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減価償却累計額とは?仕訳・貸借対照表での表示・減価償却費との違いを解説

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「減価償却累計額とはなにか」「減価償却費とのちがいがわからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。減価償却累計額は、固定資産の取得時から現在までに計上した減価償却費の合計額です。貸借対照表では固定資産の取得価額からマイナスする形式で表示され、資産の現在の帳簿価額を示す重要な科目です。

この記事では、減価償却累計額の意味、仕訳、貸借対照表での表示方法、減価償却費との違いを具体例つきで解説します。読み終えると、固定資産の会計処理を正しく理解できるようになります。

経理担当者や簿記の学習者に向けた内容です。

減価償却累計額の定義

減価償却累計額とは、固定資産を取得してから現在までに計上した減価償却費の合計金額を指します。英語では「Accumulated Depreciation」と表記されます。

固定資産は、建物・車両・機械設備など、事業のために長期間使う資産です。これらは購入時に全額を費用にするのではなく、使用する期間にわたって少しずつ費用化していきます。この費用化の手続きが減価償却であり、毎期計上される費用が減価償却費です。

減価償却累計額は、この減価償却費を取得時点から積み上げた金額です。たとえば、取得価額500万円の機械を毎年100万円ずつ減価償却している場合、3年目の期末時点での減価償却累計額は300万円になります。

減価償却累計額は、貸借対照表で固定資産の取得価額からマイナスする形で表示されます。取得価額から減価償却累計額を差し引いた金額が帳簿価額(簿価)であり、その資産の現在の会計上の価値を表します。先ほどの例では、取得価額500万円から減価償却累計額300万円を差し引いた200万円が帳簿価額です。

減価償却累計額は資産のマイナス項目であるため、貸借対照表の借方ではなく貸方に記載されます。このような勘定科目を評価勘定といい、対象となる資産の残高を間接的に減らす役割を果たします。

減価償却累計額と減価償却費の違い

減価償却累計額と減価償却費は名前が似ていますが、会計上の役割はまったく異なります。両者の違いを正しく理解することが、固定資産の会計処理を行ううえで欠かせません。

減価償却費は、当期に計上する費用です。損益計算書に記載され、その期の利益を計算するときに差し引かれます。一方、減価償却累計額は、過去から当期までに計上した減価償却費の合計額です。貸借対照表に記載され、固定資産の帳簿価額を算出するために使います。

整理すると次のとおりです。

減価償却費は損益計算書に表示される当期の費用です。毎期の金額は償却方法によって変わります。期末に計上し、翌期にはリセットされます。

減価償却累計額は貸借対照表に表示される過去から現在までの累計額です。毎期増加していき、資産を売却または除却するまで残りつづけます。

たとえば、取得価額600万円の車両を定額法で6年間にわたり償却する場合、残存価額をゼロとすると毎年の減価償却費は100万円です。3年目の期末には、減価償却費は100万円ですが、減価償却累計額は300万円になります。4年目の期末には、減価償却費は同じく100万円のまま、減価償却累計額は400万円に増えます。

このように、減価償却費は単年度のフロー(流れ)であり、減価償却累計額はストック(蓄積)であるという関係にあります。

減価償却累計額の仕訳

減価償却の仕訳方法には、間接法と直接法の2つがあります。それぞれの方法で、減価償却累計額の扱い方が異なります。ここでは、取得価額300万円の備品を、定額法・耐用年数5年・残存価額ゼロで償却する場合を例に解説します。毎年の減価償却費は60万円です。

間接法の仕訳

間接法は、固定資産の取得価額をそのまま残し、減価償却累計額という別の勘定科目を使って償却額を記録する方法です。企業会計で広く採用されており、実務上もっとも一般的な方法です。

1年目の期末の仕訳は次のとおりです。

(借方)減価償却費 600,000円 (貸方)減価償却累計額 600,000円

2年目の期末も同じ仕訳を行います。

(借方)減価償却費 600,000円 (貸方)減価償却累計額 600,000円

2年目の期末時点で、備品勘定の残高は取得価額の300万円のまま変わりません。減価償却累計額の残高は120万円(60万円×2年)になります。帳簿価額は300万円から120万円を差し引いた180万円です。

間接法のメリットは、取得価額と償却累計額が別々に記録されるため、資産の取得時の金額と現在までの償却額をいつでも確認できる点です。取得価額がわかることで、資産の規模感や投資額の把握が容易になります。

