ファクタリングの基礎知識

ファクタリングとでんさいの違いとは?仕組み・手数料・償還請求権をわかりやすく比較

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「ファクタリング」と「でんさい(電子記録債権)」は、どちらも売掛金や請求書といった売上債権を活用して資金繰りを改善する手段として語られることが多く、混同されがちです。しかし両者は法律上の位置づけも、資金化の仕組みも、コストや責任の所在もまったく異なります。違いを理解せずに選んでしまうと、想定外のコストを負担したり、貸し倒れリスクを自社で抱え込んでしまったりするおそれがあります。

本記事では、ファクタリングとでんさいの違いを、仕組み・手数料・償還請求権・利用条件という4つの観点から整理し、メリット・デメリットや選び方の基準まで含めて、自社にどちらが向いているのかを判断できるよう、わかりやすく解説します。

ファクタリングとでんさいの基本

まずは、それぞれが何を指す言葉なのかを正確に押さえておきましょう。両者は「売上債権を扱う」という共通点を持ちながら、果たす役割そのものが異なります。ファクタリングは資金調達のための金融サービスであるのに対し、でんさいは手形や振込に代わる支払・決済の仕組みである、という点が出発点になります。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、企業が保有する売掛金(売上債権)を支払期日前にファクタリング会社へ売却し、現金化する資金調達手段です。借入ではなく「債権の譲渡(売買)」にあたるため、貸借対照表上の負債が増えず、信用情報にも記録が残りません。銀行融資のように担保や保証人を求められないケースが多く、最短即日で資金化できる点が大きな特徴です。売掛先の支払サイトが長く、入金までの資金繰りが厳しい局面でも、売掛債権さえあれば早期に現金を確保できるため、急な資金需要に対応しやすい方法といえます。ファクタリングの基本的な仕組みや種類については、INVOYの解説記事もあわせて確認してください。 ファクタリングの基礎知識(INVOY)

でんさい(電子記録債権)とは

でんさいとは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称:でんさいネット)が管理する電子記録債権のことです。電子記録債権法は2008年12月1日に施行され、従来の手形や売掛金を電子化してオンラインで取引できるようにした新しい金銭債権として整備されました。でんさいは、債権の発生・譲渡・分割・支払・消滅といった情報がすべてでんさいネットの電子記録原簿に記録され、企業は取引銀行を通じて各種手続きを行います。紙の手形のように紛失・盗難の心配がなく、印紙税も不要で、債権を必要な金額だけ分割して譲渡できるなど、ペーパーレス化による利便性が高いのが特徴です。つまりでんさいは資金調達の商品というより、手形に代わる「支払・決済手段」としての性格が強い点が重要です。手形からでんさいへの移行については、手形の種類を解説したINVOYの記事も参考になります。 主な手形の種類とでんさいへの移行

ファクタリングとでんさいの仕組みの違い

ファクタリングとでんさいは、資金化のプロセスと法的な性格が根本的に異なります。ここでは両者の流れを比較しながら、どこで現金が手に入るのかを整理します。

ファクタリングは「債権の売買」

ファクタリングは、利用者が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却する取引です。契約形態には、利用者とファクタリング会社の2者で完結する「2社間ファクタリング」と、売掛先(取引先)も加えた「3社間ファクタリング」があります。2社間は取引先に資金調達の事実を知られずに済み、スピードも速い一方、ファクタリング会社が負うリスクが大きいため手数料は高めになります。3社間は取引先の承諾を得る手間がかかるものの、債権の存在が確認しやすくなるぶん手数料を低く抑えられる傾向があります。いずれも「売掛金を売って即座に現金化する」という点が共通しており、請求書を使った資金化の流れは、ファクタリングの支払いを解説した記事でも詳しく確認できます。 ファクタリングの支払いと即日資金化の仕組み

でんさいは「電子化された債権の記録」

でんさいは、支払企業が発生記録請求を行うことででんさいネット上に債権が記録され、受取企業へ電子的に渡されます。受取企業は、その債権を支払期日まで保有して回収するほか、第三者へ「譲渡記録」によって譲り渡したり、金融機関に「でんさい割引」を依頼して期日前に資金化したりできます。資金化したい場合に使われるのが、この「でんさい割引」です。割引は手形割引の電子版にあたり、銀行に債権を持ち込んで割引料を差し引いた金額を受け取る仕組みです。なお、でんさいネットの利用には窓口金融機関での申込みと一定の審査、利用契約の締結、利用者番号の付番といった手続きが必要になります。あくまで決済インフラであるため、取引先もでんさいネットに参加していることが前提となる点に注意が必要です。

手数料・コストの違い

資金調達コストは、ファクタリングとでんさいを選ぶうえで最も差が出やすいポイントです。一般的な相場感を整理します。コストだけで判断すると後述する償還請求権のリスクを見落としやすいため、必ずセットで考えることが大切です。

