
リースバックを利用して自宅を売却し、賃料を払いながら住み続けることを選んだものの、「毎月の家賃がどうしても払えなくなってしまった」「滞納が続いて退去を求められそうで怖い」と不安を抱えている方は少なくありません。リースバックの家賃は通常の賃貸よりも割高になりやすく、収入の減少や想定外の支出が重なると、あっという間に支払いが苦しくなることがあります。
この記事では、リースバックで家賃が払えなくなった場合に何が起こるのか、滞納から退去までの具体的な流れ、そして退去を防ぐための対処法と解決策を詳しく解説します。「まだ1か月しか滞納していない」「すでに数か月分が溜まってしまった」どちらの状況であっても、早めに正しい行動をとることで状況を改善できる可能性があります。焦らず、この記事を参考に一つひとつ確認してみてください。
目次
リースバックの家賃相場はなぜ高いのか
リースバックの家賃が一般的な賃貸物件より高くなる理由は、家賃の計算方法にあります。通常の賃貸では近隣相場をもとに家賃が決まりますが、リースバックでは「積算法」と呼ばれる方式で家賃が設定されます。これは、不動産会社が物件を買い取った金額に期待利回りをかけて年間賃料を算出し、それを12で割った金額が月々の家賃になる仕組みです。
具体的な計算式は次のとおりです。 月額家賃 = 買取価格 × 期待利回り(年率) ÷ 12か月
期待利回りは一般的に年率6〜13%程度の範囲で設定されることが多く、年率8%が一つの目安とされています。たとえば、買取価格が2,000万円の物件で利回りを8%と設定した場合、月額家賃は「2,000万円 × 8% ÷ 12 ≒ 約13万3,000円」となります。
同じ物件でも通常の賃貸相場が月9万円程度だとすれば、リースバックの家賃は1.5倍近くに達することもあります。さらに、リースバックの買取価格は市場価格の60〜80%程度に抑えられる傾向があるため、「安く売って高い家賃を払い続ける」という構造になりやすい点に注意が必要です。
積算法による家賃計算の仕組み
積算法とは、不動産の価格(買取価格)に期待利回りを乗じて年間賃料を求め、そこに管理費などの必要経費を加算して月額家賃を算出する方法です。不動産会社は購入した物件を賃貸事業として運用するため、一定の収益を確保するために利回りを設定します。
期待利回りが高く設定されるほど家賃も高くなります。首都圏の人気エリアでは利回りが6〜7%程度に抑えられることもありますが、地方物件や築年数の古い物件では10%以上に設定されるケースもあります。契約前に自分の物件の買取価格と利回りを確認し、月額家賃が現在の収入に見合っているかを慎重に検討することが大切です。
一般賃貸相場との乖離が生まれる理由
リースバックの家賃が一般賃貸より高くなる要因として、買取価格の低さが挙げられます。リースバックの買取価格は市場価格の60〜80%程度が相場であり、この低い買取価格に利回りをかけて算出された家賃は、近隣相場より高くなる構造的な問題を抱えています。
また、不動産会社は物件を長期保有するリスクや、修繕・管理コストを家賃に上乗せすることがあります。結果として、同じ物件でも通常の賃貸よりも2〜4割程度高い家賃になることが珍しくありません。家賃が収入の30%を超えると家計への負担が大きくなるといわれており、リースバック契約前に長期的な支払い計画を立てることが重要です。
リースバックで家賃が払えなくなる主な原因
リースバック契約後に家賃が払えなくなる原因はさまざまです。契約時には問題がなかった家賃が、その後の状況変化によって重荷になることがあります。代表的な原因を理解しておくことで、リスクへの備えができます。
収入の減少・失業
最も多い原因が、収入の減少や失業です。リストラや会社の倒産、転職による給与ダウン、またはパート・アルバイトの場合はシフト削減などが重なると、毎月の収支が急激に悪化します。
リースバックは通常の賃貸より家賃が高い傾向にあるため、収入が10〜20%減少しただけで支払いが困難になるケースがあります。定年退職後に年金生活に移行した場合も、現役時代に設定した家賃水準を年金収入だけで維持できなくなることがあります。
想定外の支出・医療費
病気や怪我による入院・治療費、または家族の介護費用など、突発的な大きな支出が家計を圧迫することもあります。特に高齢の方は医療費が増加しやすく、毎月の家賃と医療費の両立が難しくなることがあります。
また、リースバック後に売却代金を負債の返済に充てた場合、その後の緊急時に使える貯蓄が残っていないことも多く、想定外の出費に対応できずに家賃滞納に至るケースがあります。
家賃の増額改定
リースバック契約の中には、一定期間ごとに家賃が見直される条項が含まれていることがあります。契約当初は支払えていた家賃が、2年後や3年後の更新時に増額されることで支払いが困難になるケースも見られます。
