
減価償却 定率法の計算式を徹底解説|改定償却率・保証率まで完全ガイド
定率法を使いこなせれば、設備投資した年に最大限の費用計上ができ、法人税の支払いを合法的に先送りして手元資金を大きく増やせます。この記事を読めば、200%定率法の計算式・保証率・改定償却率への切り替えタイミングが、車両・機械・パソコンの数値例を使ってスッキリ理解できます。数字が苦手でも、耐用年数別の計算ステップに沿って進めるだけで、実際の申告に使える正確な償却額を自分で算出できるようになります。
目次
減価償却とは何か?基礎知識を押さえよう
減価償却とは、企業や個人事業主が事業のために取得した固定資産を、その使用可能期間にわたって費用として分割計上する会計処理のことです。機械設備や車両、建物などの固定資産は、購入した瞬間に全額を費用として計上するのではなく、その資産が使われる期間に応じて少しずつ経費にしていきます。
なぜ減価償却が必要なのでしょうか。たとえば、100万円の機械を購入した場合、その機械は1年で使い切るものではなく、5年や10年にわたって使用することが一般的です。もし購入した年に全額を費用計上してしまうと、その年の利益が大幅に減少し、翌年以降は費用が発生しないという不均衡な状態が生まれます。減価償却を行うことで、利益と費用の対応関係が正確になり、各事業年度の損益を適切に把握することができます。
減価償却の対象となる資産を「減価償却資産」と呼びます。具体的には、建物、建物附属設備、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、ソフトウェアなどが含まれます。一方で、土地や骨とう品など時間が経っても価値が減らない資産は減価償却の対象外です。
減価償却の計算においては、「耐用年数」という概念が重要です。耐用年数とは、その資産が事業の用に供できる年数のことで、税務上は財務省令が定める「法定耐用年数」を使用します。たとえば、普通乗用車の法定耐用年数は6年、事務用パソコンは4年、金属製の事務机は15年などと定められています。
減価償却の方法には複数の種類がありますが、主に使われるのが「定額法」と「定率法」の2つです。定額法は毎年同額を費用計上する方法で、定率法は残存簿価に対して一定の割合を掛けて費用計上する方法です。
定率法とはどのような減価償却方法か
定率法とは、固定資産の期首帳簿価額(未償却残高)に対して、毎期一定の割合(償却率)を乗じて償却額を計算する方法です。期首帳簿価額は年々減少していくため、償却額も年々少なくなっていくのが定率法の特徴です。取得直後ほど多くの費用が計上され、年数が経つにつれて費用が減っていくという「逓減型」の費用配分パターンをとります。
定率法が採用されやすい背景には、資産の経済的価値の変化パターンがあります。機械設備や車両などは、購入直後が最も性能が高く生産性に貢献し、時間の経過とともに劣化・陳腐化が進みます。こうした資産の実態に近い費用配分という点で、定率法は合理性を持っています。
また、節税効果という観点からも定率法は注目されます。定率法では取得直後の数年間に多くの費用が計上されるため、その期間の課税所得を減らす効果があります。資金繰りの面でも、早期に費用を計上できるため、税負担を前倒しで軽減できるという実務的なメリットがあります。
日本の税務上、定率法が使用できる資産は「機械装置」「車両運搬具」「工具器具備品」などの有形固定資産などです。一方、建物(1998年4月以降取得)と建物附属設備・構築物(2016年4月以降取得)、およびソフトウェア等の無形固定資産については、税務上は定額法のみが認められており、定率法を選択することはできません。
2012年4月1日以降に取得した資産については、現行の「200%定率法」が適用されます。以降の解説は特に断りがない限り、この200%定率法を前提に進めます。
定率法の計算式と改定償却率・保証率の仕組み
200%定率法の基本的な計算式は以下のとおりです。
償却額 = 期首帳簿価額 × 定率法償却率
定率法償却率は、定額法の償却率の2倍です。定額法の償却率は「1 ÷ 耐用年数」で求められるため、定率法の償却率は「2 ÷ 耐用年数」となります。たとえば耐用年数5年であれば、定額法の償却率は0.200、定率法の償却率は0.400です。
ただし、定率法には「保証額」と「改定取得価額」という仕組みが設けられています。毎年の償却額が保証額を下回ると、そのままでは耐用年数が終わっても資産を償却しきれなくなるためです。