直接法の仕訳

直接法は、固定資産の帳簿価額を直接減らす方法です。減価償却累計額の勘定科目は使いません。個人事業主や小規模な事業者で使われることがあります。

1年目の期末の仕訳は次のとおりです。

(借方)減価償却費 600,000円 (貸方)備品 600,000円

2年目の期末も同様です。

(借方)減価償却費 600,000円 (貸方)備品 600,000円

2年目の期末時点で、備品勘定の残高は180万円(300万円−60万円×2年)になります。直接法では減価償却累計額の勘定は登場しません。

直接法のメリットは、仕訳がシンプルで帳簿の記帳が少なくて済む点です。一方、取得価額がわからなくなるデメリットがあります。

間接法と直接法の違い

間接法と直接法の違いを整理します。

間接法では、減価償却累計額の勘定科目を使います。固定資産の取得価額はそのまま残り、貸借対照表には取得価額と累計額の両方が表示されます。取得時の投資額がわかりやすく、中規模以上の企業では間接法が標準的です。

直接法では、減価償却累計額の勘定科目は使いません。固定資産の帳簿価額を直接減らすため、貸借対照表には償却後の金額だけが表示されます。仕訳はシンプルですが、取得価額の情報が帳簿からは読み取れなくなります。

どちらの方法でも、最終的な帳簿価額と損益計算書に計上される減価償却費の金額は同じです。違いは貸借対照表の表示と帳簿の記録方法だけです。

法人の場合は間接法が原則とされています。税務申告においても、固定資産の取得価額と減価償却累計額の両方の情報が必要になるため、間接法を採用しておくと申告書の作成がスムーズです。

貸借対照表での表示方法

減価償却累計額は、貸借対照表の固定資産の部に表示されます。表示形式には複数の方法があり、企業の規模や会計基準によって使い分けられています。ここでは主な3つの方法を解説します。

科目別控除形式

科目別控除形式は、固定資産の科目ごとに取得価額と減価償却累計額を表示する方法です。もっとも詳細な情報を提供できるため、上場企業を含む多くの企業で採用されています。

表示例を示します。取得価額500万円の建物で減価償却累計額が200万円の場合、次のように記載します。

建物 5,000,000円

減価償却累計額 △2,000,000円

建物(純額) 3,000,000円

同様に、取得価額200万円の車両運搬具で減価償却累計額が80万円の場合は次のとおりです。

車両運搬具 2,000,000円

減価償却累計額 △800,000円

車両運搬具(純額) 1,200,000円

この形式では、個々の資産ごとに取得価額と減価償却の進み具合を把握できます。資産の老朽化の度合いを判断する材料にもなるため、投資家や金融機関への情報開示として有用です。

一括控除形式

一括控除形式は、有形固定資産の取得価額の合計から減価償却累計額の合計を一括で差し引く方法です。科目別控除形式よりも表示がシンプルになります。

表示例を示します。有形固定資産の取得価額の合計が1,000万円、減価償却累計額の合計が350万円の場合は次のように記載します。

有形固定資産 10,000,000円

減価償却累計額 △3,500,000円

有形固定資産(純額) 6,500,000円

この形式は、個別の資産ごとの内訳がわからないデメリットがあります。ただし、固定資産の数が多い企業では貸借対照表の表示がすっきりするため、中小企業を中心に使われています。個別の情報は固定資産台帳で管理し、必要に応じて参照します。

注記による開示

注記による開示は、貸借対照表本体には帳簿価額(純額)のみを表示し、取得価額と減価償却累計額は注記として別途記載する方法です。

貸借対照表本体の表示は次のようになります。

建物 3,000,000円

車両運搬具 1,200,000円

注記には次のように記載します。

「有形固定資産の取得価額は7,000,000円であり、減価償却累計額は2,800,000円である。」

この方法は貸借対照表の表示がもっとも簡潔になりますが、本体からは取得価額と累計額がわかりません。中小企業の計算書類や個人事業主の決算書で使われることがあります。

どの形式を採用するかは、企業の規模や開示の要求水準によって判断します。上場企業は科目別控除形式が原則であり、中小企業は一括控除形式や注記方式でも問題ありません。

減価償却累計額とは

減価償却累計額の計算例

ここでは、代表的な2つの償却方法を使って、減価償却累計額の計算を具体的に見ていきます。いずれも取得価額500万円、耐用年数5年、残存価額ゼロの機械装置を例にします。

定額法での計算例

定額法は、毎年同じ金額を償却する方法です。計算式は次のとおりです。

年間の減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

耐用年数5年の場合、償却率は0.200です。

年間の減価償却費 = 5,000,000円 × 0.200 = 1,000,000円

各年度の減価償却費と減価償却累計額は次のようになります。

1年目:減価償却費100万円、減価償却累計額100万円、帳簿価額400万円

2年目:減価償却費100万円、減価償却累計額200万円、帳簿価額300万円

3年目:減価償却費100万円、減価償却累計額300万円、帳簿価額200万円

4年目:減価償却費100万円、減価償却累計額400万円、帳簿価額100万円

5年目:減価償却費999,999円、減価償却累計額4,999,999円、帳簿価額1円

5年目は備忘価額として1円を残します。これは資産が帳簿上に存在していることを示すための処理です。帳簿価額がゼロになると資産の存在がわからなくなるため、使用中の資産には1円の備忘価額を残すルールがあります。

