか
レシートは領収書として有効である。消費税法上、レシートに取引年月日、取引内容、金額、発行者の氏名が記載されていれば、領収書とおなじあつかいになる。インボイス制度では、小売業や飲食業など不特定多数の客に発行する場合、宛名がない簡易インボイスでも仕入税額控除の要件をみたす。ただし、経費精算の社内ルールとして「領収書が必要」と定められている場合は、レシートとは別に領収書を発行してもらう必要がある。
Q. 感熱紙のレシートは長期保存できるか
感熱紙に印字された文字は、時間がたつと薄くなったり消えたりする。保管条件にもよるが、数か月から数年で読めなくなるケースがある。長期保存が必要な場合は、受け取ったらすぐにコピーをとるか、スキャナーやスマートフォンで読み取って電子データとして保存するのがよい。電子帳簿保存法の要件をみたすかたちで保存すれば、原本の感熱紙が劣化しても問題ない。
Q. 領収書に印鑑は必要か
法律上、領収書に印鑑の押印は必須ではない。印鑑がない領収書でも法的に有効である。しかし、日本のビジネス慣行として、発行者の社印や担当者印が押されているほうが信頼性がたかいとみなされることが多い。印鑑を省略する場合でも、発行者の氏名、住所、電話番号が正確に記載されていれば問題はない。
Q. 領収書をカラー印刷する必要はあるか
領収書は白黒印刷で問題ない。法律上、カラーであることが要件とされていないため、モノクロで印刷しても法的効力にちがいはない。コスト面では、白黒印刷のほうがインク代やトナー代をおさえられるため、大量に印刷する場合は白黒印刷が経済的である。
Q. コンビニで領収書を印刷できるか
コンビニのマルチコピー機を使えば、PDFファイルとして作成した領収書を印刷できる。USBメモリーやスマートフォンからデータを読み込み、A4用紙に印刷する。料金は1枚あたり10円から20円程度である。ただし、コンビニのコピー機では用紙サイズや紙質がかぎられるため、専用の領収書用紙への印刷はできない。
領収書を電子化して管理するメリット
保管スペースの削減
紙の領収書は、法人税法の規定により原則として7年間の保存がもとめられる。毎月の取引量が多い企業では、領収書の保管だけでかなりのスペースが必要になる。たとえば、月に200枚の領収書を受け取る企業の場合、年間で2,400枚、7年分で1万6,800枚の領収書をファイルに保管する必要がある。電子化すれば、これらの書類をすべてクラウドストレージに保存でき、物理的な保管スペースが不要になる。
検索性の向上
紙の領収書から特定の取引を探すには、日付や取引先ごとにファイリングされたなかから手作業でさがす必要がある。電子化した領収書であれば、取引先名、日付、金額などのキーワードで瞬時に検索できる。税務調査のさいにも、調査官から「この取引の領収書を見せてほしい」と言われたときに、すぐに該当の書類を提示できれば、調査がスムーズに進む。
電子帳簿保存法への対応
2024年1月からの電子帳簿保存法の改正により、電子取引のデータは電子データのまま保存することが原則として義務づけられた。メールやクラウドサービスで受け取った領収書を印刷して紙で保存する方法は、原則としてみとめられなくなった。電子データの保存には、真実性の確保(タイムスタンプの付与や訂正削除の記録が残るシステムでの保存)と、検索機能の確保(取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できること)が必要である。クラウド型の経費精算システムを利用すれば、これらの要件をかんたんにみたすことができる。
領収書の保管期間と保存ルール
領収書の保管期間は、法人と個人事業主で異なる。法人の場合は原則7年、欠損金がある事業年度は10年の保存が必要である。個人事業主の場合は原則5年(青色申告事業者・消費税の課税事業者は7年)の保存が求められる。
保管にあたっては、日付順や取引先ごとに整理しておくと、あとから必要な領収書をすぐに見つけられる。月ごとにクリアファイルに入れて管理する方法がシンプルで実用的である。年度末にまとめてファイリングし、年度ラベルを貼って保管する企業も多い。
印刷した領収書と収入印紙の詳細ルール
印刷した領収書に収入印紙を貼る基準は、記載された金額によって変わる。5万円未満の領収書には収入印紙は不要である。5万円以上100万円以下の場合は200円の収入印紙を貼る。100万円をこえる場合は、金額に応じて収入印紙の額面があがっていく。
