ファクタリングの基礎知識

サプライチェーンファイナンスとは?仕組み・主要手法・ファクタリングとの違いを徹底解説

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「サプライチェーンファイナンス」という言葉を耳にする機会が増えています。これは、購買企業(バイヤー)と納入企業(サプライヤー)の双方の資金繰りを同時に改善し、サプライチェーン全体の取引を安定させる仕組みの総称です。世界のサプライチェーンファイナンス市場は2024年時点で約75億米ドルに達し、2033年までに約152億米ドルへと拡大すると予測されており、年平均成長率は8.08%と高い伸びが見込まれています。

本記事では、サプライチェーンファイナンスの基本的な仕組みから、リバースファクタリング・ダイナミックディスカウント・動産担保融資(ABL)・でんさいといった主要な手法、そしてファクタリングとの違いまでを、できるだけわかりやすく丁寧に解説します。

サプライチェーンファイナンスとは

サプライチェーンファイナンス(Supply Chain Finance、SCF)とは、商品やサービスの取引を起点とする「商流」のなかで発生する売掛債権や買掛債務を活用し、サプライヤーが資金を早期に受け取れるようにする、あるいはバイヤーが支払い条件を最適化できるようにする一連の金融手法を指します。 最大の特徴は、バイヤー(購買企業)の高い信用力を起点に資金提供が行われる点にあります。一般的な資金調達では、資金を必要とするサプライヤー自身の信用力が審査の中心になりますが、サプライチェーンファイナンスでは取引先である大企業バイヤーの支払い能力が信用の基盤となるため、サプライヤーは自社単独で借り入れるよりも低いコストで資金を確保しやすくなります。 従来、企業の資金調達は「自社の財務状態」を中心に評価されてきました。これに対しサプライチェーンファイナンスは、取引そのものや商流データを評価の軸に据える点が新しく、サプライチェーン全体を一つの経済圏として捉え、関係する企業が共存共栄できるモデルとして注目されています。

サプライチェーンファイナンスの基本的な仕組み

サプライチェーンファイナンスの基本的な流れは、次のように整理できます。まずサプライヤーがバイヤーに商品やサービスを納入し、請求書を発行します。バイヤーはその請求書(支払予定の債務)を承認し、提携する金融機関やプラットフォームに登録します。金融機関は、バイヤーが承認したという事実を信用の根拠として、サプライヤーに対し支払期日より前に資金を提供します。そして当初の支払期日が到来した時点で、バイヤーが金融機関へ代金を支払うことで取引が完結します。 この仕組みにより、サプライヤーは売掛債権を早期に現金化でき、バイヤーは支払いサイトを維持したまま取引先の資金繰りを支援できます。結果として、サプライチェーン全体の取引が途切れにくくなり、安定した供給体制の維持につながります。支払いサイトそのものの考え方や交渉については、 支払いサイトとは?資金繰りを改善する交渉術と下請法、ファクタリングまで解説の記事もあわせて参考にしてください。

サプライチェーンファイナンスの主要な手法

サプライチェーンファイナンスは単一の商品名ではなく、複数の手法の総称です。代表的な4つの手法を順に見ていきましょう。

リバースファクタリング(承認型買掛債権ファイナンス)

リバースファクタリングは、サプライチェーンファイナンスの中核をなす手法です。通常のファクタリングがサプライヤー(債権者)主導で売掛債権を売却するのに対し、リバースファクタリングはバイヤー(債務者)が主導する点が大きく異なります。バイヤーが承認した請求書を金融機関が早期に買い取り、サプライヤーへ支払うため、サプライヤーは通常より早く現金を受け取れます。バイヤー側も自社の高い信用力を活用してサプライヤーの調達コストを下げられるため、取引関係の強化につながります。

ダイナミックディスカウント

ダイナミックディスカウントは、バイヤーが自己資金を使って支払期日より前にサプライヤーへ支払う代わりに、請求金額から一定の割引を受ける仕組みです。たとえば支払期日まで30日残っている請求書を即時に支払う場合、サプライヤーが2%の割引に応じる、といった形が典型です。サプライヤーは早期に資金を確保でき、バイヤーは手元資金を運用するよりも有利な割引利回りを得られる可能性があります。金融機関を介さずに当事者間で完結できる点が特徴です。

動産担保融資(ABL)

動産担保融資(ABL:Asset Based Lending)は、売掛債権に加えて在庫や機械設備などの動産を担保にして金融機関から融資を受ける手法です。サプライチェーン上に存在する資産を幅広く活用できる点が特徴で、ファクタリングが債権のみを対象とするのに対し、ABLは動産まで対象範囲を広げられます。ただしABLは「融資(貸付)」であるため貸借対照表上は負債が増え、銀行の新規審査では実行まで3週間~1か月程度かかるケースもあります。

