経理業務について 現金出納帳とは?意外と知られていない書き方の基礎知識をわかりやすく解説 最終更新日: 2023/12/17   公開日: 2022/11/03

現金出納帳とは?

現金出納帳とは、企業の現金を管理するための帳簿です。現金で物品を購入したり、商品が売れて現金が増えたりなど、現金による入出金があった際に記録します。

企業が作成する帳簿には、必ず作成しなくてはいけない「主要簿」と、必要に応じて作成する「補助簿」があります。現金出納帳は補助簿に該当するため、必ずしも作成しなくてはならないわけではありませんが、現金を正しく管理するために多くの企業が作成しています。

現金出納帳の読み方は「げんきんすいとうちょう」です。なお、金銭出納帳(きんせんすいとうちょう)と呼ばれることもあります。

小口現金出納帳との違い

小口現金とは、手元に置いておく少額の現金を指します。 現金は経理部門だけではなく、他の部門も消耗品費や交通費などの支払いのために使用しますが、毎回経理部門とやり取りしていては非効率です。

そのため、企業では各部門に小口現金と呼ばれる現金を置いておくことが一般的です。小口現金出納帳はそれらの現金を管理するための帳簿であり、経費の支払い時や、経理部門からの補充時に記入する必要があります。

預金出納帳との違い

預金出納帳とは、銀行口座にあるお金を管理するための出納帳です。 各口座の残高や入出金を管理するため、企業が所有している口座別に作成します。複数の金融機関を利用して口座を開設している場合はもちろん、普通預金や当座預金・定期預金といった種類別にも預金出納帳を分けて作成します。

出納帳の種類

出納帳は現金出納帳と預金出納帳に分けられます。ここでは二種類の出納帳の内容と、関連する帳簿について解説します。

現金出納帳

現金出納帳は現金の出入りを管理するための記録帳簿です。収入と支払の結果に基づいて、現金の残高が正しいかどうかを確認する目的で作成します。現金出納帳に記入する内容は以下のようにまとめられます。

項目名内容
日付現金の出入りがあった年月日2023年5月12日
勘定科目取引内容の経理上の分類科目接待交際費、消耗品費
摘要現金の入出金があった原因の具体的な内容取引先との会食費、文房具代
収入金額収入の金額(税込)5,500円
支払金額支払った金額(税込)1,100円
差引残高繰越金額から計算した現在の残高4,400円

現金出納帳は経理帳簿として現金を正確に管理するために重要な帳簿です。差引残高は日次・月次・四半期・年度で集計するのが一般的になっています。

現金出納帳は法律によって作成や保管の義務があるわけではありません。しかし、現金出納帳は現金の出入りが明確化されていて経理や財務の基本となる台帳になっています。個別の入出金について整理することで、他の帳簿の正確性を確認する資料としても活用されています。

預金出納帳

預金出納帳は銀行口座預金の出入りを管理するための帳簿です。銀行口座に入金したときや出金したときに記録します。記録する内容は現金出納帳と類似していますが、金額は実額を記入するのが一般的です。

項目名内容
日付現金の出入りがあった年月日2023年5月12日
勘定科目取引内容の経理上の分類科目売掛金、地代家賃
摘要現金銀行口座の入出金があった原因の具体的な内容5月分入金、駐車場代 
預入金額預金銀行口座に入れた金額132,000円
引出金額預金銀行口座から引き出した金額28,600円
差引残高繰越金額から計算した現在の残高1,523,400円

預金出納帳は銀行口座ごとに帳簿を作成するか、一つの帳簿に補助科目を付けてどの口座での入出金なのかを明確に記録する方法があります。一般的には銀行口座ごと預金出納帳を作成する方法が用いられています。

預金出納帳は預金資産がいくらあるのかを正しく把握するための帳簿として重要です。法律によって作成が義務付けられているわけではありませんが、口座残高を把握していないと支払いができずに困るリスクが高くなります。預金出納帳は今後の取引先の支払い予定や納税などの対応における基本帳簿です。

その他の帳簿の種類

経理帳簿には主要簿と補助簿があります。現金出納帳や預金出納帳は補助簿に該当する帳簿です。主要簿とは総勘定元帳と仕訳帳を指します。主要簿は取引における基本台帳に相当し、記録・作成が義務付けられています。日々の取引について発生順に記載していく日記帳も努力義務として会計処理のために記録することが望ましいと位置付けられている帳簿です。

一方、補助簿とは主要簿の作成を容易にしたり、必要な情報を取得したりするための補助的な帳簿です。現金出納帳や預金出納帳はそれぞれ、現金と預金の現状や推移を明確にする帳簿として補助的に用いられています。他にも得意先元帳、仕入先元帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳などが作成されることがあります。

補助簿は法律によって作成を義務付けられているわけではないため、作成しなくても問題はありません。しかし、補助簿は経営でも活用できる資料になります。主要簿の正確性を確認する資料にもなるため、補助簿を作成するのが一般的になっています。

