会計の基礎知識

割増賃金とは?計算方法・割増率・残業代の具体例をわかりやすく解説

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「割増賃金はどうやって計算すればいいのか」「法律で決まっている割増率を知りたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。割増賃金は、残業や休日出勤、深夜勤務をした従業員に対して、通常の賃金に上乗せして支払う賃金です。労働基準法で支払いが義務づけられており、正しく計算しないと未払い賃金として労働基準監督署から指導を受ける可能性があります。

この記事では、割増賃金の定義や種類ごとの割増率、計算方法を具体例つきで解説します。読み終えると、自社の給与計算で割増賃金を正しく処理できるようになります。

経理担当者や人事担当者だけでなく、自分の残業代が正しく支払われているか確認したい従業員の方にも役立つ内容です。

割増賃金の定義

割増賃金とは、法定労働時間を超えて働いた場合や、休日・深夜に働いた場合に、通常の賃金に一定の割増率を上乗せして支払う賃金のことです。労働基準法第37条で事業主に支払いが義務づけられています。

割増賃金が設けられている目的は、長時間労働や深夜労働による従業員の負担を補償し、過度な時間外労働を抑制することにあります。法律上の義務であるため、就業規則や雇用契約で「割増賃金を支払わない」と定めても、その規定は無効です。

割増賃金が発生するのは、以下の3つの場合です。

  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合
  • 法定休日に働いた場合
  • 午後10時から午前5時までの深夜時間帯に働いた場合

所定労働時間が法定労働時間より短い企業では、所定外でも法定内の時間には割増が不要なケースがあります。たとえば所定労働時間が7時間の場合、7時間を超えて8時間まで働いた1時間は法定内残業となり、割増賃金ではなく通常の賃金で支払えます。

割増賃金の種類と割増率

割増賃金は、その発生理由によって割増率が異なります。ここでは、時間外労働、休日労働、深夜労働の3種類と、それらが重なった場合の取り扱いを確認します。

時間外労働(残業)の割増率

法定労働時間を超えた労働には、25%以上の割増率が適用されます。1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、50%以上の割増率が必要です。この50%ルールは、2023年4月から中小企業にも適用されています。

たとえば、1時間あたりの賃金が2,000円の従業員が月に70時間の時間外労働をした場合、最初の60時間分は25%増の2,500円、残りの10時間分は50%増の3,000円で計算します。

なお、法定内残業(所定労働時間を超え、法定労働時間以内の部分)には、法律上の割増義務はありません。ただし、就業規則で割増を定めている場合はその規定に従います。

休日労働の割増率

法定休日に労働した場合は、35%以上の割増率が適用されます。法定休日とは、労働基準法で定められた「週1日または4週に4日」の休日です。

注意が必要なのは、法定休日と所定休日の違いです。週休二日制の場合、法定休日は1日だけであり、もう1日は所定休日(法定外休日)です。所定休日の労働は、週40時間を超えた分が時間外労働として25%以上の割増対象になりますが、35%の休日労働割増は適用されません。

たとえば日曜日を法定休日としている企業で日曜に8時間働いた場合、8時間すべてに35%の割増率が適用されます。一方、土曜日が所定休日であれば、その週の総労働時間が40時間を超えた分について25%の割増率が適用されます。

深夜労働の割増率

午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働した場合は、25%以上の割増率が適用されます。深夜労働の割増は、雇用形態を問わずすべての労働者に適用されます。パートやアルバイトであっても深夜時間帯に勤務すれば割増賃金の対象です。

深夜労働の割増は、正社員だけでなく管理監督者にも適用される点が特徴です。管理監督者は時間外労働と休日労働の割増が免除されますが、深夜労働だけは例外的に割増が必要です。

割増率が重複する場合

時間外労働や休日労働が深夜時間帯に及んだ場合、割増率は合算されます。主な組み合わせは以下のとおりです。

  • 時間外労働かつ深夜労働:25% + 25% = 50%以上
  • 休日労働かつ深夜労働:35% + 25% = 60%以上
  • 月60時間超の時間外労働かつ深夜労働:50% + 25% = 75%以上