でんさい・でんさい割引の手数料

でんさいネットでは基本手数料はかからず、発生記録請求や譲渡記録請求といった利用1件ごとに手数料が発生します。発生記録手数料の相場は窓口金融機関が定めており、1件あたり数百円程度に収まるケースが多いです。期日より早く資金化する「でんさい割引」の割引料は年1.5%〜5.5%程度が目安で、金融機関の審査や契約内容によって変動し、信用力が高い企業ほど低い料率が適用されます。銀行融資に準じた低コストで利用できる点が魅力で、継続的に資金化を行う企業にとってはトータルコストを大きく抑えられます。

ファクタリングの手数料

ファクタリングの手数料は、でんさい割引と比べて高めに設定されるのが一般的です。取引先が関与しない2社間ファクタリングでは8%〜18%、取引先の承諾を得る3社間ファクタリングでは2%〜9%が相場とされています。手数料は高めですが、最短即日での資金化や、取引先に知られずに利用できる柔軟性、そして審査のハードルの低さが対価といえます。たとえば100万円の売掛金を2社間で手数料10%で資金化した場合、受け取れるのは約90万円となり、10万円がコストとなる計算です。コストを抑えたいなら、可能な範囲で3社間を選ぶことが有効です。

償還請求権(リコース)の違い

ファクタリングとでんさいを分ける最も重要な違いが、償還請求権の有無です。これは「売掛先が倒産して支払不能になったとき、誰が損失を負担するか」という問題に直結します。コスト以上に経営インパクトが大きいため、しっかり理解しておきましょう。 でんさい割引は原則として「償還請求権あり(ウィズリコース)」です。割り引いたでんさいが支払不能になった場合、利用者は受け取った代金を金融機関へ返還し、債権を買い戻さなければなりません。つまり貸し倒れリスクは利用者側に残り、取引先の倒産が自社の資金繰りを直撃するおそれがあります。一方、一般的なファクタリングは原則「償還請求権なし(ノンリコース)」の契約であり、譲渡した売掛金が回収不能になっても、利用者は支払義務を負いません。貸し倒れリスクをファクタリング会社へ移転できる点は、手数料が高めでもファクタリングが選ばれる大きな理由のひとつです。

利用条件・審査の違い

審査でどこを見られるかも、両者で大きく異なります。自社の経営状況によって、そもそも使えるかどうかが変わってきます。 でんさいネットの利用には、窓口金融機関による審査があり、その基準は銀行融資に近い厳しさといわれます。自社の経営状態が悪化していると審査に通りにくく、そもそも取引先がでんさいネットに登録していなければ利用できません。これに対してファクタリングは、利用者本人の信用力よりも「売掛先の信用力」を重視します。そのため、赤字や創業間もない企業、税金の滞納がある企業でも、売掛先が優良であれば利用できる可能性があります。資金繰りが厳しく銀行融資が難しい局面ほど、ファクタリングの相対的な使いやすさが際立ちます。資金調達の選択肢としてファクタリングを検討する場合は、請求書買取の仕組みを解説した記事も役立ちます。 請求書買取(ファクタリング)とは

ファクタリングとでんさいの違い比較表

ここまでの違いを一覧で整理すると、次のとおりです。

##

比較項目 ファクタリング でんさい(電子記録債権)
性格 債権の譲渡(売買)による資金調達 手形に代わる支払・決済手段
資金化の方法 ファクタリング会社へ売掛金を売却 でんさい割引で期日前に資金化
手数料・割引料の目安 2社間8〜18%/3社間2〜9% 発生記録1件約561円/割引1.5〜5.5%
償還請求権 原則なし(ノンリコース) でんさい割引は原則あり(買い戻し義務)
審査で重視される点 売掛先の信用力 利用者自身の信用力(銀行融資並み)
取引先への通知 2社間なら不要 でんさいネット上で記録され把握される
資金化スピード 最短即日も可能 割引は審査・手続きが必要
取引先の参加要否 不要 取引先もでんさいネット利用が前提
ファクタリングとでんさいの違いとは?仕組み・手数料・償還請求権をわかりやすく比較

ファクタリングのメリット・デメリット

ファクタリングの最大のメリットは、最短即日という資金化スピードと、ノンリコースによる貸し倒れリスクの移転です。さらに、売掛先の信用力を重視するため自社の業績が振るわなくても利用しやすく、2社間なら取引先に知られずに資金調達できます。一方デメリットとしては、手数料が2社間で8〜18%と高めである点、悪質な業者が一部に存在するため業者選定に注意が必要な点が挙げられます。短期的・スポット的な資金需要や、貸し倒れリスクを避けたい場面に向いた手段です。