現金出納帳のメリット・必要性

現金出納帳のメリットや必要性を、3つのポイントから解説します。

残高を把握できる

現金出納帳を作成することで、現金の残高を適切に把握できます。常に残高を明確にすることにより、レジや金庫に正しい金額があるかどうか把握できるのはもちろん、支払い時に「現金が足りない」といった事態に陥ることもありません。

お金の動きを把握できる

現金出納帳は、入金額や出金額、その内容などを記載することから、現金の流れを把握するために役立ちます。毎月の入出金の流れを把握して適切なタイミングで銀行のATMへ行くなど、手元のお金を常に適切な金額用意して置けるようになるでしょう。

また、現金出納帳は経営の見直しにも使えます。「この部分は使いすぎている」「節税のためもう少し経費を使いたい」などの判断をすることも可能です。特に、現金取引が多い企業である場合には、現金出納帳を作成してお金の動きを可視化することが重要です。

不正を防止できる

あまり考えたくはありませんが、従業員が現金を不正に持ち出してしまう可能性も0ではありません。銀行口座の場合は通帳やネットバンキングのサイトから取引金額が確認できるものの、レジや金庫の現金を抜きとった場合には記録が確認できません。そのため、現金出納帳を作成し、帳簿の金額と実際の金額を常にあわせておくようにします。

現金出納帳と実際の金額を夕方などの決まった時間に確認すれば、現金に異変があった時に気づきやすくなります。このようなルールを構築しておくことで、社内での横領がしにくくなり、従業員の不正を防止する効果があります。

【記入例あり】現金出納帳の書き方

現金出納帳では、下記の項目を記入することが一般的です。

・日付
・勘定科目
・摘要
・入金
・出金
・差引残高

それぞれの項目別に、書き方やポイント・実際の記入例を解説します。

日付勘定科目摘要入金額出金学残高
1/1前月繰越5,0005,000
1/7売掛金A社より回収15,00020,000
1/10水道光熱費電気代5,00015,000
1/13普通預金現金補充100,000115,000
1/14旅費交通費Bさん定期代55,00060,000
1/23消耗品費収納ボックスなど32,00028,000

日付

日付欄には、現金の入出金があった日付を記入します。例えば、1月10日に電気代の支払いがあった場合には、日付の欄に10と記入します。すでに1月であることが書かれていた場合には、月の欄は記入しなくても構いません。

現金出納帳は残高を記載することから、入出金のあった順で記入する必要があります。同じ日付で複数の入出金があった場合でも、必ず順番通りに記載しましょう。また、もしも領収書などの日付が実際の入出金の日とずれていたとしても、現金出納帳には入出金の日に基づいて記入します。

勘定科目

勘定科目の欄には、相手勘定科目を記入します。相手勘定科目とは、現金の勘定科目から見て対になる勘定科目です。

例えば、1月7日にA社から現金で売掛金を回収した場合は、仕訳帳で以下のような仕訳を行います。

借方貸方
現金 15,000売掛金 15,000

この場合は、現金の相手勘定科目が売掛金になるため、現金出納帳の勘定科目にも「売掛金」と記載します。

また、1月10日に電気代を支払った場合には、以下の仕訳を行います。

借方貸方
水道光熱費 5,000現金 5,000

この場合は相手勘定科目が水道光熱費となるため、 現金出納帳には「水道光熱費」と記載します。

関連リンク:勘定科目とは?意味や仕訳の分類、設定のポイントを解説【一覧表付き】

摘要

摘要の欄には、取引の内容を記載します。明確なルールはなく、後から見返した時にわかりやすい内容であればかまいません。具体的には、以下のようなポイントから記載することが一般的です。

ポイント
取引先や店舗の名前「A社」「B文具店」など
購入したものの内訳や理由「メモ帳5冊」「Cさん電車代」など
その他のメモ「軽減税率」「○月○日売上分の回収」など

入金

現金の入金があった際は、入金額の欄に金額を記載します。例えば、手元にある現金の金額が少なくなったため、1月13日に銀行口座から下ろした10万円を補充したとします。その場合は、入金額の欄に「100,000」と記入します。

出金

現金が減った際には、出金額の欄に金額を記載します。例えば、1月10日に電気代5,000円を支払った場合には「5,000」と記載します。
なお、現金出納帳には支払った実際の金額を記入するため、税込の金額を記入する必要があります。

差引残高

残高の欄には、取引を行った結果残っている金額を記載します。

例えば、 1月7日に売掛金として15,000円を回収したとします。その際は、元々あった5,000円と合計した20,000円を残高欄に記入します。

現金出納帳の期首・期末の締め方や次月への繰り越し方

日付勘定科目摘要入金額出金学残高
1/1前月繰越5,0005,000
1/7売掛金A社より回収15,00020,000
1/10水道光熱費電気代5,00015,000
1/13普通預金現金補充100,000115,000
1/14旅費交通費Bさん定期代55,00060,000
1/23消耗品費収納ボックスなど32,00028,000
合計120,00092,000

現金出納帳は月末に合計額を確認し、正しく記載できているかどうかを確認します。まずは、画像のように「合計」の欄を作り、入金額と出金額のそれぞれの合計金額を計算しましょう。