でんさい(電子記録債権)を活用した手法

でんさいネット(全国銀行協会の100%子会社である株式会社全銀電子債権ネットワークが運営する電子債権記録機関)を利用した一括ファクタリングも、サプライチェーンファイナンスの一形態です。手形や売掛債権を電子記録債権化することでペーパーレスで安全に管理でき、債権の分割譲渡も可能になります。でんさいを活用したスキームの手数料は1%~5%程度とされ、3社間ファクタリングよりさらに低コストになる場合があります。一方で、利用には取引当事者双方のでんさいネットへの加入が前提となる点に注意が必要です。

ファクタリングとサプライチェーンファイナンスの違い

サプライチェーンファイナンスとファクタリングは、いずれも売掛債権を活用して資金繰りを改善する点で共通していますが、いくつかの本質的な違いがあります。 第一に、主導権(イニシアチブ)の所在が異なります。一般的なファクタリングはサプライヤー(債権者)が自社の判断で売掛債権を売却するのに対し、リバースファクタリングを中心とするサプライチェーンファイナンスはバイヤー(債務者)が主導してスキームを構築します。 第二に、信用の基盤が異なります。ファクタリングでも売掛先の信用力は重視されますが、サプライチェーンファイナンスはバイヤーの信用力をより明確に資金提供の前提とします。第三に、コスト水準です。2社間ファクタリングの手数料は8%~18%程度になることもありますが、サプライチェーンファイナンスは1%~5%と低めに抑えられる傾向があります。ファクタリングそのものの仕組みについては、 請求書買取(ファクタリング)とは?資金繰りを改善する新たな選択肢で詳しく解説しています。また、ファクタリングの支払いフローや即日資金化の具体的な流れは、 ファクタリングの支払いとは?即日資金化の仕組みと手数料、注意点を解説もあわせてご確認ください。

サプライチェーンファイナンスのメリット

サプライチェーンファイナンスを導入する最大のメリットは、バイヤーとサプライヤーの双方が利益を得られる点にあります。サプライヤーは売掛債権を低コストで早期に現金化でき、資金繰りが安定します。バイヤーは支払いサイトを維持したまま取引先を支援できるため、サプライチェーン全体の供給の安定につながります。 また、取引関係を維持・強化しながら資金調達ができる点も見逃せません。サプライヤーが資金繰りに窮して供給が滞れば、最終的にはバイヤー自身の生産活動にも影響します。サプライチェーンファイナンスは、こうしたリスクを未然に防ぎ、取引先との長期的な信頼関係を築く手段にもなります。

サプライチェーンファイナンスとは?仕組み・主要手法・ファクタリングとの違いを徹底解説

サプライチェーンファイナンスのデメリット・注意点

一方で、いくつかの注意点もあります。まず、でんさいネットへの登録や金融機関の審査など、一定の導入条件が求められます。システム利用や契約手続きには相応の負担が伴うため、取引量が少ない企業では費用対効果を得にくい場合があります。 また、サプライチェーンファイナンスを提供する金融機関やプラットフォームはまだ限られており、実際に利用できるケースが多くないのも実情です。導入を検討する際は、取引規模や取引先との関係性、提供事業者の対応範囲を見極めたうえで判断することが大切です。

【具体例】リバースファクタリングで早期資金化するとどうなるか

数値を使って、リバースファクタリングの効果を具体的にイメージしてみましょう。たとえば、サプライヤーがバイヤーに対して1,000万円の請求書を発行し、支払期日が60日後に設定されているとします。サプライヤーが資金繰りのために早期現金化を希望した場合、バイヤーの信用力を基盤とするサプライチェーンファイナンスでは年率換算で2%程度の割引で資金化できると仮定すると、60日分の割引額は約3.3万円(1,000万円×2%×60日÷365日)にとどまります。 一方、同じ1,000万円の請求書をサプライヤー主導の2社間ファクタリングで現金化する場合、手数料が10%であれば100万円が差し引かれ、手取りは900万円になります。両者の差は約97万円にのぼり、サプライチェーンファイナンスがいかに低コストかがわかります。これは、サプライヤー単独の信用ではなく、信用力の高いバイヤーの支払い能力を前提に資金が提供されるためです。 このように、同じ「売掛債権の早期現金化」であっても、どの手法を選ぶかによって調達コストは大きく変わります。取引先である大企業がサプライチェーンファイナンスのスキームを導入しているかどうかは、サプライヤーにとって資金繰りを左右する重要なポイントになります。