ただし、休日労働と時間外労働の割増率は重複しません。法定休日に8時間を超えて働いた場合でも、適用される割増率は35%のままです。法定休日の労働時間は、月の時間外労働60時間のカウントにも含まれません。

計算方法

割増賃金の計算は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 対象時間数」で求めます。ここからは、1時間あたりの賃金の算出方法と、給与形態別の計算例を紹介します。

1時間あたりの賃金を計算する

割増賃金を算出するには、まず1時間あたりの基礎賃金を求めます。月給制の場合の計算式は次のとおりです。

1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間

1か月の平均所定労働時間は、年間の所定労働日数に1日の所定労働時間をかけ、12で割って求めます。

1か月の平均所定労働時間 = 年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12

年間休日が120日で1日8時間勤務の場合、年間所定労働日数は245日です。1か月の平均所定労働時間は245 × 8 ÷ 12で約163.3時間になります。

月給制の場合の計算例

以下の条件で計算してみます。

  • 月給(基本給+職務手当):300,000円
  • 1か月の平均所定労働時間:163.3時間
  • 時間外労働:月25時間(うち深夜5時間)

まず1時間あたりの賃金を求めます。

300,000円 ÷ 163.3時間 = 約1,837円

次に、それぞれの割増賃金を計算します。

通常の時間外労働(20時間):1,837円 × 1.25 × 20時間 = 45,925円

時間外かつ深夜労働(5時間):1,837円 × 1.50 × 5時間 = 13,778円

割増賃金の合計:45,925円 + 13,778円 = 59,703円

この例では、月の割増賃金は59,703円となります。月給とあわせた総支給額は359,703円です。

時給制・日給制の場合

時給制の場合、1時間あたりの賃金はその時給額がそのまま基礎賃金になります。時給1,200円のパート従業員が2時間の時間外労働をした場合、割増賃金は1,200円 × 0.25 × 2時間 = 600円です。通常の賃金2,400円とあわせて3,000円を支払います。

日給制の場合は、日給を1日の所定労働時間で割って1時間あたりの賃金を求めます。日給10,000円で所定労働時間が8時間なら、1時間あたりの賃金は1,250円です。3時間の時間外労働に対する割増賃金は1,250円 × 1.25 × 3時間 = 4,688円となります。

割増賃金の計算で除外される手当

1時間あたりの賃金を計算する際、すべての手当を含めるわけではありません。労働基準法施行規則第21条では、以下の7つの手当を基礎賃金から除外できると定めています。

  • 家族手当(扶養人数に応じて支給されるもの)
  • 通勤手当(通勤距離や実費に応じて支給されるもの)
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当(住宅費用に応じて支給されるもの)
  • 臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

これらは労働の対価というよりも、個人の事情に応じて支給される性質があるため、除外が認められています。ただし、名称が上記に該当しても、実態として一律に支給している場合は除外できません。

たとえば「住宅手当」という名称でも、住宅費用の多寡にかかわらず全員に一律2万円を支給しているなら、除外できず基礎賃金に含めて計算します。一方、賃貸か持ち家かで金額が異なるなど住宅費用に連動していれば除外が可能です。

職務手当や役職手当、資格手当などは除外対象に含まれていないため、基礎賃金に算入します。

中小企業の割増賃金に関する注意点

中小企業にとって特に重要な割増賃金のルールを確認します。

月60時間超の残業の割増率

2023年4月から、中小企業でも月60時間を超える時間外労働の割増率が50%以上になりました。それ以前は中小企業に猶予措置があり25%で足りましたが、現在はすべての企業が対象です。

月60時間のカウントは、法定時間外労働の累計で判断します。法定休日労働の時間は含みませんが、法定外休日(所定休日)の労働で週40時間を超えた分はカウントに含まれます。

1時間あたりの賃金が1,500円の従業員が月に75時間の時間外労働をした場合を考えます。60時間までは1,500円 × 0.25 × 60時間 = 22,500円です。60時間を超えた15時間分は1,500円 × 0.50 × 15時間 = 11,250円です。割増部分の合計は33,750円です。