定額法は計算がシンプルで、毎年の費用額が一定になるため、利益計画を立てやすいメリットがあります。

定率法での計算例

定率法は、帳簿価額に一定の償却率をかけて減価償却費を算出する方法です。初年度の費用が大きく、年々小さくなるのが特徴です。200%定率法の計算式は次のとおりです。

年間の減価償却費 = 期首帳簿価額 × 定率法の償却率

耐用年数5年の200%定率法では、償却率は0.400、改定償却率は0.500、保証率は0.10800です。

償却保証額 = 5,000,000円 × 0.10800 = 540,000円

各年度の計算は次のとおりです。

1年目:期首帳簿価額500万円 × 0.400 = 減価償却費200万円、累計額200万円、帳簿価額300万円

2年目:期首帳簿価額300万円 × 0.400 = 減価償却費120万円、累計額320万円、帳簿価額180万円

3年目:期首帳簿価額180万円 × 0.400 = 減価償却費72万円、累計額392万円、帳簿価額108万円

4年目:期首帳簿価額108万円 × 0.400 = 43.2万円。これは償却保証額54万円を下回るため、改定償却率を適用します。108万円 × 0.500 = 減価償却費54万円、累計額446万円、帳簿価額54万円

5年目:改定取得価額108万円 × 0.500 = 54万円。ただし帳簿価額が1円になるまでの金額を計上します。減価償却費539,999円、累計額4,999,999円、帳簿価額1円

定率法は初期に多額の費用を計上するため、高額な設備投資を行った場合に早期の節税効果が得られます。ただし、年度ごとの費用額が変動するため、利益の予測が立てにくい面もあります。

法人税法では、建物・建物附属設備・構築物は定額法、それ以外の有形固定資産は定率法が法定償却方法とされています。届出を行えば選択を変えることもできます。

減価償却累計額と固定資産の売却・除却

固定資産を売却または除却するときには、減価償却累計額の取り崩しが必要です。ここでは間接法で記帳している前提で、それぞれの仕訳を解説します。

売却時の仕訳

固定資産を売却するときは、取得価額と減価償却累計額を帳簿から取り除き、売却価額との差額を売却損益として計上します。

例として、取得価額500万円、減価償却累計額300万円(帳簿価額200万円)の機械装置を250万円で売却した場合を考えます。

(借方)

現金預金 2,500,000円

減価償却累計額 3,000,000円

(貸方)

機械装置 5,000,000円

固定資産売却益 500,000円

帳簿価額200万円の資産を250万円で売却したため、差額の50万円が売却益になります。

次に、同じ資産を150万円で売却した場合です。

(借方)

現金預金 1,500,000円

減価償却累計額 3,000,000円

固定資産売却損 500,000円

(貸方)

機械装置 5,000,000円

帳簿価額200万円を下回る150万円で売却したため、差額の50万円が売却損になります。

売却の仕訳では、取得価額と減価償却累計額の両方を帳簿から除きます。これにより、その資産に関する記録が貸借対照表から消えます。期中に売却する場合は、売却日までの減価償却費を月割りで計上してから売却の仕訳を行います。

除却時の仕訳

除却とは、固定資産の使用をやめて帳簿から取り除くことです。廃棄する場合や、使わなくなった資産を倉庫に保管する場合が該当します。

例として、取得価額500万円、減価償却累計額450万円(帳簿価額50万円)の機械装置を除却した場合を考えます。

(借方)

減価償却累計額 4,500,000円

固定資産除却損 500,000円

(貸方)

機械装置 5,000,000円

除却時の帳簿価額がそのまま除却損になります。除却した資産に処分価値がある場合は、貯蔵品として計上します。

処分価値が3万円ある場合の仕訳は次のとおりです。

(借方)

減価償却累計額 4,500,000円

貯蔵品 30,000円

固定資産除却損 470,000円

(貸方)

機械装置 5,000,000円

処分価値の分だけ除却損が減少します。除却損は特別損失として損益計算書に計上されます。

除却は売却と異なり代金の受け取りがないため、帳簿価額の全額が原則として損失になります。使用中に価値が下がった資産であっても、帳簿価額が残っていれば除却損が発生する点に注意が必要です。

減価償却累計額の管理方法

減価償却累計額を正確に把握するためには、日常的な管理体制が重要です。ここでは固定資産台帳との照合と会計ソフトでの管理について解説します。

固定資産台帳との照合

固定資産台帳は、個々の固定資産について取得日・取得価額・耐用年数・償却方法・各年度の減価償却費・減価償却累計額・帳簿価額などを記録した台帳です。会社法および法人税法で作成が求められています。