保証額とは、取得価額に「保証率」を乗じた金額です。保証率は耐用年数ごとに財務省令の別表で定められています。たとえば耐用年数5年の場合、保証率は0.108です。
計算のステップは次のとおりです。まず「期首帳簿価額 × 定率法償却率」で通常の償却額を計算します。この金額が保証額(取得価額 × 保証率)以上であれば、その金額をその年度の償却額とします。通常の計算による償却額が保証額を下回った年度から、「改定償却率」を使った計算に切り替わります。改定取得価額(切り替わった年度の期首帳簿価額)に改定償却率を掛けた金額が、それ以降の年度の均等な償却額となります。最終年度は、前年度末の帳簿価額から備忘価額(1円)を差し引いた金額を償却額とします。
この仕組みにより、定率法であっても耐用年数の終わりには確実に償却が完了するよう設計されています。
定額法と定率法の違いと比較
定額法と定率法は、どちらも減価償却の代表的な方法ですが、費用計上のパターンが大きく異なります。
計算方法の違いを確認しましょう。定額法は「取得価額 × 定額法償却率」で毎期一定の金額を償却します。たとえば取得価額100万円・耐用年数5年であれば、毎年20万円ずつ5年間均等に費用計上します。一方、定率法は「期首帳簿価額 × 定率法償却率」で計算し、年々償却額が減少します。同じ条件(取得価額100万円・耐用年数5年・償却率0.4)の場合、1年目は40万円、2年目は24万円、3年目は14万4千円と逓減していきます。
費用計上タイミングの違いは節税効果に直結します。定率法では初期年度に費用が集中するため、設備投資した直後の課税所得を大きく圧縮できます。一方、定額法は費用が平準化されるため、毎期の利益が安定しやすく、収益管理がしやすいという特徴があります。
損益計画や予算管理の観点では、定額法のほうが計算が単純で管理しやすいというメリットがあります。一方、定率法は早期の費用計上により資金繰りを有利にできる反面、年度ごとの償却額が変動するため計画策定が若干複雑になります。
使い分けの目安として、機械設備・車両・IT機器など経済的価値の低下が早い資産には定率法が適しており、建物・構造物など長期安定的に使用する資産には定額法が適しています。
具体的な計算例①:車両・機械設備
ここでは実際の数値を使って定率法の計算を確認しましょう。普通乗用車(耐用年数6年)を例に計算します。
取得価額:300万円/耐用年数:6年/定率法償却率:0.333/保証率:0.09911(耐用年数6年の場合)/改定償却率:0.334(耐用年数6年の場合)
保証額:300万円 × 0.09911 = 29万7,330円
各年度の計算:
1年目:期首帳簿価額300万円 × 0.333 = 99万9千円(通常の償却額 > 保証額のため採用)
2年目:期首帳簿価額200万1千円 × 0.333 = 66万6,333円
3年目:期首帳簿価額133万4,667円 × 0.333 = 44万4,444円
4年目:期首帳簿価額89万223円 × 0.333 = 29万6,444円 ← 通常計算額が保証額を下回るため改定償却率に切り替え。改定取得価額89万223円 × 0.334 = 29万7,334円を償却
5年目:同上(29万7,334円を償却)
6年目:最終年度につき前年末帳簿価額から1円を引いた金額(29万5,554円)を償却
次に、製造業の機械装置(耐用年数10年)の例です。
取得価額:500万円/定率法償却率:0.200/保証率:0.06552
保証額:500万円 × 0.06552 = 32万7,600円
1年目:500万円 × 0.200 = 100万円
2年目:400万円 × 0.200 = 80万円
3年目:320万円 × 0.200 = 64万円
4年目:256万円 × 0.200 = 51万2千円
5年目:204万8千円 × 0.200 = 40万9,600円
6年目:163万8,400円 × 0.200 = 32万7,680円
7年目:131万720円 × 0.200 = 26万2,144円 ← 通常計算額が保証額を下回るため改定償却率に切り替え
実際の申告では財務省令の別表に記載された各耐用年数の正確な数値を使用してください。

具体的な計算例②:パソコン・工具器具備品
オフィスでよく購入するパソコン(事務用)と工具器具備品を例に解説します。
パソコン(事務用)の場合、法定耐用年数は4年です。
取得価額:20万円/耐用年数:4年/定率法償却率:0.500/保証率:0.12499/改定償却率:1.000
保証額:20万円 × 0.125 = 2万5千円