人件費に大きく影響するため、月60時間を超えないよう労働時間を管理することが重要です。

代替休暇制度

月60時間を超える時間外労働をした従業員に対して、割増賃金の引き上げ分(25%から50%への差額である25%分)の支払いに代えて、有給の休暇(代替休暇)を付与する制度があります。

代替休暇制度を導入するには、労使協定の締結が必要です。協定では、代替休暇の時間数の算定方法、取得期間、取得単位(1日または半日)などを定めます。

注意点として、代替休暇を取得しても基本の割増率25%分の支払いは必要です。免除されるのは引き上げ分の25%に相当する部分のみです。また、代替休暇を取得するかどうかは従業員の意思に委ねられ、取得を強制できません。

割増賃金とは

固定残業代(みなし残業代)

固定残業代は、あらかじめ一定時間分の割増賃金を毎月の給与に含めて支払う制度です。正しく運用すれば合法ですが、いくつかの要件を満たす必要があります。

固定残業代の有効要件

固定残業代が法的に有効と認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 基本給と固定残業代が明確に区分されていること
  • 固定残業代に対応する時間外労働の時間数が明示されていること
  • その金額が実際の割増賃金の計算額以上であること

たとえば「月給25万円(固定残業代4万円、20時間分を含む)」のように、金額と時間数を明確に示さなければなりません。「残業代込みで月給25万円」という曖昧な表記では、固定残業代として認められないリスクがあります。

求人票や雇用契約書にも、固定残業代の金額と対応する時間数を記載することが求められます。

超過分の支払い義務

固定残業代で想定した時間数を超えて時間外労働をした場合は、超過分の割増賃金を別途支払わなければなりません。固定残業代を払っていれば残業代は不要という認識は誤りです。

たとえば、固定残業代が月20時間分の場合に30時間の時間外労働をしたら、超過した10時間分の割増賃金を追加で支払います。逆に、実際の残業が20時間に満たなかった場合でも、固定残業代を減額することはできません。

固定残業代の運用で多いトラブルは、超過分の未払いと基本給との区分が不明確なケースです。裁判で固定残業代が無効と判断されると、固定残業代を含む月給全額を基礎賃金として割増賃金を再計算する必要があり、多額の未払い賃金が発生する可能性があります。

管理監督者

労働基準法第41条では、管理監督者には労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されないと定めています。そのため、管理監督者には時間外労働と休日労働の割増賃金を支払う必要がありません。

ただし、深夜労働の割増賃金は管理監督者にも適用されます。午後10時から午前5時までに勤務した場合は、25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

ここで重要なのは、法律上の「管理監督者」の要件です。単に「管理職」という肩書きがあるだけでは管理監督者に該当しません。管理監督者と認められるには、以下の要素を総合的に判断します。

  • 経営者と一体的な立場で労務管理を行う権限がある
  • 出退勤について厳格な制限を受けていない
  • 地位にふさわしい待遇(賃金や賞与)を受けている

いわゆる「名ばかり管理職」の問題は、管理監督者の要件を満たしていない従業員を管理職として扱い、割増賃金を支払わないケースです。裁判で管理監督者性が否定されると、遡って割増賃金を支払う義務が生じます。

部長や課長といった役職名だけで判断せず、実態に即して管理監督者に該当するかを確認することが大切です。

割増賃金の未払いリスク

割増賃金の未払いは、企業にとって大きなリスクを伴います。従業員から請求を受けた場合、元本に加えてペナルティが発生する可能性があります。

付加金の制度

割増賃金の未払いがあった場合、裁判所は労働者の請求により、未払い金と同額の付加金の支払いを命じることができます(労働基準法第114条)。付加金が認められると、企業は未払い額の最大2倍を支払うことになります。

たとえば未払いの割増賃金が200万円の場合、付加金200万円を加えた合計400万円を支払う可能性があります。付加金の支払いを命じるかどうかは裁判所の裁量ですが、悪質な未払いと判断されれば認められる傾向にあります。

付加金の請求は、違反があったときから5年以内(当面は3年)に行わなければなりません。企業側としては、割増賃金の未払いを放置すると付加金のリスクが増大するため、早期に是正することが重要です。