収入印紙を貼ったあとは、領収書と収入印紙にまたがるように消印(割印)を押す。消印は印鑑でなくても、署名やサインでも有効である。消印を忘れると、収入印紙を貼っていないのとおなじあつかいになり、過怠税(本来の印紙税額の3倍)が課される可能性がある。
なお、電子的に発行される領収書(PDFをメールで送付する場合など)には、収入印紙は不要である。印紙税法では、「文書の作成」を課税対象としており、電子データは「文書」に該当しないためである。コスト削減の観点から、領収書の電子発行に切り替える企業もふえている。たとえば、月に100枚の領収書を発行し、うち80枚が5万円以上だった場合、紙で発行すると月16,000円(200円×80枚)の印紙代がかかるが、電子発行にすればこの費用がゼロになる。
領収書の印刷で気をつけるポイント
領収書を印刷する際に、実務上気をつけておきたいポイントをまとめる。
まず、プリンターの設定を確認する。領収書は金額や日付が正確に読める必要があるため、インクやトナーが十分にある状態で印刷する。かすれや不鮮明な印字は、領収書の信頼性を損なう原因になる。
つぎに、用紙の選択である。普通紙でも法的には問題ないが、保管期間が長い領収書には、ある程度厚みのある用紙を使うと耐久性がたかまる。感熱紙は経年劣化が早いため、長期保存には向かない。
連番管理も重要である。領収書には通し番号をふっておくと、発行の漏れや二重発行を防げる。テンプレートに自動で連番がふられるしくみを組み込んでおけば、手入力の手間もはぶける。Excelであれば、ROW関数や連番用のセルを用意することでかんたんに実現できる。
最後に、控えの保管である。発行した領収書は、かならず控え(コピーまたは電子データ)を保管しておく。控えがないと、あとから「この領収書は発行した覚えがない」というトラブルが起きたときに対応できない。印刷のさいに2部印刷して1部を控えとするか、PDFデータとして保存しておくのがよい。
領収書と請求書・納品書の違い
領収書、請求書、納品書は、いずれもビジネスの取引で使われる書類だが、それぞれ役割がことなる。領収書は「お金を受け取った」ことを証明する書類である。請求書は「これだけの金額を支払ってください」と依頼する書類である。納品書は「この商品やサービスを納品しました」と報告する書類である。
経理処理では、請求書をもとに支払いをおこない、その支払いの証拠として領収書を受け取る流れが一般的である。請求書と領収書の両方を保管しておけば、取引の一連の流れを証明できる。ただし、銀行振込の場合は振込明細が支払いの証拠になるため、領収書の発行を省略するケースも多い。
印刷して発行するさいも、それぞれの書類の記載事項がことなる。請求書には支払期日や振込先口座の情報が必要だが、領収書には不要である。逆に、領収書には収入印紙の貼付が必要な場合があるが、請求書には不要である。それぞれの書類のテンプレートを用意しておくと、混同を防げる。
領収書のインボイス対応
2023年10月から開始されたインボイス制度により、消費税の仕入税額控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)の保存が必要になった。領収書もインボイスの要件をみたすかたちで発行することが求められる。適格請求書発行事業者として登録した事業者は、登録番号を領収書に記載する。加えて、適用税率と税率ごとの消費税額を明記する必要がある。
たとえば、税込5,500円(本体5,000円、消費税500円、税率10%)の領収書を発行する場合、金額のほかに「10%対象 5,000円 消費税500円」と「登録番号 T1234567890123」を記載する。印刷テンプレートにこれらの欄をあらかじめ設けておけば、記載漏れを防げる。
まとめ
領収書の印刷に関する要点を振り返ります。
- 印刷した領収書は手書きと同様に法的に有効
- 必須記載項目(発行日・宛名・金額・但し書き・発行者情報)を漏れなく記載する
- 5万円以上の場合は収入印紙の貼付が必要(クレジットカード払いは不要)
- ExcelテンプレートやAI会計ソフトを活用すると効率的
- 電子取引データは印刷保存ではなく電子データのまま保存する
領収書の印刷は業務効率化に有効な方法です。法的要件を守りつつ、自社に合った方法で運用してください。



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