1年目:20万円 × 0.500 = 10万円
2年目:10万円 × 0.500 = 5万円
3年目:5万円 × 0.500 = 2万5千円(通常の償却額 > 保証額 2万4,998円 のためそのまま採用)
4年目:通常計算額(1万2,500円)が保証額を下回るため改定償却率に切り替え。改定取得価額2万5千円 × 1.000 = 2万5千円。最終年度につき1円を残し2万4,999円を償却
パソコンは耐用年数が4年と短いため、1年目に取得価額の半分が費用となります。
次に、金属製の工具・器具備品(耐用年数10年)の例:
取得価額:30万円/定率法償却率:0.200/保証率:0.06552
保証額:30万円 × 0.06552 = 1万9,656円
1年目:30万円 × 0.200 = 6万円
2年目:24万円 × 0.200 = 4万8千円
3年目:19万2千円 × 0.200 = 3万8,400円
4年目:15万3,600円 × 0.200 = 3万720円
5年目:12万2,880円 × 0.200 = 2万4,576円
6年目:9万8,304円 × 0.200 = 1万9,660円
7年目:7万8,644円 × 0.200 = 1万5,728円 ← 保証額を下回るため改定償却率に切り替え
なお、30万円未満の少額減価償却資産については、中小企業者等の場合「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が適用でき、取得した事業年度に全額損金算入できます(年間合計300万円まで)。
税務上の取り扱いと注意点
定率法を実務で使用する際には、税務上のルールをしっかりと把握しておく必要があります。
償却方法の選定と届出について:法人が定率法を選択するためには、原則として設立第1期の確定申告書の提出期限までに、「減価償却資産の償却方法の届出書」を納税地の税務署に提出する必要があります。届出をしなかった場合、法人の法定償却方法は定率法となります。
一度選定した償却方法を変更する場合には、「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を変更しようとする事業年度の開始の日の前日までに提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。
期中取得資産の月割り計算:年度の途中で取得した資産については、使用開始月から事業年度末までの月数を12で割った割合で償却額を計算します。3月決算の法人が10月に機械を取得した場合、その年度の償却額は年間償却額 × 6/12(10月〜3月の6ヶ月分)となります。
減価償却の任意性について:税務上、減価償却費は損金算入の「上限額」であり、その範囲内であれば少なく計上することも認められています(ただし繰り越し計上は不可)。ただし、法人税法上の「償却限度額」を超えた過大な償却は損金として認められません。
資産の売却・廃棄時の処理にも注意が必要です。資産を売却した場合には、その時点の帳簿価額と売却価額の差額が「固定資産売却損益」として損益計上されます。廃棄した場合には「固定資産除却損」として処理します。
中小企業での定率法の活用と会計ソフトでの処理方法
中小企業にとって、定率法は節税と資金繰りの面で特に有効な手段です。設備投資直後の数年間に費用を集中させることで、利益の多い時期に課税所得を圧縮し、法人税・所得税の支払いを先送りにできます。実質的には税の繰り延べ効果であり、その分の資金を設備の維持・次の投資に回せるという経営上のメリットがあります。
特に製造業・運送業・建設業など、機械や車両への投資が多い業種では、定率法のメリットを享受しやすい環境にあります。たとえば、500万円の工作機械を5台一括導入した場合、定率法を採用すれば初年度に数百万円単位の費用計上が可能となり、翌期の法人税前払いを大幅に抑えることができます。
一方で、金融機関への融資審査においては注意が必要です。定率法を採用した初期の決算書は利益が低く見えるため、融資を受ける際に「利益が少ない」と判断されるリスクがあります。金融機関への説明時には、減価償却費の影響を明示した上で、キャッシュフロー(EBITDA)ベースの収益力をアピールすることが重要です。
会計ソフトでの定率法処理について:現在の主要な会計ソフト(弥生会計、freee、マネーフォワード クラウドなど)は、いずれも定率法による減価償却の自動計算機能を持っています。固定資産台帳に資産を登録する際に「取得年月日」「取得価額」「耐用年数」「償却方法(定率法)」を入力すると、償却率・保証率・改定償却率は自動で設定されます。