特に定期借家契約の場合、更新ではなく「再契約」となるため、再契約時の条件が変更される可能性があります。契約書に家賃増額の条項が含まれているかどうか、事前にしっかり確認しておくことが重要です。
家賃を滞納するとどうなるのか:退去までの流れ
リースバックの家賃を滞納した場合、すぐに強制退去になるわけではありません。一般的な賃貸と同様に、借地借家法によって借主の権利は一定程度保護されています。ただし、放置すれば最終的に退去を余儀なくされるため、早い段階で対処することが不可欠です。
ステップ1:督促連絡(滞納1か月目)
家賃を滞納して数日が経つと、リースバック事業者から電話や書面で支払いを求める督促が届きます。この段階では契約解除の話は出ず、まずは支払いを促すための確認連絡です。1〜2か月程度の滞納であれば、この段階で事業者に事情を伝えて支払い時期の相談をすることが可能なケースが多いです。電話や訪問を無視せず、早めに連絡を取ることが重要です。
ステップ2:内容証明郵便による通知(滞納2〜3か月目)
滞納が2〜3か月を超えると、事業者は法的手続きに向けて内容証明郵便を送付してくることがあります。内容証明郵便には、滞納家賃の支払いを求める催告と、一定期間内に支払いがない場合は契約を解除する旨の警告が記載されることが一般的です。
判例上、3か月以上の継続的な家賃滞納は「信頼関係の破壊」があったと評価され、貸主が賃貸借契約を解除できる根拠となり得ます。ただし滞納月数だけで一律に判断されるわけではなく、滞納の理由や当事者間の事情などを総合的に考慮して判断されます。内容証明郵便を受け取ったら、必ず指定期限内に対応する必要があります。
ステップ3:賃貸借契約の解除(滞納3か月以上)
催告に応じない場合、事業者は賃貸借契約の解除を通告します。契約が解除されると、法律的には住み続ける権利を失うことになります。それでも退去しない場合、事業者は裁判所に明け渡し訴訟を提起することができます。
ステップ4:訴訟・強制退去
明け渡し訴訟で判決が下り、それでも退去しない場合は強制執行による退去となります。この段階になると、荷物の搬出・鍵の交換が強制的に行われます。
強制執行までのプロセスは、一般的に訴訟提起から半年〜1年程度の期間を要することが多いですが、その間も滞納家賃は積み上がり、遅延損害金も発生します。最終的な退去を避けるためには、ステップ1〜2の早期段階での対処が欠かせません。
家賃が払えないときの対処法7選
家賃の支払いが厳しくなった場合、取れる手段は複数あります。状況に応じて適切な方法を選択することが大切です。一人で抱え込まず、早めに行動することが解決への近道になります。
1. リースバック事業者に早めに相談する
最初に取るべき行動は、リースバック事業者への相談です。支払いが困難な状況を正直に伝えることで、以下のような対応をしてもらえる可能性があります。
・支払い猶予:数か月分の支払いを先送りにしてもらう ・分割払い:滞納分を複数回に分けて支払う ・家賃の一時的な減額交渉:収入状況に応じて家賃を下げてもらう
事業者にとっても退去させて物件を空室にするより、家賃を受け取り続けるほうが収益上のメリットがあります。誠実に相談すれば柔軟に対応してもらえるケースは少なくありません。大事なのは、督促が来てから動くのではなく、払えないと分かった時点で自発的に連絡することです。
2. 住居確保給付金を活用する
失業や収入減少により家賃が払えなくなった場合、「住居確保給付金」という国の支援制度を利用できる場合があります。この制度は、経済的に困窮した方の家賃を支援するもので、申請が通れば原則3か月間(最長9か月間)、自治体からリースバック事業者へ直接家賃が支払われます。
支給額は市区町村ごとに定める上限額までとなっており、東京都23区の場合は単身世帯で月額5万3,700円が上限の目安です。申請窓口はお住まいの市区町村の自立相談支援機関(社会福祉協議会など)です。収入・資産・求職活動の要件を満たす必要があるため、該当するかどうかを窓口で確認してみましょう。
3. 家賃の安い物件への住み替えを検討する
現在の家賃水準が収入に対して明らかに高すぎる場合は、思い切って家賃の安い物件へ転居することも一つの解決策です。リースバックは「同じ自宅に住み続ける」ことを前提とした仕組みですが、退去を余儀なくされるくらいなら、自発的に移転して生活を立て直すほうが賢明な場合もあります。
引越し費用や新居の初期費用が必要にはなりますが、毎月の家賃差額が3〜4万円であれば1〜2年以内に回収できます。公営住宅(市営・都営)は所得に応じた低廉な家賃で住める場合があり、住み替えの選択肢として検討に値します。
4. 生活保護の住宅扶助を検討する