サプライチェーンファイナンスが注目される背景

サプライチェーンファイナンスへの注目が高まっている背景には、いくつかの構造的な要因があります。第一に、世界的なサプライチェーンの複雑化です。原材料の調達から製造、物流、販売まで多数の企業が関わるなかで、どこか一社の資金繰りが滞れば供給網全体が止まりかねません。そのため、サプライチェーン全体の資金の流れ(ワーキングキャピタル)を最適化するニーズが高まっています。 第二に、デジタル技術の進展です。電子記録債権(でんさい)やクラウド型プラットフォームの普及により、請求書や債権の電子化・可視化が進み、商流データを活用した与信が現実的になりました。第三に、市場の拡大です。世界のサプライチェーンファイナンス市場規模は2024年に約75億米ドルに達し、2025年から2033年にかけて年平均8.08%で成長し、2033年には約152億米ドルに到達すると予測されています。こうした成長は、企業が資金繰りの安定とサプライチェーンの強靭化を同時に求めていることの表れといえます。 国内でも、リース会社や物流会社、専門商社などが既存のサプライチェーンを活用し、資金提供者としての役割を担う事例が増えつつあります。従来は金融機関が中心だった資金供給の担い手が広がりつつある点も、今後の市場拡大を後押しする要因です。

導入を検討する際のステップ

サプライチェーンファイナンスの導入を検討する場合、立場によって取るべきステップが異なります。バイヤー(購買企業)の立場であれば、まず自社の支払い条件と取引先サプライヤーの資金繰り状況を整理し、どの取引にスキームを適用すれば効果が大きいかを見極めます。そのうえで、対応可能な金融機関やプラットフォーム事業者を比較検討し、システム導入や契約条件、手数料水準を確認します。 サプライヤー(納入企業)の立場であれば、取引先である大企業がサプライチェーンファイナンスを導入しているかをまず確認します。導入されていない場合でも、自社主導で利用できるファクタリングなど、ほかの資金調達手段と組み合わせて資金繰りを設計することが現実的です。いずれの立場でも、手数料・入金スピード・事務負担・取引関係への影響という4つの観点を比較し、自社の課題に最も合った手段を選ぶことが重要です。 なお、請求書の発行・管理を電子化しておくことは、どの資金調達手段を選ぶ場合でも前提となります。請求書や債権の状況をデジタルで可視化しておけば、早期資金化の判断や金融機関とのやり取りがスムーズになり、資金繰りの精度も高まります。

よくある質問(FAQ)

サプライチェーンファイナンスとファクタリングはどちらが手数料が安いですか

一般に、サプライチェーンファイナンス(リバースファクタリングやでんさい活用型)の手数料は1%~5%程度で、2社間ファクタリングの8%~18%程度と比べて低い傾向があります。これはバイヤーの信用力を前提に資金提供が行われるためです。ただし条件は取引内容や提供事業者によって異なります。

中小企業でもサプライチェーンファイナンスを利用できますか

サプライヤーとして利用する場合、信用力の高いバイヤーとの取引があり、そのバイヤーがスキームを導入していれば中小企業でも利用可能です。ただしバイヤー主導で構築される仕組みであるため、まずは取引先である大企業側の導入状況を確認することが現実的な第一歩になります。

ファクタリングとの使い分けはどう考えればよいですか

自社の判断で迅速に資金化したい場合や、取引先がサプライチェーンファイナンスを導入していない場合は、サプライヤー主導で利用できるファクタリングが選択肢になります。一方、取引先である大企業が仕組みを整えており、継続的・低コストで資金化したい場合はサプライチェーンファイナンスが適しています。

サプライチェーンファイナンスは負債になりますか

手法によって会計上の扱いは異なります。リバースファクタリングのようにサプライヤーが債権を譲渡して資金化する場合は、原則として負債を増やさずに売掛債権を現金に換えるアセットファイナンス的な性質を持ちます。一方、動産担保融資(ABL)は金融機関からの借入であるため、貸借対照表上は負債が増加します。導入を検討する際は、自社の財務指標への影響もあわせて確認するとよいでしょう。

でんさいネットへの登録は必須ですか

でんさい(電子記録債権)を活用したスキームを利用する場合は、取引当事者双方のでんさいネットへの加入が前提となります。一方、ダイナミックディスカウントのように当事者間で完結する手法や、提供事業者独自のプラットフォームを用いる場合は、必ずしもでんさいネットが必須とは限りません。利用したい手法に応じて、必要な登録要件を事前に確認することが大切です。

まとめ

サプライチェーンファイナンスは、バイヤーの信用力を起点に、サプライヤーの早期資金化とサプライチェーン全体の安定を同時に実現する仕組みです。リバースファクタリング、ダイナミックディスカウント、動産担保融資(ABL)、でんさいを活用した手法など、複数の選択肢があり、それぞれ主導権・信用基盤・コストが異なります。手数料は1%~5%程度と低めである一方、でんさいネットへの登録などの導入条件がある点には留意が必要です。自社の取引構造と資金繰りの課題を整理したうえで、ファクタリングなど他の資金調達手段とも比較し、最適な方法を選びましょう。

この記事の投稿者:

hasegawa

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