決算処理時に「減価償却の計算・仕訳生成」を実行すると、保証額との比較・改定償却率への切り替えを含めた正確な償却額を計算し、仕訳として会計帳簿に反映します。定率法は正しく理解・運用することで、中小企業の税負担を合法的に最適化できる重要な会計手法です。自社の資産構成と事業計画に合わせて、顧問税理士とも相談しながら最適な選択をしてください。
定率法と少額減価償却資産・一括償却資産の関係
定率法を採用している場合でも、取得価額によっては別の処理方法が優先される場合があります。代表的なものが「少額減価償却資産」と「一括償却資産」の特例です。
取得価額10万円未満の資産は「少額の減価償却資産」として、取得した事業年度に全額費用計上が可能です(消耗品費や備品費で処理)。定率法・定額法の選択以前に、この処理が優先されます。
取得価額10万円以上20万円未満の資産は「一括償却資産」として処理することができます。一括償却資産は、通常の耐用年数に関わらず3年間で均等に費用計上する方法です。定率法よりも処理がシンプルで、少額の備品・PCなどに適しています。
取得価額30万円未満の資産については、中小企業者等の場合「少額減価償却資産の特例(中小特例)」が適用でき、取得事業年度に全額損金算入できます(年間合計300万円まで)。この特例は非常に有利なため、まず適用可能か確認することをお勧めします。
30万円以上の資産については通常の定率法・定額法による減価償却が必要です。これらの処理方法の選択肢を理解した上で、資産の金額・耐用年数・税務上の影響を考慮して最適な方法を選択してください。
定率法に関するよくある質問(Q&A)
定率法の実務上の疑問点をQ&A形式でまとめます。
Q1. 定率法と定額法はどちらが得ですか?
A. 節税の観点では、定率法のほうが初期年度に費用を多く計上できるため、利益の多い年度に多く計上できるというメリットがあります。ただし「得か損か」は資産の種類・耐用年数・会社の利益状況によって変わります。顧問税理士と相談しながら判断することをお勧めします。
Q2. 定率法の届出を忘れた場合はどうなりますか?
A. 法人の場合、届出がなければ法定の償却方法(機械・車両等は定率法、建物は定額法)が適用されます。個人事業主の場合は定額法が法定償却方法です。希望する方法が法定方法と異なる場合は、期限内に届出を行う必要があります。
Q3. 年度途中で事業年度が変わった場合は?
A. 事業年度の変更があった場合、変更後の最初の事業年度については月割り計算が必要です。また、変更前後の償却額の合計が年間償却限度額を超えないよう注意してください。
Q4. 定率法を採用していると融資審査に不利ですか?
A. 定率法を採用した初期の決算書は利益が低く見えるため、融資審査で「利益が少ない」と判断されるリスクがあります。金融機関への決算説明では、減価償却費の影響を明示した上で、EBITDAベースの実力値を示すことが重要です。
Q5. ソフトウェアの減価償却には定率法を使えますか?
A. 使えません。ソフトウェアは無形固定資産に該当し、税務上の償却方法は定額法のみと定められています(自社利用の場合は原則として耐用年数5年の定額法となります)。顧問税理士に確認することをお勧めします。
まとめ:定率法を正しく使いこなして節税効果を最大化する
定率法は、取得直後に費用を集中計上することで節税と資金繰り改善の両立ができる、中小企業にとって非常に有効な会計手法です。
本記事で解説した200%定率法の計算式(期首帳簿価額 × 定率法償却率)、保証額との比較、改定償却率への切り替え、最終年度の備忘価額処理を正確に理解することが、実務での計算ミスを防ぐ第一歩です。
会計ソフトを活用すれば、これらの複雑な計算を自動化できますが、ソフトの設定入力(耐用年数・取得価額・取得日)を正確に行うことが前提となります。固定資産台帳の登録時に購入時の書類と照合し、定期的な棚卸しと台帳の見直しを行うことで、減価償却の計算精度を維持することができます。
定率法の選択・届出・変更申請など、税務上の手続きについては顧問税理士に相談しながら進めることをお勧めします。自社の資産構成・事業計画・財務状況を踏まえた上で、最適な減価償却方法を選択し、税務コンプライアンスを維持しながら合理的な節税を実現してください。



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