でんさい(でんさい割引)のメリット・デメリット

でんさいのメリットは、発生記録1件あたり約561円・割引料1.5〜5.5%という低コスト、紙の手形のような紛失リスクや印紙税の負担がないペーパーレス性、そして必要な金額だけ分割して譲渡できる柔軟性です。継続的な取引のデジタル化に適しています。一方デメリットは、利用にあたって銀行融資並みの審査があること、取引先もでんさいネットに参加していないと使えないこと、そしてでんさい割引には償還請求権が残り、取引先が倒産すると買い戻し義務を負うことです。普及率が中小零細企業ではまだ高くない点も、利用機会を限定する要因となっています。

自社に合うのはどちら?選び方の基準

どちらを選ぶべきかは、優先したい条件によって変わります。スピードを最優先し、取引先に知られずに資金化したい、あるいは貸し倒れリスクを移転したい場合は、ノンリコースで最短即日対応も可能なファクタリングが向いています。自社の業績が芳しくない、銀行融資の審査に通りにくいといったケースでも、売掛先が優良であればファクタリングは選択肢になります。一方、コストをできるだけ抑えたい、取引先もでんさいネットを利用していて継続的に決済をデジタル化したいという場合は、でんさい(でんさい割引)が適しています。自社の財務状況、取引先の対応状況、必要なスピード、許容できるコストの4点を軸に検討するとよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q. でんさいとでんさいファクタリングは違うものですか?

A. はい、異なります。でんさい割引は償還請求権ありで利用者に買い戻し義務が残りますが、でんさいファクタリングは電子記録債権を活用しつつ原則ノンリコースで提供されるファクタリングサービスを指します。両者は責任の所在が逆になる点に注意が必要です。でんさいファクタリングは、でんさいの低コスト性とファクタリングのリスク移転を組み合わせた折衷的な選択肢といえます。

Q. ファクタリングは借入になりますか?

A. なりません。ファクタリングは売掛債権の売買(譲渡)であり、融資ではありません。そのため負債として計上されず、信用情報にも記録されないのが一般的です。財務体質を悪化させずに資金を確保したい場合に適しています。

Q. でんさいは個人事業主でも使えますか?

A. 一定の要件を満たせば法人だけでなく個人事業主も利用できます。ただし日本国内の居住者であること、窓口金融機関に決済用口座を持っていることなどの条件に加え、審査があり、取引先もでんさいネットを利用している必要があります。

Q. 取引先に知られずに資金化できるのはどちらですか?

A. 2社間ファクタリングであれば、取引先の関与なく資金化できるため知られずに済みます。一方でんさいは、譲渡や割引の記録がでんさいネット上に残るため、資金調達を行っている事実が取引先に把握される可能性があります。

両方のいいとこ取り?でんさいファクタリングという選択肢

ファクタリングとでんさいの中間に位置するのが「でんさいファクタリング」です。これは電子記録債権を活用しながら、原則ノンリコース(償還請求権なし)で提供されるファクタリングサービスを指します。でんさいのペーパーレス性や手続きの簡便さといった利点を活かしつつ、貸し倒れリスクをサービス提供会社へ移転できる点が特徴です。さらに、取引先がでんさいネットに登録していなくても利用できるサービスもあり、でんさい単体よりも適用範囲が広がります。低コストとリスク移転を両立したい場合の有力な選択肢となるため、自社の取引状況に合わせて検討するとよいでしょう。

利用時の注意点と導入の流れ

ファクタリングを利用する際は、手数料の水準だけでなく、契約が買取(債権譲渡)型であるか、償還請求権の有無はどうか、入金までの日数や必要書類は何かを事前に確認することが重要です。とくに、貸付に該当するような契約を持ちかける悪質業者には注意し、契約書の内容を必ず精査しましょう。一方でんさいを始めるには、取引のある金融機関の窓口ででんさいネットの利用申込みを行い、審査・利用契約締結・利用者番号の付番を経て利用開始となります。導入には一定の期間と手続きが必要なため、急ぎの資金需要にはファクタリング、継続的な決済の効率化にはでんさい、という使い分けが現実的です。

まとめ

ファクタリングとでんさいは、いずれも売上債権を活用する点では共通していますが、ファクタリングは「債権の売買による資金調達」、でんさいは「手形に代わる電子的な支払・決済手段」という根本的な違いがあります。手数料はでんさいのほうが低く、発生記録1件約561円・割引料1.5〜5.5%に対し、ファクタリングは2社間で8〜18%が目安です。一方、償還請求権はでんさい割引に残り、ファクタリングは原則ノンリコースで貸し倒れリスクを移転できます。審査ではファクタリングが売掛先の信用力を、でんさいが利用者自身の信用力を重視します。スピード・コスト・リスク負担・取引先の状況という4つの観点を踏まえ、自社に最適な資金調達手段を選びましょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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