さらに、労働基準法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあります。

未払い賃金の時効

賃金請求権の消滅時効は、2020年4月の法改正により、2年から5年に延長されました。ただし経過措置として、当分の間は3年が適用されます。

2020年4月1日以降に支払日が到来した賃金には3年の時効が適用されるため、未払いが長期にわたるほど請求額が大きくなります。月5万円の未払いが3年分蓄積すると180万円、付加金を含めると360万円になる計算です。

時効の起算点は、各賃金の支払日です。毎月の給与であれば、各月の給与支払日から3年が経過すると時効により請求できなくなります。ただし、労働者が内容証明郵便で請求(催告)すると、6か月間は時効の完成が猶予されます。

企業は、過去の割増賃金の計算に誤りがないか定期的に確認し、未払いが発覚した場合はすみやかに精算することが大切です。

よくある質問

割増賃金について、実務で疑問が生じやすいポイントをQ&A形式でまとめます。

Q. 残業が1分単位ではなく15分や30分単位で切り捨てられています。問題はありませんか?

A. 原則として、労働時間は1分単位で計算する必要があります。15分単位や30分単位で端数を切り捨てることは、労働基準法に違反する可能性があります。ただし、1か月の時間外労働の合計に30分未満の端数が生じた場合に切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は、行政通達で認められています。あくまで「1か月の合計」での端数処理であり、日ごとの切り捨ては認められません。

Q. パートやアルバイトにも割増賃金は発生しますか?

A. はい、パートやアルバイトも労働基準法の対象です。法定労働時間を超えた労働、法定休日の労働、深夜労働に対して割増賃金が発生します。たとえば1日5時間の契約で7時間働いた場合、5時間から8時間までは通常の時給で支払い、8時間を超えた分に25%の割増率を適用します。

Q. 振替休日と代休では割増賃金の扱いが違いますか?

A. はい、異なります。振替休日は、あらかじめ休日と労働日を入れ替える制度です。事前に振り替えた場合、もとの休日に働いても休日労働にはならず、35%の割増は不要です。ただし、振り替えた結果、その週の労働時間が40時間を超えた場合は時間外労働の割増(25%)が必要です。一方、代休は休日労働をしたあとに別の日を休みにする制度で、休日労働の事実は変わらないため35%の割増賃金が発生します。

Q. 年俸制の場合、割増賃金は不要ですか?

A. いいえ、年俸制でも割増賃金の支払い義務があります。年俸額を12で割った月額をもとに1時間あたりの賃金を算出し、時間外労働や深夜労働などの割増賃金を別途支払います。年俸に固定残業代を含める場合は、固定残業代の有効要件を満たす必要があります。

Q. テレワーク(在宅勤務)でも割増賃金は発生しますか?

A. はい、テレワークでも通常の勤務と同じく割増賃金が発生します。事業場外みなし労働時間制を適用している場合でも、休日労働や深夜労働をした場合は割増賃金の支払いが必要です。テレワークでは労働時間の把握が課題になるため、勤怠管理ツールやログの活用で正確に記録することが大切です。

まとめ

割増賃金は、時間外労働、休日労働、深夜労働に対して法律で支払いが義務づけられている賃金です。正しく計算し、適切に支払うことが企業のリスク管理として欠かせません。

この記事のポイントをまとめます。

  • 時間外労働は25%以上、月60時間超は50%以上の割増率が必要
  • 休日労働は35%以上、深夜労働は25%以上の割増率を適用する
  • 割増率は重複する場合に合算する(休日深夜は60%以上)
  • 1時間あたりの賃金は、除外手当を差し引いた月給を平均所定労働時間で割って求める
  • 固定残業代を導入する場合は、金額・時間数の明示と超過分の支払いが必須
  • 管理監督者でも深夜労働の割増は必要
  • 未払いは付加金(最大2倍)や罰則のリスクがある
  • 賃金請求権の時効は当面3年(将来的に5年へ)

給与計算を担当する方は、割増率の適用誤りや除外手当の判定ミスがないか、定期的に見直しましょう。割増賃金のルールを正しく理解し運用することが、従業員との信頼関係を守る土台になります。

この記事の投稿者:

hasegawa

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