経済的困窮が深刻な場合は、生活保護の申請も一つの手段です。生活保護の「住宅扶助」では、地域ごとに定められた上限額の範囲内で家賃相当額が支給されます。
生活保護を受給するには、資産の活用・稼働能力の活用・扶養義務者への相談などの条件を満たす必要があります。申請はお住まいの市区町村の福祉事務所で行えます。制度を利用することへの抵抗感を持つ方もいますが、生活に困窮している方を支援するための制度であり、遠慮せず相談することが大切です。
5. 買戻しによる所有権の回復を検討する
リースバック契約に買戻し条項が含まれている場合、将来的に自宅を再購入することができます。家賃の支払いが困難になった場合でも、十分な資金調達ができれば買戻しによって賃借人から所有者に戻ることが可能です。
買戻し価格は一般的に売却価格を上回ることが多く、売却時の1.1〜1.3倍程度に設定されているケースが多いです。銀行融資や親族からの借入れなどで買戻し資金を調達できるか検討してみましょう。ただし、買戻し期限が設定されている場合は期限内に手続きを行う必要があります。
6. 新たな任意売却の検討
リースバックの前に住宅ローンを完済できていない場合や、リースバック後に別の借入れで再び資金難に陥った場合は、任意売却という選択肢もあります。
任意売却は、債権者の同意を得て不動産を売却する手続きで、競売に比べて市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。任意売却と同時にリースバックを組み合わせることで、住み続けながら債務整理を進めるプランを立てることも可能です。複雑な手続きが伴うため、任意売却の実績がある専門家に相談することをお勧めします。
7. 法律の専門家・相談窓口を活用する
退去通告を受けた場合や、事業者との交渉が行き詰まった場合は、法律の専門家に相談することが有効です。
・法テラス(日本司法支援センター):0570-078374。収入が少ない方向けに無料法律相談が受けられます。 ・各地の弁護士会:法律相談センターで弁護士による有料相談が可能です(30分5,000円程度)。 ・消費生活センター:リースバック契約に関するトラブルや不当な条件についての相談窓口です。
専門家のサポートを受けることで、退去を回避するための法的手段(交渉・調停など)を適切に選択することができます。

家賃滞納を防ぐためにリースバック契約前にすべきこと
リースバックで家賃が払えなくなる事態を未然に防ぐには、契約前の段階で十分な準備と確認を行うことが重要です。以下のポイントを事前にチェックしておきましょう。
長期的な収支シミュレーションを行う
リースバック契約を検討する際は、現時点の収入だけで判断せず、5年後・10年後の収入見込みも考慮した長期的なシミュレーションを行いましょう。定年退職後に年金のみで生活する場合、毎月の手取り収入はおおむね15〜25万円程度になることが多く、そのうち家賃に充てられる割合(一般的に収入の25〜30%以内が目安)を超えないよう確認が必要です。
収入が減少するシナリオを想定し、家賃を無理なく払い続けられる期間を具体的に試算することが大切です。
複数社への見積もり比較で家賃を最適化する
リースバックの家賃は事業者によって異なります。同じ物件でも複数社に見積もりを依頼することで、家賃が月額1〜3万円程度変わることがあります。1社だけに相談して契約してしまうと、不利な条件をそのまま受け入れてしまうリスクがあります。
最低でも3〜5社から見積もりを取得し、買取価格・利回り・月額家賃・契約期間・家賃増額条項の有無などを比較検討することをお勧めします。
契約書の家賃増額条項・定期借家契約に注意する
リースバック契約書には、家賃の増額改定に関する条項が含まれていることがあります。契約時点では問題がない家賃でも、数年後に増額されると支払いが困難になる可能性があります。
また、定期借家契約の場合は契約期間が満了すると自動更新されず、再契約が必要になります。再契約時に家賃が引き上げられたり、再契約を断られて退去しなければならないリスクがある点にも注意が必要です。契約書の内容が理解できない場合は、司法書士や弁護士に相談の上で署名することを検討しましょう。
売却代金の使途を明確にしておく
リースバックで得た売却代金は、住宅ローンの完済や生活費の補填など具体的な使途を決めてから契約することが重要です。売却代金を使い切ってしまうと、万が一家賃が払えなくなったときのバッファがなくなります。
緊急用の予備資金として売却代金の一部(少なくとも3〜6か月分の家賃相当額)を確保しておくと、突発的な収入減に対応しやすくなります。
リースバック後に家賃が払えない状況になったときのよくある質問
家賃の支払いが困難な状況に直面したとき、多くの方が疑問に感じるポイントをQ&A形式でまとめました。
1か月の滞納でも退去しなければなりませんか?