日付勘定科目摘要入金額出金学残高
1/1前月繰越5,0005,000
1/7売掛金A社より回収15,00020,000
1/10水道光熱費電気代5,00015,000
1/13普通預金現金補充100,000115,000
1/14旅費交通費Bさん定期代55,00060,000
1/23消耗品費収納ボックスなど32,00028,000
合計120,00092,000
次月繰越28,000

「次月繰越」の欄を作り、月末時点での残高を画像の位置に記入します。

日付勘定科目摘要入金額出金学残高
1/1前月繰越5,0005,000
1/7売掛金A社より回収15,00020,000
1/10水道光熱費電気代5,00015,000
1/13普通預金現金補充100,000115,000
1/14旅費交通費Bさん定期代55,00060,000
1/23消耗品費収納ボックスなど32,00028,000
合計120,00092,000
次月繰越28,000
120,000120,000

最後に、先ほど作成した合計欄と次月繰越欄の金額を縦に合計します。 画像では、どちらも「120,000」となりました。この金額が一致することにより、当月分の現金出納帳が正しく記入できていたことがわかります。

金額が一致しなかった場合はどこかで記入ミスをしているため、表を見直してみましょう。

「次月繰越」の欄に記載した28,000円は、翌月の現金出納帳に反映します。次ページに「前月繰越」という欄を作り、入金額として28,000円と記載しましょう。

残高が合わない時の対処法

現金出納帳を作成して運用していると、帳簿上の残高と、実際の金額があわないことがあります。その際は、以下の方法でもう一度間違いがないかチェックしてみましょう。

・実際の現金を数え直す
・現金出納帳に反映していない入出金かないかどうか確認する
・現金出納帳の入金額や出金額に記入ミスがないかどうかを見直す
・現金出納帳の残高欄で計算ミスをしていないかどうかを見直す

これらの方法を試しても残高が合わない場合は「現金過不足」と呼ばれる勘定科目を使って調整します。現金過不足を使う際の仕訳と現金出納帳の書き方を、不足・過剰の2つのパターンに分けて解説します。

現金が不足している場合

例:帳簿残高と比べて、実際の金額が1,000円不足している

借方貸方
現金過不足 1,000現金 1,000

現金出納帳には、現金過不足として出金欄に1,000円を記載します。

現金が過剰である場合

例:実際の金額が、帳簿残高と比べて1,000円過剰である

借方貸方
現金 1,000 現金過不足 1,000

現金出納帳には、現金過不足として入金欄に1,000円を記載します。

現金出納帳の作成時の注意点

現金出納帳を作成する際の注意点を3つ紹介します。

日付順に記載する

現金出納帳は残高を記載するため、通帳のように日付順・取引順に記入する必要があります。現金の入出金が続いた際も混乱しないよう、その都度記入することをおすすめします。

残高はマイナスにならない

現金出納帳の残高はマイナスになりませんが、経理業務が実際の入出金に追いついていない場合などに、まれにマイナスになってしまうこともあります。マイナスになれば、どこで間違えているのかを確認し、修正する必要があります。

定期的に残高を確認する

現金出納帳は、入出金があった時以外にも定期的に残高を確認するルールを設けることが一般的です。毎営業日の退勤前に残高をチェックし、担当者のサインを残すなど、明確に管理できる体制を作りましょう。

現金出納帳を簡単に作成するには?

現金出納帳は、手書き・エクセル・会計ソフトなどのツールで簡単に作成できます。各作成方法のメリットやデメリットを解説します。

①手書きで作成

現金出納帳を市販のノートで作成するのは、簡単で始めやすい方法と言えます。金庫などの横にノートを置いておけば、現金の出し入れの際にスムーズに書ける上、記入忘れも防げるでしょう。

現金で作成する際は、計算ミスに気をつける必要があります。記入した際は電卓を使って残高を確認することで、正しい金額を記入できたかどうかをチェックしましょう。

②テンプレートをダウンロードする

ネット上にあるテンプレートをダウンロードして現金出納帳を作成することもできます。複数のテンプレートを見比べて、自社にとって使いやすそうなものを選んでみましょう。

現金出納帳をエクセルで管理するには、現金の出し入れのたびにパソコンに向かわなくてはいけません。普段はパソコンの電源を落としている部署などにとっては、適さない方法と言えるでしょう。

③ツールを使用する

会計ソフトといったツールを利用すれば、計算ミスなどの心配がなく、適切に現金の残高を管理できるでしょう。仕訳帳など他の帳簿とも情報が共有されるため、入力にかかる時間が削減されます。

エクセルで現金出納帳を作成する場合と同じく、現金の入出金があるたびに会計ソフトを立ち上げるのは手間というデメリットもあります。その際は、簡単な現金出納帳は手書きで作成し、改めて会計ソフトに取り込むといった方法が有効です。

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まとめ

現金出納帳は補助簿に該当するため、必ずしも作成する必要はありません。しかし、作成によって現金の動きを管理しやすくなるほか、現金出納帳をもとに仕訳帳を記入することもできるなど、多くのメリットがあります。現金出納帳の作成によって、安定した経理業務の運営を目指してみてはいかがでしょうか。

この記事の投稿者:

shimohigoshiyuta

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