固定資産台帳に記録する主な項目は次のとおりです。

資産の名称と種類

取得年月日と事業供用日

取得価額

耐用年数と償却方法

各年度の減価償却費

減価償却累計額

期末の帳簿価額

設置場所と管理部門

期末の決算時には、固定資産台帳の減価償却累計額の合計と、帳簿(総勘定元帳)の減価償却累計額の残高が一致しているかを確認します。不一致がある場合は、記帳漏れや計算誤りがないかを調査します。

また、年に一度は固定資産の実地棚卸を行い、台帳上の資産が実際に存在しているかを確認します。すでに廃棄した資産が台帳に残っていたり、移動した資産の場所が更新されていなかったりするケースは少なくありません。実地棚卸を通じて台帳の正確性を担保することが大切です。

会計ソフトでの管理

会計ソフトを使えば、減価償却累計額の計算と管理を効率化できます。多くの会計ソフトには固定資産管理の機能が搭載されており、取得価額・耐用年数・償却方法を登録するだけで、毎年の減価償却費と累計額が自動計算されます。

会計ソフトで管理するメリットは次のとおりです。

計算ミスを防げる

仕訳が自動で生成される

固定資産台帳が自動で作成・更新される

決算時の減価償却費の計上が効率化される

税務申告に必要な別表十六の作成が容易になる

会計ソフトを利用する際の注意点もあります。資産の取得時に正しい耐用年数と償却方法を設定することが前提です。設定を誤ると、毎年の減価償却費が正しく計算されず、累計額にも影響が出ます。新しい資産を取得したときや、資産を売却・除却したときには、速やかにソフトへ反映させることが大切です。

クラウド型の会計ソフトでは、税制改正による耐用年数や償却率の変更が自動で反映されるものもあります。法改正のたびに手動で設定を見直す手間が省けるため、管理の負担が軽減されます。

減価償却累計額に関するよくある質問

減価償却累計額について、よく寄せられる質問とその回答をまとめます。

Q. 減価償却累計額は資産と負債のどちらに分類されますか?

A. 減価償却累計額は資産のマイナス項目です。貸借対照表では固定資産の部に記載されますが、資産の金額を減らす評価勘定として貸方に計上されます。負債ではありません。

Q. 減価償却累計額が取得価額を超えることはありますか?

A. 減価償却累計額が取得価額を超えることはありません。減価償却は帳簿価額が備忘価額の1円になるまで行われ、それ以上の償却はしません。取得価額が100万円であれば、減価償却累計額の上限は999,999円です。

Q. 土地にも減価償却累計額はありますか?

A. 土地は減価償却の対象外であるため、減価償却累計額は計上されません。土地は時間の経過によって価値が減少しないと考えられており、取得価額のまま貸借対照表に表示されます。同様に、建設仮勘定も事業供用前であるため減価償却の対象外です。

Q. 減価償却累計額と減損損失累計額は同じものですか?

A. 両者は異なります。減価償却累計額は、耐用年数にわたって規則的に費用配分した金額の累計です。減損損失累計額は、資産の収益性が低下した場合に臨時的に帳簿価額を切り下げた金額の累計です。減価償却は毎期行われますが、減損は特定の条件を満たしたときにのみ認識されます。

Q. 中古資産を取得した場合、減価償却累計額はどうなりますか?

A. 中古資産を取得した場合、取得価額は自社が実際に支払った金額です。減価償却累計額はゼロからスタートし、見積耐用年数に基づいて新たに償却していきます。前の所有者の減価償却累計額は引き継ぎません。中古資産の耐用年数は、法定耐用年数から経過年数を控除し、経過年数の20%を加えた年数で算出します。

まとめ

減価償却累計額は、固定資産の取得時から現在までに計上した減価償却費の合計額です。貸借対照表では固定資産の取得価額から差し引く形で表示され、資産の帳簿価額を示す重要な役割を果たしています。

この記事のポイントを整理します。

減価償却累計額は過去から現在までの累計であり、減価償却費は当期の費用である

間接法では減価償却累計額の勘定科目を使い、直接法では使わない

貸借対照表の表示方法には、科目別控除形式・一括控除形式・注記方式がある

定額法では毎年同額を償却し、定率法では初期に多く償却する

売却・除却時には減価償却累計額を取り崩して帳簿から除く

固定資産台帳と帳簿の照合で正確性を担保する

減価償却累計額の管理は、正確な決算書の作成と適切な税務申告に直結します。固定資産台帳や会計ソフトを活用して、日頃から正確な記録を維持しましょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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