1〜2か月程度の滞納で即座に退去が求められることは、通常ほとんどありません。一般的に、裁判所が契約解除を認める目安は3か月以上の継続的な滞納とされています。借地借家法によって借主の権利は保護されており、貸主が一方的に退去を強制することはできません。
ただし、1〜2か月の滞納であっても放置することは禁物です。早めに事業者に連絡を取り、支払い計画を相談することで状況を改善できます。滞納が長期化するにつれて遅延損害金も積み上がり、解決が難しくなるため、初期段階での対処が何より重要です。
家賃の交渉は可能ですか?
リースバック事業者と家賃の交渉は可能な場合があります。特に長期間にわたって家賃を滞りなく支払ってきた実績がある場合や、収入減少などの客観的な事情がある場合は、減額交渉に応じてもらえることがあります。
交渉する際は、感情的にならず、現在の収入状況や今後の見通しを数字で示しながら冷静に相談することが大切です。事業者側としても、長期的な空室リスクより安定した収益のほうが好ましいため、合理的な交渉には応じてもらいやすい環境があります。
退去後に滞納家賃はどうなりますか?
退去したからといって、それまでの滞納家賃が消えるわけではありません。未払い家賃と遅延損害金は引き続き債務として残り、事業者から請求が続きます。支払いに応じない場合は訴訟を提起される可能性があり、給与の差押えなどの強制執行が行われることもあります。
退去後も滞納家賃の問題が長引く場合は、弁護士に相談して分割払い交渉や債務整理(個人再生・自己破産)の検討も視野に入れましょう。
連帯保証人がいる場合、保証人にも影響しますか?
リースバック契約で連帯保証人を設定している場合、借主が家賃を支払えなくなると連帯保証人にも支払い義務が生じます。事業者は借主と保証人のどちらに対しても支払いを請求できます。
滞納が長引くと保証人への請求が始まるため、家族や知人を保証人にしている場合は特に早めの対処が重要です。状況を保証人にも共有した上で、一緒に解決策を検討することをお勧めします。
リースバックの家賃が払えなくなった場合のチェックリスト
家賃の支払いが困難になった場合に取るべき行動を、時系列でまとめます。
今すぐできること: ・リースバック事業者に現状を正直に連絡する ・住居確保給付金の申請条件を市区町村窓口で確認する ・収入・支出の現状と今後の見通しを数字で整理する
1〜2週間以内に検討すること: ・法テラスや弁護士への相談予約を取る ・家賃の安い物件への住み替え可能性を調べる ・公営住宅(都営・市営)の申し込み状況を確認する
1か月以内に判断すること: ・買戻しの可否と資金調達の可能性を検討する ・任意売却・生活保護など他の支援制度の利用を検討する ・連帯保証人がいる場合は状況を共有して対応策を協議する
早めに行動することで選択肢が広がります。督促が来てから動くのでは遅いケースもあるため、「払えないかもしれない」と感じた時点で動き始めることが大切です。
まとめ:リースバックで家賃が払えないときは早期対処が鍵
リースバックで家賃が払えなくなった場合でも、早い段階で行動すれば退去を避けられる可能性は十分あります。
この記事のポイントを振り返ります。
・リースバックの家賃は買取価格に利回り6〜13%をかけた積算法で決まるため、通常の賃貸より割高になりやすい ・家賃を滞納しても、3か月未満であれば即座に退去にはなりにくいが、放置は厳禁 ・まず事業者に相談し、支払い猶予・分割払い・家賃減額交渉などの余地を探る ・住居確保給付金(最長9か月間支給)や生活保護の住宅扶助など公的支援も活用できる ・買戻し・任意売却・住み替えなど多様な解決策を状況に応じて検討する ・法テラスや弁護士など専門家のサポートを早めに活用する
リースバックは資金調達と居住継続を両立できる有益な手段ですが、家賃設定と長期的な支払い能力のバランスを十分に検討することが成功の鍵です。現在すでに困難な状況にある方は、一人で抱え込まず、早めに事業者や専門家に相談することが最善の一歩となります。



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